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伏家
さりながら、かの
端唄の文句にも、色気ないとて苦にせまい
賤が
伏家に月もさす。
徒に悲み
憤って身を破るが如きはけだし賢人のなさざる処。
遠山の形が
夕靄とともに近づいて、
麓の影に暗く住む
伏家の数々、
小商する店には、
早や
佗しい
灯が
点れたが、
此の
小路にかゝると、
樹立に深く、壁に
潜んで、一
燈の影も
漏れずに
寂しい。
お
別れといたしまして、
其處らの
茶店をあけさせて、
茶碗酒をぎうとあふり、
其の
勢で、
暗雲に、とんぼを
切つて
轉げるまでも、
今日の
内に
麓まで
歸ります、とこれから
雪の
伏家を
叩くと