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吐息
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といき
ふりがな文庫
“
吐息
(
といき
)” の例文
多いが上にまた子どもができるといっては、
吐息
(
といき
)
を突いて嘆息したものが、今は子どもに死なれて、生命もそこなうばかりに泣いた。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そういって伯爵隊長は、
吐息
(
といき
)
をつき、胸をおさえた。昨日来、伯爵はおどろき又おどろきで、心臓の工合が少々変調をきたしている。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
吐息
(
といき
)
とも
呻
(
め
)
き声ともつかぬものうい
音
(
ね
)
をほっと洩らすと共に、彼はまた身を屈めて仕事をし出したが、やがて沈黙はまた破られた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
思わず洩れる
吐息
(
といき
)
が、すぐと力ない咳に変わって、弥生は
袂
(
たもと
)
に顔を押し包んで、こほん! こほん! とつづけざまに身をふるわせた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鹿
(
しか
)
がひどく
啼
(
な
)
くのを聞いていて、「われ劣らめや」(秋なれば山とよむまで啼く鹿にわれ劣らめや
独
(
ひと
)
り
寝
(
ね
)
る夜は)と
吐息
(
といき
)
をついたあとで
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
▼ もっと見る
お濱は語り終つて
吐息
(
といき
)
を
吐
(
つ
)
きました。何か娘心では脊負ひ切れない、大きな恥の
塊
(
かたま
)
りをおろして、ホツとしたやうな心持でせう。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それで私はよろよろしている母を助けて土手の縁までつれて行くと、果して、母はほっと
吐息
(
といき
)
をついて私の肩にぐったりと倒れかかった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
そして、
深窓
(
しんそう
)
の
処女
(
おとめ
)
には、あまりに強烈すぎるものへ
対
(
むか
)
ったように、
眩
(
まばゆ
)
げな眼をそらして、ひとにも分かるような
吐息
(
といき
)
をついた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北
(
きた
)
にはゴビの
大沙漠
(
だいさばく
)
があつて、これにも
何
(
なに
)
か
怪物
(
くわいぶつ
)
が
居
(
ゐ
)
るだらうと
考
(
かんが
)
へた。
彼等
(
かれら
)
はゴビの
沙漠
(
さばく
)
から
來
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
は
惡魔
(
あくま
)
の
吐息
(
といき
)
だと
考
(
かんが
)
へたのであらう。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
その上少し時候はづれの暖さで、体さへ動かせば、すぐじつとりと汗がにじむ。勿論さう云ふ陽気だから、水の上にも、
吐息
(
といき
)
程の風さへない。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは母の言う
処
(
ところ
)
に
由
(
よっ
)
て迷信を
圧
(
おさ
)
え神経を静める方法もあろうかと思ったからです。すると母は
暫
(
しばら
)
く考えて
居
(
い
)
ましたが、
吐息
(
といき
)
をして声を
潜
(
ひそ
)
め
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「ほんとですか。それはほんとに有難う。これでたすかった」と僕は安堵の
吐息
(
といき
)
をつきました。「それで、あなたには?」
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
風が静かな
吐息
(
といき
)
を送って、
苜蓿
(
うまごやし
)
の薄い葉をひるがえすと、
蒼白
(
あおじろ
)
いその裏が見える。そして、畑一面に身ぶるいが伝わる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
モン長 げに、
幾朝
(
いくあさ
)
も/\、
未
(
まだ
)
乾
(
ひ
)
ぬ
露
(
つゆ
)
に
涙
(
なみだ
)
を
置添
(
おきそ
)
へ、
雲
(
くも
)
には
吐息
(
といき
)
の
雲
(
くも
)
を
加
(
くは
)
へて、
彷徨
(
うろつ
)
いてゐるのを
見掛
(
みか
)
けたとか。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
少女の寝息とも……牛乳の
香気
(
におい
)
とも……萎れた花の
吐息
(
といき
)
ともつかぬ、なつかしい、甘ったるい匂いが、又もホノボノと黄絹の帷帳の中から迷い出して来た。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鏡子は
