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懇
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ねんごろ
ふりがな文庫
“
懇
(
ねんごろ
)” の例文
彼等の物語をば
笑
(
ゑま
)
しげに傍聴したりし横浜
商人体
(
しようにんてい
)
の乗客は、
幸
(
さいはひ
)
に
無聊
(
ぶりよう
)
を慰められしを謝すらんやうに、
懇
(
ねんごろ
)
に
一揖
(
いつゆう
)
してここに下車せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
われ半面を扇にて蔽ひつゝ、その乙女を呼び止めて、長崎へ行く道を問ふに、乙女は恥ぢらひつゝ笠を取り、いと
懇
(
ねんごろ
)
に教へ呉れぬ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
アクリシウスすなわち母子を木箱に
納
(
い
)
れ、海に投げたが、セリフス島に漂到して、漁師ジクッスの網に
罹
(
かか
)
り、救われ、
懇
(
ねんごろ
)
に養わる。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と
頭陀
(
ずた
)
の中から結構な香を取出し、
火入
(
ひいれ
)
の中へ入れまして、是から香を薫き始め、禅宗の和尚様の事だから、
懇
(
ねんごろ
)
に御回向がありまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
時に御主人、われ等ここへ斯う参って、御家族にお目にかかり
懇
(
ねんごろ
)
な御給仕に預るのも何かの因縁です。折角の機会ですから娘御たちに三帰を
茶屋知らず物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
伯父が見兼ねて、
態々
(
わざわざ
)
上京して、もう小説家になるなとは言わぬ、唯是非一度帰省して両親の心を安めろと
懇
(
ねんごろ
)
に
諭
(
さと
)
して呉れた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
懇
(
ねんごろ
)
なる看護の恩を謝し、今はよしなき望を絶ちて餘所の軍役に服せんとおもへば、最早羅馬にて相見ることはあらじと書せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そのために世代の営んでいる偽りない辛苦の混乱をも、やはり
懇
(
ねんごろ
)
に評価され、ひろい歴史の前に観察されなければなるまい。
世代の価値:世界と日本の文化史の知識
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そこへこの一件をききこんだから、これ幸いと実は当地においてノブちゃんを
懇
(
ねんごろ
)
に口説こうというわけです。今日あたりは物になるだろうな。
青鬼の褌を洗う女
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お母さん、
真
(
ほんと
)
に民子は可哀相でありました。しかし取って返らぬことをいくら悔んでも仕方がないですから、跡の事を
懇
(
ねんごろ
)
にしてやる外はない。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
付て一同に通夜迄もなし
翌朝
(
よくあさ
)
は
泣々
(
なく/\
)
野邊
(
のべ
)
の
送
(
おく
)
りさへ
最
(
いと
)
懇
(
ねんごろ
)
に取行なひ妻の
紀念
(
かたみ
)
と
孤子
(
みなしご
)
を
漸々
(
やう/\
)
男の手一ツに
育
(
そだ
)
てゝ月日を送りけり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
古い
札
(
ふだ
)
が
下
(
さが
)
っていますが、——時々和漢の故事を引いて、親子の恩愛を忘れぬ事が、即ち仏恩をも報ずる
所以
(
ゆえん
)
だ、と
懇
(
ねんごろ
)
に話して聞かせたそうです。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
太息
(
といき
)
吐き『それ程事情が聞きたけりやあ、話すまいものでもないが。一体手前は、あの深井と、いつから
懇
(
ねんごろ
)
したんだい』
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
……(下人に)やい、
汝
(
そち
)
はヹローナ
中
(
ぢゅう
)
を
駈𢌞
(
かけまは
)
って(書附を渡し)
爰
(
こゝ
)
に
名前
(
なまへ
)
の
書
(
か
)
いてある
人達
(
ひとたち
)
を
見附
(
みつ
)
けて、
今宵
(
こよひ
)
我
(
わが
)
邸
(
やしき
)
で
懇
(
ねんごろ
)
に
御入來
(
ごじゅらい
)
をお
待
(
ま
)
ち
申
(
まう
)
すと
言
(
い
)
へ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
これは他山がいまだ仕途に
就
(
つ
)
かなかった時、元秀がその貧を知って、
糈
(
しょ
)
を受けずして
懇
(
ねんごろ
)
に治療した時からの
交
(
まじわり
)
である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
火はこうして と
懇
(
ねんごろ
)
に教えながら昼飯の支度をして、やがて飯ができたのでちょこなんと
畏
(
かしこま
)
って給仕をしてくれる。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
(殿、ふと
