“丑:うし” の例文
“丑:うし”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治16
泉鏡花11
中里介山6
林不忘3
国枝史郎3
“丑:うし”を含む作品のジャンル比率
哲学 > 心理学 > 超心理学・心霊研究13.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.7%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
東津軽の駒込村などでいうことは、弘法大師は十二年に一度ずつうしの年に村を巡って擂鉢すりばちに目を打って行かれる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この釘はうし時参ときまいりが、猿丸の杉に打込んだので、のろいの念が錆附さびついているだろう、よくお見。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういって懐中から取り出したのは常住座臥放したことのない鳥差しのうしから貰ったところの二尺八寸の吹矢筒であった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
毎夜のことなので、石工たちも警戒の目を緩めたと見え、うしに近い頃に何人なんびともいぎたない眠りに入っていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
道家は老人のことばに従ってそれを着て旅僧たびそうの姿になり、うしこくになって法華寺の別院へ往った。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うしときまいりじゃないでしょうか。丑の刻詣りの人に道で行逢うと、祟りがあるっていいますから——」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うしとらたつ、——と、きゃくのないあがりかまちにこしをかけて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丹七はあさ子の失恋に同情するよりも、「うしとき参り」の真似をするわが子の心の怖ろしさに戦慄を禁ずることが出来なかった。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
うなぎ屋もこの時とばかり「土用のうしの日にうなぎを食べれば健康になる」とか「夏やせが防げる」とかいって、宣伝にいとまがない。
鰻の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ところが武田家の家例として楯無しの鎧はその夜の中に——しかも深夜うしの刻に信玄親しく附き添って宝蔵へ納めなければならなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「妙宣寺の鐘——いつもの鐘が——うしとき(午前二時)を告げたら、てまえも搦手からめてへ出て、お待ちしておりますからね」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——お百度、百万遍、うし時参ときまいり……ま、何とも、カーン、添水のを数取りに、真夜中でした。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——なんと、うしとき咒詛のろい女魔にょまは、一本高下駄たかげた穿くと言うに、ともの足りぬ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うし年の事だから、と私が唄を聞きたさに、尋ねた時分……今から何年前だろう、と叔母が指を折りましたっけ……多年しばらくになりますが。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老主婦のたいは、百五十の石段を算えて、裏山の摩利支天堂に「うしとき参り」の祈願をこめてゐた。
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
……しかし、気心の知れたうしとき参詣まいりでさえ、牛の背をまたぎ、毒蛇のあごくぐらなければならないと云うんです。
加擔人かたうど車屋くるまやうし元結もとゆひよりのぶん手遊屋おもちやゝ彌助やすけなどあらばけはるまじ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「京子、何してるのや。……うしの時參りか。」と、力を込めた聲で言ふとともに、道臣は躍りかゝつて、金槌を持つた京子の腕を引つつかんだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うしとらの十二支を十二ヵ月に割り当てると、正月が寅だから旧十月は亥の月であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二十八日の夜うしの刻に、抽斎は遂に絶息した。即ち二十九日午前二時である。年は五十四歳であった。遺骸いがい谷中やなか感応寺に葬られた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
——一昨日、十七日の夜のうしこくのころ、自分は五、六発の砲声をまくらの上で聞いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今度は鬼女、般若の面のかわりに、そのおかめの面を被せい、うし刻参ときまいり装束しょうぞくぎ、素裸すはだかにして、踊らせろ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今日のうしこく、あの寺の正門からずかずか入って往け、それにはここの祠の中を開けると、お前の着て往く物がある、それ、これを持って往け」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
司馬懿しばい嘲笑あざわらって、陣頭へ馬をすすめて来た。時はまさにうしの真夜中であった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平気で読経し居ると、うし三つ頃、表の戸をたたきデンデンコロリ様はお内にかという者あり。
「来年はうしだそうですが、何か牛にちなんだようなお話はありませんか。」と、青年は訊く。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神とも戦え仏をもたたけ、道理をやぶって壊りすてなば天下は我らがものなるぞと、叱咜しったするたび土石を飛ばしてうしの刻よりとらの刻
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わけてむねも下がるといううしこくをすぎると、山里のつねでもあるが、五月というのに冬のような気温の急下に肌もこごえそうだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上半身に十二支の内、うしとらたつうま、の七つまで、墨と朱の二色で、いとも鮮やかに彫ってあるのでした。
夜はまだ深いが、正しくは六日の朝といってよい。それは夜半をすぎたうしの正刻であったから。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかってすいすいとはいっていったところは、いましがた山の青道心からきき出した、うしの刻参り隠れ祈りの場所の一つである湯島坂下三ツ又稲荷の境内です。
