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憤
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いきどお
ふりがな文庫
“
憤
(
いきどお
)” の例文
憤
(
いきどお
)
りを感じましたが、お手討ちに
遇
(
あ
)
いました忍びの男には却って
不便
(
ふびん
)
を催しましたので、たしかその明くる日のことでござりました。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、唇を噛んで
憤
(
いきどお
)
りをもらしかけたが、ふと一方にたたずんでいる蔡和、蔡仲のふたりを、じろと眼の隅から見て、急に口をつぐみ
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海は静かにその小石を受け取りました。兄さんは
手応
(
てごたえ
)
のない努力に、
憤
(
いきどお
)
りを起す人のように、二度も三度も同じ
所作
(
しょさ
)
を繰返しました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
後世
(
こうせい
)
地上
(
ちじょう
)
に
来
(
きた
)
るべき
善美
(
ぜんび
)
なる
生活
(
せいかつ
)
のこと、
自分
(
じぶん
)
をして一
分
(
ぷん
)
毎
(
ごと
)
にも
圧制者
(
あっせいしゃ
)
の
残忍
(
ざんにん
)
、
愚鈍
(
ぐどん
)
を
憤
(
いきどお
)
らしむる
所
(
ところ
)
の、
窓
(
まど
)
の
鉄格子
(
てつごうし
)
のことなどである。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
痩
(
や
)
せさらばえた姿を、ひどく馬鹿馬鹿しく、
憤
(
いきどお
)
ろしく思い出すと共に何かしら解放されたような、安易さを覚えて来るのであった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
▼ もっと見る
わがままな、
憤
(
いきどお
)
りやすい夫人は、じりじりして来、こうなって来ると妙にしつこく、良人を残して外出することが出来なくなった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
例えば
耶蘇
(
やそ
)
教の神さんでも、その昔人民が罪悪に
陥
(
おちい
)
って
済度
(
さいど
)
し難いからというて大いに
憤
(
いきどお
)
り、大洪水を起して
総
(
すべ
)
ての罪悪人を殺し
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ある日カヤノはよそゆきの着物のままでその歩き方にまで心の中の激しい
憤
(
いきどお
)
りを現しているかのように、風を切って入ってきた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
否、よくよく誰もが抑え切れぬ
憤
(
いきどお
)
りを発していたと見えて、揉み合っている人垣のうしろから、爆発するように罵り叫んだ声が挙りました。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
油に汚れた頬があやしげな光を放っている。誰れに向けらるべきものかそれは激しい
憤
(
いきどお
)
りの現われである。私にも云うべき言葉がなくなる。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
満面朱を注いで憎悪に燃えるような
憤
(
いきどお
)
ろしさのそれであった。が相変らず扉に凭れたまま私はニヤニヤと姿勢も変えずにいた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その後ろ姿を見ると葉子は胸に時ならぬときめきを覚えて、
眉
(
まゆ
)
の上の所にさっと熱い血の寄って来るのを感じた。それがまた
憤
(
いきどお
)
ろしかった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「文芸」九・十月号に志賀直哉は原子爆弾の残虐さに
就
(
つい
)
て
憤
(
いきどお
)
りをもらしているが、この人道ぶりも低俗きわまるものである。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その可憐な様子を見ると、格二郎は、彼自身の貧乏については、
嘗
(
か
)
つて抱いたこともない、ある
憤
(
いきどお
)
りの
如
(
ごと
)
きものを感じぬ訳には行かなかった。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さりながら、かの
端唄
(
はうた
)
の文句にも、色気ないとて苦にせまい
賤
(
しず
)
が
伏家
(
ふせや
)
に月もさす。
徒
(
いたずら
)
に悲み
憤
(
いきどお
)
って身を破るが如きはけだし賢人のなさざる処。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頭はたたき
割
(
わ
)
られ、
腕
(
うで
)
はへし折られて、これがあの
温厚
(
おんこう
)
な人の姿であるか、と
憤
(
いきどお
)
りを感じさせるほどに、ひどいものだった。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
先に政権の独占を
憤
(
いきどお
)
れる民権自由の叫びに狂せし妾は、今は
赤心
(
せきしん
)
資本の独占に抗して、不幸なる
貧者
(
ひんしゃ
)
の救済に
傾
(
かたむ
)
けるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
このような
太平楽
(
たいへいらく
)
を、何の
屈託
(
くったく
)
もなしに平然と口にすることのできた自分の浅墓さに私は
憤
(
いきどお
)
りをかんじないではいられぬ。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
に、
結局
(
けっきょく
)
へとへとになって、
揚句
(
あげく
)
は
酒場
(
さかば
)
で
泥酔
(
でいすい
)
し、わずかに
鬱
(
うつ
)
を
晴
(
は
)
らしたのです。
彼
(
かれ
)
は、
芸術
(
げいじゅつ
)
を
商品
(
しょうひん
)
に
堕落
(
だらく
)
さしたやからをも
憤
(
いきどお
)
りました。
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
景は女が約束に
負
(
そむ
)
いて他の家へ
適
(
い
)
ったのを知って
憤
(
いきどお
)
りで胸の中が一ぱいになった。彼は大声をあげて叫ぶようにいった。
阿霞
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
美しい百合の
憤
(
いきどお
)
りは
頂点
(
ちょうてん
)
に
達
(
たっ
)
し、
灼熱
(
しゃくねつ
)
の
花弁
(
かべん
)
は雪よりも
厳
(
いか
)
めしく、ガドルフはその
凛
(
りん
)
と
張
(
は
)
る音さえ
聴
(
き
)
いたと思いました。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
お銀様は
憤
(
いきどお
)
っている、いかにして何物を憤っているかということは、前巻の終りに次のように記されてあったはずです。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから良平が陸軍大学の予備試験に及第しながら都合上後廻わしにされたを
憤
(
いきどお
)
って、
硝子窓
(
がらすまど
)
を打破ったと云う、最後に住んだ官舎の前を通った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
酔眼を
憤
(
いきどお
)
らしくあけたが、その眼の前に
躑躅
(
つつじ
)
の
叢
(
くさむら
)
が
円
(
まど
)
らかにコンモリと茂っていて、花がつばらかに咲き出していた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
間もなく己が妹を貰おうと云うは如何にも人情にはずれた悪人、
併
(
しか
)
し此の事はお蘭には云えず、心一つに
憤
(
いきどお
)
って居る。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
男の女に対する乱暴にも程があるという
憤
(
いきどお
)
りと、こんな事件を何とかしなければならないというあせった気持から
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
たぶん妹か、
姪
(
めい
)
らしい女の
児
(
こ
)
に声をかけると、
曼珠沙華
(
ひがんばな
)
のように
赫
(
あか
)
ちゃけた頭髪はくるッと振りむいて、ひどく
憤
(
いきどお
)
った顔色で「赤ンベイ」をしてみせた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
憤
(
いきどお
)
った情の厚い男——君、君、僕の言うことをひとつ聴いてくれたまえ。君は、元来、誰も愛してはいないんだ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
鎌倉殿
(
かまくらどの
)
は、船中に於て
嚇怒
(
かくど
)
した。
愛寵
(
あいちょう
)
せる女優のために群集の無礼を
憤
(
いきどお
)
つたのかと思ふと、——
然
(
そ
)
うではない。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれど自分にもどういう訳かははっきり分らないが、彼は再び歩き出しつつ怪しからんと
憤
(
いきどお
)
ろしげに呟いた。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
現に
基督
(
キリスト
)
のごときは前にも述べたごとく
柔和
(
にゅうわ
)
主義の教えを垂れたるにかかわらず、ときには大いに
憤
(
いきどお
)
り、綱をもって神殿を
汚
(
けが
)
した商人を
放逐
(
ほうちく
)
したことがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
次郎は、
横柄
(
おうへい
)
な口のきき方をする鈴田に対して、いつになく
憤
(
いきどお
)
りを感じ、返事をしないまま塾長室に行った。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
初めは確かに、弟の死を悲しみ、その首や手の
行方
(
ゆくえ
)
を
憤
(
いきどお
)
ろしく思い
画
(
えが
)
いている
中
(
うち
)
に、つい、妙なことを口走ってしまったのだ。これは彼の
作為
(
さくい
)
でないと言える。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし、この言葉は、その一座のひとびと全部の
憤
(
いきどお
)
りを買うことになったが、ことに男爵はひどく怒った。男爵はその人をほとんど異端者としか思わなかった。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
端正
(
たんせい
)
に
膝
(
ひざ
)
