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蕊
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しべ
ふりがな文庫
“
蕊
(
しべ
)” の例文
……今は槍もある、ナイトでもある、然しクララの前に跪く機会はもうあるまい。ある時は野へ出て
蒲公英
(
たんぽぽ
)
の
蕊
(
しべ
)
を吹きくらをした。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは後で見ると、悉く下の大広間の
格天井
(
ごうてんじょう
)
に描かれた、
天人
(
てんにん
)
の眼や、
蝶々
(
ちょうちょう
)
の羽の紋や、
牡丹
(
ぼたん
)
の
蕊
(
しべ
)
などであったということです。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
花を
挘
(
むし
)
るも同じ事よ、
花片
(
はなびら
)
と
蕊
(
しべ
)
と、ばらばらに分れるばかりだ。あとは手箱に
蔵
(
しま
)
っておこう。——殺せ。(騎士、槍を取直す。)
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かがり火も張合いがなく、まもなく火勢をもとの
蕊
(
しべ
)
立ちの形に引伸し
焔
(
ほのお
)
の末だけ、とよとよとよとよと呟かしている。神楽の音が聞えて来る。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
杉、松、檜、樟などが繁茂している緑一色の中に、ところどころ、椿のあざやかな赤が黄色い
蕊
(
しべ
)
をのぞかせて、眼にしむ濃さで、
点綴
(
てんてつ
)
されている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
▼ もっと見る
あたかも花の
蕊
(
しべ
)
から蕊へと深く分け入つて蜜を探した蜂のやうな、あのゲエテの心が求めたものは、實にこの『水銀』であつたらうかと想像される。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
花は美しくても花であって、またよく乱れた
蕊
(
しべ
)
なども盛りの花といっしょにあったりなどするものであるが、人の美貌はそんなものではないのである。
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その中にある
蕊
(
しべ
)
を取ってそれを掌の上に並べ置き、手の脈所のところをトントンと叩くとその小さな蕊が縦に立って
掌
(
てのひら
)
にひっついて居るのが面白いので
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
その花茎が伸び立って薄くれないの花びらが黄の
蕊
(
しべ
)
を現して開いた時、俄に秋めいて涼しくなるとその花のもろく衰えてゆく時、秋海棠はいつの時もいい。
花
(新字新仮名)
/
窪田空穂
(著)
「あの花粉——っていうの魅惑的ね、そう思わない……露に濡れた花粉だの
蕊
(
しべ
)
だのって、じーっと見てると、こう、なんだか身ぶるいしたくなるわ……ね」
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼の空想の魔杖の一振りに、真白な
百合
(
ゆり
)
のような大きな花がみるみる
蕾
(
つぼみ
)
の弱々しさから日輪のようにかがやかしく開いた。清逸は香りの高い
蕊
(
しべ
)
の中に顔を埋めてみた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
伸子、素子、磯崎夫妻の一行四人は、白い服の小さい女の児を
蕊
(
しべ
)
のようにかこんでモンパルナス通までタクシーで来て、エドワード六世ホテルの部屋へはいって行った。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
直角に
厳
(
いかつ
)
い肩を聳やかしている、その胸毛の底に白い
蕊
(
しべ
)
を点じたのは雪である、アルプス一帯に雪の降るのは、それは早いもので、九月の末には、白くなるほどつもらぬまでも
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
……犬のように這わせたり、魚のように
裸体
(
はだか
)
にしたり、牡丹の花弁を一枚一枚、はいでやったあげくに太い
蕊
(
しべ
)
を、むき出しにするように男の衣裳を、一枚一枚はいでもやったよ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何があんな花弁を作り、何があんな
蕊
(
しべ
)
を作っているのか、俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。
桜の樹の下には
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
蜂はその時もう花粉にまみれながら、
蕊
(
しべ
)
の下にひそんでいる蜜へ
嘴
(
くちばし
)
を落していた。
女
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
紅葵は鮮紅で、
蕊
(
しべ
)
が黄で、上向きがちに目を仰いで咲く。根から枝が別れて、そろって延びて、花は段々を成して幾つともなく前に横に上に下につく。多蘭泊の紅葵は高い高い脊丈である。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それは幾重にも幾重にも重つた莟の赤い
葩
(
はなびら
)
を、白く、小さく、深く
