“幾干(いくら)” の例文
三ちゃん、お前さんの許(とこ)なんぞも、やっぱりこうかねえ、浜へはちっとでも放れているから、それでも幾干(いくら)か少なかろうねえ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内儀「御覧よ、こういう心だもの、実に私も此の娘(こ)には感心してしまったが、お前幾干(いくら)お金があったら此の暮が行立(ゆきた)つんだよ」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを聞いて、子福者のはらみ女は、そもそも何を考えるのが自然であるか。その子供を産む為には、苦しい中から幾干(いくら)かの費用を支出しなければならぬ。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
手渡しにして今夜にも必ず御出の有やうに其言傳(そのことづて)は斯々(かう/\)と幾干(いくら)か小遣(こづか)ひ握(にぎ)らせれば事に馴(なれ)たる吉六ゆゑ委細承知と請込(うけこみ)つゝ三河町へと急(いそ)ぎ行(ゆき)湯屋(ゆや)の二階で容子(ようす)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あの品物を幾干(いくら)で仕入れて幾干に売れば幾干儲(もう)かるというようなことに、ほとほと興味を有(も)てなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
如何(いく)ら嫁(よめ)いびりの胡麻白(ごましろ)婆(ばあ)さんでも此時(このとき)だけはのんびりして幾干(いくら)か善心(ぜんしん)に立(た)ちかへるだらうと思(おも)はれる。夏(なつ)も可(よ)し、清明(せいめい)の季節(きせつ)に高地(テーブルランド)の旦道(たんだう)を走(はし)る時(とき)など更(さら)に可(よ)し。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ソレでホテルに案内されて行(いっ)て見ると、絨氈(じゅうたん)が敷詰(しきつ)めてあるその絨氈はどんな物かと云うと、先(ま)ず日本で云えば余程の贅沢者(ぜいたくもの)が一寸(いっすん)四方幾干(いくら)と云(いっ)て金を出して買うて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
絵なぞ一目(め)とも見ようとはしないで、電話でもつて何号から何号まで総高幾干(いくら)を取除(とりの)けて置いて貰ひたいと、恰(ちやう)ど勧業債券でも買込むやうな取引をするのがあるさうだ。
と云ひ/\立つて幾干(いくら)かの金を渡せば、其をもつて門口に出で何やら諄〻(くど/\)押問答せし末此方(こなた)に来りて、拳骨で額を抑へ、何(どう)も済みませんでした、ありがたうござりまする
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「美人御苦労だったね、此れは少しだが簪(かんざし)でも買いなさい」と、一人が紙に幾干(いくら)か捻(ひね)って渡したのを受取ったまま、お光は何か本意(ほい)なさそうに跡見送って、ほっと溜息ついて
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今思ふと、手を触れた稚児の頭(つむり)も、女か、男か、不思議に其の感覚が残らぬ。気は涼しかつたが、暑さに、幾干(いくら)か茫(ぼう)としたものかも知れない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
泣いたのと暴れたので幾干(いくら)か胸がすくと共に、次第に疲れて来たので、いつか其処に臥(ね)てしまい、自分は蒼々(そうそう)たる大空を見上げていると、川瀬の音が淙々(そうそう)として聞える。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
序(つい)でに今一つ訊きますが、富士山の高さ程一円紙幣を積むと幾干(いくら)になるとお思ひですか。
宿屋てえもなアいやはや狡(ずる)いもんでしてね、三四日(か)御逗留を願(ねげ)えてえもんだから、あんな事を申しやす、私は此の辺を歩きます旅商人(たびあきんど)で、こゝらの船頭に幾干(いくら)も知った者がありやすから
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
只(たゞ)無々(ない/\)とばかり云ひをつて汝(おのれ)今に誤(あや)まるか辛目(からきめ)見せて呉んと云ながら一升桝(ます)へ波々(なみ/\)と一ぱい酌(つぎ)酒代(さかだい)は幾干(いくら)でも勘定するぞよく見てをれと冷酒(ひやざけ)の桝(ます)の角(すみ)より一息(いき)にのみ干(ほし)最(もう)一杯(ぱい)といひつゝ又々呑口(のみくち)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丑松は飲食(のみくひ)したものゝ外に幾干(いくら)かの茶代を置いて斯(こ)の饂飩屋を出た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
源太胸には苦慮(おもひ)あれども幾干(いくら)か此に慰められて、猪口把りさまに二三杯、後一杯を漫(ゆる)く飲んで、汝(きさま)も飲(や)れと与ふれば、お吉一口、つけて、置き、焼きかけの海苔畳み折つて、追付三子(さんこ)の来さうなもの
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
東京の下宿に居るより、故郷の海岸で自炊をした方が一夏だけも幾干(いくら)か蹴出(けだ)せようという苦しがりで、とても相談の成立ちっこはありません。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泣(な)いたのと暴(あば)れたので幾干(いくら)か胸(むね)がすくと共(とも)に、次第(しだい)に疲(つか)れて來(き)たので、いつか其處(そこ)に臥(ね)てしまひ、自分(じぶん)は蒼々(さう/\)たる大空(おほぞら)を見上(みあ)げて居(ゐ)ると、川瀬(かはせ)の音(おと)が淙々(そう/\)として聞(きこ)える。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「二圓と幾干(いくら)僕の方から君へ上げれば可いね。」とA君が言つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
幾干(いくら)か掴(つか)み出し身受の金にせんものと急度(きつと)思案(しあん)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
馬「それでも幾干(いくら)ばかりあります」
