“茅葺:かやぶき” の例文
“茅葺:かやぶき”を含む作品の著者(上位)作品数
永井荷風10
吉川英治8
泉鏡花8
田山花袋4
岡本綺堂4
“茅葺:かやぶき”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸4.8%
文学 > 中国文学 > 小説 物語1.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
追々買い広げて、今は山林宅地畑地を合わせて四千坪に近く、古家ながら茅葺かやぶき四棟よむねもあって、廊下、雪隠、物置
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたくしが父に伴われて行った料理茶屋は堀端に生茂った松林のかげに風雅な柴折しおり門を結んだ茅葺かやぶきの家であった。
十六、七のころ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
茅葺かやぶきのきこけつささやかな住居すまいながら垣根かきねからんだ夕顔ゆうがおしろ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「春夏秋冬花不断」「東西南北客争来」とした二枚のれんを両方の柱にかけた茅葺かやぶきの門を間もなく三人はくゞった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
舟は間もなく、隅田河原の西へついた。河原を上がると、波打ち際の森の中に、すぐ浅草観音堂の茅葺かやぶき屋根が見えた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丈八は、曾てその老母の許に帰郷していた一学を訪ねて、三州横須賀村の茅葺かやぶき屋根のもとに一晩泊めてもらった事がある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東海道から小半町も山手へはいった横町の右側で、畑のなかの一軒家のような茅葺かやぶき屋根の小さい家がそれであった。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
茅葺かやぶき板葺こけら瓦葺かわらぶきの嫌いなく、隣から隣へと屋根を伝って、彼は駅尽頭しゅくはずれの方へ逃げて行った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ずんずん通り抜けて、寺内へ入ると、正面がずッと高縁たかえんで、障子が閉って、茅葺かやぶきですが本堂らしい。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
茅葺かやぶきつくろひをすることは扨置さておいて、おもてもあけられず、うちからうち隣同士となりどうし
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
毎日四時過ぎになると、前の銭湯の板木はんぎの音が、静かな寒い茅葺かやぶき屋根の多い田舎の街道に響いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この茅葺かやぶきは隣に遠い一軒家であった。加之しか空屋あきやと見えて、内は真の闇、しずまり返って物のおとも聞えなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
街道より迂折うせつする数百歩、たちま茅葺かやぶきの小祠堂あり、ああこれ吉田松陰の幽魂を祭る処。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
茅葺かやぶき屋根に簀掻莚すがきむしろのこの家の家造やづくりのとおりに、生地きじそのままであった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と一軒茅葺かやぶきの家の中で焚物たきものをすると見え、戸外おもて火光あかりすから、何卒どうぞ助けて呉れと叩き起しましたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
家は茅葺かやぶきながら岩畳がんじょうな構えで、一切の模様が岩倉いわくらと云う其姓にふさわしい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
雅人がじん住居すまいでもありそうな茅葺かやぶきの家、かけひの水がにわさきにせせらぐ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで庭の中に茅葺かやぶき屋根を建てて馬を住まわし、きれいなじょちゅうを選んでつけてあった。
黄英 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
左がなにがし大名の下屋敷とも思われる大きな塀、右は松並木で、その間に、まばらに見える茅葺かやぶきの家が、もう一軒も起きているのはありません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
茅葺かやぶきの屋根はまだ随処に残っていて、住む人は井戸の水を汲んで米をぎ物を洗っている。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むね茅葺かやぶき屋根と一つの小さい白壁造の土蔵とがあつて、其後にはけやきの十年ほどつたまばらな林、その周囲には、蕎麦そば
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
……そのとき、その道ばたの一軒の茅葺かやぶき小屋の中から、襤褸ぼろをきた小さな子供が走り出してきて、その四つ手網を重そうに一人で持ち上げだした。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
 花火から茅葺かやぶき屋根に火がうつって火事になったのは、三囲稲荷のほとりの、其角堂きかくどうであった。そしてそれは全然別のときのことであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
最後の駒込林町を見ようというので、団子坂を登って右に折れて、林町の裏通りの細い道を這入りまして、一丁目ほど行くと右側に茅葺かやぶき屋根の門がある。
