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凹
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くぼ
ふりがな文庫
“
凹
(
くぼ
)” の例文
道也先生は親指の
凹
(
くぼ
)
んで、
前緒
(
まえお
)
のゆるんだ下駄を立派な
沓脱
(
くつぬぎ
)
へ残して、ひょろ長い
糸瓜
(
へちま
)
のようなからだを下女の後ろから運んで行く。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今に、その傷が
禿
(
は
)
げて
凹
(
くぼ
)
んでいるが、
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
る時は、いつにても剃刀がひっかかって血が出る、そのたび、長吉のことを思い出す。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
即ち、そこに立ちどまって右手を望めば、北は高く、南はややなだらかに、二つの尾根の出会う
凹
(
くぼ
)
みが発見出来ることになっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
(い)
腰
(
こし
)
より足首迄の間に一行より五六行位の
横線
(
わうせん
)
を
畫
(
ゑが
)
きたるもの。是等の中には
單
(
たん
)
に
凹
(
くぼ
)
ましたるも有り亦朱にて
彩
(
いろど
)
りたるも有り。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
僕ハ彼女ヲ俯向キニサセ、
臀
(
しり
)
ノ孔マデ覗イテ見タガ、臀肉ガ左右ニ盛リ上ッテイル中間ノ
凹
(
くぼ
)
ミノトコロノ白サトイッタラナカッタ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
白髪
(
はくはつ
)
の支那服の、また牧畜家の、茶目の和製タゴオル老人が、西日の窓に向った私のぼんの
凹
(
くぼ
)
に、うまく例の揶揄と笑いとを射撃した。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
げに寒き夜かな、いう歯の根も合わぬがごとし。炎は赤くその顔を照らしぬ。
皺
(
しわ
)
の深さよ。
眼
(
まなこ
)
いたく
凹
(
くぼ
)
み、その光は濁りて
鈍
(
にぶ
)
し。
たき火
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
小野柄橋に出る迄の角の煙草や蜜柑を売つて居る店屋の前に、血が
凹
(
くぼ
)
い所に一杯溜つて居た。そしてそのあたり一面が血だらけであつた。
死線を越えて:02 太陽を射るもの
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
『著作堂一夕話』に出た富士の残雪、宝永山辺
凹
(
くぼ
)
かな処に人形を成す年は豊年で、見えぬ年は凶作、これを農男と名づくとあるに似居る。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そして其舟の様な剛質の各殻片は其
凹
(
くぼ
)
い内面を下にして枝端の果穂に附着してゐる、故に仮令雨が降つても其殻片へは水の溜る憂ひはない
風に飜へる梧桐の実
(新字旧仮名)
/
牧野富太郎
(著)
蓼が一面に生えて居た
凹
(
くぼ
)
地だつたので蓼の海であつて、その凹地を用水池にしたので小湖が出来たので、今も昔の名が残つて居るのである。
釣十二ヶ月
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
その瞬間に私とソックリの顔が、
頭髪
(
かみのけ
)
と鬚を
蓬々
(
ぼうぼう
)
とさして
凹
(
くぼ
)
んだ
瞳
(
め
)
をギラギラと輝やかしながら眼の前の
暗
(
やみ
)
の中に浮き出した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、ぼくには、さうした部分的な、しかも遽かに信じられないほど遠い時代の柱の痕をのこした石の
凹
(
くぼ
)
みに注意するよりも、その庭、全景の
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
それを我慢しながら、グッと押して見ると、美女の肩が、
靨
(
えくぼ
)
のように
凹
(
くぼ
)
んで行った。柔かいのだ。ゴムのように柔かいのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
朝の光が涼しい風と共に流れ込んで、髪乱れ、眼
凹
(
くぼ
)
み、
皮膚
(
はだ
)
の
沢
(
つや
)
なく
弛
(
たる
)
んだ智恵子の顔が、モウ一週間も其余も病んでゐたものの様に見えた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
見る陰もなく
瘠
(
や
)
せ衰えて、眼が落ち
凹
(
くぼ
)
んで……が、その大きな眼がほほえむと、
面長
(
おもなが
)
な
眼尻
(
めじり
)
に優しそうな
皺
(
しわ
)
を
湛
(
たた
)
えて、
眉
(
まゆ
)
だけは濃く張っている。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
近ごろ
伐
(
き
)
りひらかれた丘のいただきからは、池を越えて南の方に、その辺の岸をなしている丘の広い
凹
(
くぼ
)
みを通して気持のよい見はらしがあった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
或る者は
鋤
(
すき
)
を持つて
溝
(
みぞ
)
を掘り、或る者はそこから掘上げられた土を運んで、地続きになつてゐる
凹
(
くぼ
)
みの
水溜
(
みづたまり
)
を埋めてゐ
