苦労くろう)” の例文
旧字:苦勞
「まあ、ご苦労くろうな、ただバケツをっておともをするだけなの。」と、おねえさんは、ほんとうに、りょうちゃんがかわいそうになりました。
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
相当そうとう修行しゅぎょうんだら、一しょむとか、まないとかもうすことは、さして苦労くろうにならないようになってしまうのではないでしょうか。
「あ、さようでございましたか。それはそれは遠方えんぽうのところをご苦労くろうさまで……それはあのなくなったは気違きちがいのことでしょうな」
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それにデパートならはいるにもでるにも、なんの苦労くろうもないし、どうして早くこのことに気がつかなかったかと思ったね。
そうすると、金貨きんかが雨のようにふってきます。ですから、職人しょくにんのほうでは、それを地面じめんからひろいあげるだけで、なんの苦労くろうもいらないのでした。
あの人はあんまり苦労くろうをたくさんして、気むずかしくなっているだけなのだからね。まあ、わたしたちはせっせとはたらきましょう。おまえも働くのだよ
じや、もうしますわ。あたしは女手おんなでひとつで、青流亭せいりゅうてい切廻きりまわしていますからね、ひとにはえぬ苦労くろうもあるんですよ。ハッキリいうと、パトロンがあります。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
みさきは遠くて気のどくだけど、一年だけがまんしてください。一年たったら本校へもどしますからな。分教場の苦労くろうは、さきしといたほうがいいですよ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「もう何週間なんしゅうかんも、野の生活をして苦労くろうしているんだから、ひとつ、そのうでまえを見せるかな。」
あなたさまのなすった苦労くろうにくらべますと、私の苦労なんか、足もとへもよれないほどでございます。あなたは、きっと、行末ゆくすえながく、お仕合せにおくらしになるでございましょう。
しかし、彼女かのじょは兄をやさしく愛していたし、兄も口には出さないが彼女を大切たいせつにしていた。彼等は二人ふたりきりでほかに身寄みよりものもなかった。二人ふたりとも生活のためにひどく苦労くろうして、やつれはてていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
おや ニャン子にピチも御苦労くろう 入りたま
「ほんとうに、そうしたはなしくと、自由じゆうそらべるあなたたちにも、いろいろな苦労くろうがあるのですね。」と、木立こだち同情どうじょうしました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
日本にっぽん一の御子みこからまたなきものにいつくしまれる……。』そうおもときに、ひめこころからは一さい不満ふまん、一さい苦労くろうけむりのようにえてしまうのでした。
「こん棒だって。そいつは、ご苦労くろうな話だな。こん棒なら、木を切りさえすりゃあ、いくらでもできるじゃないか。」
「まことにはやご苦労くろうさまにぞんじます。あの気違きちがいも長ながとご迷惑めいわくをかけましたが、それでわたしも安心いたしました。まずどうぞおかけくださいまし」
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なんの苦労くろうもなければ、心配もなかった。これがせっかく水の上を気楽に通って来た道を、今度は足でとぼとぼ歩いて帰らなけれはならないときがじき来るのだ。
ただ、長い間いっしょに苦労くろうしてきたガチョウをすくいたい気もちでいっぱいだったのです。
片道五キロを歩いてかよう苦労くろうはだれにもわかっていることで、昔から、岬の子どものちこくだけは大目に見られていたのだが、逆に一度もちこくがないとなると、これは当然ほめられねばならぬ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
かれは、そののち、いろいろの経験けいけんをし、また苦労くろうをしました。たまたま、この公園こうえんにきて百合ゆりはなて、むかしのことをおもしたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんには執着しゅうじゃくつよいので、それをてるのがなかなかの苦労くろう、ここまでるのにはけっしてなまやさしいことではない……。
「どうしたもんだろう。よめをもらうのはうれしいことだが、そのかわり、苦労くろうもあるからな。」
なんでも大道を前へ前へと進んで行くほかに苦労くろうのなかったのに引きかえて、いまは花畑のかこいの中にじこめられて、朝からばんまであらっぽくはたらかなければならなかった。
「あんたがいっちまってからは、苦労くろうのしどおしさ! やっとの思いで買った馬は、病気で役にもたたないしね。とにかく、あんたのことを思って、気のどくなほど、かなしんでいるよ!」
「おなご先生も、えらい苦労くろうかけますな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
自分じぶんんだ子供こどもが、永久えいきゅうかえってこないものなら、なんで、らずのひと子供こども苦労くろうしてそだてることがあろう? わたしは、あくまで
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
刑務所けいむしょはけっしてゆかいな所ではなかった。それに苦労くろうというものは、たちの悪い病気のようなものだ。けれどもう出て来ればだいじょうぶだ。これからはよくなるだろう」
これで、苦労くろうはすっかりなくなってしまったわけです。
おれには、なに、苦労くろうなんかあるものか。おれみたいに、みんながのんきにらしていれば、べつに悲観ひかんすることもないのだ。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お父さんの如露はわたしのよりもずっと重かったし、そのシャツはわたしたちのそれよりも、もっとびっしょりあせにぬれていた。みんな平等であるということは、苦労くろうの中の大きな楽しみであった。
