いも)” の例文
かれ高木の入日賣の御子、額田ぬかだ大中おほなか日子ひこの命、次に大山守おほやまもりの命、次に伊奢いざの眞若の命、次にいも大原の郎女いらつめ、次に高目たかもくの郎女五柱。
万葉集の歌「うらうらと照れる春日に雲雀ひばりあがり心悲しも独し思へば」や「いもがため貝を拾ふと津の国の由良ゆらみさきにこの日暮しつ」
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
いもとわれといるさの山の山あららぎ」(手をとりふれぞや、かほまさるかにや)と美しい声で歌いながらはいって来た大将は
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
例えば、「いも」という語は「伊毛」とも「伊母」とも「以母」「移母」「異母」「伊慕」「伊茂」「伊暮」とも書いている。
国語音韻の変遷 (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
すなわちこの様に解釈してこそこの歌、すなわち、「いもすがりにきし山路やまぢどひくらしつ」
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「はい、久子でございます。めずらしいお方がただいま御門へ見えられました。卯木うつぎさまと仰っしゃるおいもさまが」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしくは思う男に贈っていたことで、是がおそらくは『万葉集』に、「わたつみのたまきの玉」もしくは「いもがためわが玉ひろふおきべなる玉よせもちこ」
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うつくしといもはやねやもけりともわれるべしとひとはなくに 〔巻十一・二三五五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
近く例を探らんに、春のやのいも背鏡せかゞみ、細君、美妙斎の胡蝶こてふ、紅葉の色懺悔いろざんげ及び鴎外の舞姫等皆な罪過あるなり。然れども皆な小説たるの体裁を失はず。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
このいもは高原をつたってチチカカ湖畔に出で、更に進んでクスコの谷まで来たが、ここで携えている金の楔がおのずから地中に没して見えなくなった。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
いも敏馬みぬめの崎をかへるさに、ひとりし見れば涙ぐましも。妻と一緒に来た事のある敏馬の崎を帰り途に一人で通つて見ると、涙ぐましい……(朗読)同じく。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
元義の歌にはいもまたは吾妹子わぎもこの語を用ゐる極めて多し。故に吾妹子先生の諢名あだなを負へりとぞ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かしくけではあられぬはるこほりイヤぼくこそが結局けつきよくなりいもといふものあぢしらねどあらばくまであいらしきか笑顔えがほゆたかにそでひかへてりやうさん昨夕ゆふべうれしきゆめたりお前様まへさま学校がくかう
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
卯の花は白く、鴨頭草つきくさは青く、かきつばたはうすい紫、あるひは青に紅の交りあつた色かとおもはれる。亡くなつたいもと二人で作つた山斎しまは黒くさへ見えるほど深い緑である。
或る国のこよみ (新字旧仮名) / 片山広子(著)
「……大鳥おおとりがひの山に、わが恋ふるいもはいますと人のいへば、岩根いわねさくみてなづみ来し、よけくもぞなき。現身うつそみとおもひしいもが、玉かぎるほのかにだにも見えぬ、思へば。」
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
臺所だいどころより富士ふじゆ。つゆ木槿むくげほのあかう、茅屋かややのあちこちくろなかに、狐火きつねびかとばかりともしびいろしづみて、池子いけごふもときぬたをりから、いもがりくらん遠畦とほあぜ在郷唄ざいがううたぼんぎてよりあはれささらにまされり。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おのがじし 人死にすらし いもに恋ひ 日にけに痩せぬ 人に知らえず
日本の美 (新字新仮名) / 中井正一(著)
大乱の初まりより十四年昔で、前表もこのように早手廻しではかえって間に合わぬ。「いもが門いでる河の瀬を早み、駒ぞつまずく今恋ふらしも」人にほれらるる人の乗る馬は躓く由(『俊頼口伝集』上)。
いもいえギテ見マシヲ、大和ナル大島ノニ、家モアラマシヲ。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
家に在らば いもかむ 草枕くさまくら 旅にこやせる 旅人たびとあはれ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
とがもなきいもをしかりしそののちのさびしきこころ夕雲をみる
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
ホノルルは何を祝ひて咲くやらんこの若き日のいものため
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
汝、女にあればとて、の謂ふやさしきいもにはあらじ!
石見いはみのや高角山の木の間より我が振る袖をいも見つらむか
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いもが間は床の瑪瑙めなうの水盤にべにばす咲きぬ七月七日しちにち
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いもがすむたばこの花の垣根かな 春鴎
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
此もいものする事だつたらしい。
万葉集研究 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
いもといふべかりける桐火鉢きりひばち
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
妻もあらずやいももあらずや
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
かへりていもにささやくに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
行きけるいもがふりかへり
ひとつのパラソル (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
いもにかそかに白粉おしろいにほふ
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
御手にそだちし姉といも
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
わがいもを 姉を送りし
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
いもを送りし姉娘
悲しめる心 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いも黄金こがねの杯を
春廼舎もまた矢継早やつぎばやに『小説神髄』(この頃『書生気質』と『小説神髄』とドッチが先きだろうという疑問が若い読書子間にあるらしいが、『神髄』はタシカ早稲田わせだの機関誌の『中央学術雑誌』に初め連載されたのが後に単行本となったので、『書生気質』以後であった。)から続いて『いもかがみ』を
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「水茎の岡の館にいもと我と寝てのあさげの霜の降りはも」という古今集こきんしゅうの歌と、どこか共通の情趣があり、没落した情緒への侘しい追懐を感じさせる。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
(子ましまさず。)また都夫良意富美が女、韓比賣からひめひて、生みませる御子、白髮しらがの命、次にいも若帶わかたらし比賣の命二柱。
人麿の歌に、「古にありけむ人も吾がごといもに恋ひつつ宿ねがてずけむ」(巻四・四九七)というのがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
恋しさに堪えられなくおなりになり「たらちねの親のかふこの繭ごもりいぶせくもあるかいもに逢はずて」
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
額田王ぬかたのおおきみに送って千載せんざいの後に物議の種を残した有名な恋歌「紫のにおへるいもを憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋めやも、」の一首は、帝の情熱的な性質を語って余蘊ようんがない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
いもあさよいそでを連ね、おもかわして過し得る人生であったならば、恋と名を附して考えなければならぬ場合もすでに少なく、まして恋しきという形容詞などは
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
同じく。いもが見て後も鳴かなむほとゝぎす、花橘はなたちばなつちに散らしつ。……俺を見ろ! 俺を見ろ、 畜生! おい! おい! おい俺を見ろ! 妹が見て後も鳴かなむ……。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
元義はいもといはでもあるべき歌に妹の語を濫用らんようせしと同じく丈夫ますらおといはでもあるべき歌に丈夫の語を濫用せり。かくの如き者即ち両面における元義の性情をあらはしたる者に外ならず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その長歌が「……かるの市にわが立ち聞けば、たまだすき畝傍うねびの山に鳴く鳥の声も聞えず。たまぼこの道行く人も、ひとりだに似るが行かねば、すべをなみ、いもが名呼びて袖ぞ振りつる」
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いもすがりにきし山路やまぢどひくらしつ
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
紫草むらさきのにほへるいもを憎くあらば人嬬ひとづまゆゑに吾恋ひめやも
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
やさしきいものありもせばやと、思ひはじめぬ。
雨の柚子ゆずとるとていもの姉かぶり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)