)” の例文
これは皆きれいにいろいろな上着にまでつけて、重なるようにしてすわりながらおおぜいで出ているので感じのよいことであった。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
黒の頬冠ほおかぶり、黒の肩掛けで、後ろのはぼろぼろにきれかかっている。欄干から恐ろしい怪物の形がいくつもパリを見おろしている。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
朝早くお帰りになるあなたの足結あゆいらす露原よ。私も早く起きてその露原で御一しょにすそらしましょう、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
丈の高いかし椅子いすが、いかつい背をこちらへ向けて、掛けた人の姿はその蔭にかくれて見えぬ。雪のやうなすそのみゆたかに床にふ。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
! 陽炎かげろうを幾千百すぢ、寄せ集めて縫ひ流した蘆手絵あしでえ風のしわは、宙に消えては、また現れ、現れては、また消える。刹那せつなにはためく。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ジヤケツの上衣うはぎの長いのやの大きくひろがつたのなどは、昔長崎へ来た和蘭船オランダぶねの絵の女を見る様に古風であるだけ今日こんにちの目には田舎ゐなか臭い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
んみりと云う。じっと泥舟を見つめる。そしてを曳く人の如く、遅々と、名残惜しそうに、道場の裏戸から静山は戸外おもてへ立ち去る——
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長いの衣をつけ、頭に花笠のような笠をかぶって、両の手に短剣を持ち、腰はしなやかに、両脚をこまやかになよなよと踊りだすのである。
淡紫裳 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
基経は姫のひつぎに、香匳こうれん双鶴そうかくの鏡、塗扇ぬりおうぎ硯筥すずりばこ一式等をおさめ、さくらかさね御衣おんぞ、薄色のに、練色ねりいろあやうちぎを揃えて入れた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
と、のたまいて、のすそのとじ糸に、縫い針を曲げて、食後のめし粒を餌にして……、と書いてある。いかにも大げさでおもしろい。また
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
まず五六十人の若い女が白い「ころも」、白い笠、顔には薄紅うすべに白粉おしろいを厚く塗り歯はおはぐろで黒く染めて、田植えの場所へと並んで行く。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
柳桜やなぎさくらをまぜて召して、錦に玉を貫いたきらびやかなの腰を、大殿油おおとのあぶらの明い光に、御輝かせになりながら、御眶おんまぶたも重そうにうち傾いていらしった
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天の香山の小竹葉ささば手草たぐさに結ひて一八、天の石屋戸いはやど覆槽うけ伏せて一九蹈みとどろこし、神懸かむがかりして、胷乳むなちを掛き出で、ひもほとに押し垂りき。
とお雪は山吹のような金色の花模様の中に、ヒラヒラと舞う白い蝶をとらえようとして、浅瀬にをとられたように引返し
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう思うた刹那、郎女の身は、大浪にうちたおされる。浪に漂う身……衣もなく、もない。抱き持った等身の白玉と一つに、水の上に照り輝くうつ
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そして「あんな人なんか」と云つて形附かたつきを撮み上げて、ひらりと薔薇の花で飾つた陶器の馬車に乗り移つた。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
されば下半身のなりし岸は彼を高くその上に聳えしむ、おもふに三人みたりのフリジアびともその髮にとゞくを 六一—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
彼女は更に紅打べにうちの袴をはいて、白地に薄い黄と青とで蘭菊の影をまぼろしのように染め出した大きいを長く曳いていた。あっぱれ采女のよそおいである。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
侍女が彼方からを春風に吹かれながら酒瓶を捧げて来る楽しげな構図だが、王女の下脹れた豊かな頬と云い、大どかな眉と云い、領巾ひれをかついだ服の様子と云い
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
踊り子の真珠の飾りを沢山附けた白絹のがぱつと拡がつたやうな渚の波であると云ふのである。
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
薄ら明りにすかして見ると、ふたりは色青ざめ、髪をふり乱し、きたない帽子をかぶり、は破れ裂け、足には何もはいてなかった。駆けながら互いに口をきいていた。
帽子を被つて、わたしの着てゐるやうな馬の毛の這入つたを付けて、あの中へ這入られませうか。思つても馬鹿げてゐますわ。それに這入つて行く様子はどんなでせう。
の淡き地におなじいろの濃きから草織り出だしたる長椅子に、姫は水いろぎぬののけだかきおおひだの、舞のあとながらつゆくずれぬを、身をひねりて横ざまに折りて腰かけ
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しづかにすゝんでれいをするとき牡丹ぼたんはしけたやうに、はななか𢌞まはめぐつて、おくつゞいた高樓たかどの廊下らうかづたひに、黒女くろめこしもと前後あとさきに三にんいて、淺緑あさみどりきぬおなをした……おもて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寢衣の裾より出でたる褐色のを見るに及びて、姫が家のおうななることは漸く知られぬ。