わたしが、もしあのお人形にんぎょうであったら、どんなにしあわせだろう……。なんの苦労くろうもなしに、ああして、平和へいわに、毎日まいにちらしていくことができる。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なぜなら、あたまはきれいにわけているし、くつはぴかぴかひかっているし、口笛くちぶえなどふいてあるくし、どこにも、苦労くろうなんか、なさそうだからでした。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すずめは、二びっくりしました。そして、ながい三ねんあいだ自分じぶん苦労くろうがむだであったことを、ふかなげかなしみました。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ご苦労くろうだった。無事ぶじにいってこられて、なにより、けっこうのことだ。みなみ国王こくおうは、達者たっしゃでいらせられたか……。」
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
だから、このなか苦労くろうっていらっしゃれば、また、どことなく、そのお姿すがたに、さびしいところがありました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しょうは、かねると、長年ながねん苦労くろうを一つにしてきたうしが、さびしそうにあとのこされているのを見向みむきもせずに、さっさとていってしまいました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうに、わたしはもう一子供こどもかえれるでしょうか? わたしなか苦労くろうをしました。わたしあたまからは、無邪気むじゃきということがなくなってしまいました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし、わたしが、このお人形にんぎょうであったら、なか苦労くろうということもらず、そのうえこんなにうつくしいかおをして、どんなにか幸福こうふくだろうとおもっていたのです。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ははねこは、あとのこしたねこのことを心配しんぱいしながら、方々ほうぼうのごみばこや、勝手かってもとをあさったのでした。その苦労くろうは、けっして、すこしのことでなかった。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
山本薪炭商やまもとしんたんしょう主人しゅじんは、先生せんせいからきいたごとく、さすがに苦労くろうをしてきたひとだけあって、はじめて田舎いなかからてきたけん一のめんどうをよくみてくれました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
松蔵まつぞうは、あのわすれがたいおじいさんのかたみである、そして、自分じぶん大事だいじなバイオリンをかえすためには、どんな苦労くろうをもいとわないと決心けっしんしました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、このほど、ようやく仕事しごとのほうが都合つごうよくいくようになりましたから、もうこののちおじいさんに苦労くろうをかけることもないとおもって、むかえにまいりました。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたり苦労くろうを一つにしてきたのに、おまえは自分じぶん一人ひとり幸福こうふくのために、たいせつな記念きねんうしなっていいのか?
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここは、ふゆのほうが、やすひとおおいんだから、先越さきこ苦労くろうをさっしゃるな。停留場ていりゅうじょうなんか、どこへいてもいいというで、きにまかしておかっしゃい。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きくや、ご苦労くろうでも学校がっこうまでマントをっていっておくれ。そしてかえりに、どこか、げたって、あの鼻緒はなおれたあしだの鼻緒はなおをたてかえてきてくれない。」
おきくと弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかいけしのはなは、さまで、ここにいることを苦労くろうかんじないように、いつも、お化粧けしょうをやつしてそわそわしていましたが、いま、らんに同情どうじょうされるとなんとなく
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
香水こうすいのにおいがただよい、南洋なんようできのらんのはながさき、うつくしいふうをしたおとこおんながぞろぞろあるいて、まるでこのなか苦労くろうらぬひとたちのあつまりのようでありました。
田舎のお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ご苦労くろうさんです。たいそうはやいおかけですのう。」と、おじいさんは、こえをかけました。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ご苦労くろうさまでした。どこをおけがなされましたか。」と、しずかな調子ちょうしで、たずねました。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあいだから、だれか信用しんようのおける小僧こぞうさんをさがしてくれと、わたしのところへたのんできているのだが、どうだな、苦労くろうもしてきた主人しゅじんだから、ゆけばきっと、きみのためになるとはおもうが。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)