)” の例文
にぶ砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽいかぜく五がつごろのこと、そのなかから、おびただしいしろ発生はっせいしました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かえりに、女中が妙な行燈あんどうに火を入れて、かどまで送って来たら、その行燈に白いが何匹もとんで来た。それがはなはだ、うつくしかった。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゴンクウルのげんを借りていへば、あたかも種紙たねがみおもての卵を産み落し行くが如く、筆にまかせて千差万様せんさばんようを描きしものにして
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鉄杖を突くと片足をはね、一本歯の足駄高々と、ヒラリと飛んだは金目垣、さながら一匹の巨大なだ。白々しらじらと姿を消してしまった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山の手ではからすうりの花が薄暮の垣根かきねに咲きそろっていつものの群れはいつものようにせわしくみつをせせっているのであった。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
群の燈火に飛び込むように、全主観の一切を投げ出そうとする、不断のいらだたしき心のあこがれ、実在のイデヤを追う熱情だった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
又人きながらにして鬼にするもあり。五八楚王そわうの宮人はをろちとなり、五九王含わうがんが母は六〇夜叉やしやとなり、六一呉生ごせいが妻はとなる。
わが身は蝙蝠こうもり、ああ、いやらしき毛の生えた鳥、歯のある、生きたかえるを食うという、このごろこれら魔性ましょう怪性けしょうのものを憎むことしきり。
喝采 (新字新仮名) / 太宰治(著)
網戸をおろした広い窓へ、白いの群れがりついてゐた。食事を終つた頃、突然、前庭の方で、自動車のエンジンの音がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
白いわたのように飛んで、室を目がけて、夕日に光る障子に、羽影をひらめかせる、風が死んで楊の葉はそよとも動かない。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
そうして、参木の思想はその二つの廻転する動力の間で、へたばったのようにのた打つのであった。彼は支那の工人には同情を持っていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あるの幼虫には背の前部に左右二つの大きないちじるしいじゃの斑紋があるが、この虫は敵に遇うと、たちまち体の前部をちぢめて太くする。
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
こうしてこしらえた黄いろな糸が小屋に半分ばかりたまったころ、外に置いた繭からは、大きな白いがぽろぽろぽろぽろ飛びだしはじめました。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ざっざっと、あの続いた渦が、一ツずつ数万のの群ったような、一人の人の形になって、縦隊一列に入って来ました。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きりのようにえる、またワッとのようにい立つ、それでふしぎなじんになっていて、こっちはけむにまかれたようです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蝶々の類に属するもの、うんか、かまきり、かなぶんぶんなどはおときの顔にぶつかったり、髪にとまる事もあった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
まゆを破って出たのように、その控え目な、内気な態度を脱却して、多勢おおぜいの若い書生たちの出入りする家で、天晴あっぱれ地歩を占めた夫人になりおおせた。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私には、こんりんざい、なんかを部屋に入れてやる気はない。私は、彼女の撒きちらす鱗粉りんぷんが大きらいなのだ。
非情な男 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
けれども、こんな海苔巻のようなものが夏になると、あの透明とうめいはねをしたになるのかと想像すると、なんだか可愛かわいらしい気もしないことはありません。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
村川は、美しいの羽のように、もろい傷つきやすい心を持っている倭文子をいだいて、眼前に迫る難関を突破することが、どんなに難しいかを考えた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だが、この葉櫻の季節が、お銀の本當のかせぎでした。お銀の魅力にあこがれた若い男達は、灯に寄る夏ののやうに、水神のお銀の茶屋に覗ひ寄るのです。
春慶塗しゅんけいぬりぜんの上に来るを追いながらお久があおいでいてくれる団扇うちわの風を浴衣に受けて、要は吸い物わんの中に浮いているほのかな早松茸さまつだけの匂いを嗅いだ。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私と連れ立った彼女の兄たちと妹とは、孤独の客のいるのも忘れて、のように光と父母とを目がけて駆け込んだ。私は少し当惑してはいるのをためらった。
フランセスの顔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
小僧っ子と浮浪少年との関係は、ちょうどと青虫との関係である。羽がはえて空中を飛び回る代物しろものである。
