)” の例文
旧字:
梅をかない日本画家はない。画題として、梅ほど画家に好かれる花はないだろう。古い水墨家では、足利期の一の梅が私は好きだ。
梅ちらほら (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一本々々見ると、みんな同じように金色に光っているのですが、三本一しょにならべると、女の顔をいた一まいのになるのでした。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「いや、あんたは下手ではありません。なかなか上手にけてます。しかしこの顔は、どうも誰ぞ外の人に似てるように思われますね」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
筆はたゞ心持で動いてゐるだけで、勿論其の委曲がけて居る訳では無いが、それでもおのづからに各人の姿態や心情が想ひ知られる。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たといまずかろうがまずいからこそ勉強してくのだ、奉納絵を画いてもいいという決心はどうした、一心不乱とはここの事だ
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこには古い絵具のげかけた壁画があって、つるかめ雉子きじのようなものをいてあったがそれもことごとく一方の眼がつぶれていた。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それかあらぬかロセッチのいた絵に地中海で漁夫ぎょふを迷わすサエレンという海魔に持たしてあるのは日本のことだ、しかもそれが縦にしてある
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
眼鏡めがねの看板やその他いろんな看板が、あるものは、新しいペンキでかれ、るものは、古い壁のようにはげていましたが
手袋を買いに (新字新仮名) / 新美南吉(著)
(絵になら、まだしもけようが。)それは、煙をその形のままに手でらえようとするにも似た愚かさであると、一般に信じられておった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ほか稽古けいこの時に絵をいたりしないような、そしてお友達に何を言われても、いと思ったことを迷わずするような、強い子になって下さい。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
樊噲はんかいの盾だと言って、貸した友だちは笑ったが、しかし、破りも裂きも出来ないので、そのなかにたたき込んである、鷭をいたのは事実です。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さういふ所から和尚は色々な展覧会で自分がいて呉れた山水が相応かなり高い値段で売物になつてゐるのを見る事がよくある。
と、女は答えて、源右衛門の出す紙と矢立やたてを取って、その、銅の板から小判を造りだすという南蛮伝授の機械なるものを図面にしていて見せた。
魑魅ちみくはやすし」ではなく、お爺さんの描いた竜を毎日見ていると、本当にいてもよいような気がするほどだった。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その頃兄はしきりに水墨画に親しんでいられました。私の学校通いにかぶったあじろがさに、何かかれたのもその頃でしょう。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
素人しろうとにしてはきました、其後そのご独逸どいつへ行つて、今では若松わかまつ製鉄所せいてつじよとやらにると聞いたが、消息せうそくつまびらかにしません
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
○「いえ、そら久しい以前あと絵に出た芳年よしとしいたんで、鰐鮫わにざめを竹槍で突殺つッころしている、鼻が柘榴鼻ざくろッぱなで口が鰐口で、眼が金壺眼かなつぼまなこで、えへゝゝ御免ねえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けばけばしい電燈の光はその翌日の朝までこのなまめかしくもふしだらな葉子の丸寝姿まるねすがたいたように照らしていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
高い窓から光線が横に這入はいって来るのは仕方がないが、その窓にめてある障子しょうじは、北斎ほくさいいた絵入の三国志さんごくしに出てくるようなからめいたものである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは有名なある画家のいた名高い絵であって、伯爵が叔父にあたる西班牙スペインの貴族ボバドイラ侯爵から伝えられたものである。判事がまず口を開いて
元豊はいつかかした小翠の像を出して見くらべた。が、別の人のようであるからひどく怪しんだ。女はいった。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
私も写真の中にうつってゐます。第二が『わなに注意せよ。』これは私共のこん兵衛べゑが野原でわなにかかったのをいたのです。絵です。写真ではありません。
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
おおぜいが踏んで踏んづけて、きたないボロボロになっちまうと、もうゼズスもマルヤもあったもんじゃないわ。何がいてあるか、てんでわかりゃせんのだから。
寺畔の茶屋から見ると、向う山の緑青ろくしょういた様な杉の幾本いくもとうつって楓の紅が目ざましく美しい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
寛文二年印本『江戸名所記』に根津ねず権現ごんげん社は大黒神を祭るなり、根津とは鼠のいわれにて、鼠は大黒神の使者なれば絵馬などにも多く鼠をきたりとあって、不寝ねず権現と書せり
ちょうど金屏風きんびょうぶに銀でいた松の葉のようにそっと落ちているアルミニウムの留針ピン
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
てっぺんから孔のあいたお釜帽子に、煤いろの襤褸ぼろの腐れにしん臭気においでも放ちそうなのに、縄帯をだらしなく前結びにして、それもきちらした髯むじゃの黒い胸をはだけ、手も足も
