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刳
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えぐ
ふりがな文庫
“
刳
(
えぐ
)” の例文
それから、こんなこともいったわ、人殺しするのに、ピストルなんて、莫迦ね、あたしなら短刀で
刳
(
えぐ
)
ってやるわ、すごいでしょうねエ。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
二人がひそひそと語らいながら、私の顔を見ては何事か笑い興ずるような時など、私は胸を
刳
(
えぐ
)
って
嬲
(
なぶ
)
り殺しにされるような思いがした。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
が、今一瞬の間に顔を合わせたスパセニアの映像だけは、網膜深く
刳
(
えぐ
)
り付いて、忘れようとしても忘れられるものではありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
巌がぐるりと
刳
(
えぐ
)
れて地の底深く
陥窪
(
おちくぼ
)
んだ処が
脚下
(
あしもと
)
に見えた。李張は
躊躇
(
ちゅうちょ
)
せずにその
巌窟
(
いわあな
)
へはいった。人の
背丈
(
せた
)
け位の穴が
斜
(
ななめ
)
にできていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
やがて
行
(
ゆ
)
きついた
所
(
ところ
)
はそそり
立
(
だ
)
つ
大
(
おお
)
きな
巌
(
いわ
)
と
巌
(
いわ
)
との
間
(
あいだ
)
を
刳
(
えぐ
)
りとったような
狭
(
せま
)
い
峡路
(
はざま
)
で、その
奥
(
おく
)
が
深
(
ふか
)
い
深
(
ふか
)
い
洞窟
(
どうくつ
)
になって
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
其一つだ、堆雪が
刳
(
えぐ
)
れて岩壁との間に六、七尺の隙間が作られ、其処から臼を挽くような音と共に一団の霧がむらむらと舞い上るのを見た。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
大佐の剣は、今日祖国の横腹を
刳
(
えぐ
)
るよりも、競売に付せられ、古物商に売られ、
鉄屑
(
てつくづ
)
の中に投げ込まれる方が、かえってよいでははないか。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす
鑿
(
のみ
)
と、鑿を
敲
(
たた
)
く
槌
(
つち
)
と、それから爪を
削
(
けず
)
る小刀と、爪を
刳
(
えぐ
)
る
妙
(
みょう
)
なものと、それから……」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
匕首
(
あいくち
)
かなんかで一突きに
刳
(
えぐ
)
られ、あッと叫ぶ間もなく
縡
(
ことき
)
れたのにちがいない。この
穏
(
おだや
)
かな死顔を見ると、その辺の消息が察しられるのである。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は眼を細めにあけて、大理石の
石板
(
いしいた
)
に
横
(
よこた
)
えられた女の白い体と、胸の只中をナイフで無残に
刳
(
えぐ
)
られた赤い
創口
(
きずぐち
)
とを見た。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
銅銭会員十六人が、
髪縄
(
けなわ
)
で絞首されていた。髪縄の一端には分銅があり、他の一端は門の柱の、
刳
(
えぐ
)
り穴の中に没していた。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
亭主は
鳩尾
(
みぞおち
)
のところを突き
洞
(
とお
)
される、女房は
頭部
(
あたま
)
に三箇所、肩に一箇所、左の乳の下を
刳
(
えぐ
)
られて、
僵
(
たお
)
れていたその手に、男の片袖を
掴
(
つか
)
んでいたのだ
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暫く登りその上に出て、本沢のリンネを覗くとそれは深く
刳
(
えぐ
)
れていてそれについて行く事は出来ないので、そのまま上の草の混った
胸壁
(
バットレス
)
を登り続ける。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
投げ飛ばされた一郎次は、右の
腋
(
わき
)
の下に刀で
刳
(
えぐ
)
るような痛みを感じました。彼は、もう死ぬような気がしました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
会員の
中
(
うち
)
に下手人がいるのだとしたら、あの美しい身体にむごたらしい血の縞を描いた奴は、あのか細い喉を無残に
刳
(
えぐ
)
った奴は、一体この内の誰だろうと
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
庸三はドクトルの
指図
(
さしず
)
で、葉子の
脇腹
(
わきばら
)
を
膝
(
ひざ
)
でしかと押えつける一方、両手に力をこめて、
腿
(
もも
)
を締めつけるようにしていたが、メスが腫物を
刳
(
えぐ
)
りはじめると
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
これは雪が深く、岩壁に喰い入って、そこだけを、虫歯の洞のように、深く
刳
(
えぐ
)
るので、刳られた崖が、椀を半分欠いたようになって、立っているのがそれだ。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
越後地方では木を
刳
(
えぐ
)
って作った塩槽の上に塩を
叺
(
かます
)
のままで置き、その底にたまる
滷汁
(
にがり
)
