疲勞ひらう)” の例文
新字:疲労
よくたゞしてると、しかく平氣へいきをとこも、時々とき/″\歡樂くわんらく飽滿はうまん疲勞ひらうして、書齋しよさいのなかで精神せいしんやすめる必要ひつえうおこるのださうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此邊このへんまではるのだ。迂路うろつきまわるのですでに三以上いじやうあるいたにかゝはらず、一かう疲勞ひらうせぬ。此時このときすで打石斧だせきふ十四五ほん二人ふたりひろつてた。
かれひる寸暇すんかをもをしんで勞働らうどうをするので一つにはれがなべの仕事しごとはげないほど疲勞ひらうおぼえしめてるのでもあるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひとむかうの廣室ひろまかうと、あへぎ/\六疊敷ろくでふじきたてつてくのだが、またゝうちおよ五百里ごひやくり歩行あるいたやうにかんじて、疲勞ひらうしてへられぬ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そればかりでも身躰からだ疲勞ひらうはなはだしからうとおもはれるので種々いろ/\異見いけんふが、うもやまひせゐであらうか兎角とかくれのこともちひぬにこまりはてる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
町内の本道が、玉子の白味しろみや油を呑ませて大方はかせたさうで、今は疲勞ひらうのために、うつら/\して居ります。
玉之助たまのすけなづ掌中たなそこの玉といつくしみそだてけるしかるに妻は産後の肥立ひだちあし荏苒ぶら/\わづらひしが秋の末に至りては追々疲勞ひらうつひ泉下せんかの客とはなりけり嘉傳次の悲歎ひたんは更なりをさなきものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旅行りよかうして旅宿やどいてこのがつかりするあぢまた特別とくべつなもので、「疲勞ひらう美味びみ」とでもはうか、しか自分じぶん場合ばあひはそんなどころではなくやまひ手傳てつだつてるのだからはなからいきねつ今更いまさらごとかん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
疲勞ひらう睡眠すゐみん不足ふそくとに、Kあをざめてひげさへばしてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
おほいに疲勞ひらうしてたので、引揚ひきあげやうかとかんがへてうち幻花子げんくわしは、口部こうぶだけけて、完全くわんぜんなる土瓶どびんを一掘出ほりだした。
彼等かれら勞働らうどうから空腹くうふく意識いしきするとき一寸いつすんうごくことの出來できないほどにはか疲勞ひらうかんずることさへある。什麽どんな麁末そまつものでも彼等かれらくちには問題もんだいではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
御米およね産後さんご蓐中じよくちゆうその始末しまついて、たゞかる首肯うなづいたぎりなんにもはなかつた。さうして、疲勞ひらうすこんだうるませて、なが睫毛まつげをしきりにうごかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これらはそのときわたくしこころもちと、不思議ふしぎくらゐつかはしい景色けしきだつた。わたくしあたまうちにはひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとが、まるで雪曇ゆきぐもりのそらのやうなどんよりしたかげおとしてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なにない。——ないけれど面白おもしろい。疲勞ひらうしては天幕てんとり、菓物くわぶつひ、サイダをむ。いきほひをてはまたりにかゝるが、はなはだしくなにない。
かれ老躯らうく日毎ひごと空腹くうふくから疲勞ひらうするため食料しよくれう攝取せつしゆするわづか滿足まんぞく度毎たびごと目先めさきれてるかれらつしてところみちびいてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大分だいぶ疲勞ひらうしてた。