天窓あたま)” の例文
「そらよ、こっちがだんの分。こりゃお源坊のだ。奥様おくさんはあらが可い、煮るともうしおにするともして、天窓あたまかじりの、目球めだまをつるりだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見られ下谷山崎町家持五兵衞せがれ五郎藏其方とし何歳なんさいになるやまたさいはあるかと尋ねらるゝに五郎藏はひよくりと天窓あたまあげじろ/\四邊あたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
高木翁が其のかし山の峠にかかった時、木の間に音がして、五六尺もある怪物がばさばさとやって来て、それが天窓あたまにさわった。
怪談覚帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
政教子曰く、日本にて斬髪所に入るもの、斬髪師に命じて曰く、わが天窓あたまれと。斬髪師その命のごとく頭を斬らばいかん。
欧米各国 政教日記 (新字新仮名) / 井上円了(著)
二、三か所も打たれた天窓あたま大疵おおきずからは血が流れ出て、さすがの牛行司も半死半生の目にあわされた。村のものは急を聞いて現場へ駆けつけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見物の小児の天窓あたまを、咬むような所作をするのは、古くこの種の土俗から導かれているのではなかろうか。
獅子舞雑考 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
相談の敵手あいてにもなるまいがかゆ脊中せなかは孫の手に頼めじゃ、なよなよとした其肢体そのからだを縛ってと云うのでない注文ならば天窓あたまって工夫も仕様しようが一体まあどうしたわけ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
頭痛の所へ打ちますとかへつ天窓あたまが痛んだり致しますので、あまり療治れうぢたのむ者はありません。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
雜然たる叫聲の中、殺氣は既に滿ち渡つて、氣早の若者は行成いきなり横合から飛び出して、思ひ切り芳の天窓あたまを擲つた、續いて何處よりともなく、拳の雨は彼の頭上に降り注いだのである。意外。
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
と、満右衛門の天窓あたまの上で咳などをして、そして、言うことには
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「顔に書子と手に書と、人形書子は天窓あたま掻」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
豆腐で天窓あたまを叩き壊して
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから幹に立たせて置いて、やがて例の桐油合羽とうゆがっぱを開いて、私の天窓あたまからすっぽりと目ばかり出るほど、まるで渋紙しぶかみ小児こどもの小包。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
急いで來た處に今樣子を見れば大丈夫だいぢやうぶにてわづらひし樣子は一かうえぬか那の手紙は如何なる譯でありしやと云ければ清兵衞は天窓あたま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのうちに婆さんの髪の毛が一本も無くなって、尼さんの天窓あたまになりますと、皆の者は婆さんを捨てて門跡様の行列を追って雪崩れて往きました。
尼になった老婆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鼻の尖頭あたまへ汗をかき、天窓あたまからポツポとけむを出し、門口かどぐち突立つツたつたなり物もひません。女房
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
孫でも無かったにと罪のなき笑い顔して奇麗なる天窓あたまつるりとなでし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たれ天窓あたまのおさえ手なければ、お丹はいよいよ附上りて、我儘わがまま日に日に増長なし、人を人とも思わぬ振舞、乱暴狼藉言語に絶えたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にぎり向ふをきつと見詰たる手先にさは箸箱はしばこをばつかみながらに忌々いま/\しいと怒りの餘り打氣うつきもなくかたへ茫然ぼんやりすわりゐて獨言をば聞ゐたる和吉の天窓あたま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
手のさき天窓あたまさきそろへ、どうめて閑雅しとやか辞儀じぎをして、かね/″\おまねきにあづかりました半田屋はんだや長兵衛ちやうべゑまうす者で、いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
蝶吉はあたかも手籠てごめにされたもののごとく、三人がかりで身動きもさせない様子で、一にん柄杓ひしゃくを取って天窓あたまから水を浴びせておった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
商人あきんどの店先は揚板あげいたになって居て薄縁うすべりが敷いてある、それへ踏掛けると天命とは云いながら、何う云うはずみか揚板がはずれ、踏外ふみはずして薄縁を天窓あたまの上からかぶったなりどんと又市は揚板の下へ落ちる
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ともじッさまがいわっしゃるとの、馬鹿いわっしゃい、ほんとうに寒気がするだッて、千太は天窓あたまから褞袍どてらかぶってころげた達磨だるまよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と被っている手拭を取ると、早四郎ではありませんで、此処こゝ主人あるじ胡麻塩交ごましおまじりのぶっつり切ったようなまげ髪先はけさきちらばった天窓あたまで、お竹の無事な姿を見て、えゝと驚いてしかみつらをして居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
むくりと砂を吹く、飯蛸いいだこからびた天窓あたまほどなのを掻くと、砂をかぶって、ふらふらと足のようなものがついて取れる。頭をたたいて
