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さみ
ふりがな文庫
“
淋
(
さみ
)” の例文
美奈子が宮の下の
賑
(
にぎ
)
やかな通を出はずれて、段々
淋
(
さみ
)
しい
崖
(
がけ
)
上の道へ来かゝったとき、丁度道の左側にある理髪店の
軒端
(
のきば
)
に
佇
(
たたず
)
みながら
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかしこの女が墓の前に延び上がった時は墓よりも落ちついていた。
銀杏
(
いちょう
)
の
黄葉
(
こうよう
)
は
淋
(
さみ
)
しい。まして
化
(
ば
)
けるとあるからなお
淋
(
さみ
)
しい。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ほほほほ」と、吉里も
淋
(
さみ
)
しく笑い、「今日ッきりだなんぞッて、そんなことをお言いなさらないで、これまで通り来ておくんなさいよ」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
わたしは
訊
(
き
)
く「どうしてこんなものを」この人は答える「うちには娘が
無
(
な
)
いからお前に着せる。でないと、うちのなかに色彩がなくて
淋
(
さみ
)
しい」
愛よ愛
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この港は
佐伯町
(
さいきまち
)
にふさわしかるべし。見たまうごとく家という家いくばくありや、
人数
(
ひとかず
)
は二十にも足らざるべく、
淋
(
さみ
)
しさはいつも
今宵
(
こよい
)
のごとし。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
圖「左様か、今夜は
淋
(
さみ
)
しかろうが、これから余儀なく
一寸
(
ちょっと
)
行
(
い
)
かなければならんが、
明日
(
あした
)
は
正午前
(
ひるまえ
)
に帰って来ようから、まアゆっくり寝るが
宜
(
い
)
い」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今日はまだお言いでないが、こういう雨の降って
淋
(
さみ
)
しい時なぞは、その
時分
(
ころ
)
のことをいつでもいってお聞かせだ。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「気楽は気楽ですけれど、
淋
(
さみ
)
しゅうございますわ、だから今日のように、
我
(
わが
)
ままを申すようなことになりますわ」
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
跡は降ッた、
剣
(
つるぎ
)
の雨が。草は
貰
(
もら
)
ッた、赤絵具を。
淋
(
さみ
)
しそうに生まれ出る新月の影。くやしそうに吹く野の夕風。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
それと同時に、時たま仕事が順調に運んだ時などには、先生のおられないことをしみじみ
淋
(
さみ
)
しいと思う。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ここは
甲州
(
こうしゅう
)
の
笛吹川
(
ふえふきがわ
)
の上流、
東山梨
(
ひがしやまなし
)
の
釜和原
(
かまわばら
)
という村で、
戸数
(
こすう
)
もいくらも無い
淋
(
さみ
)
しいところである。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
名状
(
めいじょう
)
し
難
(
がた
)
き
淋
(
さみ
)
しさで、はては、涙ぐましくさえなって来るのを、どうすることも出来ませんでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
なすなりといふ昨夜は醉にまぎれたれば何ともなかりしが今宵は梅花子と兩人相對して
燈火
(
ともしび
)
も暗きやうに覺え盃をさすにも
淋
(
さみ
)
しく話も
途絶勝
(
とだえがち
)
なれば梅花道人忽ち大勇猛心を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
「オヤ誰方かと思ッたら文さん……
淋
(
さみ
)
しくッてならないから
些
(
ちっ
)
とお
噺
(
はな
)
しにいらッしゃいな」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
淋
(
さみ
)
しい淋しい怨みを籠めて
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
百代は小さな声で「
先刻
(
さっき
)
」と答えたが、「叔母さんが小供のだから、白い花だけでは
淋
(
さみ
)
しいって、わざと赤いのを
交
(
ま
)
ぜさしたんですって」
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ねえ! 青木さん! 美奈さんと、三人でなければ面白くありませんわねえ。二人
限
(
きり
)
じゃ
淋
(
さみ
)
しいし張合がありませんわねえ!」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「だッて、一人者じゃアありませんか」と、吉里は西宮を見て
淋
(
さみ
)
しく笑い、きッと平田を見つめた。見つめているうちに眼は一杯の涙となッた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
潔癖を持つ事は時に
孤独
(
こどく
)
な
淋
(
さみ
)
しさが身を
噛
(
か
)
む事もあるが、
恆
(
つね
)
に、もののイージーな部分にまみれないではっきりとして客観的にものを観察出来て