うしときまいり」というのは、古い記録によると、嵯峨天皇の御時代からはじまる。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かつて、山神のやしろ奉行ぶぎょうした時、うしとき参詣まいりを谷へ蹴込けこんだり、とった、大権威の摂理太夫は、これから発狂した。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前夜、十四日の真夜中、うしの下刻とあるから八つ半、いまで言う午前三時ごろだった。
着到帳に記された姓名は一万余にのぼった。時はすでに九日のうしの刻(午前二時)を過ぎている。秀吉は左右にある彦右衛門正勝、森勘八、黒田官兵衛などに向って、
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、翌年が慶応元年のうし、私の十四の時ですが、押し迫った師走しわすの……あれは幾日のことであったか……浅草に大火があって、それは実に大変でありました。
あたかもこれ天地も眠るうし時にして、独り天上の星、地上の海波これを知るのみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
やがて深夜もすぎ、うしノ刻(午前二時)ごろにもなると、七里ヶ浜のなぎさも、稲村ヶ崎のみさきの磯も、目立って、干潟ひがたの砂を、刻々にあらわしてきた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——予は、うしこく(翌二十日午前二時)より、玄蕃の急追撃にかからん。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ、うしの上刻! それまでに宿へ帰らなければ、もう間に合わない!」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
もちろん、一面には土用のうしの日にうなぎと、永い間の習慣のせいもあろう。
鰻の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「この夜更けに、うし刻参ときまいりをするほど、その兄が恋しいのか」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
六月三日が、土用どよううしの日。この日、桃の葉でたてた風呂へ入ると、暑気をはらい、汗疹あせもをとめるといって、江戸じゅうの銭湯で桃葉湯もものはゆをたてる。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
藩士は、夜半のうし刻に勢揃いして、竿を担いで釣り場へ駆足訓練をした。
姫柚子の讃 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
かえりみれば、たくさんな皇子みこたちも、戦陣にうしなわせ、残る幾人いくたりかの皇子すら、北や東や西と、ちりぢりに所をへだてて、八月十六日の深夜うしこく
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「忘れもしない天保うし年の十二月で、わたくしが十九の年の暮でした」
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その犬に向かい、「我は虎いかになくとも犬は犬獅子のはがみをおそれざらめや」とよみ、右の手の親指より、いぬうしとらと指を折りてつよく握るなり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
一時は婦人小間物は白牡丹でなくてはならぬとまでいわれたもので、土用のうしの日べにを売り、買った人には、土製の粗末ながらへんに感じのいい黒い牛の玩具をくれたものであった。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
その日の式は山吹村の方で夜のうしこくに行なわれるという。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
口唇へ付けるうしべには、かんうしの日にしぼった牛の血から作った物が載りも光沢つやも一番好いとなっているが、これから由来して、寒中の丑の日に水揚げした珊瑚は
光秀の方は、うしの中刻で、秀吉の方は丑の上刻であったと云う。
山崎合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
うしみつの、鐘もおとなき古寺に、ばけものどしがあつまりア……
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三公の話が終ると、うしが待っていたように口をとがらして、
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十二支というのは、子、うしとら、卯、たつうまひつじさるとりいぬの十二で、午の年とか酉の年とかいうあの呼び方なのです。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
五十鈴いすず川口のはぜ(薬といふうしの日にる) 六
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
隔年かくねんうしひつじとり
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いやそうはなりません。やっとうしの下刻でしょうか」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわゆる、屋のむねも三寸下がるといううしの時刻。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃなんですかい、そのうしの時参りを押えとって、だんなのいつものからめ手詮議せんぎで糸をたぐっていったら、どこのどいつが、のろい参りのさむれえたちを、けさみてえにねらい討ちしているか
うしとき参詣まいりにまざまざと出会った。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あなたはうしこく参りのわら人形よ」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
其で思い合せられるのは、此頃ちょくちょく、からうしの間に、里から見えるこのあたりのに、光り物がしたり、時ならぬ一時颪いっときおろしの凄いうなりが、聞えたりする。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
暗闇祭のはじまるうしの刻まであと一刻しかない。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ご隠居さま。ちょうどうしの刻が鳴りましたが」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしの刻を、すこし下がった頃かと覚えまする」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もううしこく、あんまりすえかたのことが思われて、七兵衛待遠しさに眠れないので、お松は、かねて朋輩衆から聞いた引帯ひきおび禁厭まじないのことを思い出した。
道具立てが少いだけに、人間の心と心との触れ合いが主になって、それだけに内面的だとも言えるのであるが、怨恨から人を殺そうとする場合、何時も何時も、うしこくまいりというわけにもゆかない。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
うし、そのとしよりへ、財布を返してやれ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五節舞姫ごせちのまいひめは遠い起源が伝えられるが、うしの日とらの日の参入は新儀であり、まったく前朝の御好みに始まることは、夙く三善清行みよしきよゆきの『意見封事』の中にも見えている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うしの刻に間近うございましょうかな」
