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端
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はた
ふりがな文庫
“
端
(
はた
)” の例文
或る晩などは
逃後
(
にげおく
)
れた輝方氏が女中に
掴
(
つか
)
まつて、恋女房の蕉園女史にしか触らせた事のない口の
端
(
はた
)
を思ひ切り
抓
(
つね
)
られたものださうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼らはえいえいと鉄条網を切り開いた
急坂
(
きゅうはん
)
を登りつめた
揚句
(
あげく
)
、この
壕
(
ほり
)
の
端
(
はた
)
まで来て一も二もなくこの深い
溝
(
みぞ
)
の中に飛び込んだのである。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして北の方はたゞうなずくか、たまに一と言か二た言、老人の耳の
端
(
はた
)
へ口を寄せて、唇が
耳朶
(
みみたぶ
)
へ触れるくらいにして云うのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
若松屋惣七方のうら手、小石川上水堀の
端
(
はた
)
にある金剛寺は、
慧日山
(
けいにちざん
)
と号し、
曹洞派
(
そうとうは
)
の名だたる禅林だ。
境内
(
けいだい
)
に、
源実朝
(
みなもとのさねとも
)
の墓碑があった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
お銀様は石燈籠の蔭から追いつめられたのが池の
端
(
はた
)
です。池の
汀
(
みぎわ
)
を伝って逃げると巌石がある。後ろへすされば一歩にして水です。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
東京
下谷
(
したや
)
の
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
の下宿で、岸本が友達と一緒にこの詩を
愛誦
(
あいしょう
)
したのは二十年の昔だ。市川、菅、福富、足立、友達は皆若かった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
対馬
(
つしま
)
では子供が両手の小指を以て目の
端
(
はた
)
を張り、こわい顔をすることをタンゴウスルといい、又はガンゴメともいうそうである。
おばけの声
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
寺の門前でしばらく何かを言い争っていた五六人の中から、二人の男が
駈
(
か
)
け出して、井の
端
(
はた
)
に来て、石の井筒に手をかけて中をのぞいた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
小さい私は池の
端
(
はた
)
に
佇
(
たたず
)
んで、独りっきりでこの花を見ていたものだ、或るときは泣きながら、或るときは途方にくれながら、——この花を
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、口の
端
(
はた
)
まで言葉が出ながら、それは声とはならなかった。ただ口がぴくぴくと顫えて歪むと、なぜか泪がはらはらと落ちた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
自分でそれと心づいたのは去年の春上野
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
のカッフェーに始めて女給になってから、
暫
(
しばら
)
くして
後
(
のち
)
銀座へ移ったころである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
錦袋円
(
きんたいえん
)
の娘、池の
端
(
はた
)
(いまの台東区池之端一丁目一番、同上野二丁目一一・一二番)に錦袋円という有名な薬屋がありました。
江戸の化物
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
浅草へ出るとさすがに
晴々
(
はればれ
)
して
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
の石道をぽくぽく歩いてみた。関東だきと云うのか、
章魚
(
たこ
)
の足のおでんを売る店が軒並みに出ている。
貸家探し
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
買物は
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
へ出て、
仲町
(
なかちょう
)
へ廻ってするのです。その仲町へ曲る辺に大きな玉子屋があって、そこの品がよいというので、いつも買います。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
釣道
(
つりどう
)
の記念に、一見せざるべからずとなし、昼飯後直ちに、
入谷
(
いりや
)
光月町を通り、十二階下より、公園第六区の池の
端
(
はた
)
に、
漫歩遊観
(
まんぽゆうかん
)
を試みたり。
東京市騒擾中の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
さあこれをお飲みなさい。と病人の口の
端
(
はた
)
に持行けば、
面
(
おもて
)
を背けて飲まんとせず。手をもて力無げに振払い、「
汝
(
うぬ
)
、毒薬だな。と
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みは
)
りぬ。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから手早に雀を拵え、小皿に盛るほどもない小鳥を煮て、すべての
夕食
(
ゆうげ
)
を
調
(
ととの
)
えた。病母も火の
端
(
はた
)
へ連れ出して四人が心持よく食事をした。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
はて
誰
(
た
)
れでも
出
(
で
)
て
來
(
こ
)
よ
此姿
(
このすがた
)
に
何
(
なに
)