異性に対する感覚を洗練せよ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
雨のそぼ降る日など、
淋
(
さみ
)
しき家に幸助一人をのこしおくは
不憫
(
ふびん
)
なりとて、客とともに舟に乗せゆけば、人々哀れがりぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
早「えゝ
嘸
(
さぞ
)
まア力に思う人がおっ
死
(
ち
)
んで、あんたは
淋
(
さみ
)
しかろうと思ってね、
私
(
わし
)
も誠に案じられて
心配
(
しんぺえ
)
してえますよ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今日
(
けふ
)
はまだおいひでないが、かういふ
雨
(
あめ
)
の
降
(
ふ
)
つて
淋
(
さみ
)
しい
時
(
とき
)
なぞは、
其時分
(
そのころ
)
のことをいつでもいつてお
聞
(
き
)
かせだ。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
涙
掃
(
はら
)
って
其後
(
そののち
)
を問えば、
御待
(
おまち
)
なされ、話しの調子に乗って居る内、炉の火が
淋
(
さみ
)
しゅうなりました。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「それでもお
淋
(
さみ
)
しかろうとおもって、オホオホ」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夕暮の
淋
(
さみ
)
しさはだんだんと脳を噛んで来る。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
僕は僕の希望した通り、平生に近い落ちつきと冷静と
無頓着
(
むとんじゃく
)
とを、比較的容易に、
淋
(
さみ
)
しいわが二階の上に
齎
(
もた
)
らし帰る事ができた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「本当に、暫らくお見えになりませんでしたね。
貴君
(
あなた
)
が、いらっしゃらないと、
此処
(
ここ
)
の
客間
(
サロン
)
も
淋
(
さみ
)
しくていけない。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それじゃアお帰り遊ばして
直
(
す
)
ぐに是から又夜お
出
(
いで
)
遊ばしますか、このお
淋
(
さみ
)
しい道を…誠に悪い事を致しました
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜になって
塒
(
とや
)
へ入るのは何もかわったことはないけれど、何だか
淋
(
さみ
)
しそうで可哀相だねえ、
母様
(
おっかさん
)
と二人ばかしになったって、お前、私が居れば可いじゃあないか。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
燧寸
(
マッチ
)
の箱のようなこんな家に居るにゃあ似合わねえが
過日
(
こねえだ
)
まで
贅
(
ぜい
)
をやってた
名残
(
なごり
)
を見せて、今の今まで締めてたのが無くなっている
背
(
うしろ
)
つきの
淋
(
さみ
)
しさが、
厭
(
いや
)
あに眼に
浸
(
し
)
みて
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「はい。お一人でお
臥
(
よ
)
ッていらッしゃいましたよ。お
淋
(
さみ
)
しいだろうと思ッて私が参りますとね、あちらへ行ッてろとおッしゃッて、何だか考えていらッしゃるようですよ」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
幸助を中にして三つの墓並び、冬の夜は
霙
(
みぞれ
)
降ることもあれど、都なる年若き教師は源叔父今もなお一人
淋
(
さみ
)
しく磯辺に暮し
妻子
(
つまこ
)
の事思いて泣きつつありとひとえに哀れがりぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
柳
(
やなぎ
)
が、気ぜわしそうにそのくせ
淋
(
さみ
)
しく
揺
(
ゆ
)
れる。橋が、夏とは違ってもっとよそよそしく乾くと、
靴
(
くつ
)
より、日本のひより
下駄
(
げた
)
をはいて歩く音の方がふさわしい感じである。巴里に秋が来たのだ。
巴里の秋
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
こんな寒い晩に登ったのは始めてなんだから、岩の上へ坐って少し落ち着くと、あたりの
淋
(
さみ
)
しさが次第次第に腹の底へ
沁
(
し
)
み渡る。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隔
(
へだて
)
の襖は裏表、両方の肩で
圧
(
お
)
されて、すらすらと三寸ばかり、暗き柳と、曇れる花、
淋
(
さみ
)
しく顔を見合せた、トタンに
跫音
(
あしおと
)
、続いて跫音、夫人は
衝
(
つ
)
と
退
(
の
)
いて小さな
咳
(
しわぶき
)
。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其処
(
そこ
)
へ坐っちゃアいけません、
此処
(
こゝ
)
は
家
(
うち
)
の中じゃありません、表でございます、こんな処に居ては
淋
(
さみ
)
しいし、寒くって堪りません、もう少しだからサア
往
(
い
)
きましょう
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
代助はその笑の中に一種の
淋
(
さみ
)
しさを認めて、眼を正して、三千代の顔を
凝
(
じっ
