段々だんだん)” の例文
しかし段々だんだん落着おちつくにしたがって、さすがにミハイル、アウエリヤヌイチにたいしてはどくで、さだめし恥入はじいっていることだろうとおもえば。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
障子が段々だんだんまぶしくなって、時々吃驚びっくりする様な大きなおとをさしてドサリどうと雪が落ちる。机のそばでは真鍮しんちゅう薬鑵やかんがチン/\云って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
次の人の膝へ手を置くという風にして、段々だんだん順を廻すと、恰度ちょうどその内に一人返事をしないで座っている人が一人増えるそうで。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうしてヘンリーに対する証拠は段々だんだん集って来た。そこで探偵は更に一歩を進めて、ヘンリーとウォーカーとの関係を調べた。
恐ろしき贈物 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
勘次かんじ自分じぶん壁際かべぎはにはたきゞが一ぱいまれてある。そのうへ開墾かいこん仕事しごとたづさはつてなんといつてもたきゞ段々だんだんえてくばかりである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
段々だんだんえりのかかった筒袖を一枚素肌すはだに着たばかりで、不死身ふじみであるべく思わるる米友はまた、寒さの感覚にも欠けているべく見受けられます。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下流の方はまだ明るいが、山の方からは段々だんだんにくらくなって来て、町の家の窓や戸には早やともしびがきらめいてくるのでした。
不思議な魚 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
恰度ちょうど葬式だとの事、段々だんだんその死んだ刻限をきき合わしてみると、自分が聴いたことの音の刻限とぴったり合うので、私は思わず身震みぶるいをしたのであった
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
しかしながら金解禁きんかいきんごときは内外ないぐわい經濟上けいざいじやうから大問題だいもんだいである、しかるに年末ねんまつ段々だんだんちかづくのであるから、年末ねんまつ差迫さしせまつて斯樣かやう大問題だいもんだい決行けつかうすることは
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
しかし、ニールスはあとになってからも、段々だんだんのある破風はふだけは思いだすことができました。そこには、キリストと使徒しとぞうが、安置あんちされていました。
ポッカリと黒い、怪物の口の様なトンネルの入口が、段々だんだん形を大きくして近づいて来た。番小屋の中で手内職の編ものをしている仁兵衛爺さんの姿も見える。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それよりほかにいきようはないので、いずれまた、段々だんだんと上へのぼることになるのであろうと、一同はそれにすがってりていくと、その深いことはおどろくくらい——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両人ふたり其所そこ大分だいぶんだ。ことふ事はむかしの通りだねとつたのがはじまりで、こわした段々だんだんゆるんでた。代助は面白さうに、二三日まへ自分のに行つた、ニコライの復活祭の話をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
黙っていられず、自分も早速さっそくくやみに行った、そして段々だんだん聴いてみると、急病といっても二三日ぜんからわるかったそうだが、とうとう今朝けさ暁方あけがたに、息を引取ひきとったとの事、自分がその姿を見たのも
闥の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
で、第一日の夜、市勝が俯向うつむいて手紙を書いてゐると、鼻のさき障子しょうじが自然にすうと明いた。これ序開じょびらきとして種々いろいろの不思議がある。段々だんだん詮議すると、これは此家このやに年古く住むいたち仕業しわざだと云ふ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
留守中一回もないた事が無く、しかも肥太こえふとりて丈夫に育つ事、あまりに不思議と、我も思えば人も思い、段々だんだん噂が高くなり、ついには母の亡霊きたりて、乳をのますのだと云うこと、大評判となり家主より
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
音響がひどく烈しく、段々だんだん近く聞えて来た。と
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
が、かれ年月としつきつとともに、この事業じぎょう単調たんちょうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがって、段々だんだんきてた。かれおもうたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
段々だんだんをのぼり、しきいをこえて、玄関げんかんにはいりました。部屋の戸はしまっていましたが、すみのほうに、ネコが出はいりできるくらいのあながあいていました。
それが毎日のように度重たびかさなると段々だんだん判然はっきり見える。姿見のない処に、自分の顔が映るようで、向うが影か、自分が影か、何とも言えない心細い、さびしい気がしたのだそうです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可能ふかのうであるならば、あのとき爲替相場かはせさうば四十三ドルぶんの三は到底たうてい維持ゐぢ出來できないのであつて、段々だんだんさがつてることはあきらかなことで、あの時期じき爲替相場かはせさうば極端きよくたんさがつたならば
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
東京が段々だんだん西へ寄って来て、豊多摩とよたま荏原えばらの諸郡は追々市外宅地や工場等の場所になり、以前もっぱ穀作こくさく養蚕ようさんでやって居た北多摩郡が豊多摩荏原にかわって蔬菜そさい園芸品えんげいひんを作る様になり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ちょうどまだ冬に入ったばかりから病みついて、段々だんだんにわるくなる一方です。」
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
晝餐ひるあとつめたくつたときなどにはかれはそこらのあつめてやす。くすぶつていつでもあをけむりすこしづゝつてる。かれそのけむり段々だんだんとほざかりつゝ唐鍬たうぐはんでる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ヤッローがいなくなったつぎの日に、ペール・オーラは中庭なかにわをかけまわって、いつものようにひとりであそんでいました。セーサルは段々だんだんの上にねそべっていました。
イワン、デミトリチははじめのうち院長いんちょう野心やしんでもあるのではいかとうたがって、かれにとかくとおざかって、不愛想ぶあいそうにしていたが、段々だんだんれて、ついにはまった素振そぶりえたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
唯、背負紐おぶいひもが、お待ち下さい——段々だんだんに、迷いは深くなるようですが——紫と水紅色ときいろ手綱染たづなぞめです。……はてな、私をおぶった、お奇駒さんの手綱染を、もしその時知っていましたら……
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私もって行って見たが、全く何処どこにも見えない、奇妙な事もあるものだと思ったが、何だか、嫌な気持のするので、何処どこまでもたしかめてやろうと段々だんだん考えてみると、元来もとこの手桶というは
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浮出うきだしたように真中へあらわれて、後前あとさきに、これも肩から上ばかり、爾時そのときは男が三人、ひとならびに松の葉とすれすれに、しばらく桔梗ききょう刈萱かるかやなびくように見えて、段々だんだん低くなって隠れたのを、何か
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初めは何か子供の悪戯いたずらだろうくらいにして、別に気にもかけなかったが、段々だんだん悪戯いたずらこうじて、来客の下駄やからかさがなくなる、主人が役所へ出懸でかけに机の上へ紙入かみいれを置いて、後向うしろむきに洋服を着ている
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)