贈物おくりもの)” の例文
見榮坊みえばう! には見榮みえをんなものつたり、らなかつたりするもの澤山たくさんある。ぼくこゝろからこのまづしい贈物おくりもの我愛わがあいする田舍娘ゐなかむすめ呈上ていじやうする!
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たゞ平岡と事を決する前は、麺麭パンために働らく事をうけがはぬ心を持つてゐたから、あによめ贈物おくりものが、此際このさい糧食としてことに彼にはたつとかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だれもお礼をいうのをわすれるほどそれにれきっていた。彼のほうでは、贈物おくりものをすることがうれしくて、それだけでもう満足まんぞくしてるらしかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
かうしてこの小さな抒情小曲集も今はただ家を失つたわが肉親にたつた一つの贈物おくりものとしたい爲めに、表紙にも思出の深い骨牌の女王を用ゐ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
部屋の中にはよろこびの声が満ちて、キリスト降誕の仮装をした大ぜいの子供が、それぞれ心をこめた贈物おくりものをアロアに贈った、その時でした。
これをるゝをえざるべく、オンチャに分けてこれをはからばその人疲れむ、しかしてかゝる贈物おくりもの本國ところ慣習ならはしかなふなるべし —六〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
パガニーニは、ベルリオーズを評して「彼こそはベートーヴェンの後継者」と公言していたことは、この二万フランの贈物おくりものの意味を説明するだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
召連れ領主役場の腰掛こしかけへ參りしとき九助は爪印つめいんすみに成とて腰掛のかこひの中に居し故實は下役人へ少の贈物おくりものを致し其人の心入にて腰掛こしかけの小かげで此世の暇乞いとまごひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
心をめし贈物おくりものは書生の悪戯いたずらに成りしとも知らず、大原満は奉書の包紙がしわにならぬよう、かけたる水引がまれぬようと後生大事ごしょうだいじに大なる風呂敷へ包み
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大約おほよそ三百ヤードばかり距離きよりを四くわい往復わうふくするのであるが優勝者チヤンピオンには乘組のりくみ貴婦人連レデイれんからうるはしき贈物おくりものがあるとのことで、英人エイじん佛人フツじん獨逸人ドイツじん其他そのほか伊太利イタリー瑞西スイツツル
やす贈物おくりものだ!』とあいちやんはおもひました。『わたし誕生日たんじやうび此麽こんなけち贈物おくりものをしてもらひたくない!』しかあいちやんはあへてそれをこゑしてひませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
船が桑港サンフランシスコに入る前夜、ぼくは日本をつとき、学校の先生からたのまれた、羅府ロスアンゼルスにいる先生の親戚しんせきへの贈物おくりもの、女の着物の始末に困って、副監督ふくかんとくのM氏に相談しました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それから命名式の当日はその親族、朋友らからして酒肉あるいは衣服または銀子ぎんす等の贈物おくりものをして来る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「私どもは毎日このへんびめぐりまして、あなたさまの外へお出なさいますのをおちいたしておりました。これは私どもの王からの贈物おくりものでございます」とながら
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それでその贈物おくりもの、われわれがわれわれの思想を筆と紙とに遺してこれを将来に贈ることが実に文学者の事業でありまして、もし神がわれわれにこのことを許しますならば
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
贈物おくりものが交換され、晩餐會や夜會が催された。勿論私は總ての樂しみからのけものにされてゐた。
彼は訪問の度ごとに、瑠璃子の歓心を買うために、高価な贈物おくりものを用意することを、忘れなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
十二月の二十五日の午後から書き初めたのでした。今朝けさ耶蘇降誕祭クリスマス贈物おくりものひかるしげるの二人を喜ばせて、私等二人も楽しい顔をして居たと確か初めには書いたと思つて居ます。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
今となってみれば、一年に一度のクリスマスに、あんな役にも立たぬとぼけた贈物おくりものをしたことがくやまれる。こうと知っていたら、お小遣いをやって喜ばせることもできたのに。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ぢやが、海苔のりじょう煎餅せんべいの袋にも、贈物おくりものは心すべきぢや。すぐに其は対手あいてに向ふ、当方の心持こころもちしるし相成あいなる。……将軍家へ無心むしんとあれば、都鳥一羽も、城一つも同じ道理ぢや。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「えっ、御承諾ごしょうだく下さいまするか……」畳を下がって礼をのべた。あたかも主君へ対する作法である。その上、おびただしい金布きんぷ贈物おくりものを残して、刈屋頼母かりやたのも大川内おおかわちたにあいからかごを戻して行った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〇八三〇マルハチサンマル高城伍長は彼の仮小屋に来た。その少し前に隊長当番兵の佐伯が来て、しっかりやるようにとの隊長の伝言と贈物おくりものの水筒をもたらした。水筒をあけるとウィスキイの香がした。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
もし、私がほんとうの宮様プリンセスだったら、私は人民に贈物おくりものきちらすことが出来るんだけどな。宮様プリンセスのつもりになっただけでも、皆さんのためにしてあげられることは、いろいろあるわ。
そうすると、いうまでもなく、相手の口はいともしおらしく開けられたものだ。誕生日などには、例えばビーズ刺繍の小楊枝入こようじいれといった風な、相手の思いもかけぬような贈物おくりものが用意される。
おみき………兎も角も私が往って貰うような事にしましょう、若いとこの芸者や何かは会の義理を出すと思えば貴方一寸びらを拵えても、びらが五十銭に贈物おくりものが二円も掛る、大した散財に成るんだもの
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取れば取られるのに、自由な贈物おくりものを受けるので
 身にふさわしい贈物おくりものも、おうけ致す。
胚胎 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
また彼は家の人たちのいわい日を一わすれることがなかった。だれかのいわい日になると、きっとやってきて、心をこめてえらんだかわいい贈物おくりものをポケットからとりだした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
濱島はまじまおくつてれたかずある贈物おくりものうち、四かく新聞しんぶんつゝみは、しや煙草たばこはこではあるまいかとかんがへたので、いそひらいてると果然くわぜん最上さいじやう葉卷はまき! 『しめたり。』とてんじて
『そんなら、さう!』とつて公爵夫人こうしやくふじんは、『いまつたことみんな、わたしがおまへへの贈物おくりものです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「あの爐棚の上のは、私が描いたの。」それは水彩の山水で、私の爲めに親切に委員の人たちが執成とりなしてくれたお禮心に私が學監に贈物おくりものにしたもので、それにふちをつけ硝子ガラスを嵌めたものだつた。
それはどうかおおさめをねがいます。私どもの王からの贈物おくりものでございますから。おおさめくださらないと、また私はせがれと二人で切腹せっぷくをしないとなりません。さ、せがれ。おいとまをして。さ。おじぎ。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
出れば近所の子にせがまれてありったけの小銭こぜにをやっていたが、その無意味な贈物おくりものが不道徳な行為だと友人にいさめられて、ある日道を変えて宿へ逃げ帰るところを、斥候せっこうを放った子供達に包囲されて
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
其晩そのばん小六ころく大晦日おほみそかつたうめはな御手玉おてだまたもとれて、これあにから差上さしあげますとわざ/\ことわつて、坂井さかゐ御孃おぢやうさんに贈物おくりものにした。そのかはかへりには、福引ふくびきあたつたちひさな裸人形はだかにんぎやうおなたもとれてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あし贈物おくりものをするなんて餘程よツぽど可笑をかしいわ!宛名あてなんなにへんでせう!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あなたは贈物おくりものの取消を頼んだのだから。も一度云つて御覽。