“鼻緒:はなお” の例文
“鼻緒:はなお”を含む作品の著者(上位)作品数
小川未明4
芥川竜之介3
永井荷風3
太宰治2
海野十三2
“鼻緒:はなお”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 工芸 > 工芸16.7%
歴史 > 伝記 > 日本4.2%
芸術・美術 > 音楽 > 邦楽3.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「あのね、下駄げた鼻緒はなおを切らしちゃったの。お願いだから、すげてね。あたしその間、お客さんの部屋で待ってるわ。」
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
がらりと障子を明けて、赤い鼻緒はなお上草履うわぞうりに、カシミヤの靴足袋くつたびを無理に突き込んだ時、下女が来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
草履は相当無理をしたらしく、戎橋えびすばし天狗てんぐ」の印がはいっており、鼻緒はなおへびの皮であった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
その人は、チョンまげを結って、太い鼻緒はなお下駄げた穿き、見るからに素樸そぼくな風体、変な人だと思っていると、
なんとなく、あしがふらつくところへもってきて、庭下駄の鼻緒はなおがうまく足の指にはさまらないので、キャラコさんは時々よろめく。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
半之丞はこの独鈷の前にちゃんと着物をそでだたみにし、遺書はそば下駄げた鼻緒はなおくくりつけてあったと言うことです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
硝子がらすの箱の中に五分心の洋燈らんぷが明るくついて、鼻緒はなおの赤い草履ぞうりがぬれているのではないがなんとなくしめっていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
少年しょうねんが、おじいさんのげたの鼻緒はなおをたててしまいますと、おじいさんはよろこんで、まちほうへといってしまいました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、母親ははおやが、れかかったぞうりの鼻緒はなおなおしていたときです。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
でも、下駄げた鼻緒はなおが赤くて、その一点にだけ、女の子のにおいを残しています。
東京だより (新字新仮名) / 太宰治(著)
下駄屋の店には、中年のかみさんが下駄の鼻緒はなおの並んだ中に白い顔を見せてすわっていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
黒く塗ったる高下駄たかげた緋天鵞絨ひびろうど鼻緒はなおすげたるを穿いて、目のさめるばかりの太夫が、引舟ひきふねを一人、禿かむろを一人
少年しょうねんは、おじいさんのげたの鼻緒はなおをたてていますと、あごひげのしろいおじいさんは、つえによりかかってあたりをまわしていましたが、
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鼻緒はなおに好んで棕櫚しゅろを用いますが、昔の様式を残した珍らしい下駄であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そしてこのごろは、げたの鼻緒はなおてたり、つめをったりするときだけにしか使つかわれなかったけれど、としとったはさみは、わかいころ
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはそんなことを思出しながら、笑うとなおと、穿いからといって、太いふとい、まむしのような下駄げた鼻緒はなおをこしらえさせて穿いたり
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
マスノは新らしいセーラー服をきて自慢じまんらしかったし、コトエはおばんの作っておいてくれたぞうりの鼻緒はなおに赤いきれのないこんでいるのがうれしそうだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大分禿げ上った頭には帽子ぼうしかぶらず、下駄げたはいつも鼻緒はなおのゆるんでいないらしいのを突掛つっかけたのは、江戸ッ子特有のたしなみであろう。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
藁草履はじっとり湿しめった上、鼻緒はなおい加減ゆるんでいた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
婦人は、三輪車をさけるとたんに、草履ぞうり鼻緒はなおがぷつんと切れてしまい、そして、草履はぬげて、はだしになってしまったのだ。白足袋は、泥水にそまって、もうまっ黒だ。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
じっと、うごく地面を見た。ぢりめん、福草履、八幡黒やわたぐろ鼻緒はなお、物乞いの黒い足——野良犬、野良犬。——絶えまなく、雑多な人間のあしは時を織っている。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
