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簇
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むら
ふりがな文庫
“
簇
(
むら
)” の例文
取りつくろはぬ矮き樹の一
本
(
もと
)
二本庭なる捨石の傍などに咲きたる、或は築山に添ひて一ト
簇
(
むら
)
一ト簇なせるが咲きたる、いづれも美し。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一方の幹には青い葉が
簇
(
むら
)
がり出ているのに、他方の幹だけはいかにも苦しみ
悶
(
もだ
)
えているような枝ぶりをしながらすっかり枯れていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
花の大きさは二寸余で、六弁のものも八弁のもある。色は
碧
(
あお
)
か白、中心に小さな紫弁が
簇
(
むら
)
がってちょっと小菊の花に似ているもの
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そうして
洋卓
(
テーブル
)
の引出から西洋
鋏
(
はさみ
)
を出して、ぷつりぷつりと半分程の長さに
剪
(
き
)
り詰めた。そうして、大きな花を、鈴蘭の
簇
(
むら
)
がる上に浮かした。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
河に沿うて、河から段々陸に打ち上げられた土沙で出来ている平地の方へ、家の
簇
(
むら
)
がっている斜面地まで付いている、黄いろい泥の道がある。
鴉
(新字新仮名)
/
ウィルヘルム・シュミットボン
(著)
▼ もっと見る
単に神の下に
簇
(
むら
)
がる兄弟の民を云ふ外はなし、上に一の神を戴き、下に万民相愛の綱あり、これを以て宗教的組織の社会に一人の為せる害は
復讐・戦争・自殺
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
方略の第二段に襲撃を加へることにしてある大阪富豪の家々は、
北船場
(
きたせんば
)
に
簇
(
むら
)
がつてゐるので、もう
悉
(
ことごと
)
く
指顧
(
しこ
)
の
間
(
あひだ
)
にある。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
麦の黄熟したさま、里川のたぷたぷと新芽をたゝえて流れてゐるさま、杜の上に晴れやかに
簇
(
むら
)
がり立つた雲のさま、すべて心を惹かないものはない。
大阪で
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
その下半身を埋めた雑草の緑は見るも鮮かであった。国境の安別で見た
女郎花
(
おみなえし
)
風の
鬱金
(
うこん
)
色の花も
簇
(
むら
)
がっていた。だが、凄まじい
飛沫
(
しぶき
)
のなだれであった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
その岩は黒く光る
柘榴石
(
ざくろせき
)
である。それが底の方に幾つともなく
簇
(
むら
)
がつてゐる岩の群を抜いて、大約一万五千
呎
(
フイイト
)
乃至一万六千呎位真直に立つてゐるのである。
うづしほ
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それでも秋が来た時には、草や木の
簇
(
むら
)
がつた中から、
朧
(
おぼろ
)
げに庭も浮き上つて来た。勿論昔に比べれば、
栖鶴軒
(
せいかくけん
)
も見えなかつたし、滝の水も落ちてはゐなかつた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
水沫
(
みなわ
)
のように、迷いはじめる、峠が高くなるだけ、白いシシウドや、黄花のハリフキが
簇
(
むら
)
がって、白い幕の中で黄色い火を
燈
(
とも
)
したように、うすぼんやりしている
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
尤も空想や幻想が頭の中に
簇
(
むら
)
がり起っている場合、若しくは強烈な官能の悦楽に耽っている場合などはそれを忘れてはいるが、まったくそれ等のものを奪われるか
浮浪漫語
(新字新仮名)
/
辻潤
(著)
さて午後興行に這入つた客が太平無事を楽んでゐるうちに、晩の興行に這入らうとする客が、なるたけ入口に近く地歩を占めようとして、次第次第に
簇
(
むら
)
がつて来た。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
横
(
よこ
)
へ
切
(
き
)
れて
田畝道
(
たんぼみち
)
を、
向
(
むか
)
ふへ、
一方
(
いつぱう
)
が
山
(
やま
)
の
裙
(
すそ
)
、
片傍
(
かたはら
)
を
一叢
(
ひとむら
)
の
森
(
もり
)
で
仕切
(
しき
)
つた
真中
(
まんなか
)
が、
茫
(
ぼう
)
と
展
(
ひら
)
けて、
草
(
くさ
)
の
生
(
はへ
)
が
朧月
(
おぼろづき
)
に、
雲
(
くも
)
の
簇
(
むら
)
がるやうな
奥
(
おく
)
に、
祠
(
ほこら
)
の
狐格子
(
きつねがうし
)
を
洩
(
も
)
れる
灯
(
ひ
)
が
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
竹
(
たけ
)
を
伐
(
き
)
つて
束
(
つか
)
ねたやうに
寸隙
(
すんげき
)
もなく
簇
(
むら
)
がつて
居
(
ゐ
)
る
其
(
そ
)
の
爪先
(
つまさき
)
に
蹴
(
け
)
られては
怖
(
おび
)
えに
怖
(
おび
)
えた
草木
(
さうもく
)
は
皆
(
みな
)
聲
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
くのである。さうしてもう
泣
(
な
)
かねば
成
(
な
)
らぬ
時間
(
じかん
)
が
迫
(