蕊
(
しべ
)
まで貫いて
穿
(
うが
)
たれてあつた、言ふまでもなくそれは虫の仕業である。彼は厭はしげに眉を寄せながら尚もその上に莟を視た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
中の太い
蕊
(
しべ
)
を見せて、日を追い始める。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
芥
(
あくた
)
に流れて寄れる
月見草
(
つきみさう
)
の
蕊
(
しべ
)
なれ。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「百合だ、百合の
蕊
(
しべ
)
だ。」
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鉄線の
蕊
(
しべ
)
紫に高貴なり
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
これは後で見ると、悉く下の大廣間の
格天井
(
がうてんじやう
)
に
描
(
か
)
かれた、天人の眼や、蝶々の羽の紋や、
牡丹
(
ぼたん
)
の
蕊
(
しべ
)
などであつたと言ふことです。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
此のたびの不思議な其の
大輪
(
たいりん
)
の虹の
台
(
うてな
)
、
紅玉
(
こうぎょく
)
の
蕊
(
しべ
)
に咲いた花にも、俺たちが、何と、手を着けるか。
雛芥子
(
ひなげし
)
が散つて
実
(
み
)
に成るまで、風が誘ふを
視
(
なが
)
めて居るのだ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ジェーンは
義父
(
ぎふ
)
と
所天
(
おっと
)
の野心のために十八年の
春秋
(
しゅんじゅう
)
を罪なくして
惜気
(
おしげ
)
もなく刑場に売った。
蹂
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
られたる
薔薇
(
ばら
)
の
蕊
(
しべ
)
より消え難き
香
(
か
)
の遠く立ちて、今に至るまで史を
繙
(
ひもと
)
く者をゆかしがらせる。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
横向いて、なんと
長閑
(
のどか
)
なそのまるい眼だ。おりおり岩菊の
蕊
(
しべ
)
を覗き込む
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
寝転んで、始め鼻を当てると突き上げるやうな
蕊
(
しべ
)
のにほひ、それにも徐々に
馴
(
な
)
れて来る。五分、十分、かの女はまつたく馴れて来た。ひそかな
噎
(
むせ
)
ぶやうな激情が静まつて、
呑気
(
のんき
)
な放心がやつて来る。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
見事な
向日葵
(
ひまわり
)
の花が一輪高彫になっていて、その
蕊
(
しべ
)
は一カラットもあろうかと思う、小さいながら美しいダイヤがはめ込みになっておりました。
向日葵の眼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
思
(
おも
)
はず……
男
(
をとこ
)
は
驚駭
(
おどろき
)
の
目
(
め
)
を
睜
(
みは
)
つた。……と
其
(
そ
)
の
帶
(
おび
)
に
挾
(
はさ
)
んで、
胸先
(
むなさき
)
に
乳
(
ちゝ
)
をおさへた
美女
(
たをやめ
)
の
蕊
(
しべ
)
かと
見
(
み
)
える……
下〆
(
したじめ
)
のほのめく
中
(
なか
)
に、
状袋
(
じやうぶくろ
)
の
端
(
はし
)
が
見
(
み
)
えた、
手紙
(
てがみ
)
が一
通
(
つう
)
。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
石のべの躑躅の
蕊
(
しべ
)
は長けれど
萎
(
な
)
えつつ垂りぬ日の光沁み
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
姿見
(
すがたみ
)
の
俤
(
おもかげ
)
は
一重
(
ひとへ
)
の
花瓣
(
はなびら
)
薄紅
(
うすくれなゐ
)
に、
乳
(
ち
)
を
押
(
おさ
)
へたる
手
(
て
)
は
白
(
しろ
)
くかさなり
咲
(
さ
)
く、
蘭湯
(
らんたう
)
に
開
(
ひら
)
きたる
此
(
こ
)
の
冬牡丹
(
ふゆぼたん
)
。
蕊
(
しべ
)
に
刻
(
きざ
)
めるは
誰
(
た
)
が
名
(
な
)
ぞ。
其
(
そ
)
の
文字
(
もじ
)
金色
(
こんじき
)
に
輝
(
かゞや
)
くまゝに、
口
(
くち
)
渇
(
かわ
)
き
又
(
また
)
耳
(
みゝ
)
熱
(
ねつ
)
す。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はこの五人の男女に、五つの美しい花弁を持った、醜い
蕊
(
しべ
)
のように取り囲まれて居りました。
新奇談クラブ:07 第七夜 歓楽の夢魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
石のべの躑躅の
蕊
(
しべ
)
は長けれど
萎
(
な
)
えつつ垂りぬ日の光沁み
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
時
(
とき
)
に、
毛
(
け
)
一筋
(
ひとすぢ
)
でも
動
(
うご