広々した構えの外には大きな庭石を据並すえならべた植木屋もあれば、いかにも田舎いなからしい茅葺かやぶきの人家のまばらに立ちつづいている処もある。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
——それらの指揮をば、道誉は席を移してから、例の茅葺かやぶきの茶堂で居ながらに取っていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滝をくつがえすようで小歇おやみもなく家に居ながらみんな簑笠みのかさしのいだくらい、茅葺かやぶきつくろいをすることはさて置いて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
笹藪ささやぶのかたわらに、茅葺かやぶきの家が一軒、古びた大和障子やまとしょうじにお料理そばきりうどん小川屋と書いてあるのがふと眼にとまった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
私は用事にかこつけて木槿むくげの垣にかこまれた彼女の茅葺かやぶき屋根の家の前を歩いた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
かはつてふる水車小屋すゐしやごやまた茅葺かやぶき小屋こやもある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其処は彼が流浪中に、最も風土の美しいのを愛した、四面海の無人島であつた。彼はこの島の南の小山に、茅葺かやぶきの宮を営ませて、安らかな余生を送る事にした。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
用心ようじんためにと茅葺かやぶきまうけにまはする庭男にはをとこ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一本道の両側に三丁ほど茅葺かやぶきの家が立ちならんでいるだけであったのである。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
或は又鉄筋コンクリイトの借家しやくや住まひをするやうになつても、是等の歌はまぼろしのやうに山かげに散在する茅葺かやぶき屋根を思ひ出させてくれるかも知れない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わずかしかない人家は皆茅葺かやぶきであったが、しかし皆風流な構えであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
伯父の家は、金鱗湖きんりんこという小池のふちの茅葺かやぶきの家である。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
板庇にそそぐ雨の音をずることは同じであっても、茅葺かやぶき屋根に居住する人の心持と、トタン葺に馴れた人の心持とでは、その間に多大の逕庭けいていあるを免れまい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
静かな茅葺かやぶき屋根のうちに、万吉は仰むけに寝かされていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝のかぜ吹けば野寺の茅葺かやぶきに雪のはだれと散るさくらかな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
堤防の下には、処々ところ/\茅葺かやぶき屋根が見える。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「あれに見える山の南の、帯のような岡を、臥龍がりょうの岡と申しますだ。そこから少し低いところに、一叢ひとむらの林があって、林の中に、柴の門、茅葺かやぶきいおりがありますだよ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茅葺かやぶき屋根の裏に弁慶と云うものが釣ってある。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕事場として美しい茅葺かやぶきの建物が見られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「あすこだよ」と、男の児は指さして教えた。それは七、八軒さきの小さい茅葺かやぶき屋根の田舎家で、強い風には吹き倒されそうに傾きかかっていた。その軒さきには大きいえんじゅの樹が立っていた。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここの客間の、何くれとない物すべてが、主の席にない間も、客をなぐさめている。庭ごしの遠い眺め、水の姿は見えないが水のせせらぎ、茅葺かやぶき屋根の廂先ひさしさきから咲いている苔草こけぐさの花。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
向岸に茅葺かやぶきの家が立っている。
広々ひろ/″\したかまへの外には大きな庭石にはいし据並すゑならべた植木屋うゑきやもあれば、いかにも田舎ゐなからしい茅葺かやぶき人家じんかのまばらに立ちつゞいてゐるところもある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
始めて引越して来たころには、近処の崖下がけしたには、茅葺かやぶき屋根の家が残っていて、昼中ひるなかにわとりが鳴いていたほどであったから、鐘のも今日よりは、もっと度々聞えていたはずである。
鐘の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その神の森を遠く囲繞し、茅葺かやぶき小屋や掘立小屋や朽葉色くちばいろ天幕テントが、幾何学的の陣形を作り、所在に点々と立っているのは、これぞ水狐族と呼ばれるところの、巫女どもの住んでいる部落であった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