せま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それから間もなく、ある朝庸三が起きて茶の間へ出ると、子供はみんな出払って、葉子が独り
火鉢
(
ひばち
)
の前にいた。細かい羽虫が
軒端
(
のきば
)
に
簇
(
むら
)
がっていて、
物憂
(
ものう
)
げな十時ごろの日差しであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
不吉な妖虫の
簇
(
むら
)
がりのようにすら映ってくる。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は言わば、
唯
(
ただ
)
、その生墻に
間歇
(
かんけつ
)
的に
簇
(
むら
)
がりながら花をつけている野薔薇の与える音楽的効果を楽しみさえすればよかったのであるから。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
少々ばつは悪かったようなものの
昨夜
(
ゆうべ
)
の心配は
紅炉上
(
こうろじょう
)
の雪と消えて、余が前途には柳、桜の春が
簇
(
むら
)
がるばかり嬉しい。
神楽坂
(
かぐらざか
)
まで来て床屋へ這入る。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何々石とかいふ岩石が、水ですり磨され、
覇王樹
(
シヤボテン
)
のやうに突ツ張つて
簇
(
むら
)
がつてゐる、どの石もみんな
深成岩
(
しんせいがん
)
と言はれてゐる
花崗岩
(
くわかうがん
)
で、地殻の最下層の、岩骨が尖り出て
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
かういふやうに
広狭
(
くわうけふ
)
種々の
social
(
ゾチアル
)
な
繋累的
(
けいるゐてき
)
思想が、次第もなく
簇
(
むら
)
がり起つて来るが、それがとうとう
individuell
(
インヂヰヅエル
)
な
自我
(
じが
)
の上に帰着してしまふ。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
啜る啜るさまざまの物語する
序
(
ついで
)
に、氷雨塚というもののこのあたりにあるべきはずなるが知らずやと問えば、そのいわれはよくも知らねど塚は我が家のすぐ横にあり、それその竹の
一
(
ひ
)
ト
簇
(
むら
)
しげれるが
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこの一隅に
簇
(
むら
)
がりながら咲いてゐる、私の名前を知らない眞白な花から、花粉まみれになつて、一匹の蜜蜂の飛び立つのを見つけたのだ。
燃ゆる頬
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
百、二百、
簇
(
むら
)
がる騎士は数をつくして北の
方
(
かた
)
なる試合へと急げば、石に
古
(
ふ
)
りたるカメロットの
館
(
やかた
)
には、ただ王妃ギニヴィアの長く
牽
(
ひ
)
く
衣
(
ころも
)
の
裾
(
すそ
)
の
響
(
ひびき
)
のみ残る。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その砂山の上に、ひよろひよろした赤松が
簇
(
むら
)
がつて生えてゐる。余り年を経た松ではない。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
必ず土産に持ちかえるものにしてあるエーデルワイス(
深山薄雪草
(
みやまうすゆきそう
)
)は銀白の
柔毛
(
にこげ
)
を
簇
(
むら
)
がらせて、同族の
高根薄雪草
(
たかねうすゆきそう
)
や、または赤紫色の濃い
芹葉塩釜
(
せりばしおがま
)
、
四葉塩釜
(
よつばしおがま
)
などと交って
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
そこの一隅に
簇
(
むら
)
がりながら咲いている、私の名前を知らない真白な花から、花粉まみれになって、一匹の
蜜蜂
(
みつばち
)
の飛び立つのを見つけたのだ。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
華
(
はな
)
やかな色と、陽気な肉と、浮いた足並の
簇
(
むら
)
がるなかでこう云った父の言葉は、妙に周囲と調和を欠いていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
海抜一万尺前後の標高を示して谷地(河内という称呼はおのずから谷地を暗示している)の四周に、あるいは
尖塔
(
ピンネークル
)
となり、あるいは
円頂塔
(
ドーム
)
となって、
簇
(
むら
)
がり立っているが、神河内は
日本山岳景の特色
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
中
(
なか
)
ほどに節のあるような鼻。白いたっぷりある
髯
(
ひげ
)
が
腮
(
あご
)
の周囲に
簇
(
むら
)
がっている。
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
一箇処、岸の崩れたところがあって、其処に生えていた
水楢
(
みずなら
)
の若木が根こそぎ湖水へ横倒しにされながら、いまだに青い葉を
簇
(
むら
)
がらせていた。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
食堂に下りて、窓の外に
簇
(
むら
)
がる草花の
香
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぎながら、橋本と二人静かに
午餐
(
ごさん
)
の卓に着いたときは、機会があったら、ここへ来て一夏気楽に暮したいと思った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉陰を洩れた日の光で、
紫陽花
(
あじさい
)
の花弁を
簇
(
むら
)
がらしたような、小刻みな
漣
(
さざなみ
)
を作って、
悠
(
ゆ
)