気紛
(
きまぐ
)
れて出て、
思懸
(
おもいがけ
)
のう
懇
(
ねんごろ
)
申した
験
(
しるし
)
じゃ、の、殿、望ましいは
婦人
(
おなご
)
どもじゃ、何と
上﨟
(
じょうろう
)
を奪ろうかの。)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
後
(
ご
)
ある友人が、日本の神道を研究するには、必ず
黒住宗忠
(
くろずみむねただ
)
の説を
窺
(
うかが
)
わねばならぬと注意してくれて、
懇
(
ねんごろ
)
にもこの偉人に関する出版物を送ってくれた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
父の耳目を欺かん其の
語
(
ことば
)
、先頃其方が儕輩の
足助
(
あすけ
)
の二郎殿、年若きにも似ず、其方が横笛に想ひを懸け居ること、後の爲ならずと
懇
(
ねんごろ
)
に潛かに我に告げ呉れしが
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
女子幼少の時より能く此趣意の大概を言い聞かせ、文字を知るに至れば此書を授けて自から読ましめ、不審あらば
懇
(
ねんごろ
)
に其意味を解き聞かせて誤ること
勿
(
なか
)
らしめよ。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
利家招じ入れると勝家、年来の
誼
(
よしみ
)
を感謝して落涙に及んだ。勝家、利家に「貴殿は秀吉と
予
(
かね
)
て
懇
(
ねんごろ
)
であるから、今後は秀吉に従い、幼君守立ての為に力を致される様に」
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
同行した宗像博士は、一晩そこに泊って、川手氏の気持の落ちつくのを見届け、老人夫婦にその世話を
懇
(
ねんごろ
)
に頼んだ上、直ちに東京に引返した。復讐鬼は東京にいるのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この三人でまずやることになったが、無論、亀岡氏は翌朝早々見えられ、自分の言の適中したことを大いに悲しみ、
懇
(
ねんごろ
)
に仏の前に礼拝をされて後、私を他へ
招
(
よ
)
んで申すには
幕末維新懐古談:29 東雲師没後の事など
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
平常
(
つね
)
は
道理
(
だうり
)
がよく
解
(
わか
)
る
人
(
ひと
)
ではないか、
氣
(
き
)
を
靜
(
しづ
)
めて
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
して
呉
(
く
)
れ、
植村
(
うゑむら
)
の
事
(
こと
)
は
今更
(
いまさら
)
取
(
とり
)
かへされぬ
事
(
こと
)
であるから、
跡
(
あと
)
でも
懇
(
ねんごろ
)
に
吊
(
とぶら
)
つて
遣
(
や
)
れば、お
前
(
まへ
)
が
手
(
て
)
づから
香花
(
かうげ
)
でも
手向
(
たむけ
)
れば
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
増×寺様でも快くお引受け下さいまして、
懇
(
ねんごろ
)
に
回向
(
えこう
)
をしておくから、もう何にも心配せずに安心してお帰りと仰せて下さいましたので、はじめて私どもも
吻
(
ほっ
)
といたしました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「お安さんは君の身代りに死んだのだ、
懇
(
ねんごろ
)
に弔うて遣り玉え」墓守は斯く其の若者に云うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「主人の彦兵衞は五十を越してから急に若返つて、近頃隣町の小唄の師匠と
懇
(
ねんごろ
)
になり、近いうちに改めて仲人を立てて、後添にして家へ引入れることになつて居たさうですよ」
銭形平次捕物控:218 心中崩れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この部屋へ歩いて入ると、知事が出て来て、
懇
(
ねんごろ
)
に私に挨拶したが、殆ど十時に近かったにもかかわらず、彼の態度には、いささかも待ちくたびれたような所が見られなかった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
……お梅のほうは顔もよく覚えていない金三郎を恋い慕い、
佐土原
(
さどはら
)
人形に着物をきせて三度々々
影膳
(
かげぜん
)
をすえ、あなた、あなたと生きた金三郎がそこにいるように
懇
(
ねんごろ
)
に話しかける。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「おゝ、ほんにそうでございました。そう云う思し召なら頂戴いたしましょう。私は少しも欲しくありませんが、仰せの通り死んだ貞の墓を建てゝ、
後
(
あと
)
懇
(
ねんごろ
)
に弔ってやりましょう」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
徒ニ遺産ヲ費シ安然トシテ妻子ヲ
畜
(
やしな
)
フ。文子ノイハユル孝ハ妻子ニ衰フモノトハ僕ノ
謂歟
(
いいか
)
。多罪。野君久シク病ニ伏シ書ヲ賢兄ニ
修
(
おさむ
)
ルコト能ハズ。僕ニ属シテ
懇
(
ねんごろ
)
ニ謝セシム。
頓首
(
とんしゅ
)
死罪。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
門口にかぶさりかかつた
一幹
(
ひともと
)
