やす)” の例文
古く驢と牛をあわせ耕すを禁じ(驢が力負けして疲れ弱りまた角で突かれる故)、モセスの制に七日目ごとに驢牛をやすますべしとあると。
『旦那様、それではいけません。お体にさわりますから、じゃお床をおのべいたしましょうか、少しおやすみになりましては?』
妖影 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
ばしの夢にやすんでられるかと思へば、君、其の細きランプの光が僕の胸中の悪念を一字々々に読み揚げる様におそれるのだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
梅鉢屋の女將おかみ赤毛氈あかまうせんを敷いた店頭みせさきに立つて、「御門内はお腰の物がりまへん。……やすんでおいでやす。……お腰の物を預けておいでやす。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
今またかかる悲しみを見て命の尽きなんとするは何事によるか、前生の報いか、この世の犯しか、神、仏、明らかにましまさばこのうれいをやすめたまえ
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「おお水が流れる、流れる。夜となく昼となく水があのように流れて行く。あの水のように、天の意志はやすむ時なく、永遠に流れて行くであろう。」
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
死者はその墓を出でて、母の胎内に眠ってる子供のように、彼らの思い出がやすらっている胸を持つ愛人へ、愛する者へ、色せたくちびる頬笑ほほえみかける。
數多あまた賓客まらうど女王樣ぢよわうさまのお留守るすにつけこんで、樹蔭こかげやすんでりました、が、女王樣ぢよわうさまのお姿すがたはいするやいなや、いそいで競技ゲームりかゝりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わずかに九州山脈にとれる木炭や、日向米などの物資を収集するための、上方かみがた通いの帆船が二三そう、帆をおろした柱だけの姿をやすんでいるのに過ぎない。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
それで、ふらふらと歩いて、まちの見下せる処まで往った。市は脚下にやすらって居り、月と河とで取巻く光輝のころものうちに身を埋め、ひそひそとささやいた。
飛んでもないことである。五十歳前、徳川三百年の封建社会をただ一あおりに推流おしながして日本を打って一丸とした世界の大潮流は、まずやすまず澎湃ほうはいとして流れている。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
やすまず限りなく流れるS河の水音がそうした彼の感情に常に和していたことは言うまでもない。しかし、平一郎にも苦しむべき時がやって来ねばならなかったのだ。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
其気になつてちよつこら腰をやすめてると、そこへあすこのかみさんが出て来てネ、思付おもひついた様に「オヤ、おとめさんかへ? きのふ来た手紙を忘れずにやらないでは」
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ここを出て地獄茶屋でひと休みやすんでいると、只事ただごとならぬ叫び声が聞える。スワ何事の出来しゅったいと、四人一度に飛び出す。見れば一頭の悍馬かんば谷川へちて今や押し流されんず有様。
この村は小い、古風な村です。それも尤も、むかし和蘭陀ヲランダの移住民が、当時善政の聞えのあつたペエテル、ストユイヱサント(渠は無窮の平和にやすめ)の時代に建てたのだから。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
先ず助け起こし長椅子へやすませようと思い、其の手を取るとお浦は溺れる人の様に余の手に獅噛しがみ附き、身体の重みを余の腕に打ち掛けた、余は彼の書斎でお浦が紛失した少し前に
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
爰に於て彼は実を撃つの手をやすめて、空を撃たんともがきはじめたるなり。彼は池の一側に立ちて、池の一小部分をにらむに甘んぜず、徐々として歩みはじめたり。池の周辺を一めぐりせり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
『書紀』の一書の素盞嗚尊すさのおのみことの悪業を列挙した条に「春はすなわち渠槽を廃し及び溝を埋めあぜこぼちまた種子を重播す、秋はすなわちくじを挿し馬を伏す、およそこの悪事かつてやすむ時なし」
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山路にさしかゝると覺しき時、騎者のりては背後なる我を顧みて詞をかけたり。程なく大母おほば蔽膝まへだれの下にやすらふべければ、客人も心安くおぼせよ。良き馬にあらずや。この頃サンアントニオのはらひを受けたり。
さて太夫はなみなみ水を盛りたるコップを左手ゆんでりて、右手めてには黄白こうはく二面の扇子を開き、やと声けて交互いれちがいに投げ上ぐれば、露を争う蝶一双ひとつ、縦横上下にいつ、逐われつ、しずくこぼさず翼もやすめず
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やすみながら青空を見ていると、何ともいえない爽快を覚えた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはやすむひまなく観念を組み敷き、ひきずりまわした。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一体世界のあらゆる潮流は頃刻けいこくやすまないのに、1720