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
私の傍にベツドがあつて、その
此方
(
こつち
)
には、腰をかけると好い心持に
凹
(
くぼ
)
むクツシヨンの大きい低い椅子が置かれてあつた。
北京の一夜
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「よくお屋敷方の内神様で、塀の一箇所に
凹
(
くぼ
)
みを
拵
(
こしら
)
え、外から自由にお
詣
(
まい
)
りの出来るようにしたのを見掛けますが——」
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
先生の
丈
(
たけ
)
は日本人並であつたが、髮の毛が赤く縮れた上に、眼が深く
凹
(
くぼ
)
んでゐて、
如何
(
いか
)
にも神經質らしい人に見えた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
頭が
凹
(
くぼ
)
んだ。と又僕は何も帽子に怒つたつて仕方がない、と思つたので、凹んだところを底からゲンコツでつき上げた。と、もとの通りになほつた。
〔編輯余話〕
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
恐ろしく色の黒い傴僂で、眼が深く
凹
(
くぼ
)
み、獣のように突出た口をしている。全体が、真黒な牛に良く似た感じである。
牛人
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
子供達は食物不良のために病弱となる。薔薇色の健康色は失われて、窮乏の証たる青い頬と
凹
(
くぼ
)
んだ眼とがこれに代る。
人口論:03 第三篇 人口原理より生ずる害悪を除去する目的をもってかつて社会に提案または実施された種々の制度または方策について
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
小妻はまだ昼からの寝巻姿でひどく蒼ざめて、
凹
(
くぼ
)
んだ眼縁に暗い蔭を見せながら、腰をかがめるようにして出て来た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
上の方が小さく、下の方が大きければ、
下
(
しも
)
ぶくれの形になる。
凹
(
くぼ
)
んでいる部分は、彎曲率を
負
(
ふ
)
にとればよいのでその凹み方も、負の値の大小できまる。
茶碗の曲線:――茶道精進の或る友人に――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
けれどもその間に、牡牛は
後足
(
あとあし
)
で土をしきりに掘って、自分の足場がうまく
据
(
すわ
)
るように、土地に
凹
(
くぼ
)
みを
拵
(
こしら
)
えました。
熊
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
金糸のような
毳毛
(
うぶげ
)
が生えてい、両の隆起の真ン中には、柔らかな
翳
(
かげ
)
を持った溝が、悪魔の巣のように走り
凹
(
くぼ
)
んでいるのが、これ見よがしに眺められた。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
塀の裾で、溝の
凹
(
くぼ
)
みに浸りながら軽機関銃にしがみついていた男は、口の中で呟きながら、ジリジリジリと下った。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
眼の
凹
(
くぼ
)
い、鮫の歯の様な短い
胡麻塩
(
ごましお
)
髯
(
ひげ
)
の七右衛門爺さんが、
年増
(
としま
)
の婦人と共に甲斐〻〻しく立って
給仕
(
きゅうじ
)
をする。一椀をやっと食い終えて、すべり出る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
峠の
凹
(
くぼ
)
みから、
薙刀
(
なぎなた
)
なりに走っている白い
閃
(
ひらめ
)
きは、駒ヶ岳の雪のヒダであり、
仄紅
(
ほのあか
)
い木々の芽を
透
(
す
)
かして彼方に見える白い
斑
(
まだら
)
のものは、
御岳
(
おんたけ
)
の肌だった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
負惜
(
まけをし
)
みを
言
(
い
)
つたものゝ、
家来
(
けらい
)
どもと
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
はせて、
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いたも
道理
(
だうり
)
。
鐙
(
あぶみ
)
の
真中
(
まんなか
)
が
其
(
そ
)
のシツペイのために
凹
(
くぼ
)
んで
居
(
ゐ
)
た——と
言
(
い
)
ふのが
講釈
(
かうしやく
)
の
分
(
ぶん
)
である。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼女は痩せ面で、いかにも片意地らしい額の、
顳顬
(
こめかみ
)
のあたりはもう小皺だらけのくせに、
凹
(
くぼ
)
んだ眼の底には、或る不思議な情熱が燃えているようであった。
老嬢と猫
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
というのは、その畳の下の板にできている
凹
(
くぼ
)
みの中に、きらきら光る蛇のように、ダイヤモンドの首飾りがとぐろを巻いて横たわっていたからであります。
紫外線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
松浦川を渉りしをりのかたみとて、その川の畔に、姫が踏みしめし足かたの今もなほ石に
凹
(
くぼ
)
めるがありといふ。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ただ、今日ではその平地の面と同じ高さになっているが、当時は
