差上さしあ)” の例文
留守中るゐちうこれは失禮しつれいでした。さいませんので、女中ぢよちうばかり‥‥や、つまらんもの差上さしあげて恐縮きようしゆくしました』と花竦薑はならつきやう下目しためる。
左手ゆんでひじ鍵形かぎなりに曲げて、と目よりも高く差上さしあげた、たなそこに、細長い、青い、小さなびんあり、捧げて、俯向うつむいて、ひたい押当おしあ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白氏はくし晴天せいてんの雨の洒落しやれほどにはなくそろへども昨日さくじつ差上さしあそろ端書はがき十五まいもより風の枯木こぼくの吹けば飛びさうなるもののみ、何等なんら風情ふぜいをなすべくもそろはず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
出やうがはやいと魔劫まごふれないから何時いつかはこれをもつて居るものにわざはひするものじや、一先ひとまづ拙者が持歸もちかへつて三年たつのち貴君あなた差上さしあげることにたいものぢや
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
中々なか/\うまいね……エーわたくし書林ほんやから使つかひまゐりましたが、先生にこれは誠に少々せう/\でございますが差上さしあげてれろと、主人に斯様かうまうされまして、使つかひまかでました。
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そういってかれは、手のむちで人形を二、三たたいてみせました。それからむち差上さしあげていいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
其丈それだけなら申分まうしぶんは無かつたのだが、呉服屋夫婦は道珍和上にめあはせようと為た娘を、今度の朗然和上に差上さしあげて是非ぜひ岡崎御坊に住ませたい、最愛の娘を高僧かうそうに捧げると云ふ事が
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
私は世界の探偵の仕事を研究するために亜米利加アメリカからきた者ですが、貴下あなたのためにお祝の晩餐を差上さしあげたいと思いますから、今晩六時、日本ホテルまで御来車下さいますように。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「さあ、これから帰って一杯差上さしあげますで」とその老主人公がさっさとくびすをめぐらした。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「お客様に夜食を差上さしあげ度い、何が無くとも、先ず熱いものじゃ」
其晩そのばん小六ころく大晦日おほみそかつたうめはな御手玉おてだまたもとれて、これあにから差上さしあげますとわざ/\ことわつて、坂井さかゐ御孃おぢやうさんに贈物おくりものにした。そのかはかへりには、福引ふくびきあたつたちひさな裸人形はだかにんぎやうおなたもとれてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だから、おもはれたとほりにつて——のかはり貴方あなた差上さしあげたものを、御新造ごしんぞから頂戴ちやうだいしました。かありませんか。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ハテ恵比寿麦酒ゑびすびーる会社長くわいしやちやうで、日本にほん御用達ごようたしおこりは、蛭子ひるこかみが始めて神武天皇じんむてんのうへ戦争の時弓矢ゆみやさけ兵糧ひやうろう差上さしあげたのが、御用ごようつとめたのが恵比須えびすかみであるからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯う噂をして居たが、和上に帰依きえして居る信者しんじやなかに、きやう室町錦小路むろまちにしきのこうぢ老舗しにせの呉服屋夫婦がたいした法義者はふぎしやで、十七に成る容色きりやうの好い姉娘あねむすめ是非ぜひ道珍和上どうちんわじやう奥方おくがた差上さしあいと言出いひだした。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そこで甚兵衛はむちを高く差上さしあげ、大きな声でいいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
泣虫なきむしやすつべ。差上さしあげてまはした。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
三宝さんぽう利益りやく四方しほう大慶たいけい。太夫様にお祝儀を申上げ、われらとても心祝こころいわひに、此の鯉魚こいさかなに、祝うて一こん、心ばかりの粗酒そしゅ差上さしあげたう存じまする。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うもみなさん遠方ゑんぽうところ誠に有難ありがたぞんじました、本来ほんらいならば強飯おこはかおすしでもげなければならないんですが、御承知ごしようちとほりの貧乏葬式びんばふどむらひでげすから、恐入おそれいりましたがなに差上さしあげませぬ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
まだお茶代ちやだい差上さしあげないのに、相濟あひすまない、きよらかな菓子器くわしきなかは、ほこりのかゝらぬ蒸菓子むしぐわしであつた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中々なか/\大人たいじんは知らんところ御来臨ごらいりんのない事はぞんじてりましたが、一にても先生の御入来おいでがないと朋友ほういうまへじつ外聞ぐわいぶんわるく思ひます所から、御無礼ごぶれいかへりみず再度さいど書面しよめん差上さしあげましたが
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……おちなさりまし、晝間ひるま辨當箱べんたうばこいてります、あらつて一番ひとつれへ汲出くみだして差上さしあげませう。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて御料理番おれうりばん折入をりいつて、とやせむかくやせむと評議ひやうぎうへ一通いツつう獻立こんだて書附かきつけにして差上さしあげたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何事なにごとらず改革奉行かいかくぶぎやう命令めいれいそむさふらふまじく、いづれも杢殿もくどの手足てあしとなりて、相働あひはたらき、忠勤ちうきんはげ可申候まをすべくさふらふと、澁々しぶ/\血判けつぱんして差上さしあぐれば、御年役おんとしやく一應いちおう御覽ごらんうへ幸豐公ゆきとよぎみまゐらせたまへば、讀過どくくわ一番いちばん
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おつりを差上さしあげましやう。」
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)