“御機嫌:ごきげん” の例文
“御機嫌:ごきげん”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石8
島崎藤村7
樋口一葉7
泉鏡花6
紫式部5
“御機嫌:ごきげん”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.5%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.5%
歴史 > 伝記 > 個人伝記1.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
たゞいそぎにいそがれて、こゝにこゝろなき主從しうじうよりも、御機嫌ごきげんようとかどつて
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かえって美妙を尋ねる時は最中もなかの一と折も持って行かないと御機嫌ごきげんが悪いというような影口かげぐちがあった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
御機嫌ごきげんをそこねておりますようですからこんなことを申し上げます。風流の真似まねをいたし過ぎるかもしれません。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
勤めぎらいの平中は、宮中への出仕は怠りがちであったらしいが、本院の左大臣のもとへは始終御機嫌ごきげん伺いに行った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おや、ジムじいさん。いい御機嫌ごきげんだね。ああ分った。すてきな靴をはいて来たね、今日は……。どこで手に入れたんだい」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
へい、おくさま御機嫌ごきげんよう、へい、またとほりがかりにも、おとも御病人ごびやうにんをつけます。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「殿様はお酒をおあがりなさるとお気が荒いけれど、平生へいぜいは親切なお方だから、御機嫌ごきげんの取りにくいことはありませぬ」
そして御隠居さんの寝間の障子を細目にあけ、敷居のところに手をついて、毎朝の御機嫌ごきげんを伺ったものだという。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
に一はおことわりがつねのものなり、それをなんぞや駄々だヾさま御機嫌ごきげんとり/″\
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへ如才ぢよさいるまいけれど此後このごとも原田はらださんの御機嫌ごきげんいやうに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
イと課長さんのとこへも御機嫌ごきげん伺いにお出でお出でと口の酸ぱくなるほど言ッても強情張ッてお出ででなかッたもんだから
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「今日は御機嫌ごきげんが悪いようです。あれでも気が向くと、思いのほか愛嬌あいきょうのある女なんですが。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「島田先生も、大へん御機嫌ごきげんがよくて、常よりは御酒ごしゅも過ごしなされ、御料理もよくいただいて、さてその帰りでございます」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたし御機嫌ごきげんりやうがわるくて、いへのうちには不愉快ふゆくわいたゝまれないからのおあそ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れは大失敗おほしくじりだねとふでやの女房にようぼうおもしろづくに御機嫌ごきげんりぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうして、みだりに鞭をせ骨に加えて、旅客の御機嫌ごきげんを取るのは、女房を叱って佳賓まろうどをもてなすのたぐいだと思った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近頃ちかごろたいへんに御無沙汰ごぶさたいたしました。いつも御機嫌ごきげんなにより結構けっこうでございます……。』
もうはなしはやめまする、御機嫌ごきげんさわつたらばゆるしてくだされ、れかんで陽氣ようきにしませうかとへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
皇子さまは、だんだん、お話が面白くなつて来ましたので、御機嫌ごきげんが、直つてまゐりました。
岩を小くする (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
『や、御機嫌ごきげんよう、今日こんにちは。』院長ゐんちやうは六號室がうしつはひつてふた。『きみねむつてゐるのですか?』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『や、御機嫌ごきげんよう、今日こんにちは。』院長いんちょうは六号室ごうしつはいってうた。『きみねむっているのですか?』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
下人 はい、御機嫌ごきげんようござりませ。旦那だんなまッしゃりますか?
「それで先刻さっきから大変御機嫌ごきげんが悪いのよ。もっともあたしと兄さんと寄るときっと喧嘩けんかになるんですけれどもね。ことにこの事件このかた」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下人 正直しゃうぢきなことをはっしゃる。御機嫌ごきげんようござらっしゃりませ!
