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心地
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ここち
ふりがな文庫
“
心地
(
ここち
)” の例文
紫は
鳩
(
はと
)
の胸毛の如くに美しくも
色
(
いろ
)
褪
(
さ
)
めたるもの、また緑は流るる水の緑なるが如く、藍は藍
染
(
ぞ
)
めの布の裏地を見る
心地
(
ここち
)
にも
譬
(
たと
)
へんか。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ただ
無地
(
むじ
)
と模様のつながる中が、おのずから
暈
(
ぼか
)
されて、夜と昼との境のごとき
心地
(
ここち
)
である。女はもとより夜と昼との境をあるいている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
西郷隆盛
(
さいごうたかもり
)
のそばにいると
心地
(
ここち
)
よく
翁
(
おう
)
の
身体
(
からだ
)
から
後光
(
ごこう
)
でも出ているように人は感じ、
翁
(
おう
)
は近づくと
襟
(
えり
)
を正さねばならぬほど
威厳
(
いげん
)
があった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
久しぶりでこのクロを、じぶんひとりで、ほしいままにのってかけるのだが、いまは、その
翼
(
つばさ
)
の力さえなんだかおそい
心地
(
ここち
)
がする。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
カルルの
辻
(
つじ
)
なる『カッフェエ・ロリアン』に入りて見れば、おもひおもひの仮装色を争ひ、中に
雑
(
まじ
)
りし常の衣もはえある
心地
(
ここち
)
す。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
三河島田圃の方の空が明るくて、賑やかな物音のする
心地
(
ここち
)
がすると、あっちが吉原だと言った。昼間よりも、田圃みちを人が通っている。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ただ静かに貴嬢を顧みたまいて
貴嬢
(
きみ
)
の顔色の変われるに心づき、いかにしたまいし
心地
(
ここち
)
悪
(
あ
)
しくやおわすると甘ゆるように問いたまいたる
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
渠
(
かれ
)
は山に
倚
(
よ
)
り、水に臨み、清風を
担
(
にな
)
い、明月を
戴
(
いただ
)
き、了然たる一身、
蕭然
(
しょうぜん
)
たる四境、自然の清福を占領して、いと
心地
(
ここち
)
よげに見えたりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すわりずまいをただしている間、たくさんの注視の中にも、葉子は田川夫人の冷たいひとみの光を浴びているのを
心地
(
ここち
)
悪いほどに感じた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一
腔
(
こう
)
の
怨毒
(
えんどく
)
いずれに向かってか吐き尽くすべき
路
(
みち
)
を得ずば、自己——千々岩安彦が五尺の
躯
(
み
)
まず破れおわらんずる
心地
(
ここち
)
せるなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
五箇月の長い
冬籠
(
ふゆごもり
)
をしたものでなければ、
殆
(
ほと
)
んど想像も出来ないようなこの嬉しい
心地
(
ここち
)
は、やがて、私を小諸の家へ急がせた。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
よっちゃんは、いつも、いまごろ
昼寝
(
ひるね
)
をしますので、いい
心地
(
ここち
)
で
眠
(
ねむ
)
ってしまいました。「お
目
(
め
)
がさめましたら、
私
(
わたし
)
が
連
(
つ
)
れてゆきますから。」
時計とよっちゃん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この日さのみ歩みしというにはあらねど、暑かりしこととていたく疲れたるに、腹さえいささか痛む
心地
(
ここち
)
すれば、酒も得飲まで
睡
(
ねむ
)
りにつく。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この一番にて紳士の姿は
不知
(
いつか
)
見えずなりぬ。男たちは万歳を唱へけれども、女の中には
掌
(
たなぞこ
)
の玉を失へる
心地
(
ここち
)
したるも多かりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
女がいなくなったことがすでに自分には
生命
(
いのち
)
を断たれたと同じ
心地
(
ここち
)
がしているのに、自分が一面識のある人間とも知っていたのかと思うと
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その時、不思議にも、門の戸がすうっと
独
(
ひと
)
りでに開きました。王子は夢のような
心地
(
ここち
)
で、そこから飛び出してゆかれました。
お月様の唄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
(俊寛苦しそうに首をたれる)あなたは瓶子の首を取って立ちあがりざま、
心地
(
ここち
)
よげに一座を見回して叫びましたね。平氏の首を取るがいいと。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そして食事をすまして、サルンのストオブの側に