)
と見た。三千代は急に団扇を取って
袖
(
そで
)
の下を
煽
(
あお
)
いだ。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんなこといつてる
隙
(
ひま
)
がなかつたのが、
雨
(
あめ
)
で
閉籠
(
とぢこも
)
つて
淋
(
さみ
)
しいので
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した
序
(
ついで
)
だから
聞
(
き
)
いたので
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手前は紀伊國屋
宗十郎
(
そうじゅうろう
)
の手代伊兵衞と申すもので、若主人伊之助は昨年より少々不首尾なことがありまして、只今まで斯様に
淋
(
さみ
)
しい処に押込められて窮命に成って居りますから
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
平生食卓を
賑
(
にぎ
)
やかにする義務をもっているとまで、
皆
(
みん
)
なから思われていた自分が、急に黙ってしまったので、テーブルは変に
淋
(
さみ
)
しくなった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
淋
(
さみ
)
しいのかと謂って、少しく抱きあげて、
牙
(
きば
)
のごとく鋭き
嘴
(
くちばし
)
にお夏は頬の触らぬばかり
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
火を持って来ておくれな……なにマチが這入って居ると、マチはあっても
宜
(
い
)
いから火を一つ持ってお
出
(
いで
)
な……
淋
(
さみ
)
しくっていけねえから……なに夜は火はない、
虚言
(
うそ
)
ばかり吐いて居る
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もっとも父はよほど以前に死んだとかで、今では母とたった二人ぎり、
淋
(
さみ
)
しいような、また
床
(
ゆか
)
しいような生活を送っている。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
伊「そんな怖い顔をしなくっても
宜
(
い
)
いじゃアないか、私が悪ければこそ斯んな
淋
(
さみ
)
しい処に来て、小さくなってるので、
余
(
あんま
)
り
徒然
(
とぜん
)
だから
発句
(
ほっく
)
でも
詠
(
や
)
ろうと思ってちょいと筆を取ったのだよ」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
蝙蝠
(
こうもり
)
が黒く、見えては隠れる横町、総曲輪から裏の
旅籠町
(
はたごまち
)
という
大通
(
おおどおり
)
に通ずる小路を、ひとしきり
急足
(
いそぎあし
)
の
往来
(
ゆきき
)
があった後へ、もの
淋
(
さみ
)
しそうな姿で
歩行
(
ある
)
いて来たのは、大人しやかな学生風の
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宵
(
よひ
)
の口ではあるが、場所が場所丈にしんとしてゐる。庭の
先
(
さき
)
で虫の
音
(
ね
)
がする。独りで
坐
(
すは
)
つてゐると、
淋
(
さみ
)
しい秋の
初
(
はじめ
)
である。其時遠い所で
誰
(
だれ
)
か
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄暗い
中
(
うち
)
に
振仰
(
ふりあお
)
いで見るばかりの、
丈
(
たけ
)
長
(
なが
)
き女の
衣
(
きぬ
)
、低い天井から桂木の
背
(
せな
)
を
覗
(
のぞ
)
いて、
薄煙
(
うすけむり
)
の
立迷
(
たちまよ
)
ふ中に、
一本
(
ひともと
)
の
女郎花
(
おみなえし
)
、
枯野
(
かれの
)
に
彳
(
たたず
)
んで
淋
(
さみ
)
しさう、
然
(
しか
)
も
何
(
なん
)
となく
活々
(
いきいき
)
して、
扱帯
(
しごき
)
一筋
(
ひとすじ
)
纏
(
まと
)
うたら
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その濁った音が
彗星
(
ほうきぼし
)
の尾のようにほうと宗助の
耳朶
(
みみたぶ
)
にしばらく響いていた。次には二つ鳴った。はなはだ
淋
(
さみ
)
しい音であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「恐れるな。
小天狗
(
こてんぐ
)
め、」とさも悔しげに口の内に
呟
(
つぶや
)
いて、
洋杖
(
ステッキ
)
をちょいとついて、
小刻
(
こきざみ
)
に二ツ三ツ
地
(
つち
)
の上をつついたが、
懶
(
ものう
)
げに帽の前を
俯向
(
うつむ
)
けて、射る日を
遮
(
さえぎ
)
り、
淋
(
さみ
)
しそうに、一人で歩き出した。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
代助は其
笑
(
わらひ
)
の
中
(
なか
)
に
一種
(
いつしゆ
)
の
淋
(
さみ
)
しさを認めて、
眼
(
め
)
を
正
(
たゞ
)
して、三千代の
顔
(
かほ
)
を
凝
(
じつ
)
と見た。三千代は急に
団扇
(
うちは
)
を取つて
袖
(
そで
)
の
下
(
した
)
を
煽
(
あほ
)
いだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
淋
漢検準1級
部首:⽔
11画
“淋”を含む語句
御淋
淋漓
薄淋
淋巴腺
口淋
淋巴液
心淋
鮮血淋漓
淋巴
物淋
味淋
慷慨淋漓
墨痕淋漓
裏淋
淋病
溌墨淋漓
淋巴質
淋代
白味淋
光淋屏風
...