をメダレと呼んでいた。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と、
忽
(
たちま
)
ち
覚
(
おぼ
)
ゆる
胸
(
むね
)
の
苦痛
(
くつう
)
、
膓
(
ちょう
)
の
疼痛
(
とうつう
)
、
誰
(
たれ
)
か
鋭
(
するど
)
き
鎌
(
かま
)
を
以
(
もっ
)
て、
刳
(
えぐ
)
るにはあらぬかと
思
(
おも
)
わるる
程
(
ほど
)
、
彼
(
かれ
)
は
枕
(
まくら
)
に
強攫
(
しが
)
み
着
(
つ
)
き、きりりと
歯
(
は
)
をば
切
(
くいしば
)
る。
今
(
いま
)
ぞ
初
(
はじ
)
めて
彼
(
かれ
)
は
知
(
し
)
る。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
宿から数十町下ると、西川に渓流がさらに一段と谷底へ
刳
(
えぐ
)
り込まれ、滝となって落ちる崖の上の路へ出た。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
界隈
(
かいわい
)
の物持で通っている植木屋へ、型の通りの怪盗幻の民五郎が入って、小判で二百両あまりの金を
奪
(
と
)
った上、主人
惣吉
(
そうきち
)
の土手っ腹を
刳
(
えぐ
)
って逃げ失せたのです。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「兄さんがいなくなった後で、盗賊が入って、
嫂
(
ねえ
)
さんを殺して、
腸
(
はらわた
)
を
刳
(
えぐ
)
って逃げたのですが、じつに
惨酷
(
ざんこく
)
な殺しかたでしたよ。だが、それがまだ
捕
(
つかま
)
らないです。」
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
プッツリとばかりも文句無しで
自己
(
おの
)
が締めた帯を
外
(
はず
)
して来ての
正宗
(
まさむね
)
にゃあ、さすがのおれも
刳
(
えぐ
)
られたア。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「すっかり私は叔父さんの
裏面
(
うら
)
を見ちゃってよ——三吉叔父さんという人はよく解ってよ」こう骨を
刳
(
えぐ
)
るような姪の眼の光を、三吉は忘れることが出来なかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
なんとなく甘へるやうな蕗子の様子から判断して、雨宮紅庵のことはとにかく、引越の理由に就てもつと
刳
(
えぐ
)
られることを待ち構えてゐるのではないかと伴作は思つた。
雨宮紅庵
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼はいま歌口を
刳
(
えぐ
)
りながら、頭の中ではべつのことを考えていた。十日のちに猪狩りが行われるが、これは七年ぶりのことで、全藩を挙げての大掛りな計画であった。
四日のあやめ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
咽喉を
刳
(
えぐ
)
られて女は死んでいる。自害でないことは傷口が内部へ向って切り込んでいるのと、現場に何一つ刃物の落ちていないこととで、彦兵衛にも一眼でわかった。
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もちろんライデンにはその
札
(
ふだ
)
はないので、むしろ
自暴
(
やけ
)
気味だったのでしょう、もし、
俺
(
おれ
)
が持っているんだったら、心臓を
刳
(
えぐ
)
り抜いてみせる——と云ったそうなのです。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
栗本の腕は、傷が癒えても、肉が
刳
(
えぐ
)
り取られたあとの窪んだ醜い禿は消す訳に行かなそうだった。
氷河
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
それより
洞中
(
どうちゆう
)
の
造船所
(
ぞうせんじよ
)
内
(
ない
)
を
殘
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
なく
見物
(
けんぶつ
)
したが、ふと
見
(
み
)
ると、
洞窟
(
どうくつ
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に、
岩
(
いわ
)
が
自然
(
しぜん
)
に
刳
(
えぐ
)
られて、
大
(
だい
)
なる
穴倉
(
あなぐら
)
となしたる
處
(
ところ
)
、
其處
(
そこ
)
に、
嚴重
(
げんぢう
)
なる
鐵
(
てつ
)
の
扉
(
とびら
)
が
設
(
まう
)
けられて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
食うものもろくに食わせられずに、
叱言
(
こごと
)
の代りに眼を指で
刳
(
えぐ
)
りとられた娘も見た。こんな雲南の奴隷娘や、悲惨な少年坑夫の話を、ここで生れた君は知らない
筈
(
はず
)
はないだろう。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
いずれもその生殖器が斬り
割
(
さ
)
かれ、
刳
(
えぐ
)
り出され、そこから手を
挿入
(
そうにゅう
)
して大腸、内部生殖器官、その他の
臓物
(
ぞうもつ
)
が引き出されてあって、まことに正視に耐えない光景を
呈
(
てい
)
しているのである。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
綴
(
と
)
じたり
刳
(
えぐ
)
ったり
接
(
は
)
ぎ合わせたり編んだりした木工品が
堆
(
うずたか
)
く積みあげてある。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
強×
(9)
され、×
(10)
を
刳
(
えぐ
)
られ、
臓腑
(
ぞうふ
)
まで引きずり出された女たち!
