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遁
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に
ふりがな文庫
“
遁
(
に
)” の例文
が、
道行
(
みちゆき
)
にしろ、
喧嘩
(
けんくわ
)
にしろ、
其
(
そ
)
の
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
処
(
ところ
)
が、
遁
(
に
)
げるにも
忍
(
しの
)
んで
出
(
で
)
るにも、
背後
(
うしろ
)
に、
村
(
むら
)
、
里
(
さと
)
、
松並木
(
まつなみき
)
、
畷
(
なはて
)
も
家
(
いへ
)
も
有
(
あ
)
るのではない。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はたとえば、彼女が三人のごろつきの手から
遁
(
に
)
げられるように、であるとか、又はすぐ警察へ、とでも云うだろうと期待していた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
泳ぎの上手なMも少し気味悪そうに陸の方を向いていくらかでも浅い所まで
遁
(
に
)
げようとした位でした。私たちはいうまでもありません。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
すると子供らは、その荒いブリキ色の波のこっち側で、手をあげたり脚を
俥屋
(
くるまや
)
さんのやうにしたり、みんなちりぢりに
遁
(
に
)
げるのでした。
イギリス海岸
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
海尊
遁
(
に
)
げ去りて富士山に入る、食物無し、石の上に
飴
(
あめ
)
の如き物多し、之を取りて食してより又飢うること無く、三百年の久しき木の葉を
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
彼は、裏口へ
遁
(
に
)
げようとしては、不審の
面持
(
おももち
)
で耳を澄した。だが、彼の予期するような爆弾投下の爆音は、一向に、響いてこなかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうお云いなさると、さも私が難題でもいいだしたように聞こゆるけれども、なにもそう
遁
(
に
)
げなくッてもいいじゃないか? そんな事を
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
伊弉諾神
(
いざなぎのかみ
)
は、そのありさまをご覧になると、びっくりなすって、怖ろしさのあまりに、急いで
遁
(
に
)
げ出しておしまいになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
二人は
恟
(
びっく
)
り致しまして、
後
(
あと
)
へ
退
(
の
)
き、女は
慌
(
あわ
)
てゝ開き戸を締めて奥へ
行
(
ゆ
)
く。
彼
(
か
)
の春部という若侍も同じく慌てゝお馬場口の方へ
遁
(
に
)
げて行く。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
尤も、よく馴れたわれわれの手を
遁
(
に
)
げる遁げ方と時々屋前を通る職人や旅客などを逃避する逃げ方とではまるでにげ方が違う。
高原
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「チックヮラケー。」と
謡
(
うた
)
ひました。けれどもその声がいかにも力がなくて、例の
疱瘡
(
はうさう
)
の神も
遁
(
に
)
げ出すほどの勢がありません。
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
さて谷本博士は、『古事記』に、
品地別命
(
ほむじわけみこと
)
肥長比売
(
ひながひめ
)
と婚し、
窃
(
ひそ
)
かに伺えば、その
美人
(
おとめご
)
は
蛇
(
おろち
)
なり、すなわち
見
(
み
)
畏
(
かしこ
)
みて
遁
(
に
)
げたもう。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私
(
わたくし
)
はハツト
思
(
おも
)
つて
一時
(
いちじ
)
は
遁出
(
にげだ
)
さうとしたが、
今更
(
いまさら
)
遁
(
に
)
げたとて
何
(
なん
)
の
甲斐
(
かひ
)
があらう、もう
絶體絶命
(
ぜつたいぜつめい
)
と
覺悟
(
かくご
)
した
時
(
とき
)
、
猛狒
(
ゴリラ
)
はすでに
目前
(
もくぜん
)
に
切迫
(
せつぱく
)
した。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「さては寒行の
行者
(
ぎょうじゃ
)
修験者
(
しゅげんじゃ
)
が、霧の中を通って行くと見える。天の与えじゃ、
遁
(
に
)
がしてはならぬ。声を揃えて呼んで見ようぞ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女たちは仰天してきゃッと悲鳴を上げながら
遁
(
に
)
げ転んでゆく。新九郎は壁を後ろに飛び退いて、愛刀を素迅く横に抱えながら闇を見透した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だけど現に気違いでない僕には、到底あんなところにいられませんよ。だから今朝看護人の
隙
(
すき
)
を見て
遁
(
に
)
げだして来たんです、ざまあみやがれだ
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