そしてその小さい腰かけにちょこんと腰をおろして、悠々と朝日あさひをふかしながら、雑然たる三つの実験台を等分に眺めながら、御機嫌ごきげんであった。
「平田さん、御機嫌ごきげんよろしゅう」と、小万とお梅とは口をそろえて声をかけた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
わたし申譯まをしわけのない御無沙汰ごぶさたしてりましたが貴君あなたもお母樣つかさん御機嫌ごきげんよくいらつしやりますかとへば
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そうか、それでも少しゃ気がかりだろう。結婚早々旦那様の御機嫌ごきげんを損じちゃ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この信念をいだいて世に処する道也は細君の御機嫌ごきげんばかり取ってはおれぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ホ、御機嫌ごきげんが直ったそうな」とお種はアヤして見せて、「これは好い児だ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの女は今夜僕の東京へ帰る事を知って、笑いながら御機嫌ごきげんようと云った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おやこつちのおとつゝあん、しばらくでがしたねどうも、御機嫌ごきげんよろしがすね」おつたはそら/″\しいほどつてかはつた調子てうしでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「もう御出掛。では御機嫌ごきげんよう。またちょくちょく遊びにいらっしゃい」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うしたかぜきまわしか、そのたいへん御機嫌ごきげんがよいらしく、老顔ろうがん微笑えみたたえてわれるのでした。
「ここでお別れとしよう——好い旅をして来て下さい——台湾の伯母さんの側へ行って、しっかりお手伝いをして来て下さい——頼みますぜ——そんなら、御機嫌ごきげんよう——」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人のためにというのは、人の言うがままにとか、欲するがままにといういわゆる卑俗の意味で、もっと手短かに述べれば人の御機嫌ごきげんを取ればというくらいの事に過ぎんのです。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、とのさまはいま二合にがふで、大分だいぶ御機嫌ごきげん
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これで今度の戦争に勝てるというえら御機嫌ごきげんだという話を
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
用事がございませんで手紙を差し上げますのもなれなれしくいたしすぎることになり、失礼かと存じまして、御機嫌ごきげんはどうかと始終気にいたしながらお尋ねも申し上げませんでした。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
文麻呂 (厳然たる姿勢をとる)御機嫌ごきげんよろしく、お父さん!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「その後は御機嫌ごきげんよろしゅう。あいかわらずお達者で……」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ヂョウジアァナは「御機嫌ごきげん如何?」と云つて、二言三言私の旅行のことや、天氣その他のおきま文句もんくを、どちらかと云ふとまだるい、ものうげな調子で附け加へた。
自分の国の敗戦も、自分の身体の栄養低下も、実感としては何も知らなかった子供たちは、カインの末裔まつえいの土地で、「イグアノドンの唄」をうたって、至極御機嫌ごきげんであった。
高笑たかわらひの美音びをん御機嫌ごきげんなほりし。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「やあ、犬の八公さんか、犬共の御機嫌ごきげんはどうですか。」
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
そして為朝ためとも御機嫌ごきげんをとるつもりで、きゅう新院しんいんねがって為朝ためとも蔵人くらんどというおもやくにとりてようといいました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「私はここで失礼します。そんならまあ御機嫌ごきげんよう」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お細工仰せつけられしは当春の初め、その後すでに半年をも過ぎたるに、いまだ献上いたさぬとはあまりの懈怠けたい、もはや猶予は相成らぬと、上様うえさま御機嫌ごきげんさんざんじゃぞ。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それでは御機嫌ごきげんよう」と久一さんが頭を下げる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はすっかり海にひきつけられたので、一、二時間後に列車が汽笛を鳴らしてふたたび進行しだしたときには、小舟に乗っていて、列車が通り行くのを見ながら「御機嫌ごきげんよう!」と叫んでやった。
かせたまふはなにならん、何事なにごとかの御打合おんうちあはせを御朋友おほういうもとへか、さらずば御母上おんはゝうへ御機嫌ごきげんうかゞひの御状ごじやう