として
見覺
(
みおぼ
)
えがあるものかと
自問自答
(
じもんじたふ
)
折
(
をり
)
しも
樓婢
(
ろうひ
)
のかなきり
聲
(
ごゑ
)
に、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から
來
(
き
)
た
車夫
(
くるまや
)
さんはお
前
(
まへ
)
さんですか。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
葉子はわざと宿で車を頼んでもらわずに、
煉瓦
(
れんが
)
通りに出てからきれいそうな
辻待
(
つじま
)
ちを
傭
(
やと
)
ってそれに乗った。そして
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
のほうに車を急がせた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
十五年の夏には
下谷
(
したや
)
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
の青海小学校へ移り、その翌年に退校した。その後は他で勉学したとは公にはされていない。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私が十六の時、
沖
(
おき
)
ノ
端
(
はた
)
に大火があつた。さうしてなつかしい多くの酒倉も、あらゆる桶に新らしい金いろの日本酒を滿たしたまま眞蒼に炎上した。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
まず足馴らしに校庭を一周して、弥生町から
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
へ出た。不忍池を一めぐりして、学校へ帰ってくるというのである。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
池
(
いけ
)
ノ
端
(
はた
)
の青海、
仲御徒町
(
なかおかちまち
)
の本島(これが筆者の母校、若先生は初期の師範学校卒業生で、今は退隠されてなお健在。)
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
口の
端
(
はた
)
にも寄せられなんだ食べもんが、むしょうに欲しィなったり、顔つきや声まで変ってしもて、べつな人間のようなことをやりだしますねんわ。
姦(かしまし)
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
首を
掉
(
ふ
)
って見るが、
其様
(
そん
)
な事では中々取れない。果は前足で口の
端
(
はた
)
を
引掻
(
ひッか
)
くような真似をして、
大藻掻
(
おおもが
)
きに
藻掻
(
もが
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「そら死ぬそら死ぬそら死ぬ」と耳の
端
(
はた
)
で
囁
(
ささや
)
けば、
片々
(
かたかた
)
の耳元でも懐しい
面
(
かお
)
「もう見えぬもう見えぬもう見えぬ」
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
しかもそれが済むと、自分も、
絆纏
(
はんてん
)
に後ろ
鉢捲
(
はちま
)
きをして、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から
湯島
(
ゆしま
)
辺にかけて配達して
廻
(
まわ
)
るのだった。何だかえたいの知れない男だと私は思った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
木板の手習 その火の燃えて居る
端
(
はた
)
に十一、二の子供が手習をして居るです。それは黒い板木に白い粉を振り
蒔
(
ま
)
いて竹でもってその上へ書いて居るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
おや
貴方
(
あなた
)
は
浅田正文君
(
あさだせいぶんくん
)
ではありませんか、シテ
貴方
(
あなた
)
が
何
(
ど
)
ういふ
理由
(
わけ
)
で。浅田「ハテ
僕
(
ぼく
)
は
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
に
居
(
ゐ
)
るからぢや。 ...
七福神詣
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
最
(
いと
)
不審
(
いぶかし
)
如何なる者の
住家
(
すみか
)
ならんと思ひながら
飢
(
うゑ
)
たる
儘
(
まゝ
)
に獨り
食事
(
しよくじ
)
し終り再び
圍爐裡
(
ゐろり
)
の
端
(
はた
)
へ來りて
彼
(
かの
)
男に
厚
(
あつ
)
く禮を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ただ綺麗に着飾った舞子に目をつけている。これも鶴見がそれを記憶しているのではなかった。
端
(
はた
)
のものがそういって、あとから幾度も冷やかすのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
押えて、
垂
(
た
)
れの外から、八公に渡して置いた縄でぐるぐるまき、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から、お山の裏へ抜けて、谷中の鉄心庵にほうり込みゃあいいんだ。わかっているな
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
私はその本屋をはじめ、小川町の「三久」、浜町の「京常」、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
の「バイブル」、駒形の「小林文七」「鳥吉」などから
頻
(
しき
)
りに西鶴の古本を
漁
(
あさ
)
り集めた。
明治十年前後
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
帰りに
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から電車へ乗ったら、左の奥歯が少し痛み出した。舌をやってみると、ぐらぐら動くやつが一本ある。どうも赤木の雄弁に少し
