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莨
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たばこ
ふりがな文庫
“
莨
(
たばこ
)” の例文
彼は、椅子に腰かけて毎朝静かに
莨
(
たばこ
)
をふかして独りを楽しむ時間を、彼の前に立っている男に闖入されたことが不快でならなかった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
余は涙の出るほど有難い、早速受け取って、一本の葉巻
莨
(
たばこ
)
を燻らせたが、是でも蘇生の想いがある、ナニ空腹も大した苦痛ではない。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
となんら変哲もないレヴェズの言動に異様な解釈を述べ、それから噴泉の群像に眼がゆくと、彼は
慌
(
あわ
)
てて出しかけた
莨
(
たばこ
)
を引っ込めた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私は何でもなしに言ったのだけれど、みさをは、私の言葉が
癪
(
しゃく
)
にさわったのか、
執拗
(
しつよう
)
にだまりこくって
莨
(
たばこ
)
ばかりふかしていました。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「一体君たちは、こんなことをしてゐて、
終
(
しま
)
ひに何うなるんだね。」彼は
腹這
(
はらば
)
ひになつて、
莨
(
たばこ
)
をふかしながら、そんな事を
訊
(
たづ
)
ねた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
と、
葭簀
(
よしず
)
を出る、と入違いに境界の柵の
弛
(
ゆる
)
んだ
鋼線
(
はりがね
)
を
跨
(
また
)
ぐ時、
莨
(
たばこ
)
を
勢
(
いきおい
)
よく、ポンと投げて、裏つきの
破
(
やぶれ
)
足袋、ずしッと草を踏んだ。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丈
(
たけ
)
なす
薔薇
(
ばら
)
、色鮮やかな
衝羽根朝顔
(
つくばねあさがお
)
、小さな
淡紅色
(
ときいろ
)
の花をつけた見上げるような
莨
(
たばこ
)
の
叢立
(
むらだ
)
ち、
薄荷
(
はっか
)
、
孔雀草
(
くじゃくそう
)
、
凌霄葉蓮
(
のうぜんはれん
)
、それから
罌粟
(
けし
)
。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
帆村はまるで迷路の中に
路
(
みち
)
を失ってしまったように感じた。かれはポケットを探ってそこに
皺
(
しわ
)
くちゃになった一本の
莨
(
たばこ
)
を発見した。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
腕輪、ネクタイピン、
莨
(
たばこ
)
入れ、ヘヤピン、耳飾り、ナプキン環、花瓶、文房具類、装身具、家具の類まで、種類はたくさんあった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
爺
(
ぢい
)
さん。もう
万年青
(
おもと
)
の
御手入
(
おていれ
)
はおすみですか。ではまあ一服おやりなさい。おや、あの
菖蒲革
(
しやうぶがは
)
の
莨
(
たばこ
)
入は、どこへ忘れて御出でなすつた?
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その前の板敷きに腹這いながら、懐中から取り出した短い
煙管
(
きせる
)
で、
莨
(
たばこ
)
の煙りを吹かせているのは、編笠を脱いだ九十郎であった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
自分はお重と
喧嘩
(
けんか
)
をするたびに向うが泣いてくれないと
手応
(
てごたえ
)
がないようで、何だか物足らなかった。自分は平気で
莨
(
たばこ
)
を吹かした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私たちは吊橋から谷に降りる中腹の、ベンチに腰をかけて、
莨
(
たばこ
)
をふかしていた。そこは女たちを斜め上に見上げる位置になる。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
立て
籠
(
こ
)
めた
莨
(
たばこ
)
の煙は上から照り
澱
(
よど
)
められ、ちょうど人の立って歩けるぐらいの高さで、大広間の空気を上下の層に分っている。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人は、
莨
(
たばこ
)
を喫いながら何か賑やかに話しているけれど、私は窓硝子へ吸いつくばかりにして、めぐりゆくそとの景趣に眺めいったのである。
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
彼等もつり込まれて思わず笑い、
莨
(
たばこ
)
の火をかりた人の方を見ると、その人々も笑っている。日曜日らしい
寛
(
くつ
)
ろいだ情景でひろ子は愉快を感じた。
高台寺
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宗平は
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
キセル
)
に
莨
(
たばこ
)
をつめつつ語る、さして興味ある物語でもないが、こうした時こうした場所では、それも
趣
(
おもむ
)
きふかくきかれたのであった。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
進ぜん
外々
(
ほか/\
)
の儀と事變り金子の事故
驚怖
(
おどろい
)
たりあたら
膽
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
す所と
空嘯
(
そらうそぶ
)
ひて
莨
(
たばこ
)
をくゆらし
白々敷
(
しら/″\しく
