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空想文学に対する倦厭けんえんの情と、実生活からた多少の経験とは、やがて私しにもその新らしい運動の精神を享入うけいれることを得しめた。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
されば真個しんこの富強は決して一躍してられるべきものではない、必ずや深くその根本を培養し、その素養を確実にせねばなりません。
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ものとを見較みくらべながら、かたまけると笑方ゑみかたの、半面はんめんおほニヤリにニヤリとして、岩魚いはな一振ひとふり、ひらめかして、また、すた/\。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丘では、追々とひきあげて来る人々が、各〻て来た敵の首級しるしを、藤吉郎の床几しょうぎの前にならべ合って、血のさかもりにどよめいていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばうなはが七せんまうで一そく草鞋わらぢが一せんりんといふ相場さうばだからどつちにしても一にち熱心ねつしんうごかせばかれは六七せんまうけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
尾崎行雄氏が、われわれは自由をた。しかしそれは最も悲しむべき状態に於てそれを獲たというような意味のことを言われた。
「寺田寅彦の追想」後書 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
読むことから、そして見ることから、われ/\の随時にたあるものに対して、統一を与え組織を与えるものは、実に思索の賜物である。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
全般の形勢は連合側に不利であったが、英国の斡旋で大王は六月十一日墺軍とブレスラウの講和を結び、シュレージエンをた。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
との一言をはなち、かえって反対者の喝采かっさいたところなどは、その公平無私かつ度量どりょうの寛大なるところは、ほとんどドラマチックであった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
下谷の坂本通りで善吉を斬ったのは何者であるか、このごろ流行る辻斬りであろうというだけのことで、遂にその手がかりをずに終った。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この界隈かいわいのことだから代価はしごく低廉ていれんである。あわれな女はその僅少な金をるために、自分の意志で、男と同伴して行く。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
魯の哀公あいこうが西のかた大野たいやかりして麒麟きりんた頃、子路は一時衛から魯に帰っていた。その時小邾しょうちゅの大夫・えきという者が国にそむき魯に来奔した。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わたくしのた五郎作の手紙の中に、整骨家名倉弥次兵衛の流行を詠んだ狂歌がある。ひじを傷めた時、親しく治療を受けて詠んだのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
選者もしその陳腐剽窃ひょうせつなることを知らずして一句にても二句にてもこれを載すれば、投句者は鬼の首をたらん如くに喜びて友人に誇り示す。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
義を慕う者は単に自己おのれにのみ之をんとするのではない、万人のひとしく之に与からんことを欲するのである、義を慕う者は義の国を望むのである
何でも短冊は僅か五、六枚ぐらいしか書かなかったろうという評判で、短冊蒐集家の中には鴎外の短冊を懸賞したものもあるがられなかった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
王子豕肉を食うて鳥類の語を解く力を、シシリアの譚は、ザファラナ女、豕の髭三本を火に投じてその老夫たる王子を若返らせ、露国の談に
したがって不正な手段で富を増そうという悪い心も生ぜず、抽籤に当たって大金をようという卑しい根性も起こらぬ。
理想的団体生活 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
唯儂一個人としては、六年の田舎住居いなかずまいの後、いさゝかたものは、土に対する執着の意味をやゝかいしはじめた事である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私の生活は、ここで、まれな静けさと、調和とをて落ちつくように見えた。そしてみずからも天の甘美と、遠い平和とにあずかるような心地がした。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼はついに聖フランシスの帰依者きえしゃとなり、ローマ・カトリックの僧位をて始めて生活の安らかさを確保したのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
それは確かな説ではないが、浅井の二女をただけはいなみ難い史上の事実で、その一人は今いう淀君、他の一人は徳川二代秀忠の室となった光源院。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この屋敷へ入り込むのは、虎穴こけつへ入ると同じだが、そういう冒険をしなかった日には、虎児をることはむずかしい。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
