はじ)” の例文
新字:
算術の最も易い寄せ算をするにしても、散る氣でもつて運算して居たら、桁違をしたり、餘計なたまはじき込んだり仕さうな事である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
按摩あんまその仰向あをむいて打傾うちかたむいた、みゝかゆいのをきさうなつきで、右手めて持添もちそへたつゑさきを、かるく、コト/\コト/\とはじきながら
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此方こつちから算盤そろばんはじいて、この土地とち人間にんげん根性こんじやうかぞへてやると泥棒どろぼう乞食こじきくはへて、それをふたつにつたやうなものだなう。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あの野郎はお孃さんのお梅さんに手ひどくはじかれて、ムシヤクシヤして呑み歩いたやうです。でも戌刻半うつゝはん(九時)には自分の家へ歸つたやうで
併しその時分口にしてゐた悲痛とか悲慘とか云ふ言葉——それ等は要するに感興といふゴムまりのやうな彈力からはじき出された言葉だつたのだ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
君子きみこのびをしてむすばれた電氣でんきつなをほどいてゐた。とそのときはゝあたかもそのひかりにはじかれたやうにぱつとあがつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
みづはじいてふたつが一所いつしよあつまつたとふよりも、みづはじかれたいきほひで、まるつた結果けつくわはなれること出來できなくなつたとひやうするはう適當てきたうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それが明日あすからといふかれそののこつた煙草たばこほとんど一にちつゞけた。煙草入たばこいれかますさかさにして爪先つまさきでぱた/\とはじいてすこしのでさへあまさなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二三分がむなしく流れた。しめやかに降りそそいでゐた戸外の雨の音が、はじくやうに私の鼓膜に響いて來た。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
斯く言ひ掛けて、サンタは愛らしき聲して笑ひ、おん身の餘りに罪なきさがなるため、我に女の口より言ひ難き事さへ言はしめ給ふこそ憎けれとて、指もて我頬をはじきたり。
矢のつるはじかれ空を貫いて飛ぶことはやきもわがこの時見し一の小舟には如かじ 一三—一五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
叩きつける雨の勢ひは、さへぎるものにあたつてはじきかへされ、白い霧になつてゐる。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
はじのあさみどりなる、内あかく紫くろき、かさ厚く七重八重なる、葉牡丹は大いにうれし。牡丹とも見ずや葉牡丹、やすきその株ながら、株立つとこの庭もに、豐かなり乏しともなし。
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
子供がいたづらをしてゐるみたいに、湯を相手の肩や背中にはじきあつてみたり、流しの石の上に立つて、犬猫體操をしてみたり、鏡の中へ、思ひつきり脚を高くあげてみたりして遊んでゐる。
暗い花 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
たゞ折々をり/\きこゆるものは豌豆ゑんどうさやあつい日にはじけてまめおとか、草間くさまいづみ私語さゝやくやうな音、それでなくばあきとり繁茂しげみなか物疎ものうさうに羽搏はゞたきをする羽音はおとばかり。熟過つえすぎ無花果いちじくがぼたりと落ちる。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
麻の實の殼を猛烈にはじき飛ばす赤羅裳あからも鸚鵡ひたむきなるを
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
と、富江ははじけた樣に一人で騷いで
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
毒の水泡みなわの水のはじく響か
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
冠冕かむりはじく響あり。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「あの野郎がお玉を手籠にしたのだよ。二度や三度ぢやない、あの晩も言ひ寄つて手ひどくはじかれ、カツとのぼせてお玉を殺してしまつたのだ」
母樣おつかさんが、ひざはじいて、ずらりと、ずらすやうにまたいでりると、氣輕きがるにてく/\と土間どまた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はて、一つ十五もんめづゝだ、つぶちひせえはうだな」商人あきんどはゆつくり十露盤そろばんたまはじいて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ては懷中から小さな算盤そろばんを取り出し、節くれ立つた指で、やりにくさうにはじき出した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
冬青もちの葉に走る氷雨ひさめの音聽けば日のくれぐれはよくはじくなり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
十年前、先妻のおつやに夢中になり、手ひどくはじかれると、それを根に持つてお艶のアラを搜し、主人の金兵衞に告げ口して追ひ出させてしまつた
皆掛みながけが四百廿三もんめだからなそれ」はかりをおしなせて十露盤そろばんたまはじいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
孫權そんけん或時あるときさう再興さいこうをして屏風びやうぶゑがかしむ、畫伯ぐわはくふでつてあやまつておとしてしろきにてんつ。つてごまかして、はへとなす、孫權そんけんしんなることをうたがうてもつはじいてかへりみてわらふといへり。
聞きたるまゝ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かへりたいだらう。なまぬるい、あをんぶくれのやうな人間にんげんどもが、年中ねんぢう指先ゆびさきでも、なかでも算盤そろばんはじいて、下卑げびたことばかりかんがへてゐるこの土地とちに、まことの人間にんげんらしい人間にんげんはとてもられないね。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
銀の螽斯ジイツタンはじくよに。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
不安と疑惧ぎぐと悲歎に重苦しく閉ぢこめられて、偶々たま/\大きい聲で物を言ふ者があると、家中の者がはじき上げられたほど吃驚するといつた不思議な靜けさでした。
ちよとはじ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
庭木戸をはじき飛ばすやうに飛び込んで來たガラツ八の八五郎は、相變らず縁側にとぐろを卷いて、寛々くわん/\と朝の日向ひなたを樂しんでゐる錢形平次の前に突つ立つたのです。
舌打を一つ、たもとから取出したのは、その頃通用した永樂錢えいらくせんが一枚です。手の平へせて中指の爪と親指の腹ではじくと、チン——と鳴つて、二三尺空中に飛上がります。
泣き出しさうにして、お紋の死體をかばつてゐたのは、お紋に氣があるとか、お紋にはじかれたとか、かんばしからぬ噂を立てられてゐる、お隣りの建具屋の金次でした。
ガラツ八の八五郎は、それでも素直に立上がつて今叱られたばかりの狹い袷の前を引張り乍ら縁側から入口を覗きましたが、何を見たか、はじき返されたやうに戻つて來て
藤波龍之進の娘の多與里にはじかれて、フト左の頬に傷を拵へることを思ひ付いたのさ。
お倉にはじかれて、ムシヤクシヤして居る矢先だつたので、樂屋にあつたお倉の扱帶しごきを死體の首に卷いた上、死體をお倉の家の前へ捨て、丁寧に雪駄を片方お倉の家へ投げ込んで置いた
店の方へ行くと、銀次は神妙に帳場格子の中で、算盤そろばんなどをはじいて居りました。
平次の所謂いはゆる大玄關まで筒拔け、丁度その時追つ立てるやうにザーツと一と夕立來ると一と打二た打眼を射る猛烈な稻光り、はじくやうな雷鳴が、押つ冠せてガラガラツと耳をつんさきます。
「當つて見ろ、お前もはじかれて男手で覆面頭巾ふくめんづきんこさへ度くなるから」
「まさかあの後家に手ひどくはじかれたわけぢやあるまいな」
平次はピンとはじき上げられたやうに坐り直しました。
三輪の萬七はそれをはじき返すやうに言ひ込めます。
八五郎はうさん臭い自分の鼻などをはじくのです。
はじき上げられたやうに起ち上がります。