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
おおいと呼べばおうと答えて渡守わたしもりが舟を出す位だが、東側はただもう山と畠で持切って、それから向うへは波の上一里半、麻生天王崎あそうてんのうさき大松おおまつも、女扇おんなおうぎの絵に子日ねのひの松位にしか見えない。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ネヂを掛ける二つの穴の周囲から羅馬ローマ数字をいたあたりへかけて、手摺てずれたりげ落ちたりしたあとが着いて、最早もうばあさんのやうな顔の時計であつた。でもまだ斯うして音はして居る。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奥州おうしゅうの南部には、字の読めない者に読ませるように、——絵でいた暦がある。
数多い柱や廊の立ち続く姿が、目赫めかゝやくばかり朱でみあげられた。むら/\と、靉くものは紺青こんじやうの雲である。紫雲は一筋長くたなびいて、中央根本堂とも見える屋の前にきおろされた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
石榴口には花鳥風月もしくは武者絵などがいてあって、私のゆく四丁目の湯では、男湯の石榴口に水滸伝すいこでん花和尚かおしょう九紋龍くもんりゅう、女湯の石榴口には例の西郷桐野篠原の画像が掲げられてあった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「青んぼ」という名前も、三男がひとりで考案して得意らしく、表紙も、その三男がいたのですけれども、シュウル式の出鱈目でたらめのもので、銀粉をやたらに使用した、わからない絵でありました。
兄たち (新字新仮名) / 太宰治(著)
恁麽こんな花、いつか姉ちやんもいた事あつてよ。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
春の浜大いなる輪がいてある
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
筆はただ心持で動いているだけで、勿論その委曲がけている訳ではないが、それでもおのずからに各人の姿態や心情が想い知られる。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
足ごしらえは八ツのわらじ、膝ぶしに咒符おまもりいつけ、仏神の像を鞍皮くらかわいた馬に乗り、進物籠を載せて、即日、江州を立って行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
光子さんは「なあ、柿内さん、あの観音さんの絵エもっと私に似るようにいて御覧ごらん。そしたらどないにいやはるかしらん」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もし真にわが一心をこの画幅とこの自然とに打ち込むなら大砲の音だって聞こえないだろうと。そこで画板にかじりつくようにしてきはじめた。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
隣りには砂絵をく人がいます。その男の前には、砂が綺麗きれいにならしてあり、傍には大きいのや小さいのや五色の砂を入れた袋が置いてあります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
葉子は日頃ひごろから成績の悪い生徒ではありませんでした。けれど鉛筆と紙さえ持つと、何時いつでも——授業の時間でさえも絵をきたがる癖がありました。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
上が娘の姿、中は芸妓の姿、一番仕舞が娼妓しょうぎの姿などがいてあり、周囲まわりは桜の花などが細かにいてあります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
むかし天龍寺塔頭たつちゆうのある寺にあつた書院の杉戸は、探幽の筆として聞えてゐたが、戸には李白一人がいてあつて、滝らしいものが一向に書いてなかつた。
私も写真の中にうつっています。第二が『わなに注意せよ。』これは私共のこん兵衛べえが野原でわなにかかったのをいたのです。絵です。写真ではありません。
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
天井には群青ぐんじょうや朱の色のおもどろんだ絵具で天女てんじょ鳳凰ほうおういてあったが、その天女も鳳凰も同じように一方の眼が潰れていた。武士はまた右の方に眼をやった。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二階でひつそりと画がかれて行く青い午前ひるまへなぞに、おくみはそこらを閉め切つて置いて、白い洋傘かうもりをさして、坊ちやんの手を引きながら、駅の近くの通りまで
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
少年は、ひまさえあれば、白い石の上に淡飴色うすあめいろ蜂蜜はちみつを垂らして、それでひるがおの花をいていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「百二十間の廻廊に二百三十五枚の額がかかって、その二百三十二枚目の額にいてある美人の……」
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
写本しやほん挿絵さしゑ担当たんたうした画家ぐわか二人ふたりで、一人ひとり積翠せきすゐ工学士こうがくし大沢三之介おほさはさんのすけくん一人ひとり緑芽りよくが法学士はうがくし松岡鉦吉まつをかしやうきちくん積翠せきすゐ鉛筆画えんぴつぐわ得意とくいで、水彩風すゐさいふうのもき、器用きよう日本画にほんぐわつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何もかも——さびを帯びた金色こんじきの仏壇、生気の無いはす造花つくりばな、人の空想を誘ふやうな天界てんがい女人によにんの壁にかれた形像かたち、すべてそれらのものは過去すぎさつた時代の光華ひかり衰頽おとろへとを語るのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)