ぼっ)” の例文
旧字:
「見よ、見よ。凶雲きょううんぼっして、明星みょうじょう出づ。白馬はくばけて、黄塵こうじんめっす。——ここ数年を出でないうちじゃろう。青年よ、はや行け。おさらば」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けものきばをならべるように、とお国境こっきょうほうからひかったたか山脈さんみゃくが、だんだんとひくくなって、しまいにながいすそをうみなかへ、ぼっしていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はすでにぼっした。イワン、デミトリチはかおまくらうずめて寐台ねだいうえよこになっている。中風患者ちゅうぶかんじゃなにかなしそうにしずかきながら、くちびるうごかしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
有名な地動説をとなえ、その書物は一五四三年に彼のぼっする直前に出版されて、それから世に広まったのでしたが、その頃の宗教家のはげしい非難にって
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)
海峡の東口は、びょうびょうたる大洋であるが、西口は小島嶼しょうとうしょ錯雑紛糾さくざつふんきゅうして、アンデス山脈と平行に北方にのぼり、チロエ島にいたって、まったく影をぼっしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
鷲津幽林は寛政十年十月十七日享年七十三でぼっした。さればその生れたのは享保きょうほう十一年丙午である。即新井白石あらいはくせきの没した翌年にして安達清河あだちせいか立松東蒙たてまつとうもうの生れた年である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
開ける雲雀は嬉々ききとしてツンツン啼きながら高く高くのぼって行き姿をかすみの中にぼっする女師匠は見えぬ眼を上げて鳥影とりかげを追いつつやがて雲の間から啼きしきる声が落ちて来るのを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あとに残った子供たちに呼び立てられて、母娘おやこは寂しい影を夜の雨にぼっして去った。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「溺死です。あの奔流ほんりゅうに流され、便所のわきで水中にぼっしました。気の毒な博士……」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
く所必ず音楽界の中心人物として、多くの友人達と子弟の間に大きな影響を与え、名実共に欧州楽壇の大御所として、一八八六年七月三十一日七十五歳でぼっするまでその盛名が続いた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
その姿も見えないほどな数の中にぼっして彼は善戦に努めていたが、ただ主人官兵衛の身だけがうしろの気懸きがかりであるらしかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白々しろじろとして、ぎんのペンセルのように、あまがわが、しんとした、よるそらながれて、そのはし地平線ちへいせんぼっしていました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはつまり、一種の潜水艇だが、深くは沈まない。海面から、このふねの背中がようやぼっする位、つまり数字でいえば、波面はめんから二三十センチ下にくぐり、それ以上は潜らない一人乗りの潜波艇だ」
それが、たがいにいかけってでもいるように、きんや、ぎんや、あおや、あかほしがきらめいていた。そして、いつともなしにときがたつと、みんなかげ地平線ちへいせんのかなたにぼっしてゆく。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くつわをならべて、同時にあてた三むち! 一声ひとこえ高くいななき渡って、霧のあなたへ、こまも勇士もたちまち影をぼっしさったが、まだ目指めざすところまでは、いくたの嶮路けんろいくすじの川
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太陽がぼっしたのである。そして夜が来たのだ。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
K町ケーまちは、むかしから鉄工場てっこうじょうのあるところとして、られていました。まちには、金持かねもちが、たくさんんでいました。西にしほうると、たかやまかさなりって、そのいただきくもぼっしていました。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
ほとんど狂気のように叱咜しったしてまわったが、なにせよ、身をぼっすばかりな深山笹みやまざさ、杉の若木、蔦葛つたかずらなどがいしげっているので、うごきも自由ならずさがしだすのもよういでなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばとは、朝日あさひひかりびて、はなれると、そらたからかに、元気げんきよくんでゆきました。そしてやがて、そのかげそらなかぼっしてしまった時分じぶん母親ははおやは、ためいきをもらしました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふるき人、新しき人、また、新旧両道の人など——この信貴山の一怒濤いちどとうにも、或いはほろび、或いはおこり、或いはぼっし、或いはあらわれ——時代の激動は、この地上に、変貌へんぼうあます所もなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、うたがやむとともに、それらのかたちかげもどこへかぼっしてしまいました。かれが、またハーモニカで、インターナショナルをうたったときには、洋々ようようたる海原うなばら前面ぜんめんがりました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばわりながら、身をぼっするような熊笹くまざさのなかを追いのぼっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その方角ほうがくには、あわしろ銀河ぎんがながれて、まる地平ちへいぼっしていたのであります。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あれ!」といって、むすめは、こえをたてるひまもなく、姿すがたみずなかぼっしますと、そこに、それはそれはりっぱなおてらが、みずなかにあらわれて、いけそこほうから、かねひびいてきたのであります。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに太陽たいようひがしそらのぼると、もはやにわとりわかれをげなければなりません。ほしはさも名残なごりしそうにして、西にしそらぼっしてゆくのでありました。するとにわとりも、もうくのをやめてしまいます。
ものぐさなきつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
たかは、そらにまきこった、黒雲くろくもがけて、たかく、たかく、がりました。そして、その姿すがたくもなかに、ぼっしてしまいました。たかは、黒雲くろくもなかけりながら、かみなりかって、さけびました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その行方ゆくえひかったくさなかぼっしていました。工事場こうじば付近ふきんには、いし破片はへんや、小砂利こじゃりや、材木ざいもくなどがんでありました。また、ほかの工夫こうふたちは、おも鉄槌てっついで、材木ざいもくかわなかんでいます。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)