トップ
>
浴衣
>
ゆかた
ふりがな文庫
“
浴衣
(
ゆかた
)” の例文
まるいのは市村の麦わら帽子、細長いのは中塚の
浴衣
(
ゆかた
)
であった。黒いものは谷の底からなお上へのぼって馬の背のように空をかぎる。
槍が岳に登った記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
白地の
浴衣
(
ゆかた
)
に、この頃はやる麻の葉絞りの紅い帯は、十八の娘をいよいよ
初々
(
ういうい
)
しく見せた。林之助はもう一度お絹とくらべて考えた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
浮彫で
浴衣
(
ゆかた
)
が釘に掛ってブラ下っていてそれが一種の
妖気
(
ようき
)
を帯びているという鏡花の小説みたいなものを拵えたつもりで喜んでいた。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
行水を
浴
(
あ
)
び、
浴衣
(
ゆかた
)
になって家の内へもどってみると、もう家じゅうは人でいっぱいの混雑である。自分の家か他人の家かわからない。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白絣
(
かすり
)
のあらい
浴衣
(
ゆかた
)
に、黒の帯、新しい
滝縞
(
たきじま
)
の袴をシヤンと
穿
(
は
)
いて居た。お国風に
衛
(
まもる
)
さん衛さんと七つも違ふ湯村の名を呼んで居た。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
▼ もっと見る
汚い
手拭地
(
てぬぐいじ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着た九つか十位の男の児が、
剥製
(
はくせい
)
の蛙みたいにひょろひょろになって、つつじの株の葉陰にうずくまっていた。
夏の夜の冒険
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
を
着
(
き
)
た
髪
(
かみ
)
の白い
老人
(
ろうじん
)
であった。その着こなしも
風采
(
ふうさい
)
も
恩給
(
おんきゅう
)
でもとっている古い
役人
(
やくにん
)
という風だった。
蕗
(
ふき
)
を
泉
(
いずみ
)
に
浸
(
ひた
)
していたのだ。
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「もう
浴衣
(
ゆかた
)
でなきや暑くて、お父さんにいひつかつた庭の盆栽へ水をやりに行けないぢやないか——兄さん自分で縫つてお
呉
(
く
)
れよ」
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
と返事して、私が、おねがいします、早くおねがいします、と言っているうちに、
浴衣
(
ゆかた
)
の寝巻のままでお家から飛び出て来られた。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
裸体を回想として近接の過去にもち、あっさりした
浴衣
(
ゆかた
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に着ているところに、媚態とその形相因とが表現を
完
(
まっと
)
うしている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
二人とも
浴衣
(
ゆかた
)
に
着更
(
きか
)
へ、前後して
煙
(
けむ
)
り
臭
(
くさ
)
い風呂へ入つた。小池は浴衣の上から帶の代りに、お光の
伊達卷
(
だてま
)
きをグル/\卷いてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
白地の
浴衣
(
ゆかた
)
に
麦稈帽
(
むぎわらぼう
)
を被った裔一は、
午
(
ひる
)
過の日のかっかっと照っている、かなめ垣の道に黒い、短い影を落しながら、遠ざかって行く。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
半蔵は宿屋のかみさんが貸してくれた
糊
(
のり
)
のこわい
浴衣
(
ゆかた
)
の
肌
(
はだ
)
ざわりにも旅の心を誘われながら、黙しがちにみんなの話に耳を傾けた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
文反古
(
ふみほご
)
にて
腰張
(
こしばり
)
せる壁には
中形
(
ちゅうがた
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
かかりて、その
傍
(
かたわら
)
なる
縁起棚
(
えんぎだな
)
にはさまざまの
御供物
(
おくもつ
)
賑
(
にぎわ
)
しきが
中
(
なか
)
に大きなる
金精大明神
(
こんせいだいみょうじん
)
も見ゆ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鏡台の
抽斗
(
ひきだし
)
にしまっておいた
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
などを取り出し、縁づいてからお袋が見立てて拵えてくれた細い矢羽根の
置型
(
おきがた
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に着かえた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
玄は荒い
棒縞
(
ぼうじま
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、窓際のテーブルに向って何か本を読んでいた。私は何だか、玄の部屋に這入って行ってみたくなった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
二人とも、白い
浴衣
(
ゆかた
)
を着てゐるために、闇の中でも、割合ハツキリと見えた。美奈子は、ぢつと二人が近よつて来るのを見詰めてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