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またお前たちが元気よく私に朝の挨拶あいさつをしてから、母上の写真の前に駈けて行って、「ママちゃん御機嫌ごきげんよう」と快活に叫ぶ瞬間ほど、私の心の底までぐざとえぐり通す瞬間はない。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「永々御世話になりました。残念ですが、どうも仕方がありません。もう当分御眼にかかる折もございますまいから、随分御機嫌ごきげんよう」と宜道に挨拶あいさつをした。宜道は気の毒そうであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故に黒田の殿様が江戸出府しゅっぷあるいは帰国の時に大阪を通行する時分には、先生は屹度きっと中ノ嶋なかのしまの筑前屋敷に伺候しこうして御機嫌ごきげんを伺うと云う常例であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その時は先生はよほど御機嫌ごきげんの良い時だったと見えて、「何、それに限らないさ、僕の所の仕事は、どれだって十年は進んでいるつもりさ」と、久しぶりで先生の気焔きえんを聞くことが出来た。
指導者としての寺田先生 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
例えば新聞をこしらえてみても、あまり下品な事は書かない方がよいと思いながら、すでに商売であれば販売の形勢から考え営業の成立するくらいには俗衆の御機嫌ごきげんを取らなければ立ち行かない。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金主の大場への御機嫌ごきげん伺いかとも思われた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ルピック夫人の御機嫌ごきげんを取るつもりである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
いやはや御機嫌ごきげんそこねてしもうた。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
いつもの通り「御機嫌ごきげんよう」をして、本の包みをまくらもとにおいて、帽子のぴかぴか光るひさしをつまんで寝たことだけはちゃんと覚えているのですが、それがどこへか見えなくなったのです。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「御隠居さま、どうかまあ御機嫌ごきげんよう」
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あれから御機嫌ごきげんはどうでしたか」
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「親分、御機嫌ごきげんよう。御機嫌よう」
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
御機嫌ごきげんよう、失禮しつれい。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あなた、その後は御機嫌ごきげんよう」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御意ぎょいかなわぬとなると瑣細ささいの事にまで眼を剥出むきだして御立腹遊ばす、言わば自由主義の圧制家という御方だから、哀れや属官の人々は御機嫌ごきげんの取様にまごついてウロウロする中に
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
二十年のむかし、御機嫌ごきげんよろしゅうと言葉じり力なく送られし時、跡ふりむきて今一言ひとことかわしたかりしを邪見に唇囓切かみしめ女々めめしからぬふりたがためにかよそお
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わかるゝとき一掬いつきくゆきつて、昌黎しやうれいあたへていはく、のもの潮州てうしう瘴霧しやうむさん、叔公をぢさん御機嫌ごきげんようと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ヘイ、御機嫌ごきげんよろしう。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕事しごとたのむのなにうしたとかうるさく這入込はいりこんではまへだれの半襟はんえりおびかはのと附屆つけとゞけをして御機嫌ごきげんつてはるけれど
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
中津川の会議が開かれて、長藩の主従が従来の方針を一変し、吉田松陰以来の航海遠略から破約攘夷へと大きく方向の転換を試み始めたのも、それから藩主の上京となって、公卿くげおとない朝廷の御機嫌ごきげんを伺い
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ではそのように奏上しておきましょう。昨夜も音楽のありました時に、御自身でお指図さしずをなさいましてあちこちとあなたをお捜させになったのですが、おいでにならなかったので、御機嫌ごきげんがよろしくありませんでした」
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
長々の御恩に預つたをぢさんをばさんには一目会つて段々の御礼を申上げなければ済まんのでありますけれど、仔細しさいあつて貫一はこのまま長の御暇おいとまを致しますから、随分お達者で御機嫌ごきげんよろしう……みいさん
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三月十三日の雷雨のはげしかった夜、みかどの御夢に先帝が清涼殿の階段きざはしの所へお立ちになって、非常に御機嫌ごきげんの悪い顔つきでおにらみになったので、帝がかしこまっておいでになると、先帝からはいろいろの仰せがあった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さて、浅田の狡智こうちにだまされた青砥左衛門尉藤綱は、その夜たいへんの御機嫌ごきげんで帰宅し、女房子供を一室に集めて、きょうこの父が滑川を渡りし時、火打袋をあけた途端に銭十一文を川に落し、国土の重宝永遠に川底に朽ちなん事の口惜しさに
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
