しら)” の例文
たゞして申けるは是名主甚兵衞其外の百姓共よくうけたまはれ將軍の上意なればかるからざる事なりしかるに當村中一同に申合せしらぬ/\と強情がうじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
茲まで考え来るときは倉子に密夫みっぷあるぞとは何人なんびとにもしらるゝならん、密夫にあらで誰が又倉子が身に我所天おっとよりも大切ならんや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
同便どうびんで来た手紙はがきの中に、思いがけない報知が一つあった。二十二日にとめやのきぬやが面疔めんちょうで死んだ、と云うしらせである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その詩をしらなかつた前は決して空想さへ許されなかつた程、珍らしい新しい世界を、艶子は想ふことが出来たのであります。
駒鳥の胸 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
其夜の夢に逢瀬おうせ平常いつもより嬉しく、胸ありケの口説くぜつこまやかに、恋しらざりし珠運を煩悩ぼんのう深水ふかみへ導きし笑窪えくぼ憎しと云えば、可愛かわゆがられて喜ぶは浅し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
泥坊もこわいけれども、毒殺はまた一層こわいではございませんか、あまり奇妙なことゆえ御しらせ申すというてよこした
蓮月焼 (新字新仮名) / 服部之総(著)
どうぞ一刻も早く重三の行方の知れるようにお願い申そうと思って、私が娘を連れて大師さまへお参りをし、おみくじを戴きながら来て、お前にしらせる訳なんだよ
「二郎や、僕もそれと同じい夢を見た。母さんは初め遇うた時にしらなかったが、なんでもよく似ている人だと思って、取縋とりすがって見ると母さんであったのだろう……。」
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひと不幸ふこううまれながらに後家ごけさまのおやちて、すがる乳房ちぶさあまへながらもちヽといふ味夢あぢゆめにもしらず、ものごヽろるにつけておやといへば二人ふたりある他人ひとのさまのうらやましさに
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
修禅寺の鐘は一日に四、五回く。時刻をしらせるのではない、寺の勤行ごんぎょうしらせらしい。ほかの時はわたしも一々記憶していないが、夕方の五時だけは確かにおぼえている。
春の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ういふふうで一時間じかんたち二時間じかんつた。どく千萬せんばんなのは親父おやぢさんで、退屈たいくつで/\たまらない。しかしこれも我兒わがこゆゑと感念かんねんしたか如何どうだかしらんが辛棒してそのまゝすわつてた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
釋尊、八幡のうまれ替りとや申さん。日蓮は凡夫なればよくしらず。これしかし、日蓮がまゐらせしゆゑなり。さこそ父母ふぼよろこ給覽たまふらん。誠に御祝として、餅、酒、鳥目てうもく貫文くわんもん送給候畢おくりたまひさふらひぬ
当家こちらのお弟子さんが危篤ゆえしらせるといわれ、妻女はさてはそれゆえ姿をあらわしたかと一層いっそう不便ふびんに思い、その使つかいともに病院へ車をとばしたがう間にあわず、彼は死んで横倒よこたわっていたのである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
黄金丸はややありて、「かかる義理ある中なりとは、今日まで露しらず、まこと父君ちちぎみ母君と思ひて、我儘わがまま気儘にすごしたる、無礼の罪は幾重いくえにも、許したまへ」ト、数度あまたたび養育の恩を謝し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
そうとはしらぬ小歌はふいと立て廊下へ出たが、その時広間からも芸妓げいしゃが出て来て、一人かえと云たのは明かに聞えたが、えと振返ふりかえった小歌が眉を寄たのは障子が隔てゝ見えなかった。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
物のわけをもしらぬ者ども、小肘こひぢつかんで引立ひつたて、車一両に二三人づゝ引のせ奉るさへに、若君姫君の御事さま、さても/\といはぬ者なく、其身の事は不申、見物の貴賤もどつなき
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しん動き気躍るは至当の理なり、然れども景勝の地にわづかに造化が包裡する粋美の一端なる事をしらば、景勝其自身に対する観念は甚だおほいならずして、景勝を通じ風光を貫いて造化の秘蔵に進み
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
かくて事のようやく進むや外国奉行がいこくぶぎょう等は近海巡視きんかいじゅんしなど称し幕府の小軍艦にじょうじて頻々ひんぴん公使のもと往復おうふくし、他の外国人のしらぬ間に約束やくそく成立せいりつして発表はっぴょうしたるは、すなわち横須賀造船所よこすかぞうせんじょの設立にして
しかれどもこの快楽を得る能わずとて落胆失望に沈むは汝のいまだ事業に優る快楽あるをしらざればなり、基督教は他の宗教に勝りて事業を奨励するといえども基督教の目的は事業にあらざるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
潤すに止まらず人をしてしらず/\の間によきに導き逢ふ所觸るゝところ皆な徳にうるほはざるなし學問もまた斯の如し今日こんにち一事を知り明日みやうにちまた一事を知る集りて大知識大學者とはなるなり現に今ま此の水を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
が、んな女が果してあったかドウかはしらない。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
踏みたるは釈迦とはしらず蟻の死よ
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
願ひ候といふに常樂院は兩人の言葉ことばを聞て打笑乍うちゑみながら申けるは成程仔細しさいしらねばおどろくも無理ならずされども御表札ごへうさつ御紋付ごもんつきの幕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
附けると云う取附とっつきだけはしらせて呉れねば僕だッて困るじゃ無いか(谷)其取附と云うのが銘々の腹に有る事で君のく云う機密とやらだ互いに深く隠して
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
仕方なしに重三郎を佐賀町河岸へ置いたなりにうちしらせに来たと云うから、政七も驚いて駈けて往くと、其処に重三郎は居なくって、怪しい侍が頭巾を冠って刀を抜いて立って居たから
われ当世の道理はしらねど此様このような気に入らぬ金受取る事大嫌だいきらいなり、珠運様への百両はたしかに返したれど其人そのひとに礼もせぬ子爵からこの親爺おやじ大枚たいまいの礼もらう煎豆いりまめをまばらの歯でえと云わるゝより有難迷惑
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「柔道を教へてやるんだよ。女だつて柔道をしらなければ駄目だぞ。」
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
これりの話だよ、たれにもしらしてはなりませんよ。私がだ若い時分、お里の父上おとうさまえんづかない前にある男に言い寄られて執着しゅうねく追いまわされたのだよ。けれども私は如何どうしても其男の心に従わなかったの。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
貯へはに色も香もいとふかき山吹色とぞしられたり娘ははじめたる金今日まであかしもなし給はで貯へ置て下さるも此身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし己の方は若しも証拠隠匿いんとくの罪に落ては成らぬと一本残して置たのに彼奴きゃつ其一本を取れば後に残りが無いからとりも直さず犯罪の証拠を隠したに当る夫をしらないでヘンなにを
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
若し君ならば一本の髪の毛を何うして証拠にする天きり証拠にするすべさえ知らぬ癖に(大)しらなくても先へ取れば後で君に問うのサ何うすれば証拠に成るだろうと、エー君
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
見て是こそは大事の客と思い益々世辞沢山に持掛けながらしらしらず目科の巧みなる言葉に載せられ藻西夫婦の平生の行いに付き己れの知れる事柄だけは惜気も無く話したり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
殊に又美人の操ほどあてに成らぬ者は無く厳重なる貴族社会に於てすらも幾百人の目をぬすみて不義の快楽にふけりながら生涯人にしられずして操堅固とほめらるゝ貴婦人も少なからず
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)