月のさした窓の外に蟋蟀こおろぎの鳴く声が聞える。の大なのがうちの内へ舞込んで来て、暗い洋燈ランプ周囲まわりを飛んでおりましたが、やがて炉辺へ落ちて羽をばたばたさせる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで大國主の命が出雲いずも御大みほ御埼みさきにおいでになつた時に、なみうえ蔓芋つるいものさやをつて船にしての皮をそつくりいで著物きものにしてつて來る神樣があります。
はたはたと舞いよって来たちいさなが、しばらく燭台しょくだいのまわりで飛び迷っていたと思うと、眼にみえぬ手ではたかれでもしたようにふいと硯海けんかいに湛えた墨の上へおち
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
見ると、舞台の正面のひさしのすぐ下に、大きな、あか土色のがぴったりはりついていました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
日が落ちたと見えて、窓の外が蒼然そうぜんと暗くなった。夕闇がもたれかかった障子にが一匹音を立てた。気がうっして、背筋が固くなったような気がする。旅川が話し出した。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
の化物みたいな形の噴射艇の翼の下をくぐって、飛行服に身をかためた一人の男があらわれた。それは帆村荘六だった。帆村は腰をのばして、噴射艇をほれぼれと見上げる。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
じっと見ると、夏の夜の驚くほどに大きな白いが電燈のひもにへばりついているのだ。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
蚯蚓みみず蜈蚣むかでになったと載せ、『和漢三才図会』に、蛇海に入って石距てながだこに化すとあり、播州でスクチてふ魚海豹あざらしに化すというなど変な説だが、うじが蠅、さなぎとなるなどより推して
我国の俚言りげんてふをべつたうといふ、渋海川のほとりにてはさかべつたうといふ。蝶はもろ/\むし羽化うくわする所也、大なるを蝶といひ、小なるをといふ。(本艸)其種類そのしゆるゐはなはだおほし。
或る時、夜ふけになつてから、ランプの傍へが一疋慕ひ寄つた。養蚕の盛んなこの地方では、この頃になつて、この虫がよく飛んで居たものである。彼はこの虫を最も嫌つて居た。
てんでにかき分け、ふみ分けて進むと、その中からいろんなてふはち蜻蛉とんぼが飛び出し、また足下から青蜥蜴あをとかげが飛び出して来て、みんなをびつくりさせ、大さわぎをさせたりします。
原つぱの子供会 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
お午の夜店というのは午の日ごとに、道頓堀の朝日座の角から千日前の金刀比羅こんぴら通りまでの南北の筋に出る夜店で、私はふたたび夜ののようにこの世界にあこがれてしまったのです。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
楼上ろうじょうが一二匹シャンデリヤのんだ灯のまわりをかすかな淋しい悩みのような羽音をたてて飛びまわった。その真下のテーブルで二人は静かに茶を飲みながら、復一は反対に訊いた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まゆに籠っていたさなぎかわり、不随意に見えた世界を破って、随意自在の世界に出現する。考えてみればこの急激な変貌のおそろしさがよく分る。受身であった過去は既に破り棄てられた。
夜すがら両個ふたりの運星おほひし常闇とこやみの雲も晴れんとすらん、隠約ほのぼの隙洩すきもあけぼのの影は、玉の長く座に入りて、光薄るる燈火ともしびもとに並べるままの茶碗の一箇ひとつに、ちひさ有りて、落ちて浮べり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あのあわれな生きものである夜のでさえも、朝がくれば静かな片隅を探し、小さくなって、できれば消えてしまいたいと思いながら、それができないことを不幸と感じているではないか。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
驚かされたは手燭のまわりをきりきりとまわって長いまゆをひそめさせる。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
庭の内では、の如く花の様な大小の雪片せっぺんが、んだり、ねたり、くるうたり、筋斗翻とんぼがえりをしたり、ダンスをする様にくるりとまわったり、面白そうにふざけ散らして、身軽みがる気軽きがるに舞うて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
パストゥールにその病気の研究を依嘱いしょくしたので、彼はそれから五年間いろいろな苦心を重ねてこれをしらべた末に、ついに蚕から出るのからだのなかに病原となる微生物のあるのを見つけ出し
ルイ・パストゥール (新字新仮名) / 石原純(著)
現世げんせ人達ひとたちかられば、というものはなにやら薄気味うすきみのわるい、なにやら縁起えんぎでもないものにおもわれるでございましょうが、わたくしどもかられば、それは一ぴきまゆやぶってるのにもるいした
とうに集まり、人は電光に集まる。輝やくものは天下をく。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ダダイズムの集会の予告板とがたわむれていた。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
小さなの幼虫なんだね。
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
中をよぎれる白きのあり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、さうして人間の女。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
のようにうすぐろ
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)