宿
(
やど
)
に
凝
(
じつ
)
としてゐるのは、
猶
(
なほ
)
退屈
(
たいくつ
)
であつた。
宗助
(
そうすけ
)
は
匆々
(
そう/\
)
に
又
(
また
)
宿
(
やど
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
棄
(
す
)
てゝ、
絞
(
しぼ
)
りの
三尺
(
さんじやく
)
と
共
(
とも
)
に
欄干
(
らんかん
)
に
掛
(
か
)
けて、
興津
(
おきつ
)
を
去
(
さ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
おつぎは
浴衣
(
ゆかた
)
をとつて
襦袢
(
じゆばん
)
一
(
ひと
)
つに
成
(
な
)
つて、
笊
(
ざる
)
に
水
(
みづ
)
を
切
(
き
)
つて
置
(
お
)
いた
糯米
(
もちごめ
)
を
竈
(
かまど
)
で
蒸
(
む
)
し
始
(
はじ
)
めた。
勘次
(
かんじ
)
は
裸
(
はだか
)
で
臼
(
うす
)
や
杵
(
きね
)
を
洗
(
あら
)
うて
檐端
(
のきば
)
に
据
(
す
)
ゑた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
打水
(
うちみず
)
をした庭の縁を二人三人の足音がして、白地の
筒袖
(
つつっぽ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着た菊五郎が書生流に歩いて来ると、そのあとに
楚々
(
そそ
)
とした夏姿の二人。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
妻はにこりともしなかつたので、私は羞恥に似たものを感じ、大いそぎで、猿股をはき、
浴衣
(
ゆかた
)
を着てその物静かな舞踊をよした。
泥鰌
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
さてそろそろ夏が来ますが、
浴衣
(
ゆかた
)
を着られるのはまた何としても
愉
(
たの
)
しいことです。何が何だと云っても浴衣の着心地は素敵です。
着物雑考
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
傷は
浴衣
(
ゆかた
)
の後ろから一と突き、路地一パイに
浸
(
ひた
)
す血潮の中に、
頑固
(
ぐわんこ
)
一
徹
(
てつ
)
で鳴らした六兵衞は、石つころの樣に冷たくなつてゐるのでした。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これあるがために茶の湯が生まれ、能、能衣しょう、漆器、ちりめん、
浴衣
(
ゆかた
)
が生れ、歌舞伎が生れ、音曲が生れ又
遊里
(
ゆうり
)
が生れたのである。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
去年こしらえた
中形
(
ちゅうがた
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着てこっち向きに坐り、
団扇
(
うちわ
)
を持った手を
膝
(
ひざ
)
の上に置いてその前に寝ている小供の顔を見るようにしていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ギクンと振向くと、そこには、つい今まで白シャツを着ていた畔柳博士が、黒っぽいたて
縞
(
じま
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、ニコニコしながら立っていた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
肉いろの、緑の、桃いろの、パラソルを畳んで、水際に
蹲
(
うずくま
)
った
浴衣
(
ゆかた
)
の女学生らしいのが二、三人、これらは私たちの
連
(
つれ
)
ではない。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
流れのなかをいくらかめだつたかい背の白
浴衣
(
ゆかた
)
地がまむかいにきて、視線があったとたん、ややあかっぽい頭髪がうつむいた。
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
やあ
汚
(
きたね
)
え
溝
(
どぶ
)
だ。
恐
(
おそろ
)
しい
石灰
(
いしばひ
)
だ。
酷
(
ひど
)
い
道
(
みち
)
だ。
三階
(
さんがい
)
があるぜ、
浴衣
(
ゆかた
)
ばかしの
土用干
(
どようぼし
)
か、
夜具
(
やぐ
)
の
裏
(
うら
)
が
眞赤
(
まつか
)
な、
何
(
なん
)
だ
棧橋
(
さんばし
)
が
突立
(
つツた
)
つてら。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
を着た早川医学士と、
丸髷
(
まるまげ
)
に結った時枝ヨシ子の二人が並んで撮った鮮明な写真まで入れて、次のような記事が長々と掲載されていた。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
娘は疊んだ
浴衣
(
ゆかた
)
を置いて、之れとお着かへになりませと言つた。そして暫時手持無沙汰にしてゐたが、また
淑
(
しとや
)
かに立ち去つた。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
私達は
取
(
とり
)
あえず入浴して
浴衣
(
ゆかた
)
に着かえた上、用意してあった遊船で宿の主人が案内に立ち、夕暮の九十九の島目がけて漕ぎ
出
(
い
)
でたのである。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
龍造寺主計は、やっこ
凧
(
だこ
)
のような、
糊
(
のり
)
のこわい佐吉の
浴衣
(
ゆかた
)
を、つんつるてんに着ていた。毛だらけの
脛
(
すね
)
を出して、笑っていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私は洋服
浴衣
(
ゆかた
)