「ああ、くたびれた。少しやすんでもいいでせう。」
酔狂録 (新字旧仮名) / 吉井勇(著)
「ちとやすんでいらっしゃい。」と彼女は云った。
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
一刻もやすの無い奇蹟を行つてこそ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
く者 まことにやすまず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やすむ隙なき道のつかれ。
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
御境遇をお察し申せばやむを得ないと存じます。私は始終お次の間にやすんで居ましたが、夜は殆んどお息みになったことはなかったと存じます。
蛇性の執念 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
蜃が気を吐いて楼台等を空中に顕わすを見て飛び疲れた鳥がやすみに来るを吸い落して食うというたのだ(『類函』四三八)。
十三じふそ三國みくにかはふたして、服部はつとり天神てんじん參詣さんけいし、鳥居前とりゐまへ茶店ちやみせやすんだうへ、またぼつ/\とかけた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
花をみ、木栂きいちごをとりなどして、小半日もあちこちと遊び歩き升ていもと草臥くたびれたとて泣出し升たから、日影の草原へ腰かけてやすんで居升と、間近に見える草屋根のうちから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
『でも、可愛かあいいぬころだッたわね!』やすまうとして毛莨キンポーゲかゝつたときに、其葉そのはの一まいつてあふぎながらあいちやんがひました、『わたししそんなことをする年頃としごろならば、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すべつかれたる者またおもきおへる者は我に来れ我なんぢらをやすません
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そんな風で君は、永遠にやすむ時なく
蛇に似て大きく、腰以下のうろこことごとく逆生す。能く気を吐いて楼台を成す。高鳥、飛び疲れ、いてやすみに来るを吸い食う。いわゆる蜃楼しんろうだという。
お文と源太郎とが、其の小料理屋を出た時は、夜半よなかを餘程過ぎてゐた。寄席は疾くに閉場はねて、狹い路次も晝間からの疲勞をやすめてゐるやうに、ひつそりしてゐた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あいちやんはそんなに近寄ちかよられるのを非常ひじよういやがりました、だい一、公爵夫人こうしやくふじんはなはみにく容貌ようばうでしたから、それからだい二には、夫人ふじんあいちやんのかたうへに、可厭いやとがつたあごやすめるほど
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大分ける人と見えて、葡萄酒だ、ウイスキーだ、とたらふく飲んだり喰ったりして、腹一杯になると今度は眠くなったんでしょう。少しやすませろ、部屋はどこだ、案内しろっていうんです。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
涼しき所にてやすめ、7265
お文と源太郎とが、其の小料理屋を出た時は、夜半よなかを余程過ぎてゐた。寄席よせくに閉場はねて、狭い路次も昼間からの疲労をやすめてゐるやうに、ひつそりしてゐた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
子珍、定州界内に入りて路傍の樹蔭にやすむ所へまた一人来りいこい、汝は何人なんぴと何処どこへ往くかと尋ねた。
広大な沙漠に人む天幕を尋ね当て、曠野に混雑する音響を聞き分けて、敵寇の近づくを知り、終日飲食せずやすまず走りて主人を厄より脱し、旅を果さしむるからだ。
あんたも疲勞くたぶれなはつたやろ、六里の道歩きなはつたのは近年ないこつちや。わたへもだいぶ疲勞れましたわい。……駕籠屋と車屋なして來て、ちいとやすまして貰ひまへう。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
長摩納父の仇を復すはこの時と利剣を抜いて王の首に擬したが、父王平生人間はただ信義を貴ぶべしと教えたるを思い出し、いかりをやすめ剣を納めた時俄然がぜん王驚きめた。
久しく喘息の氣味で惱んでゐた老僧は、屡々絶え入るばかりの咳をして、里を見下ろす高いこみちで杖に縋つてやすんでゐた。其の咳の響きが庵室まで聞えたか、破れ戸が少し開いてまた閉つた。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
子曰く百日の蜡一日の沢、なんじが知るところにあらざるなり、百日稼穡かしょくの労に対しこの一日やすんで君の恩沢を楽しむ、その休息日に農夫のみか有益禽獣までも饗をけたので
『おけやす、おはひりやす、やすんでおいでやす。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
りし者ことごとくその財物を捧げて助命さる。他の一人この事洩らすまじと誓いしを忘れ言い散らし、放りし者居堪いたたまらず脱走す。三十年経て故郷に還る途上その近処の川辺にやすむ。
「おやすみなはれ。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)