凹
(
くぼ
)
い道であった。記念の塚を築くためにその両方の斜面は切り取られてしまったのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一人の女に信頼し、やさしい手のひらの上に、その両
膝
(
ひざ
)
の間の長衣の
凹
(
くぼ
)
みに、自分の額を休めたいとの欲求を、だれよりもいっそう持ってるものである……。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
少し振り仰いで顔を映すと
頬
(
ほお
)
のこけたのがさほどに目立たないけれども、
顎
(
あご
)
を引いて
下俯
(
したうつむ
)
きになると、口と耳との間には縦に大きな
溝
(
みぞ
)
のような
凹
(
くぼ
)
みができて
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そしてすぐその先に鉢形の
凹
(
くぼ
)
みがあって、その底に不幸な調馬師の死体が発見された。何か重い兇器でやられたらしく、頭蓋骨は粉砕され、腿にも傷があった。
白銀の失踪
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
讀者
(
どくしや
)
もし
世界地圖
(
せかいちず
)
を
開
(
ひら
)
かれたなら、アフリカの
西沿岸
(
にしえんがん
)
の
大
(
おほ
)
きな
凹
(
くぼ
)
みが、
大西洋
(
たいせいよう
)
を
隔
(
へだ
)
てた
對岸
(
たいがん
)
の
南
(
みなみ
)
アメリカ
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
安は埋めた古井戸の上をば奇麗に地ならしをしたが、
五月雨
(
さみだれ
)
、夕立、二百十
日
(
か
)
と、
大雨
(
たいう
)
の降る時々地面が一尺二尺も
凹
(
くぼ
)
むので、其の
後
(
ご
)
は縄を引いて人の
近
(
ちかづ
)
かぬよう。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
壁がまっすぐではなく、
凹
(
くぼ
)
んで
曲
(
まが
)
っていた。まん中に、横に長い机がおいてあり、腰掛もある。東助は、その腰掛にお尻をのせ、机に向ってほほづえをついている。
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
村の男は手ごろの河原石を持って岩の
凹
(
くぼ
)
みの上で、
剥
(
は
)
いだ
生樹
(
なまき
)
の皮をびしゃびしゃと
潰
(
つぶ
)
していた。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ゴルフで鍛えたロス氏が、一睡もしないために眼は
凹
(
くぼ
)
み頬はこけて、まるで別人のようになった。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
麥
(
むぎ
)
の
間
(
あひだ
)
へ
大豆
(
だいづ
)
を
蒔
(
ま
)
いた。
畦間
(
うねま
)
へ
淺
(
あさ
)
く
堀
(
ほり
)
のやうな
凹
(
くぼ
)
みを
拵
(
こしら
)
へてそこへぽろ/\と
種
(
たね
)
を
落
(
おと
)
して
行
(
ゆ
)
く。
勘次
(
かんじ
)
はぐい/\と
畦間
(
うねま
)
を
掘
(
ほ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
後
(
あと
)
からおつぎが
種
(
たね
)
を
落
(
おと
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
たかるだけで
刺
(
さ
)
しもせず喰ひつきもしない
奴
(
やつ
)
はいゝけれど、尺とりだけには用心せねばならない、足の
蹠
(
かゝと
)
から
項
(
ぼん
)
の
凹
(
くぼ
)
まで計られると三日の中に
死
(
し
)
なねばならないからなと
筑波ねのほとり
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
同じしたくのお捕り役が二、三人ずつ、もうぐるりと手がまわったらしく、屋敷をめぐって樹のかげ、地物の
凹
(
くぼ
)
みにぴったりと伏さっている——その数およそ二、三十人。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
困難の
度
(
ど
)
は
実
(
じつ
)
に水量と反比例をなし
来
(
きた
)
る
進
(
すす
)
むこと一里にして両岸の岩壁
屏風
(
びやうぶ
)
の
如
(
ごと
)
く、河は
激
(
げき
)
して
瀑布
(
ばくふ
)
となり、
其下
(
そのした
)
凹
(
くぼ
)
みて
深淵
(
しんえん
)
をなす、衆佇立
相盻
(
あひかへり
)
みて
愕然
(
がくぜん
)
一歩も
進
(
すす
)
むを得ず
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
伸ばした脚にゲエトルがゆるみ、処々にぶざまな
凹
(
くぼ
)
みを見せていた。生きているうちから蝿はたかるのか。宇治は口の中ににがく
唾
(
つば
)
がたまるのを意識しながら眼をそむけた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
とある家の戸口には、貸車の御者立ちて、あき箱あき籠あまた車の上に載せ、その上をば毛布もて覆ひ、背後に結び附けたる革行李の
凹
(
くぼ
)
くなるまで鐵の鎖を引き締め居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
凹
常用漢字
中学
部首:⼐
5画
“凹”を含む語句
凸凹
凹所
凹凸
凹間
凹地
凹字
凹路
笑凹
凹字形
凹面鏡
凹垂
落凹
凹入
凸凹路
平凹
中凹
茉莉凹巷処
起伏凹凸
陥凹
盆凹
...