椅子
(
いす
)
を取って
煙草
(
たばこ
)
をふかしていると、幾日かの疲れが出たせいか、
心地
(
ここち
)
よく眠気が差して来た。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
学校の当局者は必ず私有の
心地
(
ここち
)
して、百事自然に質素勤倹の風を生じ、旧慣に比して大いに費用を減ずべきはむろん、あるいはこれを減ぜざれば
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
大コウモリの二十面相は、とどめをさすように、おそろしい計画を打ちあけて、さも
心地
(
ここち
)
よげにあざけり笑うのです。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
中の島未決監よりは、監房また
更
(
さら
)
に清潔にして、部屋というも恥かしからぬほどなり、ここに移れる妾は、ようよう
娑婆
(
しゃば
)
に近づきたらん
心地
(
ここち
)
もしつ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
地獄へまっさかさまに落ち込む
心地
(
ここち
)
で、「ああ、それにしても、一夜のうちに笑ったり泣いたり、なんてまあ
馬鹿
(
ばか
)
らしい身の上になったのだろう。」
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは
天然
(
てんねん
)
の
白砂
(
はくさ
)
をば
何
(
なに
)
かで
程
(
ほど
)
よく
固
(
かた
)
めたと
言
(
い
)
ったような、
踏
(
ふ
)
み
心地
(
ここち
)
で、
足触
(
あしざわ
)
りの
良
(
よ
)
さと
申
(
もう
)
したら
比類
(
たぐい
)
がありませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
けさは思いがけない「またへんですよ」の一言に血液のあたたかみもにわかに消えたような
心地
(
ここち
)
になってしまった。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
この時
千思万考
(
せんしばんこう
)
佳句を探るに、天の川の趣は
終
(
つい
)
に右三句に言ひ尽されて寸分の余地だもなき
心地
(
ここち
)
す。
乃
(
すなわ
)
ち筆を
抛
(
なげうっ
)
て
大息
(
たいそく
)
して曰く、
已
(
や
)
みなん已みなんと。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
路側
(
みちばた
)
のさまざまの商店やら
招牌
(
かんばん
)
やらが走馬燈のように眼の前を通るが、それがさまざまの美しい記憶を思い起こさせるので好い
心地
(
ここち
)
がするのであった。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その上この住居は、二人の婦人で保たれているので、いたるところ
心地
(
ここち
)
よいほどきれいであった。それが司教の許した唯一の贅沢だった。彼は言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
この死ぬような間の山節を、死ぬような
心地
(
ここち
)
で聞いていたものが、五人づれの客と、それを取巻くここの一座のほかに、まだ一人はあったのであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
路
(
みち
)
の
旁
(
かたわら
)
にこれを立て少しくもたれかかるようにしたるに、そのまま石とともにすっと空中に
昇
(
のぼ
)
り行く
心地
(
ここち
)
したり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ほのぼのとした生の感覚や、少年の日の夢想が、まだその部屋には残っているような
心地
(
ここち
)
もした。だが彼は
悶絶
(
もんぜつ
)
するばかりに身を
硬
(
こわ
)
ばらせて考えつづけた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
苦しさに堪えかねて、
暫時
(
しばし
)
路傍
(
みちのべ
)
に
蹲
(
うずく
)
まるほどに、夕風
肌膚
(
はだえ
)
を侵し、
地気
(
じき
)
骨に
徹
(
とお
)
りて、
心地
(
ここち
)
死ぬべう覚えしかば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
雪もよいの
闇空
(
やみぞら
)
から吹く新鮮な冷風が
心地
(
ここち
)
よく
鬢
(
びん
)
や顔に当たっても枯れ果てた心の重苦しさはなおらなかった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
妙音清調会衆は
皆
(
み
)
な天国に遊びし
心地
(
ここち
)
せしが主人公もまた多年の
嗜
(
たしな
)
みとて観世流の謡曲
羽衣
(
はごろも
)
を
謡
(
うた
)
い出しぬ。客の中には覚えず声に和して手拍子を取るもあり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
象は、長い鼻の先でフウフウと息をしながら、新吉の頭や
肩
(
かた
)
へさわってみました。新吉は生きた
心地
(
ここち
)
がしません。けれど象はそれっきりおとなしくなりました。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
しかし幸福の反映がまだ彼女のうちに残っていた。そして彼女はまたいっそう頼もしい
心地
(
ここち
)
で生活しだした。クリストフを得られないと絶望してはいなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