尊翰そんかん拝見つかまつり候。小春の節に御座候ところ、御渾家ごこんかそろい遊ばされ、ますます御機嫌ごきげんよく渡らせられ、恭賀たてまつり候。くだって弊宅異儀なくまかりあり候間、はばかりながら御放念下されたく候。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっともこれは逆桟道さかさんどうたたりだと一概に断言する気でもない、さっきから案内の初さんの方で、だいぶ御機嫌ごきげんが好いので、相手の寛大な御情おなさけにつけ上って、奮発のたががしだいしだいにゆるんだのもたしかな事実である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
継母のもと十年ととせを送り、今は姑のそばにやがて一年の経験を積める従姉いとこの底意を、ことごとくはくみかねし千鶴子、三つに組みたる髪の端を白きリボンもて結わえつつ、浪子の顔さしのぞきて、声を低め、「このごろでも御機嫌ごきげんがわるくッて?」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
事にかこつけては薬屋へ行って、夫婦の御機嫌ごきげんをとり、折もあらば女と親しく口をいてみたいと、いろいろに浮身うきみをやつしているので、今ほかの連中はまた一局に夢中になる頃にも、金蔵のみは女の消え去った路地口を、じーっと見つめたまま立っています。
残暑きびしくそうろうところ、御地皆々さまには御機嫌ごきげんよく御暮し遊ばされ候由、目出度めでたくぞんじあげまいらせ候。ばば死去の節は、早速雪子御遣おつかわし下され、ありがたく存じ候。御蔭さまにて法事も無事に相済み、その節は多勢の客などいたし申し候。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「尊い王様、今こそ、あなたは私のもとのいゝ声をお聞きになれます。私は、おつ母さんを慰めましたら、あなたが私を放して下さつた御恩返しに、これから二三日おきにこのお庭へ来て、精一ぱいいゝ声で謡つてお聞きに入れませう。では、さやうなら、御機嫌ごきげんよろしう。」
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
右の通りの次第なれば、それ御前の御機嫌ごきげんがわるいといえば、台所のねずみまでひっそりとして、迅雷じんらい一声奥より響いて耳の太き下女手に持つ庖丁ほうちょう取り落とし、用ありて私宅へ来る属官などはまず裏口に回って今日きょうの天気予報を聞くくらいなりし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうかと思うと、たいへんな御機嫌ごきげんで、世の中に僕以上に頭脳の鋭敏な男は無いのだ、僕は稲妻のような男だ、僕には、なんでもわかっているのだ、悪魔だって僕をあざむく事が出来ない、僕がその気にさえなれば、どんな事だって出来る、どんな恐ろしい冒険にでも僕は必ず成功する
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして富岡先生は常に猛烈に常に富岡氏を圧服するに慣れている、その結果として富岡氏が希望し承認し或は飛びつきたい程に望んでいることでも、あの執拗ひねくれた焦熬いらいらしている富岡先生の御機嫌ごきげんに少しでもさわろうものなら直ぐ一撃のもとに破壊されてしまう。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
松山さんは、ことほか御機嫌ごきげんで、「村の祭が、取り持つえんで——」という、卑俗ひぞくな歌を、口ずさんでいましたが、ぼくの寝姿をみるなり、「オリムピックが取り持つ縁で、嬉しい秋ちゃんとの仲になり」と歌いかえてから、沢村さんと顔見合せ、ゲラゲラ笑いだしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
幼君えうくん御機嫌ごきげんうるはしく、「よくぞ心附こゝろづけたる。かねてよりおもはぬにはあらねど、べつしかるべきたはむれもなくてやみぬ。なんぢなんなりとも思附おもひつきあらばまをしてよ。」と打解うちとけてまをさるゝ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「殿様も一生おそばにおいてくださるとおっしゃるんだから、お前もその気でせいぜい御機嫌ごきげんを取り結んだらどうだえ。あたしゃ決してためにならないことは言わないよ。栄三郎さんのほうだって、殿様にお願いして丹下さまのお腰の物を渡してやったら、文句なしに手を切るだろうと思うんだがねえ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は瞑目めいもくしてばし胸裡きようりの激動を制しつ「——ト云うて、貴官あなたの方へは、彼の罪迹ざいせきを何か報告せねばならぬでせう——イヤ、其様さうせねば貴官あなた御機嫌ごきげんが悪いでせう——けれど実を言ふと、僕には彼の罪悪と云ふものを発見することが出来ないんですもの——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
この時計はずつと昔、支那しながまだ清国しんこくといつたころ北京ペキンの宮城の万寿山まんじゆさんの御殿にかけてあつたもので、その頃、皇帝よりも勢ひをもつた西太后せいたいごう(皇太后)の御機嫌ごきげんとりに、外国から贈つたものを、ニナール姫のお祖父様ぢいさまがいたゞいたものでした。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「まえに、場長さんからも、幾度となく御注意があったんや。きょうの事務所からの放送を、場長さんもお聞きになって、いい御機嫌ごきげんやった。きょうの放送は誰の発案かね、とおっしゃるさかいな、ひばりの発明や、とうちが申し上げたら、愉快な子ですなあ、ってな、あの笑わない場長さんが、にやにやっと笑い居った。」竹さんも
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
君の留守に大芝居サ。八王子の方の豪家という触込ふれこみで、取巻が多勢いて、兄さんの事業しごとを見に来た男がある。なにしろ、君、触込が触込だから、是方こっちでも、朝晩のように宿舎やどやへ詰めて、話は料理屋でする、見物には案内する、酒だ、芸妓げいしゃだ——そりゃあもう御機嫌ごきげんの取るだけ取ったと思い給え。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)