右も左も見る限り、塩を含んだ荒砂は、冷たい浪の洗ふに委せて、此処は拾ふべき貝殻のあるでもなければ、もとより貝拾ふ少女子をとめごが、素足に絡む赤の艶立えんだつ姿は見る由もない。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
上の端がゴム紐で留めてある、長い靴足袋を脱ぐには、をまくらなくてはならない。流石さすがに間を悪く思つて、女は小声で云つた。「あの、今こちらへ入らつしやつては困りますよ。」
「まあ綺麗な方がいらっしゃること」奥の女房たちは、まだなんにも知らずに、なども打ち解けた姿のまま、そんな事をささやき合って、みすごしにその青年を見ようとしているらしかった。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
犬に追はれた家室さんは忽ち野干やかんとなつてまがきの上に乘つてゐる。紅染くれなゐぞめのを着て、裳裾もすそをひいて遊んでゐる妻の容姿すがたは、狐といへど窈窕ようちようとしてゐたので、夫は去りゆく妻を戀ひしたつて
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
というのは多分この日から、新たにをはく者ということであったかと思う。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿爪しかつめらしい顔して、講座でもやられると、成程えらいもんじゃと思うが、昔木綿衣のを引っからげて、藁ですげた下駄をはき、網代笠をかぶって、門前へ饅頭買いに行かれたときを思うと
鹿山庵居 (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
まづ四八長等ながらの山おろし、立ちゐる浪に身をのせて、四九志賀の大湾おほわだみぎはに遊べば、五〇かち人ののすそぬらすゆきかひにおどされて、五一比良ひらの高山影うつる、深き水底みなそこ五二かづくとすれど
かゝる夜の歌に消ぬべき秋人あきびととおもふにうすもふさふかな
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
かぜ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
いま午後四時すこし過ぎ、ひだが次第に暗く紫色へ移つてゆく女身像をみつめながら、私は自分の胸のあやしい高鳴りに耳を澄ます。
恢復期 (新字旧仮名) / 神西清(著)
主人がいなければつけないを言いわけほどにでも女たちがつけておりますから、主人である女が一人いるに違いございません。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
翁のうしろに、女のか袂かがチラと見え、上からみのをかぶッて打臥している様子なのだ。彼は、はったと翁をにらみつけて
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身長身幅より三四倍もある尾鰭おびれは黒いまだらの星のある薄絹うすぎぬ領布ひれを振り撒き拡げて、しばらくは身体も頭も見えない。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その大彦の命が越の國においでになる時に、穿いた女が山城やましろのヘラ坂に立つて歌つて言うには
自分は手燭てしよくの火で前の女の帽のふちうしろを焼きはしないかと案じる外に何の思ふ所も無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すると其処へ須世理姫が、夕餉ゆふげの仕度の出来たことを気がなささうに報じに来た。彼女は近親のを弔ふやうに、何時の間にかまつ白なを夕明りの中に引きずつてゐた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひだを作るのにを持った女などが、何でもないことで、とりわけ重宝がられた。そでの先につける鰭袖はたそでを美しく為立てて、其に、珍しい縫いとりをする女なども居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
を長く引きらして楽しく住んだあの菅原の里よ、というので、こういう背景のある歌としてあわれ深いし、「裳引ならしし菅原の里」あたりは、女性らしい細みがあっていい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いや、心は決めていない、貝どのがどんなふうに出て来るかを見極めているのだといった。貝は、すてのに手をかけそれをかかげようとしたが、すては一気に鋭く払い退けた。
巨勢は少女がつる時、わずかを握みしが、少女が蘆間隠れのくいに強く胸を打たれて、沈まむとするを、やうやうに引揚ひきあげ、みぎわの二人が争ふを跡に見て、もとかたへ漕ぎ返しつ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
牡丹ぼたんはしけたやうに、花の中を廻りめぐつて、奥へ続いた高楼たかどのの廊下づたひに、黒女くろめこしもと前後あとさきに三人いて、浅緑あさみどりきぬに同じをした……おもては、雪のが沈む……しろがねくし照々てらてら
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
下の狐は、憤慨してむかっ腹を立てた途端にわれを忘れ、先刻の自制心を失い、の間から素早く手を出して上の狐の持っている餅を奪って、股座の奥の横に割れた己の口へ、ねぢ込んだ。
わが童心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
上等のリンネルの帽子をかぶり、着物にはリボンをつけ、帽子にはヴァランシエーヌ製のレースをつけていた。ひだが高くまくられているので、ふとった丈夫そうな白いももが見えていた。
酒殿さかどのはけさはな掃きそ舎人女とねりめひきすそひき今朝けさは掃きてき
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
くひかり、水色の長きごとくならん。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)