目白めじろ)” の例文
三馬さんば浮世風呂うきよぶろむうちに、だしぬけに目白めじろはうから、釣鐘つりがねつてたやうにがついた。湯屋ゆやいたのは(岡湯をかゆ)なのである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うぐいす目白めじろのような素人には何とも致し方のない小鳥でも、詳しく見究めたら仲間うちだけで、通用している個性というものはきっとあると思うが
真冬の二月は頬白ほおじろ目白めじろも来てくれないので、朝はいつもかわらないすずめ挨拶あいさつと、夜は時おり二つ池へおりる、がんのさびしい声をきくばかりだった。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と思うと肩の上へ目白めじろ押しに並んだ五六人も乗客の顔を見廻しながら、天国の常談じょうだんを云い合っている。おや、一人の小天使は耳の穴の中から顔を出した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新井の薬師の帰りに、大久保へ出て野々宮君の家へ回ろうと思ったら、落合おちあい火葬場やきばの辺で道を間違えて、高田たかたへ出たので、目白めじろから汽車へ乗って帰った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十月十二日の時雨しぐれふる朝に、私たちは目白めじろ額田六福ぬかだろっぷく方を立ち退いて、麻布宮村町みやむらちょうへ引き移ることになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おもひのまゝ枝葉えだはひろげた獨活うど目白めじろあつまつてくのが愉快ゆくわいらしくもあれど、なんとなくいそがしげであつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
中央に一子房があって三つにわかれた花柱を頂き、子房の辺に蜜汁が分泌せらるるのでよく目白めじろの鳥がそれを吸いに来り、その際に花粉を柱頭に伝え媒助してくれる。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そこでまた、希望きぼうがわきました。ふたりは、あがりはなに、目白めじろおしにならんで、こしをかけました。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
一度は東京の目白めじろのある田舎道で夜の八時過ぎだった、急にフラフラとやって来て暗い草叢くさむらの中へ倒れた、その時は或る気前のいい車屋さんに助けられたものだった
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
火鉢とお茶を持って上って来た夫人に、私は不躾ぶしつけながら、色々な質問をせざるを得ない気持であった。きいてみると、目白めじろの女子大の出身で、専攻は英文学であったそうである。
I駅の一夜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
平次はガラツ八と一緒に、到頭目白めじろ長者の家へ出かけて見る氣になつたのです。
戸山の原は東京の近郊に珍らしい広開こうかいしたである。目白めじろの奥から巣鴨すがもたきがわへかけての平野は、さらに広い武蔵野むさしのの趣を残したものであろう。しかしその平野はすべ耒耜らいしが加えられている。
「いっそ、目白めじろがよかろ。目白になってなたの丘の竹藪たけやぶで、日がないちにちき暮すことじゃ。そいでん、子供たちにつかまって、かごんなかに入れられてしまえば、また鶏どんと同じ運命さだめになる道理じゃ」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
目白めじろ、カナリヤ、四十雀しじゆうがら
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うぐいすがささ鳴きをし、目白めじろが枝わたりをしている。人声もきこえぬ静かさで、何処からかうたいつづみの音がきこえてくる。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
渡鳥わたりどり小雀こがら山雀やまがら四十雀しじふから五十雀ごじふから目白めじろきくいたゞき、あとりをおほみゝにす。椋鳥むくどりすくなし。つぐみもつとおほし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
目白めじろかごに飼われると、熟柿じゅくしなどよりもかえっていもを好んで食う。
目白めじろ長者、寅五郎の屋敷は豪勢でした。
へん陰氣いんき不氣味ぶきみばんでございました。ちやうどなすつたとき目白めじろこゝのつをきましたが、いつものつころほど寂寞ひつそりして、びゆう/\かぜばかりさ、おかみさん。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
腰障子の土間の広い、荒っぽい材組きぐみで、柱なんぞも太かったが、簡素な造りで、藤木さんは手拭ゆかたを着て、目白めじろをおとりにして木立に小鳥籠が幾個いくつかかけてあった。
谷にはうぐいす、峰には目白めじろ四十雀しじゅうからさえずっているところもあり、紺青こんじょういわの根に、春はすみれ、秋は竜胆りんどうの咲くところ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あきふゆ遊山ゆさんる、桜山さくらやまも、桃谷もゝたにも、あの梅林ばいりんも、菖蒲あやめいけみんな父様とつちやんので、頬白ほゝじろだの、目白めじろだの、山雀やまがらだのが、このまどから堤防どてきしや、やなぎもとや、蛇籠じやかごうへるのがえる
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さかうへから、はるか小石川こいしかは高臺たかだい傳通院でんづうゐんあたりから、金剛寺坂上こんがうじざかうへ目白めじろけてまだあまはひらない樹木じゆもく鬱然うつぜんとしたそこ江戸川えどがは水氣すゐきびてうすよそほつたのがながめられる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あか着物きものる、みいちやんの紅雀べにすゞめだの、あを羽織はおり吉公きちこう目白めじろだの、それからおやしきのかなりやの姫様ひいさまなんぞが、みんなで、からかいにつては、はなたせる、手拭てぬぐひかむせる
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
櫻山さくらやま夏鶯なつうぐひすれつゝ、岩殿寺いはとのでら青葉あをば目白めじろく。なつかしや御堂みだう松翠しようすゐ愈々いよ/\ふかく、鳴鶴なきつるさきなみあをくして、新宿しんじゆくはまうすものゆきく。そよ/\とかぜわたところ日盛ひざかりもかはづこゑたからかなり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それ、はなたれたるをんなは、蜀道しよくだう良夜りやうやにあり。あへ目白めじろ學校がくかうにあらざるなり
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからみいちやんのやうなのは可愛かあいらしいのである、吉公きちかうのやうなのはうつくしいのである、けれどもそれは紅雀べにすゞめがうつくしいのと、目白めじろ可愛かあいらしいのと些少ちつとちがひはせぬので、うつくしい
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いただきの松の中では、しきり目白めじろさえずるのである。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)