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野面
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のづら
ふりがな文庫
“
野面
(
のづら
)” の例文
黄金色のえにしだが三角形の頭を突き出し、白い
苜蓿
(
うまごやし
)
が点々と
野面
(
のづら
)
を彩っています。……
鷓鴣
(
しゃこ
)
が飛び出す、鷹がゆるゆると輪を描く。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そうして彼が眼をあけた時には、おきたと三十郎との姿は見えず、
野面
(
のづら
)
の
芒
(
すすき
)
を風がそよがし、月が照っているばかりであった。
一枚絵の女
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ただ見れば、
平
(
ひら
)
たい
野面
(
のづら
)
にすぎないが、平たい野の中にもゆるい起伏がある。老尼の姿が、そのわずかに低い地の蔭になった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、お前様お手近じゃ、その
明
(
あかり
)
を
掻
(
か
)
き立ってもらいたい、暗いと
怪
(
け
)
しからぬ話じゃ、ここらから一番
野面
(
のづら
)
で
遣
(
やっ
)
つけよう。」
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
或る夜、庭の樹立がざわめいて、見ると、静かな雨が
野面
(
のづら
)
を、丘を、樹を
仄白
(
ほのじろ
)
く煙らせて、それらの上にふりそそいで居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
▼ もっと見る
野面
(
のづら
)
。塀外。海岸。川端。山中。宮前。貧家。座敷。洋館なぞで、これがどの狂言にでも使われます。だから床の間の掛物は年が年中朝日と鶴。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
わたしは子供の好むやうな春の景色がすきで、したがつて菜の花に黄色い蝶が飛んでゐるありきたりの
野面
(
のづら
)
が大好き。
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
行く先ざきの
野面
(
のづら
)
はまっ白な雪でおおわれて、空には日の光も見えなかった。いつも青白い
灰
(
はい
)
色の空であった。
畑
(
はた
)
をうつ
百姓
(
ひゃくしょう
)
のかげも見えなかった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
其の晩も二人は町や海岸を散歩して、帰つてからも遅くまで月光の
漾
(
たゞよ
)
ひ流れてゐる
野面
(
のづら
)
を眺めながら話してゐた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
北野
(
きたの
)
を
出
(
で
)
はづれると、
麥畑
(
むぎばたけ
)
の
青
(
あを
)
い
中
(
なか
)
に、
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
の
黄色
(
きいろ
)
いのと、
蓮華草
(
れんげさう
)
の
花
(
はな
)
の
紅
(
あか
)
いのとが、
野面
(
のづら
)
を
三色
(
みいろ
)
の
染
(
そ
)
め
分
(
わ
)
けにして
其
(
そ
)
の
美
(
うつく
)
しさは
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれなかつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
そして、さながら
前
(
まえ
)
ぶれのように
冷
(
つめ
)
たい、
湿
(
しめ
)
っぽい
風
(
かぜ
)
は、
野面
(
のづら
)
を
吹
(
ふ
)
くかわりに、
都会
(
とかい
)
の
上
(
うえ
)
を
襲
(
おそ
)
ったのです。
ぴかぴかする夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
野面
(
のづら
)
の夕風に
裾
(
すそ
)
や
袂
(
たもと
)
を
飜
(
ひるがえ
)
しながら、
団扇
(
うちわ
)
で彼方此方と蛍を追うところに
風情
(
ふぜい
)
があるのだと、何となく思い込んでいたのであったが、実際はそんなものではなく
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
寒い寒い風がひゅうひゅう
野面
(
のづら
)
をふく、かれあしはざわざわ鳴って雲が低くたれる、安場は平気である。かれは高い堤に立って胸一ぱいにはって高らかに歌う。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
こういう
楽
(
たの
)
しい、
平和
(
へいわ
)
な
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
り
迎
(
むか
)
えするうちに、
今年
(
ことし
)
は
子供
(
こども
)
がもう七つになりました。それはやはり
野面
(
のづら
)
にはぎやすすきの
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れた
秋
(
あき
)
の
半
(
なか
)
ばのことでした。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
政宗の幼い時は人に対して
物羞
(
ものはじ
)
をするような児で、
野面
(
のづら
)
や
大風
(
おおふう
)
な児では無かったために、これは柔弱で、好い大将になる人ではあるまいと思った者もあったというが