に手を置いてしずかに微笑しながら、森川夫人はこころのなかで泣いていた。悲しみとも
憤
(
いきどお
)
りともつかぬ痛烈な涙が、胸の裏側をしとどに流れおちた。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
狂人が狂人としての待遇を受くればきっと怒る。おなじ心理で、幼児もあまりに幼くちやほやされると
憤
(
いきどお
)
る。童謡の創作にもここはよほど注意すべきところだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
悩
(
なや
)
ましいばかりの
羞恥
(
しゅうち
)
と、人に
屈辱
(
くつじょく
)
を
与
(
あた
)
えるきりで、
何
(
なん
)
の
役
(
やく
)
にも立たぬ
型
(
かた
)
ばかりの
手続
(
てつづ
)
きを
憤
(
いきどお
)
る
気持
(
きもち
)
、その
蔭
(
かげ
)
から
躍
(
おど
)
りあがらんばかりの
喜
(
よろこ
)
びが、
彼
(
かれ
)
の心を
貫
(
つらぬ
)
いた。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
怪塔王は、すっかり
憤
(
いきどお
)
ってしまいました。そして、すぐさま、怪塔ロケット隊に出動準備を命じました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
余は
其
(
その
)
命
(
めい
)
に従わんとするに生田は痛く
憤
(
いきどお
)
り
拳
(
こぶし
)
を握りて目科に打て掛らんとせしかども、二人に一人の到底及ばぬを見て取りし如く
唯
(
た
)
だ悔しげなる溜息を洩すのみ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そして当時
平静
(
へいせい
)
に仕事をしていたけれども、その裏面には
憤
(
いきどお
)
りを
含
(
ふく
)
んでいたことが言いたかったのだ。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
彼女は先妻の幸子が、いつもの癖で、ずかずか上り込んで来て、
例
(
いつも
)
のくせで、朝、起きはぐれているところを、荒い足音で、わざと目をさまさせられたのを
憤
(
いきどお
)
った。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
所が前申す通り
榎本釜次郎
(
えのもとかまじろう
)
と私とは
刎頸
(
ふんけい
)
の
交
(
まじわり
)
と云う
訳
(
わ
)
けではなし、何もそんなに力を入れる程の親切のあろう訳けもない、
只
(
ただ
)
仙台藩士の腰抜けを
憤
(
いきどお
)
ったと同じ事で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
巡査が去ってから僕はまた堤にしゃがんで、水や
蘆
(
あし
)
を眺めながらぼんやりしていましたが、だんだん気持が
滅入
(
めい
)
ってきました。そして
憤
(
いきどお
)
ろしさが込み上げてきました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
憤
(
いきどお
)
ってこれを討ち、ために天下の民を安らかにした。これは臣の身として君を
弑
(
しい
)
したというべきではない。仁にもとり義にもとった一人の不徳者紂をころしたのである
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
早稲田大学総長の傍観を
憤
(
いきどお
)
ったということを聞いているが、日本国中で宮中と締盟諸国の大公使館とを除けば、学園であれ何であれ、司法権の発動を許さぬところはない。
マルクス主義は科学にあらず
(新字新仮名)
/
山川健次郎
(著)
即ち僕は、色々な小説を読んで或は悲しみ、或は
憤
(
いきどお
)
り、或は嬉しい思いをして、その度毎に注射
針
(
しん
)
をもって、左の腕の静脈から五
瓦
(
グラム
)
ずつの血液を取って、実験をしたのだ。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
で、今もまた、最初は私を見て喜び、朝鮮の話をきいては
憤
(
いきどお
)
っていたが、いつの間にか自分の愚痴ばなしに変って、のべつ幕なしにその苦しさを祖母に訴えるのであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
五百は六、七歳になってから、兄栄次郎にこの事を聞いて、ひどく
憤
(
いきどお
)
った。そして兄にいった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「けど、僕のお母さんが、つまりアリョーシャのお母さんだと思うんですが、どうお考えです?」突然、イワンは
憤
(
いきどお
)
ろしい侮辱の念を制しきれないで、思わずこう口走った。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
弟さまの
大長谷皇子
(
おおはつせのおうじ
)
は、まだ
童髪
(
どうはつ
)
をおゆいになっている一少年でおいでになりましたが、
目弱王
(
まよわのみこ
)
が天皇をお殺し申したとお聞きになりますと、それはそれはお
憤
(
いきどお
)
りになって
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
憤
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“憤”を含む語句
憤々
憤怒
憤然
御憤
憤懣
鬱憤
憤激
欝憤
憤怨
義憤
憤恨
憤恚
発憤
憂憤
憤気
憤慨
悲憤
余憤
悲憤慷慨
大憤慨
...