筆とりてひとかどのこと論ずる仲間ほど世の中の
義捐
(
ぎえん
)
などいふ事に
冷
(
ひやや
)
かなりと候ひし
嘲
(
あざけ
)
りは、私ひそかにわれらに
係
(
かか
)
はりなきやうの
心地
(
ここち
)
致しても聞きをり候ひき。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ドヴォルシャークの名を思い浮べて、静かに眼を閉じることによって、私は「
新世界交響曲
(
ニュー・ワールド・シンフォニー
)
」の第二楽章ラルゴーに出て来る有名な旋律を
活々
(
いきいき
)
と聴く
心地
(
ここち
)
がするのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
逃げよ思ても
手頸
(
てくび
)
握られてますし、光る物見たら気が
顛倒
(
てんとう
)
してしもて、眼エつぶってる間に、
咽喉
(
のど
)
でもどないぞしられるのんやないかと生きてる
心地
(
ここち
)
せえしませなんだけど
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼を睡らせるために唄う子守唄のように
滑
(
なめ
)
らかに、静かに、
心地
(
ここち
)
よく彼の耳に響いて来た。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
轟然たる物の
音響
(
ひびき
)
の中、頭を圧する幾層の
大廈
(
たいか
)
に挾まれた東京の大路を、
苛々
(
いらいら
)
した
心地
(
ここち
)
で人なだれに交つて歩いた事、両国近い
河岸
(
かし
)
の
割烹店
(
レストーラント
)
の窓から、目の下を飛ぶ電車、人車
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「うん。わしももう生きた
心地
(
ここち
)
がないのじゃ。……ドレ皆の衆に追いつかにゃ……」
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
来て見たところが、ソクラテスは、さも
心地
(
ここち
)
よさそうに安眠しておったのである。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
ところが、子どもたちのほうでは、そんなちっぽけな
生
(
い
)
き
物
(
もの
)
が、両手をひろげて、じぶんたちのほうへ、
駆
(
か
)
けてくるのを見ますと、生きた
心地
(
ここち
)
もないほど、びっくりしてしまいました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
アンドレイ、エヒミチはアッと
云
(
い
)
ったまま、
緑色
(
みどりいろ
)
の
大浪
(
おおなみ
)
が
頭
(
あたま
)
から
打被
(
うちかぶ
)
さったように
感
(
かん
)
じて、
寐台
(
ねだい
)
の
上
(
うえ
)
に
引
(
ひ
)
いて
行
(
ゆ
)
かれたような
心地
(
ここち
)
。
口
(
くち
)
の
中
(
うち
)
には
塩気
(
しおけ
)
を
覚
(
おぼ
)
えた、
大方
(
おおかた
)
歯
(
は
)
からの
出血
(
しゅっけつ
)
であろう。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
こゝにこの水流るゝがために、水を好む
野茨
(
のばら
)
も
心地
(
ここち
)
よく其の
涯
(
ほとり
)
に茂って、麦が
熟
(
う
)
れる頃は枝も
撓
(
たわ
)
に
芳
(
かんば
)
しい白い花を
被
(
かぶ
)
る。薄紫の
嫁菜
(
よめな
)
の花や、薄紅の
犬蓼
(
いぬたで
)
や、いろ/\の秋の草花も美しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
此処に
着
(
ちやく
)
して
初
(
はじ
)
めて社会に
出
(
い
)
でたるの
心地
(
ここち
)
せられ、其
愉快
(
ゆくわい
)
実
(
じつ
)
に言ふべからず。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
小屋には
牀
(
とこ
)
はない、土の上に
莚
(
むしろ
)
を敷いたばかりだが、その土は渓の方へ低くなっている。囲炉裡に足を入れていては、勢い頭は低い方に向く、頭の足より低いのは、一体
心地
(
ここち
)
のよいものではない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
恐ろしい予感が刻々迫って来て、こういう悲惨を聞く日があるのを予期しない事はなかったが、その日の朝刊の第一面の大活字を見た時は何ともいい知れない
悸
(
おのの
)
きが
身体中
(
からだじゅう
)
を走るような
心地
(
ここち
)
がした。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
氣が妙に
浮
(
うは
)
ついて來て、フワ/\と宙でも歩いてゐるかの
心地
(
ここち
)
。で車の響、人の顔、日光に反射する軒燈の硝子の
煌
(
きらめ
)
き、眼前にチラ/\する物の影物の音が都て自分とは遠く
隔
(
へだ
)
ツてゐるかと思はれる。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ながらふるほどは
憂
(
う
)
けれど行きめぐり今日はその世に逢ふ
心地
(
ここち
)
して
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
心
常用漢字
小2
部首:⼼
4画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“心地”で始まる語句
心地好
心地快
心地悪
心地惡
心地観経