どうです、おかみさん、そういった奴ですからね、どうせ碌(ろく)なこッちゃ来やしません。いづれ幾干(いくら)か飲代(のみしろ)でございましょう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それゃそうだけど能く頼めば親方だって五円位貸してくれそうなものだ。これを御覧」とお源は空虚(からっぽ)の炭籠(すみとり)を見せて「炭だってこれだろう。今夜お米を買ったら幾干(いくら)も残りや仕ない。……」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ええ、俺(おら)が事か。兄さん、とけつかったな。聞馴(ききな)れねえ口を利きやあがる。幾干(いくら)で泊める。こう、旅籠は幾干だ。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに御宅は御人数(ごにんず)も多いんだから入用(いる)ことも入用サね。私(あたし)のとこなんか二人きりだから幾干(いくら)も入用(いりゃ)ア仕ない。それでも三銭五銭と計量炭(はかりずみ)を毎日のように買うんだからね、全くやりきれや仕ない
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
奥さんが手切(てぎれ)なり心着(こころづけ)なり下すった幾干(いくら)かの金子(かね)を資本(もとで)にして、初めは浅間の額堂裏へ、大弓場を出したそうです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
志村があの位い書けるなら自分も幾干(いくら)か出来るだろうと思ったのである。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
掏(す)られた、盗(と)られたッて、幾干(いくら)ばかり台所の小遣(いりよう)をごまかして来やあがったか知らねえけれど、汝(てめえ)がその面(つら)で、どうせなけなしの小遣だろう、落しっこはねえ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
志村(しむら)があの位(くら)ゐ書(か)けるなら自分(じぶん)も幾干(いくら)か出來(でき)るだらうと思(おも)つたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何、知れりゃ華族だ、無断に品物を取って来た、代価は幾干(いくら)だ、好(すき)な程払ってやるまでの事じゃあねえか。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「炭をですよ。炭をあのままにして置けばこれから幾干(いくら)でも取られます」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
時計だの、金だの、お前さんが嬉しがって手柄そうにここに並べて置くものは、こりゃ何だい! 私に言わせると吝(けち)さ、端(はした)のお鳥目でざら幾干(いくら)でもあるもんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然し晩になると大概校長さんが来ますからその時だけは幾干(いくら)か気嫌(きげん)が宜(え)えだが校長さんも感心に如何(いくら)なんと言われても逆からわないで温和(おとなしゅ)うしているもんだから何時(いつ)か老先生も少しは機嫌が可くなるだ……
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
此所(こゝ)を聞(き)けよ、二人(ふたり)の人(ひと)。……御身達(おみたち)が、言(い)ふ通(とほ)り、今(いま)新(あたら)しく遣直(やりなほ)せば、幾干(いくら)か勝(すぐ)れたものは出来(でき)やう、がな、其(それ)は唯(たゞ)前(まへ)のに較(くら)べて些(ち)と優(まさ)ると言(い)ふばかりぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
いいえ賭博(ばくち)は遣りません、賭博は感心に遣りませんが、それも何幾干(いくら)かありゃきっとはじめるんでさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……幾干(いくら)か小遣(こづかひ)があると見(み)えて、時々(とき/″\)前垂(まへだれ)の隙間(すきま)から、懷中(くわいちう)を覗込(のぞきこ)んで、ニヤリと遣(や)る。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
汽車に乗って、がたがた来て、一泊幾干(いくら)の浦島に取って見よ、この姫君さえ僭越(せんえつ)である。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本屋じゃ幾干(いくら)に買うか知れないけれど、差当(さしあた)り、その物理書というのを求めなさる、ね、それだけ此処(ここ)にあれば可(い)い訳(わけ)だ、と先ず言った訳(わけ)だ。先方(さき)の買直(かいね)がぎりぎりの処(ところ)なら買戻(かいもど)すとする。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
差配様(おおやさん)か、差配様は此家(ここ)の主人(あるじ)が駈落をしたから、後を追っかけて留守だ、と言ったら、苦った顔色(がんしょく)をしやがって、家賃は幾干(いくら)か知らんが、前(ぜん)にから、空いたら貸りたい、と思うておったんじゃ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さらぬだに持余すのにこの陥羂(おとしわな)に懸(かか)っては、後へも前(さき)へも行くのではないから、汗になって弱るのを見ると、会心の笑(えみ)を洩(も)らして滝太、おじさん押してやろう、幾干(いくら)かくんねえ、と遣ったのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御繁昌(ごはんじょう)の旦那(だんな)から、一杯おみきを遣わされ、と咽喉(のど)をごくごくさして、口を開けるで、さあ、飲まっせえ、と注(つ)ぎにかかる、と幾干(いくら)か差引くか、と念を推したげで、のう、ここらは確(たしか)でござりました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ふむ……投銭は謝絶する、見識じゃな、本は幾干(いくら)だ。」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも何です、珍しく幾干(いくら)か残して来たんですぜ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「幾干(いくら)か出せ、こりゃ恐ろしい。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんで幾干(いくら)やな。」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に幾干(いくら)ですか。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「幾干(いくら)ばかり。」
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「幾干(いくら)なの。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お幾干(いくら)。」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)