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
空風
(
からかぜ
)
の吹き
捲
(
まく
)
らない
野面
(
のづら
)
には春に似た
靄
(
もや
)
が遠く懸っていた。その間から落ちる薄い日影もおっとりと彼の
身体
(
からだ
)
を包んだ。彼は人もなく
路
(
みち
)
もない所へわざわざ迷い込んだ。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今日
(
きょう
)
は雲のゆきき早く空と地と一つになりしようにて森も林もおぼろにかすみ秋霧重く立ちこむる
野面
(
のづら
)
に立つ
案山子
(
かがし
)
の姿もあわれにいずこともなく響く
銃
(
つつ
)
の音沈みて聞こゆ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
云ふべからざる満足に充たされ、我が心は無味乾燥の学校を忘れ、彼、教師の魅力なき学課を忘れ、私ははるかな
野面
(
のづら
)
を見遣り、春の大地のおもしろき、幻術を観るに余念なかつた。
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
蜆を取りに
野面
(
のづら
)
に出た時の句で、蜆を取っていると手に一杯取れた。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
なんと豊満な
野面
(
のづら
)
の風景であろうと思いながら、感服して歩いた。
しゃもじ(杓子)
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
野面
(
のづら
)
は青黒く暮れかかっていた——背が粟立つほど、底寒かった。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
大風をつき抜く様な
鋭声
(
とごえ
)
が、
野面
(
のづら
)
に伝わる。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
黄金
(
こがね
)
の
唇
(
くち
)
もて
野面
(
のづら
)
を
掠
(
かす
)
むる
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「いや、お
前様
(
まんさま
)
お
手近
(
てちか
)
ぢや、
其
(
そ
)
の
明
(
あかり
)
を
掻立
(
かきた
)
つて
貰
(
もら
)
ひたい、
暗
(
くら
)
いと
怪
(
け
)
しからぬ
話
(
はなし
)
ぢや、
此処等
(
ここら
)
から一
番
(
ばん
)
野面
(
のづら
)
で
遣
(
やツ
)
つけやう。」
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一匹のけものと一人の女、走る走る東北へ!
三囲
(
みめぐり
)
から
牛御前
(
うしごぜん
)
、
長命寺
(
ちょうみょうじ
)
から
須崎
(
すざき
)
たんぼ! 一面の
野面
(
のづら
)
、諸所に林、人家乏しく、耕地も乏しい。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
強
(
し
)
いていえばそこらの草がにわかに声をしゃくッて泣いたような音、——でなければ
野面
(
のづら
)
をなぐりつけて行ッた一陣の風。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野面
(
のづら
)
いちめんに草いきれがたち、蒸風呂のなかにでもいるようで、
腹背
(
ふくはい
)
から、ひとりでに汗が流れ走る。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その単純な鳴りものの一生懸命な響きが、夜更けまで、
野面
(
のづら
)
を伝うて彼の窓へ伝はつて来た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
野面
(
のづら
)
の
御影
(
みかげ
)
に、乾かぬ露が降りて、いつまでも
湿
(
しっ
)
とりと
眺
(
なが
)
められる
径
(
わたし
)
二尺の、
縁
(
ふち
)
を
択
(
えら
)
んで、
鷺草
(
さぎそう
)
とも
菫
(
すみれ
)
とも片づかぬ花が、数を乏しく、行く春を
偸
(
ぬす
)
んで、ひそかに咲いている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
近くの
野面
(
のづら
)
をわたり、べきべきたる落雲を破って、天と地との広大無辺な間隙を一ぱいにふるわす、チビ公はだまってそれを聞いていると、体内の血が
躍々
(
やくやく
)
と
跳
(
おど
)
るような気がする。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
野面
(
のづら
)
を走る汽車を、後へ引き戻そうとしているようにすら思えてならなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
頃は夏の
最中
(
もなか
)
、月影
鮮
(
さ
)
やかなる夜であつた。僕は徳二郎の
後
(
あと
)
について
田甫
(
たんぼ
)
に出で、稻の香高き
畔路
(
あぜみち
)
を走つて川の
堤
(
つゝみ
)
に出た。堤は一段高く、此處に上れば廣々とした
野面
(
のづら
)
一面を見渡されるのである。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
春の
野面
(
のづら
)
からいろどりを失つてしまつてゐる。
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
然
(
しか
)
も此の霧の中に、
野面
(
のづら
)
を
蹴
(
け