凱旋の翌日、た首を検したのに二千五百余あった。下方しもかた九郎左衛門が生擒いけどりにした権阿弥ごんあみをして首を名指さしめた。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かつて海底に径寸のあわびの珠を、させられたという物語は伝わっているが、それはまだ考古家の眼にも触れず、またしばしばあった事とも思われない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
成程結構な茶入だ、滅多にられない名器だなと思ふと、五人の頭に言ひ合はせたやうに馬越氏の事が浮んで来た。
翻訳劇を演ずる俳優の技芸の如き、あるひはまた公設展覧会の賞牌しょうはいんとする画家の新作の如き即ちこれなり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
えがけども成らず、描けども成らず」と丸き男は調子をとりて軽く銀椀ぎんわんたたく。葛餅をたる蟻はこの響きに度を失して菓子椀の中を右左みぎひだりへけ廻る。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せんがんずといえども、一雁を失わず、一計双功を収めずと雖も、一功を得る有り。永楽帝のあにあえて建文をもとむるを名として使つかいを発するをさんや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
〔評〕榎本武揚えのもとぶやう等五稜郭りようかくの兵已に敗る。海律全書かいりつぜんしよ二卷を以て我が海軍におくつて云ふ、是れ嘗て荷蘭おらんだに學んでたる所なり、身と倶にほろぶることを惜しむと。
今この、より実質的な住みかを身のまわりにてわたしは世の中に腰をすえることにおいて幾分の進歩をした。
ほぼ等しい大山岳圏に囲繞いじょうせられているから、北アルプスの高山で見るような、広々とした眺望はられない。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
すべての物の真の価格、すべての物がこれをようとする人に真実に費さしめる所のものは、彼がこれを獲るために費さなければならぬ労働と苦痛とである。
しかるにオホヤマモリの命は天皇の命に背いてやはり天下をようとして、その弟の御子を殺そうとする心があつて、竊に兵士を備えて攻めようとしました。
俺が百万円を積んだところで、昔の宮はられんのだ! 思へばかねもつまらん。すくないながらも今のかねが熱海へ追つて行つた時のかばんの中に在つたなら……ええ‼
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ふ、ふ、意気地なしめ! ドラ猫だって、ものを見りゃあとびかかるぜ! やって来ねえか? おい!」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
素直に答えたが、この女は私をようとして、大阪から出てきたのである。しかし、何事もなかった。翌日
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
指導役しどうやくのおじいさんにうかがってましても、あまり要領ようりょうられませぬ……。つまりわけではないが、かぎりある器量ちからではどうにもしょうがないのでございましょう。
人の手にられない物を獲たらしく見せかける努力、あるいはそれをまじめに獲ようとする無駄な努力が、いかにさまざまな異なった姿をもって現われるかである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そしたら、学術的に心持メンタルトーンを培養する学理は解らんでも、その技術アートることは出来やせんか、と云うので、最初は方面を撰んで、実業が最も良かろうと見当を付けた。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼は何時いつにか、失業の苦しみが、芯のずいまで沁みていた……というよりも、職に離れると同時に、あの、たばかりの美しき野獣——京子に、別れなければならぬ。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
段々ある落ちつき場処を求めた様子を見ると、万葉の外殻をかぶって、叙景詩に行き止ったものは、まだしも、多少の生きた気魄を感じることは出来るが、外々の者は
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この日は猟師が言ったほどの大猟ではなかったがしかし六頭の鹿をて、まず大猟の方であった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一度テップにかえた金はすぐ婆さんのふところへ這入って、それを資本に勝ってテレサをない以上、この家のそとへ持って出たって勿論どこへ行っても金にはかわらないし
曰く静岡県は何とかの財源をむがために沼津千本松原の一部を伐採すべしといふのである。
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
て言うなお前言うまいあなたの安全器をえつけ発火の予防も施しありしにきずもつ足は冬吉が帰りて後一層目に立ち小露が先月からのお約束と出た跡尾花屋からかかりしを
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
果して自国民族からさえも一般的承認をたか? 昔の予言者達は、果して世にれられたか? イエスはうか? ポーロはうか? いかなる時代のいかなる改革者が
おうこうと男が口外したものを反故ほごには出来ん、一足も退く事は出来ん、仮令たとい謀計はかりごとがあっても虎の穴へ這入へえらなければ虎の子はられぬからくよ、貴様も男らしくも
寺務じむいとまある日はうみに小船をうかべて、網引あびきつりする泉郎あまに銭をあたへ、たる魚をもとの江に放ちて、其の魚の遊躍あそぶを見ては画きけるほどに、年を細妙くはしきにいたりけり。
リゼットが始めて彼にとらえられてサン・ラザールのシャトウ——すなわ牢屋ろうやへ送り込まれるときには生鳥いけどりうずらのように大事にされた。真にりょうを愛する猟人かりうどものを残酷ざんこくに扱うものではない。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)