情
(
なさけ
)
なささうに云つて、
腭
(
おとがひ
)
をべたりと襟に附けて、口笛を吹くやうな口をして
吐息
(
といき
)
をした。お照が
何
(
なに
)
と云つて慰めたものかと思つて居ると、俄に鏡子が
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「私には出來ません。私は疲れて氣持が惡いのです。水を少し下さい。」彼は、わなゝくやうな
吐息
(
といき
)
をついて、私を腕に抱きかゝへて、階下へ連れて行つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
樺の木は又何とか返事しようとしましたがやっぱり何か大へん重苦しくてわずか
吐息
(
といき
)
をつくばかりでした。
土神ときつね
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
考えて居る間も、他の百姓の様に、
故意
(
わざ
)
とらしい
吐息
(
といき
)
をついたり、悲しい顔付をして見せるでもなく、只、ボンヤリ気抜けの仕た様に考え込んで仕舞うのである。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あな
疎忽
(
そこつ
)
、
吐息
(
といき
)
いでたり。気にかけそ、何といふ事もあらぬを。また妻よ、
焙
(
ほう
)
じてむ玄米の茶を。来む春の話、水仙の話、やがて生れむ子のことなども話してむ。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
流石
(
さすが
)
ありそ
海
(
うみ
)
のおきて
見
(
み
)
つ
又
(
また
)
取
(
と
)
りて
見
(
み
)
つながめに
飽
(
あ
)
かねど
吐息
(
といき
)
されて
八重
(
やへ
)
はマア
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふぞと
人
(
ひと
)
の
詞
(
ことば
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
思わず、ハッと
吐息
(
といき
)
して、羽織の袖を、
斉
(
ひとし
)
く清く土に敷く、お町の
小腕
(
こがいな
)
、むずと取って、引立てて
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「今年の春」と梅子は
微
(
かす
)
かに
吐息
(
といき
)
洩らして「
浅墓
(
あさはか
)
な
彼
(
あ
)
の頃を
私
(
わたし
)
はホンたうに耻づかしく思ひます、世を
棄
(
す
)
て人を逃れた古人の心に、私は、篠田さん、今ま始めて真実同情を ...
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
吐息
(
といき
)
をついた駒井甚三郎は、やがて両の手を
面
(
かお
)
に当て、卓子に
臂
(
ひじ
)
をついて
俯向
(
うつむ
)
いていました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
版元鶴屋は
襟元
(
えりもと
)
の汗をばそっと
手拭
(
てぬぐい
)
で押拭うと、国貞も覚えずほっと大きな
吐息
(
といき
)
を漏して
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし家に帰りついてみると、精神にまた
弛
(
ゆる
)
みを生じて、しばらく忘れていた疲労が体をくずおれさした。かれはなさけないと思ったが、悩む脚をなげだして、
吐息
(
といき
)
をついた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それは
安堵
(
あんど
)
の
吐息
(
といき
)
ともつかず、これまで以上の深い
苦悶
(
くもん
)
の吐息ともつかないものだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
爲
(
なす
)
氣
(
き
)
も
失果
(
うせはて
)
て立歸りしが氣も
結
(
むすぼ
)
れ
床
(
とこ
)
へ這入て忘れんと
目睡
(
まどろむ
)
夢
(
ゆめ
)
の其中に水を
呉
(
くれ
)
しを見たりしが
偖
(
さて
)
は
寢言
(
ねごと
)
を言たるか面目なしと計りにて一
伍
(
ぶ
)
一什
(
しじふ
)
を語りけるを
聞
(
きゝ
)
忠兵衞は
呆
(
あき
)
れ
果
(
はて
)
吐息
(
といき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
真直
(
まつすぐ
)
に
突当
(
つきあた
)
つてと云はれた道が
何処
(
どこ
)
迄も果ての無い様に続いて居る様なので、自分は男達に
後
(
おく
)
れない様にして歩きながら
時時
(
ときどき
)
立留
(
たちとま
)
つて汗を拭いては
吐息
(
といき
)
さへもつかれるのであつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
稲妻が空を縫って走る時には、それが自分の痛みが形になって現われたように見えた。少し痛みが退くとほっと
吐息
(
といき
)