ったりと静かにひろがるかとおもうと、一枚
硝子
(
ガラス
)
の透明になって、見る見る、いくつも亀甲紋に分裂して
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
そこいらの山の端にまっしろな花を
簇
(
むら
)
がらせている辛夷の木を一二本見つけて、旅のあわれを味ってみたかったのである。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
さうして
洋卓
(
テーブル
)
の
引出
(
ひきだし
)
から西洋
鋏
(
はさみ
)
を
出
(
だ
)
して、ぷつり/\と
半分
(
はんぶん
)
程の長さに
剪
(
き
)
り
詰
(
つ
)
めた。さうして、大きな
花
(
はな
)
を、リリー、オフ、ゼ、ヷレーの
簇
(
むら
)
がる
上
(
うへ
)
に
浮
(
う
)
かした。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
天鵞絨
(
ビロード
)
のように、手障りの柔らかな青い葉が、互い違いになって、柱のような茎を取りまいて居る、此柱の頭から、
莟
(
つぼ
)
みが花傘なりに
簇
(
むら
)
がって、
蛹虫
(
さなぎむし
)
の甲羅のように、小さく青く円くなっている。
菜の花
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
……ただそれらの植込みに私の知っている花や私の知らない花が
簇
(
むら
)
がり咲いているのが私には
見馴
(
みな
)
れなかった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
誰でも中年以後になって、二十一二時代の自分を眼の前に
憶
(
おも
)
い浮べて見ると、いろいろ回想の
簇
(
むら
)
がる中に、
気恥
(
きはず
)
かしくて冷汗の流れそうな一断面を見出すものである。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんなにも
簇
(
むら
)
がっているそれ等の花がもう
先刻
(
さっき
)
のように好い
匂
(
におい
)
がしなくなってしまっていることに私は
愕
(
おどろ
)
いた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
半時なりとも死せる人の頭脳には、喜怒哀楽の影は宿るまい。
空
(
むな
)
しき心のふと吾に帰りて在りし昔を想い起せば、
油然
(
ゆうぜん
)
として雲の
湧
(
わ
)
くが如くにその折々は
簇
(
むら
)
がり
来
(
きた
)
るであろう。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いまは厚い大きな葉を
簇
(
むら
)
がらせた無花果の木が、私達に
恰好
(
かっこう
)
のよい木蔭をつくっていてくれた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
蟻
(
あり
)
の座敷へ上がる時候になった。代助は大きな鉢へ水を張って、その中に真白な
鈴蘭
(
すずらん
)
を茎ごと漬けた。
簇
(
むら
)
がる細かい花が、濃い模様の
縁
(
ふち
)
を隠した。鉢を動かすと、花が
零
(
こぼ
)
れる。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはなんだかそんな黄色をした無数の小さな
蝶
(
ちょう
)
が
簇
(
むら
)
がりながら飛んでいるようにも見える。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その一輪がどこまで
簇
(
むら
)
がって、どこまで咲いているか分らぬ。それにもかかわらず一輪はついに一輪で、一輪と一輪の間から、薄青い空が
判然
(
はんぜん
)
と望まれる。花の色は無論純白ではない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんな谷あいの山かげに、他の雑木に
雑
(
まじ
)
って、何んの木だか、目立って大きな葉を
簇
(
むら
)
がらせた一本の
丈高
(
たけたか
)
い木が、その枝ごとに、白く
赫
(
かがや
)
かしい花を一輪々々ぽっかりと咲かせていた。……
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その
縁
(
ふち
)
に朝顔のような草が
繁
(
しげ
)
っているが、
絡
(
から
)
まる竹も
杖
(
つえ
)
もないので、
蔓
(
つる
)
と云わず、葉と云わず、花を包んで雑然と
簇
(
むら
)
がるばかりである。朝顔の下はすぐ
崖
(
がけ
)
で、崖の向うは広い
河原
(
かわら
)
になる。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大粒な黄いろい果実を
簇
(
むら
)
がらせた
柑橘類
(
かんきつるい
)
や紅い花をつけた
山茶花
(
さざんか
)
などが植わっていたが、それらが曇った空と、草いろの鎧扉と、不思議によく調和していて、言いようもなく美しいのだ。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
蟻
(
あり
)
の
座敷
(
ざしき
)
へ
上
(
あ
)
がる時候になつた。代助は大きな
鉢
(
はち
)
へ水を
張
(
は
)
つて、其
中
(
なか
)
に
真白
(
まつしろ
)
なリリー、オフ、ゼ、ヷレーを
茎
(
くき
)
ごと
漬
(
つ
)
けた。
簇
(
むら
)
がる
細
(
こま
)
かい花が、
濃
(
こ
)
い模様の
縁
(
ふち
)
を
隠
(
かく
)
した。
鉢
(
はち
)
を
動
(
うご
)
かすと、
花
(
はな
)
が
零
(
こぼ
)
れる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
簇
漢検1級
部首:⽵
17画
“簇”を含む語句
簇々
一簇
簇葉
上簇
簇出
簇立
簇生
簇擁
上簇期
簇集
葉簇
簇然
攅簇
簇柱
簇団
簇花巾
簇開
団簇
簇雲
群刃簇槍
...