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蚤
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のみ
ふりがな文庫
“
蚤
(
のみ
)” の例文
「さう言つたつて、これでも
蚤
(
のみ
)
の
螫
(
さ
)
した
跡
(
あと
)
よりはでかいでせう。——一體そんなことを言ふ親分こそ身體を汚したことがありますかい」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
尤
(
もっ
)
とも下男は給銀を取るが、昌平はときたま
蚤
(
のみ
)
の
眼脂
(
めやに
)
ほどの小遣を貰うだけだから、実質的には下男に及ばなかったかもしれない。
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は灰の上を転げ回り、灰の中にもぐり込み、そして羽をいっぱいに膨らましながら、激しく一
羽搏
(
はばた
)
きして、夜ついた
蚤
(
のみ
)
を振い落す。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それに日本の家は
蚤
(
のみ
)
と蚊が多いから、元来蚤を気にしたがる日本の女のために洋服の下の蚤の始末も考えてやらなければなるまい。
独居雑感
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「おい、御亭主、飛んだ
蚤
(
のみ
)
にたかられての、人騒がせをして済まなかつた。
外
(
ほか
)
の客人にやお前から、よく詑びを云つておくんなせえ。」
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
蚤
(
のみ
)
を殺す以上、鳥を殺してもいいという人がある。すべて性質の差別を程度の差別に帰してひっきょう同一であるというのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「ホホウ、娘に虫がついた。恋ごろも土用干しせぬ箱入りのむすめに虫のいつつきにけむ……やはり、
蚤
(
のみ
)
、
虱
(
しらみ
)
の類でもあるかな?」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
オートバイに乗る、テニスをやる、このごろは猟犬に凝って、ポインターやセッターを飼って毎日
蚤
(
のみ
)
を取ってやっているんだよ。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
黒犬に
腿
(
もも
)
を
咬
(
か
)
まれて驚いたなどという下らない夢を見る人は、
窹
(
さ
)
めていても、
蚤
(
のみ
)
に
猪
(
い
)
の目を
螫
(
さ
)
されて騒ぐくらいの下らない人なのである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その毛皮の
襟
(
えり
)
に
蚤
(
のみ
)
たちがいることを知り、自分を助けてくれるように、そして門番を説き伏せてくれるように、と蚤たちに頼んだりした。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
蠅が
真黒
(
まっくろ
)
にたかる。
蚤
(
のみ
)
が
跋扈
(
ばっこ
)
する。カナブン、
瓜蠅
(
うりばえ
)
、テントウ虫、野菜につく虫は限もない。皆
生命
(
いのち
)
だ。皆生きねばならぬのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
……
何
(
なん
)
と、
其
(
そ
)
の
兩足
(
りやうあし
)
から、
下腹
(
したばら
)
へ
掛
(
か
)
けて、
棕櫚
(
しゆろ
)
の
毛
(
け
)
の
蚤
(
のみ
)
が、うよ/\ぞろ/\……
赤蟻
(
あかあり
)
の
列
(
れつ
)
を
造
(
つく
)
つてる……
私
(
わたし
)
は
立窘
(
たちすく
)
みました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「実際
私
(
わし
)
は
洞察力
(
どうさつりょく
)
を持ってるんだ。
蚤
(
のみ
)
がちくりとやる場合には、どの女からその蚤がうつってきたか、りっぱに言いあてることができる。」
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「これは
苦参
(
くじん
)
といって
蚤
(
のみ
)
よけのおまじないになる。見かけたところ、この宿屋には蚤がいるにちげえねえ、これを
蒲団
(
ふとん
)
のしたにしいてお寝」
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それでも然し眠れない。何処から出てくるか、夜通し虱と
蚤
(
のみ
)
と
南京虫
(
ナンキンむし
)
に責められる。いくらどうしても退治し尽されなかった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
今度はその爪を書物のページの上に押しつけ、ちょうど
蚤
(
のみ
)
をつぶすような工合にこの微細な朱唐紙の切片を紙面に貼り付ける。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
東風
(
こち
)
菫
(
すみれ
)
蝶
(
ちょう
)
虻
(
あぶ
)
蜂
孑孑
(
ぼうふら
)
蝸牛
(
かたつむり
)
水馬
(
みずすまし
)
豉虫
(
まいまいむし
)
蜘子
(
くものこ
)
蚤
(
のみ
)
蚊
(
か
)
撫子
(
なでしこ
)
扇
燈籠
(
とうろう
)
草花 火鉢
炬燵
(
こたつ
)
足袋
(
たび
)
冬の
蠅
(
はえ
)
埋火
(
うずみび
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「あきらめよう。
蚤
(
のみ
)
一匹に
関
(
かか
)
ずらって、おれたち二人までが、