間島パルチザンの歌
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
老いた母は出歩きに伴われたり、美味しいものも馳走になったりしたが、この嫁の親切は老いた母の悲しみを余計
刳
(
えぐ
)
った。末娘に棘々しくあたる痛みが、どんな嫁のかしずきにも癒やされなかった。
草藪
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
と力を
出
(
いだ
)
して
刳
(
えぐ
)
らんと為るを、
緊
(
しか
)
と抑へて貫一は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
刳
(
えぐ
)
るやうに深く突つ込んだものと見えます。
高瀬舟
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
殊に
昨夜
(
ゆうべ
)
犬と戯れているあんな甘い言葉を聞いたことが、妙に私の胸を躍るように
刳
(
えぐ
)
って、あの声を聞くと眠られなくなると思いつつも
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
庄三郎はそれから
富士権現
(
ふじごんげん
)
の前へ往った。
祠
(
ほこら
)
の影から
頬冠
(
ほおかむり
)
した男がそっと出て来て、庄三郎に
覘
(
ねら
)
い寄り、手にしている出刃で横腹を
刳
(
えぐ
)
った。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして明るい
瞳
(
め
)
と小気味よい鼻は静観の美であり、かすかに開かれた
紅唇
(
くち
)
から覗く、光さえ浮んだ
皓歯
(
こうし
)
は、観客の心臓を他愛もなく
刳
(
えぐ
)
るのだ。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
日本人なら突ッ通すか
刳
(
えぐ
)
るか、この二つのうちだが、傷口を見ると、遠くからでも匕首を打込んだような、しゃくッたようなようすになっている。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「では何者か日本でも五臓丸を造るものがあると見える。生きた人間の五臓を
刳
(
えぐ
)
り抜き、製造するという五臓丸! 何物の悪魔の
所業
(
しわざ
)
であろう?」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
知ってのとおり両側の壁には、長方形をした
龕形
(
がんけい
)
に
刳
(
えぐ
)
り込まれた壁灯が点されている。そこで、自分の姿を認められないために、まず区劃扉の
側
(
かたわら
)
にある
開閉器
(
スイッチ
)
を
捻
(
ひね
)
る。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
水は右岸の岩壁の裾を横なぐりに深く
刳
(
えぐ
)
っているので、
滑
(
なめらか
)
な壁面の上部は円天井のように狭い河身を掩うている。まるで片側の上の方が途切れた長い洞穴を見るようだ。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
沼地などの多い、土地の低い部分を埋めるために、その辺一帯の砂がところどころ
刳
(
えぐ
)
り取られてあった。砂の崖がいたるところにできていた。釣に来たときよりは、浪がやや荒かった。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その右の
膝
(
ひざ
)
と足の甲の間を二寸ほど、強い力で
刳
(
えぐ
)
り
抜
(
ぬ
)
いたように、脛の肉が骨の上を
滑
(
すべ
)
って、下の方まで行って、いっしょに
縮
(
ちぢ
)
れ上っている。まるで
柘榴
(
ざくろ
)
を
潰
(
つぶ
)
して
叩
(
たた
)
きつけた風に見えた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
醜い争いが深夜まで続いた後、折柄
篠
(
しの
)
突くばかりの土砂降りの中をお銀は戸外へ不貞腐れて出たのだった。後を追って助三郎が格子へ手を掛けた時、雨に濡れた冷たい刃物が彼の
脾腹
(
ひばら
)
を
刳
(
えぐ
)
った。
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
土橋
(
どばし
)
の方角を指して帰って行く道すがらも、まだ捨吉はあの
旧
(
むかし
)
の窓の下に、あの
墨汁
(
すみ
)
やインキで汚したり
小刀
(
ナイフ
)
で
刳
(
えぐ
)
り削ったりした古い机の前に、自分の身を置くような気もしていた。壁がある。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二、三本よろよろと、足許を覚束なげに立っている、顧れば焼岳の頂は凹字に
刳
(
えぐ
)
られて、黄色い噴煙が三筋、蒲田谷の方へ吹き靡いている、私の立っているところは、もう向う側の霞沢岳の頂上に
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
同時に、悪魔をも辟易せしめるに相違ない、
刳
(
えぐ
)
るが如き眼光を見たまへ。ただ一人の人物を頭の中で完全に育てあげるといふことさへ至難な業であるのに、バルザックの持つ人物の多様さよ。深さよ。
ドストエフスキーとバルザック
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
刳
漢検1級
部首:⼑
8画
“刳”を含む語句
刳舟
両刳
刳貫
刳込
刳形
刳抜
刳抜盆
刳物
刳盆
刳穴
絵刳
奪肉刳骨
刳門
刳鉢
刳貫舟
刳袴
刳磔
刳物台
丸刳