いゑ)” の例文
ゆふおはりての宵々よひ/\いゑいでては御寺參おんてらまい殊勝しゆしように、觀音くわんをんさまには合掌がつしようを申て、戀人こひびとのゆくすゑまもたまへと、おこゝろざしのほどいつまでもえねばいが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしにもうまれたいゑ御座ござんするとて威丈高いたけたかになるにをとここらえずはふき振廻ふりまわして、さあけととき拍子ひやうしあやふくなれば、流石さすが女氣おんなぎかなしきことむねせまりて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其後そのごものごとにねんれて、ひに麁想そそうをせぬやうにりぬ、世間せけん下女げぢよつかふひとおほけれど、山村やまむらほど下女げぢよかはいゑるまじ、つき二人ふたり平常つねこと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せう五十ねんめくらにりてをわらばことなからんとれよりは一すぢ母樣はゝさま御機嫌ごきげんちゝるやう一さいこのいものにしてつとむればいゑうちなみかぜおこらずして
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めづらしききやく馳走ちそう出來できねど好物かうぶつ今川燒いまがはやき里芋さといもころがしなど、澤山たくさんたべろよと言葉ことばうれし、苦勞くらうはかけまじとおもへど大晦日おほみそかせまりたるいゑ難義なんぎ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鹽花しほばなこそふらねあとは一まづして、若旦那わかだんな退散たいさんのよろこび、かねしけれどにくければいゑらぬは上々じやう/\なり、うすればのやうに圖太づぶとくなられるか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頭腦あたまなか此樣こんことにこしらへて一けんごとの格子かうし烟草たばこ無理むりどり鼻紙はながみ無心むしんちつたれつれを一ほまれ心得こゝろゑれば、堅氣かたぎいゑ相續息子そうぞくむすこ地廻ぢまわりと改名かいめいして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れのみ一人のぼせて耳鳴みゝなりやすべき桂次けいじねつははげしけれども、おぬひとふものにてつくられたるやうのひとなれば、まづは上杉うへすぎいゑにやかましき沙汰さたもおこらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
谷中やなか知人ちじんいゑひて、調度萬端てうどばんたんおさめさせ、此處こゝへとおもふに町子まちこ生涯せうがいあはれなることいふはかりなく、暗涙あんるいにくれては不徳ふとくおぼしゝるすぢなきにあらねど
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じみなることふやうなれどもいゑつぎのまらざるはなにかにつけて心細こゝろぼそく、このほどちう其方そなたのやうに、さびしいさびしいのひづめもではられぬやうなことあるべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
りきは一さんいゑて、かれるものならこのまゝに唐天竺からてんぢくはてまでもつて仕舞しまいたい、あゝいやいやいやだ、うしたならひとこゑきこえないものおともしない、しづかな、しづかな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
には襤褸ぼろげさせいゑとては二じよう此樣こん犬小屋いぬごや世間せけんたいから馬鹿ばかにされて別物べつものにされて、よしや春秋はるあき彼岸ひがんればとて、隣近處となりきんじよ牡丹ぼたもち團子だんごくばあるなか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うたがひはかる柳闇花明りうあんくわめいさとゆふべ、うかるヽきのりやとれど品行方正ひんかうはうせい受合人うけあいてをうければことはいよいよ闇黒くらやみになりぬ、さりながらあやしきは退院たいヽんがけに何時いつ立寄たちよれのいゑ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
げん七がいゑへはらぬがい、返禮へんれいどくなとて、心切しんせつかはらねど十けん長屋ながやの一けんものおとこ外出そとでがちなればいさゝかこゝろかゝるまじけれど女心をんなごゝろにはのなきほどせつなくかなしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
物いはねば狭きいゑうちも何となくうら淋しく、くれゆく空のたどたどしきに裏屋はまして薄暗く、燈火あかりをつけて蚊遣かやりふすべて、お初は心細く戸の外をながむれば、いそいそと帰り来る太吉郎の姿
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)