に着換えて差向いにすわってみましたもんの、これがこの世の見納めやないか、ほんまに死ぬのんやないやろか
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
路
(
みち
)
のほとりに若い男女がいく組みとなく立ち話をしている。闇には、白地の
浴衣
(
ゆかた
)
がそこにもここにも見える。笑う声があっちこっちにした。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
いずれ僕もあと三十年もしたら
浴衣
(
ゆかた
)
がけで芸談一席と
洒落
(
しゃれ
)
る気になるかも知れないが、今のところはこの不細工な
割烹着
(
かっぽうぎ
)
を脱ぐつもりはない。
翻訳のむずかしさ
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
庸介は暑苦しいので、着て来た洋服をすぐに
浴衣
(
ゆかた
)
に替えた。そして久し振りの挨拶が一通りすむと、
絵団扇
(
えうちわ
)
で襲いかかる蚊を追い払いながら
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
其時、先程一寸名前の出た明智小五郎が、いつもの荒い
棒縞
(
ぼうじま
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、変に肩を振る歩き方で、窓の外を通りかかった。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それからまた、
浴衣
(
ゆかた
)
に
頬
(
ほお
)
かぶりの男はいいが、その頬かぶりの中からロイドめがねの光っているのも不思議な見ものである。
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
着かへたしぼりの
浴衣
(
ゆかた
)
のいろが美しく鏡のなかに浮き出た時、お葉は物かなしい瞳で、ぢつと鏡のなかを見守つたのである。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
竜之助は、それから沈吟して、盃をふくんでいると、庭先を向うの
椿
(
つばき
)
の大樹の下から、白地の
浴衣
(
ゆかた
)
がけで、ちらと姿を見せたものがあります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
薄い
浴衣
(
ゆかた
)
は円く、むっつりした女の身体の線をそのまゝ見せていた。時々肩と肩がふれた。森本はギョッとして肩をひいた。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
その貧しい店先へ買ひものに来てゐる女の人は、もう村の人かなぞのやうな型の
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、空色の
繻子
(
しゆす
)
の帯を結んでゐた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
すると、お杉はすぐ火も
点
(
つ
)
けずに戸棚の中をがたがたと掻き廻していてから、また手探りのまま黙って
浴衣
(
ゆかた
)
を一枚手渡した。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
一枚草履ばきで此川辺に下り立ち、
斧
(
おの
)
で氷を打割って真裸に飛び込んだ老翁の姿を想い見ると、畏敬の情は自然に起る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
揃
(
そろひ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に白い
縮
(
ちぢみ
)
の
股引
(
ももひき
)
を
穿
(
は
)
いて、何々浜と書いた大きい
渋団扇
(
しぶうちは
)
で
身体
(
からだ
)
をはたはたと叩いて居る姿が目に見える様である。
住吉祭
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
約束の日、修一が千日前の大阪劇場の前で待つてゐると、楢雄は
濡雑巾
(
ぬれざふきん
)
のやうな薄汚い
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、のそつとやつて来た。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
冷たい表情で無言のまま入って来た二人の看病夫が、彼を助け起し、囚衣を脱がせて新らしい
浴衣
(
ゆかた
)
の袖を彼の手に通した。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
○さて
押
(
おし
)
に
来
(
きた
)
りし男女まづ
普光寺
(
ふくわうじ
)
に入りて
衣服
(
いふく
)
を
脱了
(
ぬぎすて
)
、身に持たる物もみだりに
置棄
(
おきすて
)
、
婦人
(
ふじん
)
は
浴衣
(
ゆかた
)
に
細帯
(
ほそおび
)
まれにははだかもあり、男は皆
裸
(
はだか
)
なり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
でも、私が日本を出る時、私のスートケースの一個は全く
浴衣
(
ゆかた
)
のねまきと一
打
(
ダース
)
の
猿股
(
さるまた
)
とシャツによって埋められていた。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
“浴衣”の意味
《名詞》
浴衣 【ゆかた, よくい】
(ゆかた) 入浴後や夏季に着る木綿製の単の着物。(夏の季語)
(よくい) 入浴後に着る衣服。ゆかたやバスローブなど。
(出典:Wiktionary)
“浴衣”の解説
浴衣(ゆかた)は、和服(着物)の一種。素肌の上に着るものであり通常の和装では、襦袢などの下着を着用した上に長着を着る。、家庭でのくつろぎ着が起源である。
(出典:Wikipedia)
浴
常用漢字
小4
部首:⽔
10画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“浴衣”で始まる語句
浴衣地
浴衣姿
浴衣掛
浴衣形
浴衣一重
浴衣染帷子