鼻緒はなおの色はとにかく草履ぞうりをはいていることもわかった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
竹皮の表と白木綿の鼻緒はなおと、そのすげ方とに特色を見せます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
途端とたん鼻緒はなおれて、草履ぞうりをさげたまま小僧こぞうや、いしつまずいてもんどりってたおれる職人しょくにん
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
見ればおあつらい通りに下駄の鼻緒はなおが切れている。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歩いているうちに私は駒下駄の鼻緒はなおを切った。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
湯に入り前尻をぬぐい、七、八十文にて事足るものまでも心を込め、小道具など色々の細工物に金銀をついやし高価の品を作り、革なども武具のおどしにも致すべきものを木履ぼくり鼻緒はなおに致し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
駒留橋を渡って、藤代町の宿へ帰ろうとするところで、日本一太郎は、足をとめた。みちばたにしゃがんで、切れた草履の鼻緒はなおを、一時しのぎに何とかつくろおうとしている女の横顔に、眼が行ったのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
生活難の事、紛擾ふんじょうの事、一つ所に長くとまっていられぬ事、学科以外に柔術の教師をした事、ある教師は、下駄げたの台を買って、鼻緒はなおは古いのを、すげかえて、用いられるだけ用いるぐらいにしている事
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下駄の鼻緒はなおが切れる。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「きくや、ご苦労くろうでも学校がっこうまでマントをっていっておくれ。そしてかえりに、どこか、げたって、あの鼻緒はなおれたあしだの鼻緒はなおをたてかえてきてくれない。」といわれました。
おきくと弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そう紙を結んで、ポイと投げると、あの災難の晩、自分が穿いて来た、綺麗きれい鼻緒はなお駒下駄こまげたが、麗々れいれいしく、ごみだらけな床の間に飾ってあるのを持ち出して、突ッかけて、初冬の月が、どこかで淡く冷たい影を投げている荒れ庭を横切りはじめた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
鶯色うぐいすいろのリボン、繻珍しゅちん鼻緒はなお、おろし立ての白足袋しろたび、それを見ると、もうその胸はなんとなくときめいて、そのくせどうのこうのと言うのでもないが、ただうれしく、そわそわして、その先へ追い越すのがなんだか惜しいような気がする様子である。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
——けれどもその時は、それが何故そうしてあるのか考える力もありませんでしたし、そのうちに又附いている男からヒドク小突かれて眼がくらみそうになりましたので、そのまま勝手口に来て、母が平生穿ふだんばきにしておりました赤い鼻緒はなお下駄げたを穿いて横路次に出ました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ソレカラ段々としを取るに従て仕事も多くなって、もとより貧士族ひんしぞくのことであるから、自分で色々工風して、下駄げた鼻緒はなおもたてれば雪駄せったはがれたのも縫うとうことは私の引受ひきうけで、自分のばかりでない、母のものも兄弟のものもつくろうてる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
コートの下には小紋こもんらしいむらさきがかった訪問着がしなやかに婦人の脚を包み、白足袋しろたびにはフェルト草履ぞうりのこれも鶯色のわせ鼻緒はなおがギュッとみついていた——それほど鮮かな佐用媛なのに、そのひとの顔の特徴を記憶している者が殆んど無いという全くおかしな話だった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
久米君は見兼みかねて鉄条綱の向から重い書物の包と蝙蝠傘とを受取ってくれたので、私は日和下駄の鼻緒はなお踏〆ふみしめ、つむぎ一重羽織ひとえばおりの裾を高く巻上げ、きっと夏袴の股立もちだちを取ると、図抜けてせいの高い身の有難さ、何の苦もなく鉄条綱をば上から一跨ひとまたぎに跨いでしまった。
しゅとお納戸なんどの、二こくの鼻緒はなお草履ぞうりを、うしろ仙蔵せんぞうにそろえさせて、おうぎ朝日あさひけながら、しずかに駕籠かごたおせんは、どこぞ大店おおだな一人娘ひとりむすめでもあるかのように、如何いかにもひんよく落着おちついていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)