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寛
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ゆる
ふりがな文庫
“
寛
(
ゆる
)” の例文
彼は
套靴
(
オオヴァシュウズ
)
をはいていなかったが、彼の靴は、並外れて
寛
(
ゆる
)
くしっかりと丈夫にできていて、しかも高雅なおもむきは欠かぬのであった。
衣裳戸棚
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
めぐりゆくものその
數
(
かず
)
いと多し、また臥して苛責をうくるものはその數いと少なきもその舌歎きによりて却つて
寛
(
ゆる
)
かりき 二五—二七
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そのまっくらな
島
(
しま
)
のまん中に高い高いやぐらが一つ組まれて、その上に一人の
寛
(
ゆる
)
い
服
(
ふく
)
を
着
(
き
)
て赤い
帽子
(
ぼうし
)
をかぶった男が立っていました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
いかなれば我は自ら待つことの
寛
(
ゆる
)
くして、人を責むることの酷なりしぞ。われ若し再び
瞽女
(
ごぜ
)
に逢はば唯だ地上に跪いてこれに謝せん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
続いて
入
(
い
)
るはアグラヴェン、
逞
(
たく
)
ましき腕の、
寛
(
ゆる
)
き袖を洩れて、
赭
(
あか
)
き
頸
(
くび
)
の、かたく衣の
襟
(
えり
)
に
括
(
くく
)
られて、色さえ変るほど肉づける男である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「未だ良人の許しを得ませんから今日は何のおもてなしを致す事も出來ませんが、この次は御招待をして
寛
(
ゆる
)
りとして頂きます」
巴里の旅窓より
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「
未
(
ま
)
だ
良人
(
をつと
)
の許しを得ませんから
今日
(
けふ
)
は何のおもてなしを致す事も出来ませんが、この次は
御招待
(
ごせうだい
)
をして
寛
(
ゆる
)
りとして頂きます」
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
第一種は
普通
(
ふつう
)
の股引にして、
膚
(
はだへ
)
に密接するもの、第二種は
裁
(
た
)
ち付け袴の類にして、全体甚
寛
(
ゆる
)
やかに、僅に足首の所に於て
固
(
かた
)
く
括
(
くく
)
られたるもの。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
たとへば貴ききはにあらぬ女の思ひのほかに心ざま
寛
(
ゆる
)
やかにて、我はと思ひあがりたるさまも無く、人に越えたる美しさを具へたらんが如し。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
寛
(
ゆる
)
すなとは此ことなりと
空嘯
(
そらうそぶ
)
いて居たりけるお文は
切齒
(
はがみ
)
をなしヱヽ
忌々
(
いま/\
)
しい段右衞門
未々
(
まだ/\
)
其後も慈恩寺村にて
能
(
いゝ
)
張半
(
ちやうはん
)
が出來たと云つて
夫
(
をつと
)
三五郎を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
白地に
藍
(
あい
)
の
縦縞
(
たてじま
)
の、
縮
(
ちぢみ
)
の
襯衣
(
しゃつ
)
を着て、襟のこはぜも見えそうに、
衣紋
(
えもん
)
を
寛
(
ゆる
)
く
紺絣
(
こんがすり
)
、二三度水へ入ったろう、色は薄く
地
(
じ
)
も透いたが、
糊沢山
(
のりだくさん
)
の折目高。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この事は、その家庭が
寛
(
ゆる
)
やかであって、誰でも父親の鼻息をうかがえば気安くいられるということを語っている。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
当
(
あて
)
たる如くに狭く堅く引締められ下の方に行くに従ひて次第に
寛
(
ゆる
)
く足元に至りて水の如くに流れ
渦巻
(
うずま
)
きたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
林檎の木よ、
發情期
(
はつじやうき
)
の壓迫で、身の内が
熱
(
ほて
)
つて重くなつた
爛醉
(
らんすゐ
)
、
情
(
なさけ
)
の
實
(
み
)
の
房
(
ふさ
)
、
粒
(
つぶ
)
の
熟
(
じゆく
)
した葡萄の
實
(
み
)
、
寛
(
ゆる
)
んだ帶の
金具
(
かなぐ
)
、花を飾つた酒樽、葡萄色の蜂の
飮水場
(
みづのみば
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
足には雪のやうに白い
馬皮
(
ばひ
)
製の長靴を穿いてゐる。ヤクツク人の着る
寛
(
ゆる
)
い外套が肩で襞を拵へて、耳まで隠してゐる。頭と頸とは大きなシヨオルで巻いてある。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
顔面の周囲に比較的多く余地のあるあの
寛
(
ゆる
)
やかな朗らかな調和の感じも、——
面長
(
おもなが
)
な推古仏には見られず
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