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○「エヽ黙ってろ、何だか坊主の天窓あたまみた様な物があるぞ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はねの生えたうつくしい姉さんは居ないの。)ッて聞いた時、莞爾にっこり笑って両方から左右の手でおうように私の天窓あたまでて行った
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
梅喜ばいき天窓あたま両手りやうておさへ、梅
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
爺どのは、うようにして、身体からだを隠して引返したと言いましけ。よう姿が隠さりょう、光った天窓あたまと、顱巻はちまき茜色あかねいろが月夜に消えるか。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天窓あたまがぐらぐらとすると、目がくらんでしまいまして、揺れるか、揺れんか、考えておりますようなゆとりはないのでござります。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛吉は心なく垣間見かいまみた人に顔を見らるるよう、思いなしか、附添の婦人おんなの胸にも物ありげに取られるので、うつむいては天窓あたまを掻いた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白地に星模様のたてネクタイ、金剛石ダイアモンド針留ピンどめの光っただけでも、天窓あたまから爪先つまさきまで、その日の扮装いでたち想うべしで、髪から油がとろけそう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と思ふ、愈々いよいよ胸さきが苦しくなつた。其に今がつくりと仰向あおむいてから、天窓あたまも重く、耳もぼつとして、気が遠くなつてく。——
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
片腕ッていう処だが、紋床の役介者は親方の両腕だ、身に染みて遣りゃ余所行よそゆき天窓あたまを頼まれるッて言っていたものがあるよ、どうだい。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はねへたうつくしいねえさんはないの)ツていたとき莞爾につこりわらつて両方りやうはうから左右さいうでおうやうにわたし天窓あたまでゝつた
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わっしが、私が参りますよ、串戯じょうだんじゃない。てッて、飛出すのも余り無遠慮過ぎますかい、へ、」と結んだ口と、同じ手つきで天窓あたまを掻く。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こけかとゆる薄毛うすげ天窓あたまに、かさかぶらず、大木たいぼくちたのが月夜つきよかげすやうな、ぼけやたいろ黒染すみぞめ扮装でたちで、かほあを大入道おほにうだう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年を載せた巌は枝に留まったふくろのようで、その天窓あたま大きく、尻ッこけになって幾千仭いくせんじんともわきまえぬ谷の上へ、おおかぶさってななめに出ている。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
店先に込合っている大勢の弥次馬の背後うしろへ廻って、トねらいをつけて、天窓あたまともいわず、肩ともいわず、羽織ともいわず、ざぶり、滝の水。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭主はさぞ勝手で天窓あたまから夜具をすっぽりであろうと、心に可笑おかしく思いまする、小宮山は山気はだに染み渡り、小用こようしたくなりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小宮山は思わず退すさった、女はその我にもあらぬ小宮山の天窓あたまから足の爪先つまさきまで、じろりと見て、片頬笑かたほわらいをしたから可恐おそろしいや。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
突然いきなり畜生の前へ突立つったったから、ほい、蹴飛ばされるまでもねえ、前足が揃って天窓あたまの上を向うへ越すだろうと思うと、ひたりととまったでさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぽりと脱いで、坊主天窓あたまをぬいと出したが、これはまた、ばあ、と云ってニタリと笑いそうで、自分の顔ながら気味の悪さ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう、手で払う元気が無いので、ぶるぶると振ると、これは! 男の天窓あたまにあるべくもないが、カランと、くしの落ちた音……
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腰附、肩附、歩行あるふりっちて附着くッつけたような不恰好ぶかっこう天窓あたまの工合、どう見ても按摩だね、盲人めくららしい、めんない千鳥よ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
渾名あだな一厘土器いちもんかわらけと申すでござる。天窓あたまの真中の兀工合はげぐあいが、宛然さながらですて——川端の一厘土器いちもんかわらけ——これが爾時そのときも釣っていました。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葛籠つづら押立おったてて、天窓あたまから、その尻まですっぽりと安置に及んで、秘仏はどうだ、と達磨だるまめて、寂寞じゃくまくとしてじょうる。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐに気絶するものがあるかも知れず、たちどころに天窓あたまそって御弟子になりたいと言おうも知れず、ハタと手をって悟るのもありましょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夢どころではござりますか、お前様、直ぐにしめ殺されそうな声を出して、苦しい、苦しい、鼻血が出るわ、目がまうわ、天窓あたまを上へ上げてくれ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と酒井は笑みを含んだが、この際、天窓あたまから塩で食うと、大口を開けられたように感じたそうで、襖の蔭で慄然ぞっすくんで壁の暗さに消えて行く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)