実家うちへも帰られないので此様な汚ない空家を借りて世帯しょたいを持たして、爺むさいたッてお前さん茅葺かやぶき屋根から虫が落ちるだろうじゃアないか、本当に私を退ひかしたって亭主振って、小憎らしいのだよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とある小山の麓に僅かに倒れ殘つた荒屋あばらやが即ちそれで、茅葺かやぶきの屋根は剥がれ、壁はこはれて、普通の住宅すみかであつたのを無理に教場らしく間に合せたため、室内には不細工千萬に古柱が幾本も突立つてゐた。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
それを、上目づかいのあごで下から睨上ねめあげ、薄笑うすわらいをしている老婆ばばあがある、家造やづくりが茅葺かやぶきですから、勿論、遣手やりてが責めるのではない、しゅうとしえたげるのでもない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寺の門前には茶畠を隔てて西洋風の住宅がセメントの門墻もんしょうをつらねているが、阪を下ると茅葺かやぶき屋根の農家が四、五軒、いずれも同じような藪垣をいめぐらしている間に、場所柄からこれは植木屋かとも思われて
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何年か前まではこの温泉もほんの茅葺かやぶき屋根の吹きさらしの温泉で、桜の花も散り込んで来たし、溪の眺めも眺められたし、というのが古くからこの温泉を知っている浴客のいつもの懐旧談であったが、多少牢門じみた感じながら
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
堤の南は尾久おぐから田端たばたにつづく陋巷ろうこうであるが、北岸の堤に沿うては隴畝ろうほと水田が残っていて、茅葺かやぶきの農家や、生垣いけがきのうつくしい古寺が、竹藪や雑木林ぞうきばやしの間に散在している。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
故郷の家の傾斜の急な高い茅葺かやぶき屋根から、三尺餘も積んだ雪のかたまりがドーツと轟然ぐわうぜんとした地響を立ててなだれ落ちる物恐ろしい光景が、そして子供が下敷になつた怖ろしい幻影に取つちめられて、無意識に叫び聲をあげた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
圭一郎は郷里の家の大きな茅葺かやぶき屋根の、爐間の三十疊もあるやうなだゝつ廣い百姓家を病的に嫌つて、それを二束三文に賣り拂ひ、近代的のこ瀟洒ざつぱりした家に建て替へようと強請せがんで、その都度父をどんなに悲しませたかしれない。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
わたくしは歩いている小道の名を知ろうと思って、物売る家の看板を見ながら行くと、長屋建の小家のつづく間には、ところどころ柱の太い茅葺かやぶき屋根の農家であったらしいものが残っているので、むかしは稲や蓮の葉の波を打っていた処である事を知った。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一同は今水を学校の屋根にそゝがうとして居るので、しきりに二箇の管を其方向に向けつゝあるが、一度ひとたびはそれが屋根の上を越えて、遠く向ふに落ち、一度は見当違ひに一軒先の茅葺かやぶき屋根を荒し、三度目には学校の下の雨戸へしたゝか打ち付けた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
西洋人の大きな洋館、新築の医者の構えの大きな門、駄菓子だがしを売る古い茅葺かやぶきの家、ここまで来ると、もう代々木の停留場の高い線路が見えて、新宿あたりで、ポーと電笛の鳴る音でも耳に入ると、男はその大きな体を先へのめらせて、見栄も何もかまわずに、一散に走るのが例だ。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
御覧なさい。湯本でも宮の下でもみんな茅葺かやぶき屋根に描いてあるでしょう。それを思うと、むかしと今とはすっかり変ったもんですよ。その頃は箱根へ湯治とうじに行くなんていうのは一生に一度ぐらいの仕事で、そりゃあ大変でした。いくら金のある人でも、道中がなかなか億劫おっくうですからね。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わが父三たび家をうつして、つい燕息えんそくの地を大久保村に卜せられし時、衡門こうもんの傍なる皀莢さいかちの樹陰に茅葺かやぶきの廃屋ありて住むものもなかりしを、折から久斎が老母重き病に伏したりと聞き、わが母上ここに引取り、やがて野辺のべのおくりをもなさしめ玉ひけり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
——水上みなかみの奥になるほど、樹の枝に、茅葺かやぶきの屋根がかかって、蓑虫みのむしねぐらしたような小家がちの、それも三つが二つ、やがて一つ、窓のあかりさず、水を離れた夕炊ゆうかしぎの煙ばかり、細く沖ですくいを呼ぶ白旗のように、風のまにまに打靡うちなびく。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第三図は童児二人紙鳶たこを上げつつ走り行く狭き橋の上より、船のほばしら茅葺かやぶき屋根の間に見ゆる佃島の眺望にして、彼方かなたよこたはる永代橋えいたいばしには人通ひとどおりにぎやかに、三股みつまたの岸近くには(第四図)白魚船しらうおぶねあみをひろげたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そりゃ何だろう、山田からずッと入ると、遠くに二階家を見たり、目の前に茅葺かやぶきあらわれたり、そうかと思うと、足許あしもとに田の水が光ったりする、その田圃たんぼも何となく、おおきな庭の中にわざとこしらえた景色のような、なだらかな道を通り越すと、坂があって、急に両側が真赤まっかになる。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秋晴あきばれ或日あるひ、裏庭の茅葺かやぶき小屋の風呂のひさしへ、向うへ桜山さくらやまを見せて掛けて置くと、ひる少し前の、いい天気で、しずかな折から、雀が一羽、……ちょうど目白鳥の上の廂合ひあわい樋竹といだけの中へすぽりと入って、ちょっと黒い頭だけ出して、上から籠を覗込のぞきこむ。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)