婚礼の当夜、盃事がすむと同時に、花嫁は家を
遁
(
に
)
げ出て、森や神山(
御嶽
(
オタケ
)
と言う)や岩窟などに
匿
(
かく
)
れて、夜は姿も見せない。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
とうていその顔付から
遁
(
に
)
げ出すことのできない宿命じみた蒼白い顔付——それが春夜にもなお電燈の下に座っている——。
しゃりこうべ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
竟
(
つい
)
に
遁
(
に
)
がしてしまった、もっとも羚羊は跛足を引いていたから、たしかに
銃丸
(
たま
)
が、足へ当ったろうとは後で言っていたが。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
這箇
(
こつち
)
は気が気ぢやないところへ、もう
悪漆膠
(
わるしつこ
)
くて
耐
(
たま
)
らないから、病気だと
謂
(
い
)
つて内へ
遁
(
に
)
げて来りや、
直
(
すぐ
)
に
追懸
(
おつか
)
けて来て、
附絡
(
つきまと
)
つてゐるんでせう。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ところがね君、僕はあすこから
遁
(
に
)
げ出すのには、決して大した苦労はしなかったのだ。と云うのは、実は僕は、あの中に落っこちはしなかったのさ
空家の冒険
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
時には外にいても慌てて裏の方に
遁
(
に
)
げ込んで息もつかずに隠れていると、その声をききつけた祖母は腹立たしそうに出て行ってこう言うのだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
孔明は事実すでに死んでいるのであるが、司馬仲達は誤って孔明のなお生くると聞くや、
倉皇
(
そうこう
)
軍を収めて
遁
(
に
)
げ去った。
勢力の中心を議会に移すべし
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
若しかして叔母に、遊んで行けとでも言はれると、不承不承に三分か五分、遊ぶ真似をして直ぐ
遁
(
に
)
げて帰つたものだ。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
写真師は顔を真赤にして
遁
(
に
)
げ出した。そして
後
(
あと
)
で
緩
(
ゆつ
)
くり考へてみると、成程米国の副統領には顔は一つしか無かつた。
恰
(
ちやう
)
ど
屠牛所
(
とぎうしよ
)
の牛と同じやうに。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「そんだがお
内儀
(
かみ
)
さん、
其
(
その
)
女
(
あま
)
つ
子
(
こ
)
も
直
(
すぐ
)
遁
(
に
)
げて
來
(
き
)
つちめえあんしたね、
今
(
いま
)
ぢや
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つて
厭
(
や
)
だら
構
(
かま
)
あねえ
相
(
さう
)
でがすね」
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
清三は静かな廊下の曲角の蔭で不意に立止まると、手を伸ばして女の指を握った、康子の瞳が驚いて男を見た、清三は
遁
(
に
)
げるように女の前から去った。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それが
如何
(
どう
)
した? 此上五六日生延びてそれが
何
(
なに
)
になる? 味方は居ず、敵は
遁
(
に
)
げた、近くに往来はなしとすれば、これは
如何
(
どう
)
でも死ぬに
極
(
きま
)
っている。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
余り
小癪
(
こしやく
)
に触るつて言ふんで、何でも五六人
許
(
ばかり
)
で、
撲
(
なぐ
)
りに懸つた風なもんだが、巧にその下を
潜
(
くゞ
)
つて狐のやうに、ひよん/\
遁
(
に
)
げて行つて了つたさうだ。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
突当りは便所で行止りであるし、屋根裏へ
遁
(
に
)
げる梯子も見当らなかったので、又部屋へ戻ってガリガリと古戸棚を開けたりした。寝台の下へ潜ろうとした。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
「四月十一日。石清水行幸の節、将軍家御病気。
一橋
(
ひとつばし
)
様御名代のところ、
攘夷
(
じょうい
)
の節刀を賜わる段にてお
遁
(
に
)
げ。」
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一方勢至丸の父の仇定明は、ここを
遁
(
に
)
げてから隠居して罪を悔い念仏往生の望みを遂げ、その子孫は皆法然上人の余流を受けて浄土門に帰したということである。
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ぎゃっ、とおめいて、
遁
(
に
)
げ出す供男。雪之丞は、ひらりと
躱
(
かわ
)
すと、じっと身をそばめて、気配を
窺
(
うかが
)
った。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
春桃は、向高と自分とは天地も拝せず三々九度の盃も交さず、ただ故郷の兵火に追われて偶然
遁
(
に
)