をして、助けを求めるようにそこに付いている医員に目ですがった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
劔
(
つるぎ
)
を
杖
(
つゑ
)
に。
松陰
(
まつかげ
)
の。
巖
(
いはほ
)
撐
(
さゝ
)
へて。
吐息
(
といき
)
つく。
時哉
(
をりしも
)
見ゆる。
若武者
(
わかむしや
)
は。
是
(
こ
)
は
抑
(
そも
)
軍
(
いくさ
)
の。
使
(
つかひ
)
かや。
見
(
み
)
れば
衣
(
ころも
)
の。
美麗
(
うるはし
)
さ。
新郎
(
はなむこ
)
とかも。
訝
(
あや
)
またる。
其鬚髯
(
そのほうひげ
)
の。
新剃
(
にひそり
)
は。
秋田
(
あきた
)
を刈れる。
刈稻
(
かりしね
)
の。
齊
(
そろ
)
へる
樣
(
さま
)
に。
「西周哲学著作集」序
(旧字旧仮名)
/
井上哲次郎
(著)
日頃
(
ひごろ
)
眺むる東京の煙も、此四五日は
大息
(
おおいき
)
吐息
(
といき
)
の息巻荒く
颺
(
あが
)
る様に見える。然し
此処
(
ここ
)
は田舎である。都の
師走
(
しわす
)
は、田舎の
霜月
(
しもつき
)
。
冬枯
(
ふゆがれ
)
の寂しい武蔵野は、復活の春を約して、麦が今二寸に伸びて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と、一人が
吐息
(
といき
)
をした。「オイ観世、ひどい目にあったな?」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
嗚呼
(
ああ
)
吐息
(
といき
)
の
衝
(
つ
)
かれることだ、悲しいことだ、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
わたしは
吐息
(
といき
)
に吐息をかさねて
藍色の蟇
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
一同はほっと安心の
吐息
(
といき
)
をついた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
吐息
(
といき
)
のやうにとぎれては続きます
ジンタ
(新字旧仮名)
/
森川義信
(著)
狂ほしきハルモニカの
吐息
(
といき
)
の如く
虱とるひと
(旧字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
吐息
(
といき
)
をつきながら、匙を運んだ。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
木の葉は淡き
吐息
(
といき
)
をもらし
かの日の歌【二】
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
と、
子家鴨
(
こあひる
)
は
吐息
(
といき
)
をついて
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
吐息
(
といき
)
ためいきとめあへず
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
復一は
吐息
(
といき
)
をした。そして
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
吐息
(
といき
)
かすらめ、
天
(
あま
)
をとめ。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
汝がせはしげなる
吐息
(
といき
)
生けるものと死せるものと
(旧字旧仮名)
/
アンナ・ド・ノアイユ
(著)
十番目の
吐息
(
といき
)
をすると
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
なぜか、房枝は、しずかな夕暮の空を、ひとりぼっちで
眺
(
なが
)
めるのがたまらなく好きだ。そしていつも心ぼそく
吐息
(
といき
)
をついてしまうのである。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ただ、離亭の辺の、黒い山吹の茂みと、さざ波もない池水を見まもりながら、ほっと、自分の気の弱い
吐息
(
といき
)
に、気がついていたに過ぎまい。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
返辞のできることでもなくて、
玉鬘
(
たまかずら
)
がただ
吐息
(
といき
)
をついているのが美しく感ぜられた時に、中将の心にはおさえ切れないものが
湧
(
わ
)
き上がってきた。
源氏物語:30 藤袴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
十六人の女たちは、ほとんど
正体
(
しょうたい
)
もないらしかった。彼等の口から洩れるものは、ただ意味のない笑い声か、苦しそうな
吐息
(
といき
)
の音ばかりであった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“吐息”の意味
《名詞》
落胆したときや緊張が解けたときなどに出る息。溜め息。
(出典:Wiktionary)
吐
常用漢字
中学
部首:⼝
6画
息
常用漢字
小3
部首:⼼
10画
“吐”で始まる語句
吐
吐出
吐月峰
吐露
吐胸
吐月峯
吐瀉
吐気
吐血
吐雲斎