“家(いゑ)” の例文
夕(ゆふ)げ終(おは)りての宵々(よひ/\)家(いゑ)を出(いで)ては御寺參(おんてらまい)り殊勝(しゆしよう)に、觀音(くわんをん)さまには合掌(がつしよう)を申て、我(わ)が戀人(こひびと)のゆく末(すゑ)を守(まも)り玉(たま)へと、お志(こゝろざ)しのほどいつまでも消(き)えねば宜(よ)いが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私(わたし)にも生(うま)れた家(いゑ)が御座(ござ)んするとて威丈高(いたけたか)になるに男(をとこ)も堪(こら)えず箒(はふき)を振廻(ふりまわ)して、さあ出(で)て行(い)けと時(とき)の拍子(ひやうし)危(あや)ふくなれば、流石(さすが)に女氣(おんなぎ)の悲(かな)しき事(こと)胸(むね)に迫(せま)りて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其後(そのご)は物(もの)ごとに念(ねん)を入(い)れて、遂(つ)ひに麁想(そそう)をせぬやうに成(な)りぬ、世間(せけん)に下女(げぢよ)つかふ人(ひと)も多(おほ)けれど、山村(やまむら)ほど下女(げぢよ)の替(かは)る家(いゑ)は有(あ)るまじ、月(つき)に二人(ふたり)は平常(つね)の事(こと)
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一生(せう)五十年(ねん)めくらに成(な)りて終(をわ)らば事(こと)なからんと夫(そ)れよりは一筋(すぢ)に母樣(はゝさま)の御機嫌(ごきげん)、父(ちゝ)が氣(き)に入(い)るやう一切(さい)この身(み)を無(な)いものにして勤(つと)むれば家(いゑ)の内(うち)なみ風(かぜ)おこらずして
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
珍(めづ)らしき客(きやく)に馳走(ちそう)は出來(でき)ねど好物(かうぶつ)の今川燒(いまがはやき)、里芋(さといも)の煮(に)ころがしなど、澤山(たくさん)たべろよと言(い)ふ言葉(ことば)が嬉(うれ)し、苦勞(くらう)はかけまじと思(おも)へど見(み)す見(み)す大晦日(おほみそか)に迫(せま)りたる家(いゑ)の難義(なんぎ)
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鹽花(しほばな)こそふらね跡(あと)は一まづ掃(は)き出(だ)して、若旦那(わかだんな)退散(たいさん)のよろこび、金(かね)は惜(を)しけれど見(み)る目(め)も憎(にく)ければ家(いゑ)に居(を)らぬは上々(じやう/\)なり、何(ど)うすれば彼(あ)のやうに圖太(づぶと)くなられるか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頭腦(あたま)の中(なか)を此樣(こん)な事(こと)にこしらへて一軒(けん)ごとの格子(かうし)に烟草(たばこ)の無理(むり)どり鼻紙(はながみ)の無心(むしん)、打(う)ちつ打(う)たれつ是(こ)れを一世(せ)の譽(ほまれ)と心得(こゝろゑ)れば、堅氣(かたぎ)の家(いゑ)の相續息子(そうぞくむすこ)地廻(ぢまわ)りと改名(かいめい)して
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我(わ)れのみ一人のぼせて耳鳴(みゝな)りやすべき桂次(けいじ)が熱(ねつ)ははげしけれども、おぬひと言(い)ふもの木(き)にて作(つく)られたるやうの人(ひと)なれば、まづは上杉(うへすぎ)の家(いゑ)にやかましき沙汰(さた)もおこらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
谷中(やなか)に知人(ちじん)の家(いゑ)を買(か)ひて、調度萬端(てうどばんたん)おさめさせ、此處(こゝ)へと思(おも)ふに町子(まちこ)が生涯(せうがい)あはれなる事(こと)いふはかりなく、暗涙(あんるい)にくれては我(わ)が身(み)が不徳(ふとく)を思(おぼ)しゝる筋(すぢ)なきにあらねど
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じみなる事(こと)を言(い)ふやうなれども家(いゑ)の根(ね)つぎの極(き)まらざるは何(なに)かにつけて心細(こゝろぼそ)く、此(この)ほど中(ちう)の其方(そなた)のやうに、淋(さび)しい淋(さび)しいの言(い)ひづめも爲(せ)では有(あ)られぬやうな事(こと)あるべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お力(りき)は一散(さん)に家(いゑ)を出(で)て、行(ゆ)かれる物(もの)なら此(この)まゝに唐天竺(からてんぢく)の果(はて)までも行(い)つて仕舞(しまい)たい、あゝ嫌(いや)だ嫌(いや)だ嫌(いや)だ、何(ど)うしたなら人(ひと)の聲(こゑ)も聞(きこ)えない物(もの)の音(おと)もしない、靜(しづ)かな、靜(しづ)かな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
子(こ)には襤褸(ぼろ)を下(さ)げさせ家(いゑ)とては二疊(じよう)一間(ま)の此樣(こん)な犬小屋(いぬごや)、世間(せけん)一體(たい)から馬鹿(ばか)にされて別物(べつもの)にされて、よしや春秋(はるあき)の彼岸(ひがん)が來(く)ればとて、隣近處(となりきんじよ)に牡丹(ぼた)もち團子(だんご)と配(くば)り歩(ある)く中(なか)を
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うたがひは懸(か)かる柳闇花明(りうあんくわめい)の里(さと)の夕(ゆふ)べ、うかるヽ先(さ)きの有(あ)りやと見(み)れど品行方正(ひんかうはうせい)の受合人(うけあいて)多(をう)ければ事(こと)はいよいよ闇黒(くらやみ)になりぬ、さりながら怪(あや)しきは退院(たいヽん)がけに何時(いつ)も立寄(たちよ)る某(そ)れの家(いゑ)
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
源(げん)七が家(いゑ)へは遣(や)らぬが能(よ)い、返禮(へんれい)が氣(き)の毒(どく)なとて、心切(しんせつ)かは知(し)らねど十軒(けん)長屋(ながや)の一軒(けん)は除(の)け物(もの)、男(おとこ)は外出(そとで)がちなればいさゝか心(こゝろ)に懸(かゝ)るまじけれど女心(をんなごゝろ)には遣(や)る瀬(せ)のなきほど切(せつ)なく悲(かな)しく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
物いはねば狭き家(いゑ)の内(うち)も何となくうら淋しく、くれゆく空のたどたどしきに裏屋はまして薄暗く、燈火(あかり)をつけて蚊遣(かや)りふすべて、お初は心細く戸の外をながむれば、いそいそと帰り来る太吉郎の姿
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)