げのびて来た道づれの男女が、とも棲みしているばかりだと主張していた。
春桃
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「しまった。しっぽの
端
(
さき
)
に大きな毛があったのを、まだ抜かなかったから、
遁
(
に
)
げて往ったのだ」
劉海石
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
機会を取り
遁
(
に
)
がしてしまったことは、極度の
嫉妬
(
しっと
)
に燃え、復讐心に駆られていた雄吾にとって、前歯で噛み
潰
(
つぶ
)
したいような経験だった。残念で、口惜しくて
堪
(
たま
)
らなかった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「さア。貴様はおとなしく
楼
(
うち
)
へ帰れ。な。親方は心配してら。大事な玉が
遁
(
に
)
げちやつたつて。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
管仲
(
かんちゅう
)
が戦場で
遁
(
に
)
げたからとてただちにこれを
卑怯
(
ひきょう
)
と批評し
臆病者
(
おくびょうもの
)
と判断し、しかして
勇敢
(
ゆうかん
)
なれと忠告した者があったならば、おそらく彼は腹の底で笑うのみであったろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「どうだ、凄い顔になっただろう。まるで昔の面影があるまい。おや、お前もう
遁
(
に
)
げるのか」
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
芳太郎はまだ庭で
鶏
(
とり
)
を
折打
(
せっちょう
)
していた。鶏は驚きと怖れに充血したような目をして、きょときょとと木蔭をそっちこッち
遁
(
に
)
げ廻った。木の下や塀の隅はもう薄暗くなっていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その日、弟が鬼にあたって、兄と彼女とが手を
携
(
たずさ
)
えて
遁
(
に
)
げた、弟は
納屋
(
なや
)
の蔭に退いて、その板塀に
凭
(
もた
)
れながら、
蒼
(
あお
)
く澄んだ空へ抜けるほどの声で一から五十まで数を
算
(
かぞ
)
え初めた。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
荷車が驚いて
道側
(
みちばた
)
の
草中
(
くさなか
)
に
避
(
よ
)
ける。
鶏
(
にわとり
)
が
刮々
(
くわっくわっ
)
叫んで
忙
(
あわ
)
てゝ
遁
(
に
)
げる。
小児
(
こども
)
の
肩
(
かた
)
を
捉
(
とら
)
え、女が眼を
円
(
まる
)
くして見送る。
囂々
(
ごうごう
)
、
機関
(
きかん
)
が
鳴
(
な
)
る。
弗々々
(
ふっふっふっ
)
、
屁
(
へ
)
の如く
放
(
ひ
)
り
散
(
ち
)
らすガソリンの
余煙
(
よえん
)
。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
危険が切迫したので雷門も戸を
閉
(
し
)
めてしまったから、いよいよ一方口になって、吾妻橋の方へ人は波を打って逃げ出し、一方は花川戸、馬道方面、一方は橋を渡って本所へと
遁
(
に
)
げて行く。
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
君の
禿頭
(
はげあたま
)
の手前に対しても
遁
(
に
)
げ口上は許さないと、強引に持ちかけられましてな
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして両足は不意に判断力を失った脳の無支配下で、顫える京子の体躯を今迄通りにやっと支え、
遁
(
に
)
げ込んで来た血の処置に困って無軌道にあがく心臓は、殆ど京子を卒倒させるばかりにした。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
新婦の王は
翁
(
しゅうと
)
が出ていって庭にはだれもいないと思ったので、自分でいって菊を摘んでいた。林児が走り出て来て戯れかかった。王は
遁
(
に
)
げようとした。林児は王を小脇に抱えて室の中へ入った。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「おい、小山田の
遁
(
に
)
げた
原因
(
わけ
)
が分ったぞ」と、声を
潜
(
ひそ
)
めてささやいた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
そんな背を向けて欺き
遁
(
に
)
げるような
質
(
たち
)
の悪い女ではないはずである。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と侍を打据えにかかると、うるさくなったものか侍は大手を拡げて闘意のないことを示したが、それも一瞬、いきなり
脱兎
(
だっと
)
のように
遁
(
に
)
げだした。足を狙って辰が杖を投げた。それが絡んで
摚
(
どう
)
と倒れた。
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
畢竟
(
ひっきょう
)
負借
(
まけおし
)
みの苦しい
遁
(
に
)
げ口上で取るに足らない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
遁
漢検準1級
部首:⾡
13画
“遁”を含む語句
遁出
見遁
遁亡
遁走曲
遁世
遁走
遁辞
火遁
夜遁
遁帰
八門遁甲
出家遁世
遁構
遁失
門遁甲
隠遁者
遁世者
遁口上
遁生菩提
隠遁所
...