の松の枝ぶりからでも、それが今日でこそ
徒
(
いたづ
)
らに硬く太く長い針の葉をぎつしりと身に着けて居ながらも、曾ては人の手が、
懇
(
ねんごろ
)
にその枝を
労
(
いた
)
はり葉を揃へ
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
で、純八は座敷へ請じて、茶を淹れ
斎
(
とき
)
を進めたりして、
懇
(
ねんごろ
)
に僧を待遇したが
高島異誌
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ということを
懇
(
ねんごろ
)
に教えたので、遊女は随喜の涙を流した。法然その態を見て
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
は
此
(
こ
)
れで
飾
(
かざり
)
だから
他人
(
ひと
)
にも
見
(
み
)
られるからね」
内儀
(
かみ
)
さんは
懇
(
ねんごろ
)
にいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そうした死骸に往き当ると穴を掘り、
野花
(
やか
)
を
供
(
そな
)
えて
懇
(
ねんごろ
)
に埋めてやった。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
虚子は、ここで
掛声
(
かけごえ
)
をいくつかけて、ここで鼓をどう打つから、おやりなさいと
懇
(
ねんごろ
)
に説明してくれた。自分にはとても
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
めない。けれども
合点
(
がてん
)
の行くまで研究していれば、二三時間はかかる。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
決して悪い料簡で今のやうな事をしたのでは無い。娘さんの恥にならないやうに、わたしが立派に女房に持つと云つた。さもユリアと
懇
(
ねんごろ
)
にして、
草臥
(
くたび
)
れて、膝を枕にして寝たのだと云ふ風である。
センツアマニ
(新字旧仮名)
/
マクシム・ゴーリキー
(著)
池田伊豫守の三人をお遣わしになりました、急ぎ最期の御用意をなされい、思し召し置く事も候わば、此の者に仰せ聞けられ候え、後々の御
孝養
(
きょうよう
)
は
懇
(
ねんごろ
)
に沙汰を致すでござろう、と云う口上である。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
榎本は彼等の陳情を、両眼を湿ませながら
懇
(
ねんごろ
)
にきいていたが
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
嬢は老婦人の前に材料の品々を持ち来りて一々
懇
(
ねんごろ
)
に説明し
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
栄三郎様は、浅草三社まえとかの女と
懇
(
ねんごろ
)
になさっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
館の人とも自然に
懇
(
ねんごろ
)
にしあつてゐられた。
淡島寒月氏
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、
懇
(
ねんごろ
)
に
諭
(
さと
)
すのであった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
畦塗るや首をかしげて
懇
(
ねんごろ
)
に
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
元禄五年板、洛下俳林子作『新百物語』二に金沢辺の甚三郎という商人、貧しくなり、大黒天を
勧請
(
かんじょう
)
して、甲子の日ごとに
懇
(
ねんごろ
)
にこれを祀る。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
吾家に
錫
(
しゃく
)
を
止
(
とど
)
め給ひてその巻物を
披見
(
ひけん
)
せられ、仏前に
引摂結縁
(
いんじょうけちえん
)
し給ひて
懇
(
ねんごろ
)
に
読経供養
(
どきょうくよう
)
を賜はりし
後
(
のち
)
、裏庭に在りし
大栴檀樹
(
だいせんだんじゅ
)
を
伐
(
き
)
つて其の
赤肉
(
せきにく
)
を選み
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
(いんえご
懇
(
ねんごろ
)
には及びましねえ。しっ!)と
荒縄
(
あらなわ
)
の
綱
(
つな
)
を引く。青で
蘆毛
(
あしげ
)
、
裸馬
(
はだかうま
)
で
逞
(
たくま
)
しいが、
鬣
(
たてがみ
)
の薄い
牡
(
おす
)
じゃわい。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
思へば殿下の
懇
(
ねんごろ
)
な招請三ヶ年、上洛に応ぜぬばかりか四隣に兵をさしむけて私利私闘にふける、遂に御成敗を蒙るは自業自得、誰を恨むところもござらぬ。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
岡村もおかしいじゃないか、訪問するからと云うてやった時彼は
懇
(
ねんごろ
)
に返事をよこして、楽しんで待ってる。
浜菊
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
懇
常用漢字
中学
部首:⼼
17画
“懇”を含む語句
昵懇
御懇
懇意
懇望
懇々
眤懇
懇親
別懇
懇願
懇篤
懇切
入懇
顔昵懇
御懇情
御眤懇
御懇望
懇情
懇談会
懇請
御昵懇
...