日置流系図 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うしや由造が訊くと、とうとう白状した。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加担人かたうどは車屋のうし元結もとゆひよりのぶん手遊屋おもちやや弥助やすけなどあらば引けは取るまじ、おおそれよりはあの人の事あの人の事、藤本のならばき智恵も貸してくれんと
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こよいも、土圭とけいの間の土圭はすでに、うし(午前二時)を報じている。——が今、湯殿から出て来た秀吉は、さあこれからといわぬばかりだ。さばさばと改まった血色を、ふたたび老母の部屋の燭に見せて、
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしの時参りの陰森なる灯の色を思う。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「ぬかるな。……うしこくだぞ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、いちいち御尤もなこと、左様な恨みを抱く婦人が世に多いことでござる。御信心浅からずとお見受け申すにより、八葉の秘法をしゅしてお上げ申しましょう、うしの日の夜、これへお越し下さるように……」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただし西南の一隅だけは前にも言うごとく、この月始めのうしの日またはさるの日に、やや早めに稲を家に入れる式をすませているようだが、それから東へ進むと一般に、この二十三日を重視した痕跡が認められる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
祗園ぎおんの祭には青簾あおすだれを懸けてははずし、土用のうしうなぎも盆の勘定となって、地獄の釜のふたの開くかと思えば、じきに仏の花も捨て、それに赤痢の流行で芝居の太鼓も廻りません。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
また、犬が吠えつくときに、犬伏せと申して、親指を犬と立て、これを伏していぬうしとらと数えて、寅に当たる小指をもって戌(すなわち親指)を押すと、犬が吠えるのをやめると申します。
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
猛犬にあいたるとき、右手の拇指おやゆびより、うしとらと唱えつつ順次に指を屈し、小指を口にてかみ、「寅の尾を踏んだ」と言うときは、いかなる猛犬も尾を巻きて遁走とんそうするという。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「はやか、うしノ刻か」
時はもううしこくごろ。
嘉永かえい六年うし六月
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おや、うしさんだね?」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
うしくいを打て」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『こう、何だと、うし
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくてん雪催ゆきもよひ調とゝのふと、矢玉やだまおとたゆるときなく、うしとらたつ刻々こく/\修羅礫しゆらつぶてうちかけて、霰々あられ/\また玉霰たまあられ
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、いかな事にも、心を鬼に、爪をわしに、狼のきば噛鳴かみならしても、森でうしの時参詣まいりなればまだしも、あらたかな拝殿で、巫女みこの美女を虐殺なぶりごろしにするようで、笑靨えくぼに指も触れないで、冷汗を流しました。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前も知っている鳥差しのうし、俺が吹矢を好きだと知ってか、わざわざ持って来てくれて行った。知行所の百姓は感心じゃ。俺をみんな可愛がってくれる。……これは素晴らしい吹矢筒だ。第一大分古い物だ。木肌にあぶらが沁み込んで鼈甲べっこうのように光っている。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうだ、お豊、気分は? ちっとはいいか? 今隠したのは何だい。ちょっと見せな、まあ見せな。これさ見せなといえば。——なんだ、こりア、浪子さんの顔じゃないか、ひどく爪かたをつけたじゃないか。こんな事するよりかうしの時参りでもした方がよっぽど気がきいてるぜ!」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
是は桐生の人に聞きましたが、はやしがございますが、少し字詰りに云わなければ云えません、「桐生で名高き入山書上いりやまかきあげの番頭さんの女房に成って見たいとうしの時参りをして見たけれども未だに添われぬ」トン/\パタ/\と遣るのですが、まことに妙な唄で。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その通りでございます——私たちの周囲に何の騒がしいことがございますか、後ろを顧みれば、逢坂、長良の山々、前は東山阿弥陀ヶ峯を越しますると京洛の夜の世界、このあたりは多分、山科の盆地、今の時はうし三ツ、万籟ばんらいが熟睡に落ちております、この静かな世界におりながら
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
摩利支天の祠にもうずるに先立ちて、その太さ三拱みかかえにも余りぬべき一本杉の前を過ぐる時、ふと今の世にも「うし時詣ときまいり」なるものありて、怨ある男をのろう嫉妬深き婦人等の、此処に詣でて、この杉に釘を打つよし、人に聞きしを懐出おもいいでたり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
顳顬こめかみ即功紙そっこうし張りて茶碗酒引かける流儀は小唄こうたの一ツも知らねば出来ぬことなるべく、藁人形わらにんぎょうに釘打つうしときまいり白無垢しろむくの衣裳に三枚歯の足駄あしだなんぞ物費ものいりを惜しまぬ心掛すでに大時代おおじだいなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから西へ廻って長崎県の下五島しもごとうにもネンガラ打ちの遊びがあり、さらに熊本県の天草下島あまくさしもじまでも旧十一月うしの日の山の神祭の前に子どもが、手頃てごろの木をって来て、このネンガラを作っておいて祭の日に遊ぶというのは、いよいよ信仰上の儀式であったことを思わしめる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
討入の手配はかねて覚書によってめいめいに伝えられたとおりでござる。一同は今夜うしの上刻までに、この宿と、本所三つ目杉野十兵次どのの借宅と、前原神崎両人の店と、この三箇所へ集合することになっている。なおわれら三人のうち、横川氏は大石殿の手に属して表門へかかり、拙者と小平太どのとは主税どのの手に属して裏門へ廻ることになったから、その心得でいてもらいたい。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)