之を為すは、本より愛山君の所説を再評するが為にはあらざるも、若し余が信ずるところに於て君の教示を促すべきことあらば、請ふ自ら
寛
(
ゆる
)
うして、之を垂れよ。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
家光は東国の辺防を
寛
(
ゆる
)
うすべからずと云って許さず、よって板倉内膳正
重昌
(
しげまさ
)
を正使とし、目付
石谷
(
いしたに
)
十蔵貞清を副使と定めた。両使は直ちに家臣を率いて出府した。
島原の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「が、
手巾
(
ハンケチ
)
で
寛
(
ゆる
)
く銃口を包んで撃てば、それは緩和出来ると思う、その
手巾
(
ハンケチ
)
さえ隠す時間があれば——」
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
所が、
漸
(
ようや
)
く半身が奈落に入ると、胸が
寛
(
ゆる
)
やかになって、一時に溜り切った息を吐き出すだろうからね。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その
後
(
ご
)
こちらで
様子
(
ようす
)
を
窺
(
うかが
)
って
居
(
お
)
りますと、
人
(
ひと
)
によりては
随分
(
ずいぶん
)
寛
(
ゆる
)
やかな
取扱
(
とりあつか
)
いを
受
(
う
)
け、まるで
夢
(
ゆめ
)
のような、
呑気
(
のんき
)
らしい
生活
(
せいかつ
)
を
送
(
おく
)
っているものも
沢山
(
たくさん
)
見受
(
みう
)
けられますが
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その夫のノルプー・チェリンが石の牢の中に居られる前に、少し
寛
(
ゆる
)
やかな牢に入って居られた。その牢は牢番に少しの金を与えればそこへ逢いに行くことも出来る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
處へもツて來て、一日々々に
嬌態
(
しな
)
を見せられるやうになツて行くのだから耐らぬ。周三がお房を
詮議
(
せんぎ
)
する眼は一日々々に
寛
(
ゆる
)
くなツた。そして
放心
(
うつかり
)
其の事を忘れて了ツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
崇
(
たふと
)
く優くも、高く
麗
(
うるはし
)
くも、又は、
完
(
まつた
)
くも大いなる者在るを信ぜざらんと為るばかりに、
一度
(
ひとたび
)
は
目前
(
まのあたり
)
睹
(
み
)
るを得て、その倒懸の苦を
寛
(
ゆる
)
うせん、と心
爇
(
や
)
くが如く望みたりしを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
が、
小肥
(
こぶと
)
りの
躯
(
からだ
)
をつつむ
寛
(
ゆる
)
い黒衣の影を石階の
日溜
(
ひだま
)
りに落したまま、
暫
(
しば
)
しは黙然と耳を澄ます。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
先頃はつい、旧交の情にほだされ、思わず酒宴に心を
寛
(
ゆる
)
うして、同じ寝床で夢を共にしたりなどしたが、不覚や、あとになって見れば、予の寝房から軍の機密が失われている。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
周囲
(
まわり
)
の詰め物が、年代に連れて乾き
寛
(
ゆる
)
んで、このように音を立てるのではあるまいか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いつものんびりと
寛
(
ゆる
)
がせて、子供に
懐
(
なつ
)
かれるような優しいお顔を、たえず
長閑
(
のどか
)
そうに微笑させておられる、そういう吉之助様ではありましたが、たまたまお怒りになりますると
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実家が裕福なためもあったろう、職員間でもなにかと心が
寛
(
ゆる
)
く、交際も
凡
(
すべ
)
て明るくて、変に理窟めいたところが少しもなかった。どうして、文学などという暗い道の辿れる男ではない。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
法の
苛
(
から
)
きと
寛
(
ゆる
)
やかなるとは、ただ人民の徳不徳によりておのずから加減あるのみ。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
要するに鐘と
撞木
(
しゅもく
)
の
間
(
あい
)
が鳴るというところで、我々共の役目においてもその通り、強く罪人を扱うてかえって罪を大きくしてやることになり、或いは
寛
(
ゆる
)
やかに扱い過ぎてかえって増長を
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一日ソロモン秘事をアに問うに、わが鎖を
寛
(
ゆる
)
くし印環を還さば答うべしというた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかりといえども欧州諸国は、
寛
(
ゆる
)
めばすなわち両軍相攻め、迫ればすなわち
杖戟
(
じょうげき
)
相撞
(
あいつ
)
くの勢いにしてほとんど
立錐
(
りっすい
)
の閑地さえあらざるをもって、とうてい快活の運動を試みるあたわず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
背倫
(
はいりん
)
の行為とし、
唾棄
(
だき
)
すべき事として
秋毫
(
しゅうごう
)
寛
(
ゆる
)