)
も千太郎を世間知らずの
息子
(
むすこ
)
と見
掠
(
かす
)
め
先
(
まづ
)
寛々
(
ゆる/\
)
と氣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
女主人は平然と、きせるで
莨
(
たばこ
)
をふかしていた。隣りの部屋には女が二人いたが、これも息をころしているようすで、こそっとも物音がしなかった。
赤ひげ診療譚:05 徒労に賭ける
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金煙管
(
きんぎせる
)
の
莨
(
たばこ
)
の
独
(
ひと
)
り
杳眇
(
ほのぼの
)
と
燻
(
くゆ
)
るを手にせるまま、満枝は
儚
(
はかな
)
さの
遣方無
(
やるかたな
)
げに
萎
(
しを
)
れゐたり。さるをも見向かず、
答
(
いら
)
へず、
頑
(
がん
)
として石の如く
横
(
よこた
)
はれる貫一。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
翌朝
(
よくちょう
)
。画家は
楽気
(
らくげ
)
に
凭掛
(
よりかかり
)
の
椅子
(
いす
)
に掛り、
莨
(
たばこ
)
を
喫
(
の
)
み、
珈琲
(
コオフィイ
)
を飲み、スケッチの手帳を
繰拡
(
くりひろ
)
げ、見ている。戸を
叩
(
たた
)
く
音
(
おと
)
す。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
いえ
何
(
なに
)
もありませぬよ、
何卒
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さん
此方
(
こちら
)
へお
出
(
いで
)
なすつてナニ
本堂
(
ほんだう
)
で
莨
(
たばこ
)
を
喫
(
の
)
んだつて
構
(
かま
)
やアしませぬ。
其中
(
そのうち
)
に
和尚
(
をしやう
)
が出て
来
(
く
)
る。和「ハイ
何
(
ど
)
うも
御愁傷
(
ごしうしやう
)
な事で。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二百十日の夜に
浦賀
(
うらが
)
の船番所の前を乗切る時、
莨
(
たばこ
)
の火を見られて、船が通ると感附かれて、木更津沖で追詰められて、到頭子分達は召捕りになりましたが
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
珍らしいものでは、飛騨に
莨
(
たばこ
)
の葉を凧にしたものがある。また南洋では袋のような凧を
揚
(
あ
)
げて、その凧から糸を垂れて水中の魚を釣るという面白い用途もある。
凧の話
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
芋蟲
(
いもむし
)
は
話
(
はな
)
しもしないで
莨
(
たばこ
)
の
煙
(
けむ
)
を
吹
(
ふ
)
いて
居
(
ゐ
)
ましたが、
終
(
つひ
)
には
腕組
(
うでぐみ
)
を
止
(
や
)
めて
再
(
ふたゝ
)
び
其口
(
そのくち
)
から
煙管
(
きせる
)
を
離
(
はな
)
し
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
莨
(
たばこ
)
を
填
(
つ
)
めては吸い填めては吸い、しまいにゴホゴホ
咽
(
む
)
せ返って苦しんだが、やッと落ち着いたところで
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
遥かの行手にある橋は云ふまでもなく、その先の小山の麓の村から立ちのぼる細い煙までが、
莨
(
たばこ
)
の煙りのやうに青い空に消えてゆくのが手にとるやうに見渡された。
パンアテナイア祭の夢
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
彼
(
かれ
)
には
悲愴
(
ひさう
)
の
感
(
かん
)
の
外
(
ほか
)
に、
未
(
ま
)
だ一
種
(
しゆ
)
の
心細
(
こゝろぼそ
)
き
感
(
かん
)
じが、
殊
(
こと
)
に
日暮
(
ひぐれ
)
よりかけて、しんみりと
身
(
み
)
に
泌
(
し
)
みて
覺
(
おぼ
)
えた。
是
(
これ
)
は
麥酒
(
ビール
)
と、
莨
(
たばこ
)
とが、
欲
(
ほ
)
しいので
有
(
あ
)
つたと
彼
(
かれ
)
も
終
(
つひ
)
に
心着
(
こゝろづ
)
く。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
すると二人の客は、初めのうちこそ熱心に耳を傾け目を
欹
(
そば
)
だてているようであったが、しばしすると
興醒
(
きょうざ
)
めたような顔をして、気の毒そうに
莨
(
たばこ
)
など吹しはじめました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
莨
(
たばこ
)
に火をつけた。女は俺の顔をみて、にやりと笑った。俺は女の無邪気な皮肉を眼の色に感じた。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
さうして、
莨
(
たばこ
)
に火をつけて何本も何本も
喫
(
す
)
つてゐると、私の心は隅から隅まで暗く淋しかつた。
不穏
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
村役場と駐在所が
中央
(
なか
)
程に向合つてゐて、役場の隣が作右衛門店、萬荒物から酢醤油石油
莨
(
たばこ
)
、罎詰の酒もあれば、前掛半襟にする
布帛
(
きれ
)
もある。箸で
断
(
ちぎ
)
れぬ程堅い豆腐も売る。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「ウム」と思案せる侯爵「成程——
何
(
ど
)
うぢや松島、山木の言ふ所道理
至極
(
しごく
)
と聞かれるでは無いか」松島は
莨
(
たばこ
)
くゆらしつゝ「
然
(
し
)
かし、閣下、御本尊が
嫁
(
ゆ
)
きたいと申すものを、之を ...