祝家荘
(
しゅくかそう
)
のやつらに、がんじ
縛
(
がら
)
めの目に会わされては堪らない」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「気楽も、気楽でないも、世の中は気の持ちよう一つでどうでもなります。
蚤
(
のみ
)
の国が
厭
(
いや
)
になったって、
蚊
(
か
)
の国へ
引越
(
ひっこ
)
しちゃ、
何
(
なん
)
にもなりません」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とその男の背中と思うあたりの硝子を
破
(
わ
)
れんばかりに叩いたが、彼は背中に
蚤
(
のみ
)
がゴソゴソ動いたほども感じないで、やがて向うへいってしまった。
見えざる敵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それが何だか、はつきりしないので気持が悪い。ちやうど
蚤
(
のみ
)
に背中を
喰
(
く
)
はれてゐて、まだそれをはつきり知らないとき、何となく不愉快なやうに。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
この大渦巻の前へ出ては
蠅
(
はえ
)
の一匹と申し上げたいが、それよりもまだ小さくほとんど
蚤
(
のみ
)
一匹の大きさにしか過ぎません。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「さて、
奈何
(
どう
)
為ようかな?」
恁
(
か
)
う
渠
(
かれ
)
は、額に八の字を寄せ、夥しく蚊に喰はれた脚や、
蚤
(
のみ
)
に攻められて一面に紅らんだ
横腹
(
よこつぱら
)
を
自棄
(
やけ
)
に掻き乍ら、考へ出した。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一ぴきの
蚤
(
のみ
)
が
眞蒼
(
まつさを
)
になつて、
疊
(
たゝ
)
の
敷合
(
しきあは
)
せの、ごみの
中
(
なか
)
へ
逃
(
に
)
げこみました。そしてぱつたりとそこへ
倒
(
たふ
)
れました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
蚤
(
のみ
)
に
小
(
ち
)
つぽけな馬車を
牽
(
ひ
)
かす蚤飼の話は噂に聞いてゐるのみで、実地見た事はないが、虱は唯もうその辺を這ひ回るのみで、芸人としては一向
価値
(
ねうち
)
が無い。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
虫追いは今では害虫の発生した時だけにするが、奥州には毎年六月朔日を期して、
蚤
(
のみ
)
を駆除する風習もある。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
犬の体には
蚤
(
のみ
)
がわいた。二匹の犬はいぢらしくも、互に、相手の背や尾のさきなどの蚤をとり合つて居た。彼は彼等のこの動作を優しい心情をもつてながめた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「さうでさ、
餘
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
に
成
(
な
)
りあんすがね、ありや
鬼怒川
(
きぬがは
)
へ
蚤
(
のみ
)
叩
(
はた
)
くつて
行
(
い
)
つてそれつ
切
(
き
)
りに
成
(
な
)
つちやつたのせ」
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ヨーギとよしとは、昼の疲れですぐ眠ってしまった。併し、梅三爺も市平も、心が冴えているようで、それに
蚤
(
のみ
)
がひどいので、なかなか眠ることが出来なかった。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
蚤
(
のみ
)
の喰つたあとほどの人恋しさの物憎い
痒
(
かゆ
)
みが、ぽちりと心の面に浮いた。牧瀬のスポーツシヤツの体からは、半人半獣のやうな健やかな感触が夜気に伝つて来た。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
まず、天地の間に生きとし生けるもの、
蚤
(
のみ
)
、
蠅
(
はえ
)
に至るまで、いずれか
霊
(
たましい
)
なからんや。その霊なきものを無情、草木、
瓦石
(
がせき
)
という。これにだも、なお霊あるいわれあり。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そこで企てたのが本州横断徒歩旅行! もちろん
亜弗利加
(
アフリカ
)
内地旅行だの、両極探検だのに比すれば、まるで猫の額を
蚤
(
のみ
)
がマゴついているようなものであるが、それでも
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
この様な言葉を
交換
(
とりかわ
)
した。不図、お種は
洋燈
(
ランプ
)
の置いてある方へ寄って、白い、神経質らしい手を腕の辺まで
捲
(
まく
)
って見て、
蚤
(
のみ
)
でも逃がしたように坐っていたところを捜す。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
死にかけた犬にも
蚤
(
のみ
)
やだにがついているように、飢えたる彼らの周囲にも、飢えた小売り商人が大福
餅
(
もち
)
や
巴
(
ともえ
)
焼きなどを、これもほとんど時なしに売っているのであった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
冬中
(
ふゆじゅう
)
が
真盛
(
まっさか
)
りで、春になり夏になると次第に衰えて、暑中二、三箇月
蚤
(
のみ
)
と交代して
引込
(
ひっこ
)
み、九月頃
新芋
(
しんいも
)
が町に出ると吾々の虱も
復
(
ま
)
た出て来るのは
可笑
(
おか
)
しいと
云
(
いっ
)