すなき従来の道徳を、無理であり、
苛酷
(
かこく
)
であり、自然に
背
(
そむ
)
くものと感じ、本来男女の関係は全く自由なものであるという原始的事実に論拠して
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
五月に入りてより松枝氏も我も帰らんといふに
生憎
(
あいにく
)
に船便
稀
(
まれ
)
なりとてまた一日二日と打ち過ぎぬ。五月四日には宿舎を司令部の隣に移す。ここは石牀もありていと
寛
(
ゆる
)
やかに起き臥しすべし。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
荷馬車一台荷車一台と人が二三人
居
(
お
)
って何か荷物を薄暗い家の中へ
運
(
はこん
)
でいる、空にも星が一つ見えだした、
八幡
(
やわた
)
の森にも火が点じた すべて
寛
(
ゆる
)
やかな落着いた光景、間もなく鳥居の前へくる。
八幡の森
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
痛風で曲がつた指に、
寛
(
ゆる
)
い白麻の手袋を嵌めて出て来る。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
そのまっくらな島のまん中に高い高いやぐらが一つ組まれてその上に一人の
寛
(
ゆる
)
い服を着て赤い
帽子
(
ぼうし
)
をかぶった男が立っていました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
剛
(
こわ
)
く縮れた黒い八字髭と、厚いぎらぎらする眼鏡と、科学で冷たく堅くなった、そして静かな
寛
(
ゆる
)
やかな厭世観でみたされた男の外貌とをもって
トリスタン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
寛
(
ゆる
)
い衣紋を
辷
(
すべ
)
るよう、一枚小袖の黒繻子の、黒いに目立つ
襟白粉
(
えりおしろい
)
、薄いが顔にも化粧した……何の心ゆかしやら——よう似合うのに、朋輩が見たくても
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あるときは白き
髯
(
ひげ
)
の
寛
(
ゆる
)
き衣を
纏
(
まと
)
いて、長き
杖
(
つえ
)
の先に小さき
瓢
(
ひさご
)
を
括
(
くく
)
しつけながら行く巡礼姿も見える。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
爲
(
な
)
すにぞ千太郎は小夜衣の
伯父
(
をぢ
)
と云ふに心
寛
(
ゆる
)
み私し儀
不※
(
ふと
)
した事より貴殿の
姪
(
めひ
)
小夜衣に
馴染
(
なじみ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
だが子供のことであるから自分に免じて
寛
(
ゆる
)
してくれ、と武蔵が代って
詫
(
あやま
)
ると、無法者は
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう一家の生活を支えるための仕事は終えてしまって、それから後はおちついた
寛
(
ゆる
)
やかな気分で、読書や研究に従事し、あるいは訪客に接して談論したり、午後の
倦
(
う
)
んだ時分には
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
町の中には
険呑
(
けんのん
)
な空気が
立罩
(
たてこ
)
めて、ややもすれば
嫉刀
(
ねたば
)
が走るのに、こうして、朧月夜に、鴨川の水の音を聞いて、
勾配
(
こうばい
)
の
寛
(
ゆる
)
やかな三条の大橋を前に、花に匂う華頂山、霞に迷う
如意
(
にょい
)
ヶ岳
(
たけ
)
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
仏祖の教えに合わないにもせよ、これらの芸術は人類の偉大な宝である。仏祖の
行道
(
ぎょうどう
)
に違うにもせよ、この芸術を宗教的に礼拝した心には、豊かにして
寛
(
ゆる
)
やかな美しい信仰が認められる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
重ねて口を開かざらんかと
打按
(
うちあん
)
じつつも、彼は乱るる胸を
寛
(
ゆる
)
うせんが為に、
強
(
し
)
ひて目を放ちて海の
方
(
かた
)
を眺めたりしが、なほ得堪へずやありけん、又言はんとして顧れば、宮は
傍
(
かたはら
)
に在らずして
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
酒を酌んで君に与う君自ら
寛
(
ゆる
)
うせよ
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
両手を例の
寛
(
ゆる
)
やかなイギリス風のズボンの隠しに突込んだなり、耳を博士のほうへかしげて、よく人のやることだが、聴きながら口を開けている。
トリスタン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
菅子はもうそこに、袖を軽く坐っていたが、露の汗の悩ましげに、
朱鷺
(
とき
)
色縮緬の
上〆
(
うわじめ
)
の端を
寛
(
ゆる
)
めた、
辺
(
あたり
)
は昼顔の盛りのようで、
明
(
あかる
)
い部屋に
白々地
(
あからさま
)
な、
衣
(
きぬ
)
ばかりが
冷
(
すず
)
しい蔭。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寛
常用漢字
中学
部首:⼧
13画
“寛”を含む語句
寛衣
寛々
寛容
寛濶
寛大
寛裕
御寛
寛恕
寛文
菊池寛
打寛
寛達
寛永
寛政
俊寛
良寛
寛仮
璃寛
寛仁大度
俊寛僧都
...