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
増右衛門はその以来、決して蟹を食わないばかりか、掛軸でも屏風でも、床の間の置物でも、
莨
(
たばこ
)
入れの金物でも、すべて蟹にちなんだようなものはいっさい取捨ててしまいました。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
折々は
旋毛
(
つむじ
)
の曲った兄哥などに正体を見すかされて、錫製で化けきろうとした巻
莨
(
たばこ
)
入れなどを、「なんでい、こりゃアンチじゃァねえか」と一本きめつけられ、グウの音も出ないところなのを
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
その煩悶を信仰によって救われて居る、その信仰に走った
刺戟
(
しげき
)
と機会とを与えたものがあるね、それは、此紙包を見給え、火鉢の中から出てきた
燐寸
(
マッチ
)
の
燃滓
(
もえかす
)
と紙を焼いた灰だ、彼女は
莨
(
たばこ
)
を
喫
(
のま
)
ないぜ
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
マッチがパッとすられ
莨
(
たばこ
)
の青いけむりがほのかにながれる。
秋田街道
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
顎十郎は、その手紙を読み終ると、
莨
(
たばこ
)
の煙をふきながら
顎十郎捕物帳:05 ねずみ
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
喬介は語り終って
莨
(
たばこ
)
の吸殻を海の中へ投げ込んだ。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「なんだか
莨
(
たばこ
)
のにほひがいたしますわ」
聖家族
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
女の瞳は
莨
(
たばこ
)
の火よりもあかく
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
莨
(
たばこ
)
の煙の
おさんだいしよさま
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
よく眠れなかったお増は、
頭脳
(
あたま
)
がどろんと
澱
(
よど
)
んだように重かった。そして床のなかで、
莨
(
たばこ
)
をふかしていると、隣の時計が六時を打った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「じゃ、聴いて貰いますか」そう云って横瀬は、
莨
(
たばこ
)
を一本、口に
銜
(
くわ
)
えた。「これは、
俺
(
おれ
)
の知っている、或る男の、素晴らしい計画なんだ。 ...
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
といって、また
引
(
ひっ
)
くり返した。
頭
(
かしら
)
は
竈
(
へッつい
)
の前に両足を拡げながら、片手で抜取って
銀煙管
(
ぎんぎせる
)
を
銜
(
くわ
)
え、腰なる
両提
(
りょうさげ
)
ふらふらと
莨
(
たばこ
)
を捻る。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ほんとに身体だけは丈夫にしてくれないと困るね。
莨
(
たばこ
)
だってあんまり量が多過ぎやしない? そんなにしょっちゅうふかしどおしじゃ?」
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
又、銀鎖の
莨
(
たばこ
)
入れでヤニさがっている唐桟縞のゲビた町人、町医者や、指のふしの太い職人ていの男も、げたげたと、
憚
(
はばか
)
りなく、笑っていた。
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と同時に、二人の顔に
颯
(
さっ
)
と驚愕の色が
閃
(
ひらめ
)
いた。検事はウーンと
呻
(
うめ
)
き声を発して、思わず
銜
(
くわ
)
えていた
莨
(
たばこ
)
を取り落してしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「さあさあどこへなといらっしゃい」長火鉢の前へ片膝を立て、お誂え通りの長煙管、
莨
(
たばこ
)
を
喫
(
ふ
)
かしていた養母のお
兼
(
かね
)
は、黒い歯茎で笑ってみせた。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
聞いているうちに、同心と
書役
(
かきやく
)
が来たので、千之助は二階へあがっていった。現場は端にある八
帖
(
じょう
)
で、井田十兵衛が退屈そうに
莨
(
たばこ
)
をふかしていた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
莨
漢検1級
部首:⾋
10画
“莨”を含む語句
巻莨
毛莨
莨入
紙莨
莨盆
巻莨入
卷莨
捲莨
含嗽莨
莨屋
高根毛莨
大莨袋
西洋莨菪
蒼莨根
蒲簀莨入
葉巻莨
莨銭
莨菪文
莨菪
莨箱
...