祟
(
たた
)
られたらしい。
田端日記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、その口の
端
(
はた
)
から
渋江抽斎
(
しぶえちゅうさい
)
の写した古い武鑑(?)が手に入ったといって歓喜と得意の色を漲らした。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
を
本郷
(
ほんごう
)
に抜ける静かなゆるい坂道を貞雄に助けられながらゆっくりゆっくり歩を
搬
(
はこ
)
んでゆく——が、妾の胸の中は感情が戦場のように激しく渦を巻いていた。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
玉井君、おれのところにゃ、いろんな
者
(
もん
)
が
転
(
ころ
)
げこんで来るんじゃよ。
端
(
はた
)
の者は、いつも、——大将、もう、あんまり、世話の仕甲斐のない
者
(
もん
)
を、相手にしなさんな。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「イヨウ、素敵な
別嬪
(
べつぴん
)
が立つてるぢやねエか——
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
なら、弁天様の御散歩かと拝まれる所なんだ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「でも私ア、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
にゐる時よか、いツそ此うしてゐた方が、まだ/\のんきな位なもんだよ。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
変りはてた
直義
(
ただよし
)
の青白い顔だった。唇の
端
(
はた
)
から糸のような血は見えるが苦悶したらしい
痕
(
あと
)
はない。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十年前にはよくTMと一緒に本郷、神田、
下谷
(
したや
)
と
連立
(
つれだ
)
って歩いた。
壱岐殿坂
(
いきどのざか
)
教会で
海老名弾正
(
えびなだんじょう
)
の説教を聞いた。
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
のミルクホールで物質とエネルギーと神とを論じた。
病院風景
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
団十郎の銅像のあたりから、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
まで歩いてみて、親方は感心したように
呟
(
つぶや
)
いたものだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
火の
端
(
はた
)
で翁は、つれづれであった。翁は腕を動かして自分の肉体の凸所を撫でまわす。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
言はるるままに客間に通りて、
端近
(
はしちか
)
う控ふれば、彼は
井
(
ゐ
)
の
端
(
はた
)
なりし
婢
(
をんな
)
を呼立てて、
速々
(
そくそく
)
主
(
あるじ
)
の
方
(
かた
)
へ走らせつ。
莨盆
(
たばこぼん
)
を
出
(
いだ
)
し、番茶を
出
(
いだ
)
せしのみにて、
納戸
(
なんど
)
に入りける妻は再び
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
らず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
道路
(
みち
)
の上を盤と見做し、道行く人の
頭顱
(
あたま
)
を球と思ひ做して、此の男の頭顱の左の
端
(
はた
)
を撞いて、彼の男の頭顱の右の端に觸れさせると向う側の髮結牀の障子に當つてグルツと一轉して來て
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「お
濠
(
ほり
)
の
端
(
はた
)
へ立つ女! どこにいるか知らぬかな?」尾張宗春ぼんやりと訊く。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
つまらなそうな様子で、上野
黒門
(
くろもん
)
より
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
のほうへぶらりぶらり歩いて、しんちゅう屋の
市右衛門
(
いちえもん
)
とて当時有名な金魚屋の店先にふと足をとどめ、中庭を
覗
(
のぞ
)
けば
綺麗
(
きれい
)
な
生簀
(
いけす
)
が整然と七
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
実あきょう
池
(
いけ
)
ノ
端
(
はた
)
にちょっと用足しがあって、いまさっき行ったんですよ。
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
妻がゐた時に娘からそれを聞いた私は、賛成だ! と云つた癖に、別の時に娘が私に念をおすと、私は前のことなどは忘れた風にデレデレして、酔つ払ひ、厭といふ程娘に口の
端
(
はた
)
をつねられ
川を遡りて
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
この屋根の
箱棟
(
はこむね
)
には雁が五羽
漆喰
(
しっくい
)
細工で塗り上げてあり、立派なものでした(雁鍋の先代は
上総
(
かずさ
)
の
牛久
(
うしく
)
から出て
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
で
紫蘇飯
(
しそめし
)
をはじめて仕上げたもの)。隣りに天野という大きな
水茶屋
(
みずぢゃや
)
がある。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
“端”を含む語句
端折
尖端
尻端折
片端
出端
端緒
一端
端正
山端
縁端
端然
端艇
突端
上端
町端
切端
川端
下端
端々
発端
...