た事がある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
馬酔木
(
あしび
)
が丈余の
叢
(
くさむら
)
をなしてい、その中ほどの草の原に、
襤褸
(
ぼろ
)
と垢と
蚤
(
のみ
)
虱
(
しらみ
)
とに包まれている
不具
(
かたわ
)
の流浪者が、八人がところかたまって、
蠢
(
うご
)
めきながら話しあっている様子は
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
が、それはまだ我慢もできるとして、どうにもこうにも我慢のできないのは、少し寝床の中が
暖
(
ぬく
)
まるとともに、
蚤
(
のみ
)
だか
虱
(
しらみ
)
だか、ザワザワザワザワと体じゅうを刺し廻るのだ。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
春松のゴマいりを揺り動かす手付きは、見ていて惚々するほどで、しかも逃げた砂粉を再び何度も/\ゴマいりにいれて、いってみれば、女が
蚤
(
のみ
)
を探す時の熱心さがあった。
俗臭
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
膝
(
ひざ
)
から
踵
(
かかと
)
の辺まで、
蚤
(
のみ
)
にやられた傷跡が無数にあったが、割と元気そうな顔つきであった。明日彼を八幡村に連れて行くことにして、私はその晩長兄の家に泊めてもらった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
このごろは、ナフタリンだの何のと、種々様々な駆虫剤が便利に手に入ることが出来るので、
蚤
(
のみ
)
なども
殆
(
ほとん
)
どいなくなったけれども、そのころは蚤が多くて毎夜苦しめられた。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
湯屋
(
ゆや
)
で
拾
(
ひろ
)
い
集
(
あつ
)
めた
爪
(
つめ
)
じゃァねえよ。
蚤
(
のみ
)
や
蚊
(
か
)
なんざもとよりのこと、
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
まで
凍
(
こお
)
るような
雪
(
ゆき
)
の
晩
(
ばん
)
だって、おいらァじっと
縁
(
えん
)
の
下
(
した
)
へもぐり
込
(
こ
)
んだまま
辛抱
(
しんぼう
)
して
来
(
き
)
た
苦心
(
くしん
)
の
宝
(
たから
)
だ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
この国で最も有難からぬ厄介物の一つは
蚤
(
のみ
)
である。山の頂上にでも野生している。彼等は人家に侵入しているので、夜間余程特別な注意を払わぬと人間は喰い尽されて了う。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
その年の夏となりしが四五月頃の気候のよき頃はさてありしも、六七月となりては西洋
擬
(
なぞら
)
いの外見煉瓦蒸暑きこと言わん方なく、
蚤
(
のみ
)
の多きことさながらに足へ植えたるごとし。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
奇妙にポチを
呪咀
(
じゅそ
)
し、ある夜、私の寝巻に犬の
蚤
(
のみ
)
が
伝播
(
でんぱ
)
されてあることを発見するに及んで、ついにそれまで堪えに堪えてきた怒りが爆発し、私はひそかに重大の決意をした。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼が
蚤
(
のみ
)
の類を飼育していたことで、それを虫目がねや度の弱い顕微鏡の下で、
這
(
は
)
わせてみたり、自分の血を吸うところだとか、虫同士をひとつにして同性であれば
喧嘩
(
けんか
)
をしたり
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「こうしてやると、毛の色艶がよくなりますし、それに
蚤
(
のみ
)
や
虱
(
しらみ
)
がたからなくなります。」
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
庄造が此の猫の世話を決して他人の手に
委
(
ゆだ
)
ねず、毎日食事の心配をし、二三日置きにフンシの砂を海岸まで取り換へに行き、暇があると
蚤
(
のみ
)
を取つてやつたりブラシをかけてやつたりし
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
蚤
(
のみ
)
もおらぬ、蚊もおらぬ。併したまには蠅が一匹いることがある。七階の上層に蚊は飛んで来ないが、蠅は下界から飛んで来たのであろうか。地下室の食堂の野菜の洗場がここから見える。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
これは昔七座の神に命ぜられて堤に穴を
穿
(
うが
)
ち、湖を
疏水
(
そすい
)
した鼠で、猫を惧れて出なんだので七座の神が鼠を捕らねば
蚤
(
のみ
)
を除きやろうと約して猫を控えさせ、さて鼠族一夜の働きで成功した。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
蚤
(
のみ
)
が刺したくらいのことで、ほんのはした
金
(
がね
)
を使ったというだけのことであっても、もしかくのごとくにして一夜の歓楽をむさぼるということが、ただにその人の健康に益なきのみならず
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
“蚤(ノミ)”の解説
ノミ(蚤)とは、節足動物門昆虫綱ノミ目(隠翅目)に属する昆虫の総称。シラミとともに、代表的な外部寄生昆虫に数えられる。
(出典:Wikipedia)
蚤
漢検準1級
部首:⾍
10画
“蚤”を含む語句
蚤取粉
蚤取
蚤取眼
蚤虱
蚤沙魚
鼓上蚤
蚤除
蚤退治
蚤袋
蚤蚊
蚤糞
蚤男
捕蚤
蚤歳
蚤市
蚤夭
蚤世
羽蚤