うは)” の例文
つまりさうしないと、平凡へいぼんうはすべりがするとおもつたのでせう。だから、直譯ちよくやくして、みちがはかどらないでとつておけばよいでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
門を出る頃には、もう弟子の誰彼に追ひつかれて、うはぱりは滅茶々々にたくられ、若者の手には片袖一つしか残つてゐなかつた。
いづれの説法の座でも、よくよく心をしづめ耳をすまして聴くことは大切なのぢゃ。うはの空で聞いてゐたでは何にもならぬぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
問ひて曰はく、「今天つ日高の御子虚空つ日高、うはくに一九でまさむとす。誰は幾日に送りまつりて、かへりごとまをさむ」と問ひき。
「何か使走りの男が、手紙のやうなものを持つて來たやうですが、それを見ると急にソワソワして、私の言葉もうはそらに飛出してしまひました」
其れが極めてやはらかに組んであるのと、横に立ててうはすぼみの輪にされるのとでピンで止めた時はある一種面白い形の物が寄集よりあつまつて居る様になるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
身體からだあたまらくがないので、何時いつでもうはそら素通すどほりをすることになつてゐるから、自分じぶんそのにぎやかなまちなかいきてゐると自覺じかく近來きんらいとんおこつたことがない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんな演説に出逢つた時のリツプが答辨は、唯だ一つで、この一つはかれの癖になりました。かれは肩を聳かし、頭を掉り、うは目を使つて一言も云ひません。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
そればかりではない、話にうはずつて來た先生の風貌は眼慣れるに從つて、堪らなく貧弱な、下品な物に見えて來た。みんなの愼しみは漸次に崩れざるを得なかつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
もつと引續ひきつゞいた可恐おそろしさから、うはずつてはるのだけれど、ねずみえうちかいのでないと、吹消ふきけしたやうにはけさうもないとふので、薄氣味うすきみわるがるのである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
など書きつらねたるさへあるに、よしや墨染の衣に我れ哀れをかくすとも、心なき君にはうはの空とも見えん事の口惜くちをしさ、など硯の水になみだちてか、薄墨うすずみ文字もじ定かならず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ただうはべわづかあかみて天鵞絨びろうどの焦茶いろすれ、ふかぶかと黒くか青く、常久に古びしづもる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
だから彼女は馬車の中でも、折々話しかける父親に、うはの空の返事ばかり与へてゐた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
学問の方のことにしてみても、うはつらだけわかれば、それで満足するといふ風がある。
あの星はいつ現はれるか (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
工場に寢泊りするものもあつたが、通ひのものもあり、年寄りのまだ元氣な家などでは、百姓仕事は年寄りに任せておいて、夫婦して白いうはりを着て自轉車で通ふといふ風だつた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
山のの心も知らず行く月はうはの空にて影や消えなん
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とお父さんはうはそらでつぶやいた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
黒部くろべうは廊下、した廊下、おく廊下
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
うはぬるむおもよりわたり
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
紳士がやゝ反身そりみになつて卓子テーブルの前の椅子に腰をおろすと、鵞鳥のやうに白いうはぱりを着た給仕人がやつて来て註文を聞いた。
横佩墻内よこはきかきつに住む者は、男も女も、うはの空になつて、京中京外を馳せ求めた。さうしたはしびとの多く見出される場処と場処とは、残りなく捜された。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
うも非常な暑さですな」と云つて、這入つてた。代助はう云ふうはそらの生活を二日程おくつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それく……お前樣まへさま途中とちうでありませう。とほりがかりから、行逢ゆきあうて、うやつて擦違すれちがうたまでの跫音あしおとで、ようれました。とぼ/\した、うはそらなのでちやんわかる……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
歓楽を追ふ若い細君の心は良人をつとの忠告もうはの空にきき流し、はては「何事もわたしの自由だ」などと云ふ。モリエエルはまり兼ねて「今日けふの園遊会での密会は何のざまだ」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
御邊ごへんに横笛が事を思ひ切らせん爲め、潛かに御邊が父左衞門殿に、親實しんじつうはべに言ひ入れしこともあり、皆之れ重景ならぬ女色に心を奪はれし戀のやつこの爲せしわざ、云ふも中々慚愧の至りにこそ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
をちこちの小竹ささのむら笹、柿もみぢ、梅がの蔦、とりどりに色に出づれど、神無月すゑの時雨に濡れ濡れてその葉枯れず、落葉せず、透かず、薄れず、ただうはべわづかあかみて天鵞絨びろうどの焦茶いろすれ
はかなくてうはの空にぞ消えぬべき風に漂ふ春のあは雪
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
敏樹としきうはずつたこゑはさんだ。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
若者は手を出してそのうはぱりをさつとさらつたと思ふと、いきなり駆けだした。だが少し遅かつた。
何故なぜと云ふに。廿前後はたちぜんごの同じ年の男女を二人ふたりならべて見ろ。女の方が万事うは手だあね。男は馬鹿にされるばかりだ。女だつて、自分の軽蔑する男の所へよめに行く気はないやね。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あとると、やぐら兩脚りやうあしからこたつのへり、すきをふさいだ小布團こぶとん二枚にまい黒焦くろこげに、したがけのすそいて、うへけて、うはがけの三布布團みのぶとん綿わたにして、おもて一面いちめん黄色きいろにいぶつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うはぬめるほそき根のありとあるすぢさぐるを。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みづのえだのかのとだの、八朔だの友引ともびきだの、つめる日だの普請をする日だのと頗るうるさいものであつた。代助は固よりうはそらいてゐた。婆さんは又門野かどのしよくの事をたのんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とき大浪おほなみが、ひとあて推寄おしよせたのにあしたれて、うはずつて蹌踉よろけかゝつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、うはじらむあけぼの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
主人あるじも、容體ようだいわる病人びやうにんで、うはずつて突掛つゝかゝるやうにまをしたさうです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまつきしろのうはじらみ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
はすのもまどまどの、屋根越やねごしなれば、唯吉たゞきちうはそら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こもりうはなだら水。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いま月しろのうはじらみ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)