)
いたら、
其
(
そ
)
の、
枕
(
まくら
)
、
蒲團
(
ふとん
)
、
掻卷
(
かいまき
)
の
朱鷺色
(
ときいろ
)
にも
紛
(
まが
)
ふ
莟
(
つぼみ
)
とも
云
(
い
)
つた
顏
(
かほ
)
の
女
(
をんな
)
は、
芳香
(
はうかう
)
を
放
(
はな
)
つて、
乳房
(
ちぶさ
)
から
蕊
(
しべ
)
を
湧
(
わ
)
かせて、
爛漫
(
らんまん
)
として
咲
(
さ
)
くだらうと
思
(
おも
)
はれた。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この墓に
凍
(
し
)
みつつ白き山茶花の
蕊
(
しべ
)
あざやけき
寒
(
かん
)
は來りぬ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
桜の枝を踏めばといって、虫の数ほど
花片
(
はなびら
)
も露もこぼさぬ俺たちだ。このたびの不思議なその大輪の虹の
台
(
うてな
)
、紅玉の
蕊
(
しべ
)
に咲いた花にも、俺たちが、何と、手を着けるか。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この墓に
凍
(
し
)
みつつ白き山茶花の
蕊
(
しべ
)
あざやけき
寒
(
かん
)
は来りぬ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
先
(
ま
)
づ口だけは
体
(
てい
)
の
可
(
い
)
い事を言うて、其の実はお互に
餌食
(
えじき
)
を待つのだ。又、此の花は、紅玉の
蕊
(
しべ
)
から虹に咲いたものだが、散る時は、肉に成り、血に成り、
五色
(
ごしき
)
の
膓
(
はらわた
)
と成る。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蕊
(
しべ
)
の黄色い新鮮な花。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
花は夏咲く、丈一尺ばかり、
梢
(
こずえ
)
の処へ
莟
(
つぼみ
)
を持つのは
他
(
ほか
)
の百合も違いはない。
花弁
(
はなびら
)
は六つだ、
蕊
(
しべ
)
も六つあって、黄色い粉の袋が
附着
(
くッつ
)
いてる。私が聞いたのはそれだけなんだ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まず口だけは
体
(
てい
)
の
可
(
い
)
い事を言うて、その実はお互に
餌食
(
えじき
)
を待つのだ。また、この花は、紅玉の
蕊
(
しべ
)
から虹に咲いたものだが、散る時は、肉になり、血になり、
五色
(
ごしき
)
の
腸
(
はらわた
)
となる。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黒髪の
艶
(
つや
)
は、
金蒔絵
(
きんまきえ
)
の櫛の光を沈めて、いよいよ漆のごとく、藤紫のぼかしに
牡丹
(
ぼたん
)
の花、
蕊
(
しべ
)
に金入の半襟、栗梅の紋お召の
袷
(
あわせ
)
、薄色の
褄
(
つま
)
を
襲
(
かさ
)
ねて、
幽
(
かす
)
かに紅の入った黒地友染の
下襲
(
したがさ
)
ね
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蘇芳貝
(
すおうがい
)
、いろいろの貝を
蕊
(
しべ
)
にして、花の波が白く咲きます、その
渚
(
なぎさ
)
を、青い山、緑の小松に包まれて、大陸の
婦
(
おんな
)
たちが、夏の頃、百合、
桔梗
(
ききょう
)
、月見草、夕顔の雪の
装
(
よそおい
)
などして、
旭
(
あさひ
)
の光、月影に
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その芋虫にまた早や、
台
(
うてな
)
も
蕊
(
しべ
)
も
嘗
(
な
)
められる、二度添どのもあるわいの。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふと
明
(
あ
)
いた
窓
(
まど
)
へ
横向
(
よこむ
)
きに
成
(
な
)
つて、ほつれ
毛
(
げ
)
を
白々
(
しろ/″\
)
とした
指
(
ゆび
)
で
掻
(
か
)
くと、あの
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
が
強
(
つよ
)
く
薫
(
かを
)
つた、と
思
(
おも
)
ふと
緑
(
みどり
)
の
黒髮
(
くろかみ
)
に、
同
(
おな
)
じ
白
(
しろ
)
い
花
(
はな
)
の
小枝
(
こえだ
)
を
活
(
い
)
きたる
蕚
(
うてな
)
、
湧立
(
わきた
)
つ
蕊
(
しべ
)
を
搖
(
ゆる
)
がして、
鬢
(
びんづら
)
に
插
(
さ
)
して
居
(
ゐ
)
たのである。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
唇ばかり、埋め果てぬ、雪の紅梅、
蕊
(
しべ
)
白く
莞爾
(
にっこり
)
した。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夕顔の
蕊
(
しべ
)
もおはぐろでニタリと笑う。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蕊
漢検準1級
部首:⾋
15画
“蕊”を含む語句
雌蕊
雄蕊
花蕊
小蕊
蕊雲楼
高雄蕊短花柱
高雄蕊低花柱
高雄蕊
雌雄蕊
雄蕊雌蕊
藁蕊
低雄蕊
花蕊石
紫蕊紅葩
多雌蕊
多雄蕊
低雄蕊高花柱
低雄蕊長花柱