)
かへす
蹄
(
ひづめ
)
の音、
九
(
ここの
)
ツならず
十
(
とお
)
ならず、沈んで、どうと、
恰
(
あたか
)
も激流
地
(
ち
)
の下より寄せ
来
(
く
)
る
気勢
(
けはい
)
。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とも急調子に聞えてきて、ようやく迫る緊迫感に、
野面
(
のづら
)
の風は不気味に
熄
(
や
)
み、雲間の
雁
(
かり
)
も行く影を
潜
(
ひそ
)
めてしまった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠い
野面
(
のづら
)
には霜に濡れた麦の切株、
玻璃鐘
(
はりしょう
)
の帽子をかぶせたサラドの促成畑、前庭に果樹園を持った変哲もない百姓小屋、いずれも
駱駝
(
らくだ
)
色に
煤
(
すす
)
ぼけ、鳥肌立ったる冬景色。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
遅い月が出たばかりで
野面
(
のづら
)
は
蒼茫
(
そうぼう
)
と光っている。微風に
鬢
(
びん
)
の毛を吹かせながら
急
(
せ
)
かず
焦心
(
あせ
)
らず歩いて行くものの心の中ではどうしたものかと、策略を巡らしているのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今まで赤々していた
夕陽
(
ゆうひ
)
がかげって、
野面
(
のづら
)
からは寒い風が吹き、方々の木立や、木立の蔭の人家、黄色い
懸稲
(
かけいね
)
、
黝
(
くろ
)
い畑などが、一様に
夕濛靄
(
ゆうもや
)
に
裹
(
つつ
)
まれて、一日
苦使
(
こきつか
)
われて疲れた
体
(
からだ
)
を
慵
(
ものう
)
げに
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
星どころか、
野面
(
のづら
)
は白く煙つて、空はただ無限に重かつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
追えども追わせず、
袂
(
たもと
)
をふり払って、一刀斎は、
野面
(
のづら
)
の空の白雲のように、いずこともなく独り去ってしまった。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
奢
(
おご
)
れ奢れ、やあ、棄置かれん。」と無遠慮に
喚
(
わめ
)
いてぬいと出た、この
野面
(
のづら
)
を誰とかする。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よしきりが群れて芒の中で、騒がしく啼き立て
羽搏
(
はばた
)
きしたが、一斉に立って晴れた空へ、碁石を
蒔
(
ま
)
いたように散って見せ、すぐに一、二町はなれた
野面
(
のづら
)
へ、また一斉に落ち込んだ。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ゆるい傾斜の下は、畑と
野面
(
のづら
)
へつづいている。東は
久我畷
(
くがなわて
)
、北は山岳、西は円明寺川まで
一眸
(
いちぼう
)
の戦場もいまは青い星のまたたきと、一色の闇のみであった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野の
涯
(
はて
)
に雲が浮かんでいる。真昼の日光に
裏漉
(
うらご
)
しされたのか絹のように輝いて見える。
野面
(
のづら
)
は寂しく人気なく、
落葉松
(
からまつ
)
、
山榛
(
やまはんのき
)
の混合林が諸所に飛び飛びに立っているのが老人の歯が抜けたようだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
空よく晴れて一点の雲もなく、風あたたかに
野面
(
のづら
)
を吹けり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
窓から眺めやると、凄まじい
雷光
(
いなびかり
)
が、雲を斬り、
野面
(
のづら
)
をはためき、それに眼をふさぐ瞬間——思わず手は耳へ行って、五体に
雷神
(
かみなり
)
のひびきを聞くのであった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
空よく晴れて一点の雲もなく、風あたたかに
野面
(
のづら
)
を吹けり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると月明の
野面
(
のづら
)
を黒々と一
彪
(
ぴょう
)
の軍馬が
殺奔
(
さっぽん
)
してくる。白き
戦袍
(
ひたたれ
)
に
白銀
(
しろがね
)
の
甲
(
よろい
)
は、趙雲にも覚えのある大将である。彼はわれをわすれて、こなたから手を振った。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも
拭
(
ぬぐ
)
つたやうに
野面
(
のづら
)
一面。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
野面
(
のづら
)
いちめん、草の葉の露は乾いて、
霽
(
は
)
れあがった霧に代って、馬煙や血けむりが立ちこめていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“野面”の解説
野面(のぶ)は、福岡県北九州市八幡西区の地名。野面一丁目から二丁目の町がある。住居表示実施済み。郵便番号は807-1262。
(出典:Wikipedia)
野
常用漢字
小2
部首:⾥
11画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“野”で始まる語句
野
野原
野暮
野分
野郎
野良
野路
野菜
野茨
野幇間