“穿:は” の例文
“穿:は”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花74
吉川英治33
夏目漱石28
中里介山26
岡本綺堂24
“穿:は”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸40.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.1%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆2.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
盲縞めくらじまの腹掛け、股引ももひきによごれたる白小倉の背広を着て、ゴムのほつれたる深靴ふかぐつ穿
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人ひとりかみの二三ずんびたあたまして、あしには草履ざうり穿いてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
私はいつものように手数てかずのかかる靴を穿いていないから、すぐ玄関に上がって仕切しきりふすまを開けました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
台所の下駄を穿いて裏へ出て見ますと、幾千人の群の集った式場は十字を白く染抜いた紫の幕に隠れて、内の様子も分りません。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ホワイト襯衣しゃつに、しまあらゆるやか筒服ずぼん、上靴を穿いたが、ビイルをあおったらしい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久「お前のそばに芋虫のごろ/″\してはいられねえが、えゝ……簑虫みのむし草鞋虫わらじむし穿き、と」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そのつもりで、あたしは草鞋わらじをちゃあんと買っておきました、少し大きいけれども、茂ちゃん、お前もこれをお穿き」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其処に誰かの穿てていったらしい草鞋わらじを拾って、それを自分のぼろぼろになったのと穿き換えているのである。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
かれは藁草履わらざうりをつツかけて穿いた。かれは寺を出て、一番先に、近所にある貧しい長屋の人達のかとに立つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
背後うしろむきにかゝとさぐつて、草履ざうり穿いて、だんりて、てく/\く。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は一つの包を持ち、紺飛白こんがすりの着物に羽織も着ず、足袋も穿かずに、ヒヾの切れた足にほゝ歯の下駄を穿いてゐた。
部屋へ入ると、紺の筒袖に、山袴やまばかま穿き、帯だけが赤いので、これは女の子だと分る女の子が、突っ立ったままで、
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兵法の道を穿きちがえているゆえに、覚えがないと思うのであろう。――他日よく、胸に手を当てて考えてみれば分ってくる」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相変らず例の派出はではかま穿いて、蒼白あおしろい額ににじんだ汗をこくめいに手拭てぬぐいいている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等は胴から上の筋肉をたくましくあらわして、大きな足に牛の生皮きがわを縫合せたかたい靴を穿いている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっともこの西洋人は上靴スリッパー穿いて、島田の借りている部屋の縁側までのそのそ歩いてくる癖をっていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
節子はいそいそと支度した。子供等がき立てる中で新しい白足袋しろたびなぞを穿いて、一番おくれて家を出た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
りよは着換えぬうちで好かったと思いながら、すぐに起って上草履うわぞうり穿いて、廊下づたいに老女の部屋へ往った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
足の悪いお新さんと鶴子を茶店ちゃみせに残して、余はくつのまゝ、二人の女は貸草履に穿えて上りはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼等少年軍の多くは足駄を穿いておりました。てついた大地をその足駄穿きで、カランコロンと蹴りながら歩いていました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
事態の逼迫ひっぱくを認識せず、物の軽重を穿きちがえた、横着おうちゃくとまではいかなくとも、いささか自己中心にすぎて
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
河岸の石垣の上から穿いて来た赤い鼻緒の日和下駄ひよりげたを穿いているが、これはどうやら身投みなげ女の遺留品らしい。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だが今日日ぢゃ草鞋作って穿く代りに靴足袋買って穿かんならんやうに世の中が出来とるでなあ! なんでもその通りだ!」
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
と言って草履ぞうり穿く途端に、ちょっとよろけて、美少年の手がお角の肩へさわりました。お角はそれを仰山に抑えて、
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夢遊病にとりつかれたような女は、それでも本能的に自分の下駄だけは間違えないで穿き、盲目的に外へ飛び出してしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
マルチノ思ひ定めかねて、僧たちとはからんとていぬる折柄、ペツポのをぢは例の木履きぐつを手に穿きていざり來ぬ。
お銀様の歯の根が合いませんでした。そこに頭巾ずきんかぶってはかま穿いて立っているのは武士の姿であります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
草色の股引ももひき穿いて藁草履わらぞうりで立っている、顔が荷車の上あたり、顔といえば顔だが、成程鼻といえば鼻が。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥の方から用談のはてたらしい羽織を着た男が出て来て、赤い緒の草履ぞうり高下駄たかげた穿き直して出ていった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そして出来る事なら天国へく折にも、こんな消化こなれのいい物を食つて、こんな軽いくつ穿いてゐたいと思つた。
その日になると、市長はしつくりと礼服を着込み、絹製のくつしたに、おろし立ての靴を穿いて、大威張りで出かけて往つた。
これを腰にぶらさげくま膏薬かうやくはいつた箱をはす背負せお鉄雪沓てつかんじき穿いて、伝
翌日道子はアンダーシャツにパンツを穿き、その上に着物を着て隠し、汚れ足袋たびも新聞紙にくるんで家を出ようとした。
快走 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた女、高慢かうまん上衣うはぎを着た女、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そこへ娘が、わらじを買って来てくれた。武蔵は入念に、わらじの緒のよりを調べて、革足袋かわたびのうえに穿いた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの沓脱石くつぬぎにある木履ぼくり穿いて、庭づたいにめぐって、安房守が呼んでいる座敷の前へ出て行った。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「水下駄を穿いて、握りつこぶしで道行をする女があるものか――まアいゝ、それからどうした、中休みをせずに話して了へ」
数右衛門はすぐ草履ぞうり穿いた。江戸はまだ不案内なので、一も二もなく、そう云ってくれた人の好意がうれしかった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前のめし屋のランプの影から、やがて二、三人編上靴あみあげぐつ穿いたのが出て来て、こういう時は仕事のある福音だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭へ通ると、その四郎次郎は縁先で草鞋わらじ穿きかけていた。ふと、宗湛の姿を見ると、いきなり大声で先から云った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は手早くくつ穿いて、頭椎かぶつちの太刀を腰に帯びると、老婆の挨拶には頓着なく、大股に洞外へ歩を運んだ。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いま一人ひとりかはんだばうかぶつて、あしには木履ぽくり穿いてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
下町へ行こうと思って、日和下駄ひよりげたなどを穿いて出ようものなら、きっと非道ひどい目にあうにきまっていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生は紀元前の半島の人のごとくに、しなやかなかわで作ったサンダルを穿いておとなしく電車のそばるいている。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
亀蔵はその時茶の弁慶縞べんけいじまの木綿綿入を着て、木綿帯を締め、あい股引ももひき穿いて、脚絆を当てていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は快く岳父の棺側をまもる役の一人を引受け、菅笠すげがさかぶ藁草履わらぞうり穿いて黙々と附いて歩いた。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼等かれらあしはぬ不恰好ぶかつかうしわつたしろ足袋たび穿いてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
浪路は、今は、髷の根も抜けた――後れ毛は、ほつれかかった。褄先つまさきが乱れて、穿いていたものもくしてしまった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
むろん今は出来ないどころか記憶にさえ残っていないが、しまいには翁が自分で足袋たび穿いて来てってみせた。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
幾ら瀬戸の言うのが事実で、今夜来ている芸者はお茶碾きばかりでも、小倉袴を穿いた書生の跡を追い廻すはずがない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
西天竺しらない国の王、はらない国王に攻められ逃げる時、靴を逆さまに穿いて命を全うし、再び兵を起して勝軍した故事を
学円 明けがた……はいが、(と草鞋を穿きながら)待て待て、一所に気軽に飛出して、今夜、丑満つの鐘はどうするのじゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
束髪そくはつで、眼鏡で、大分西洋がつたハイカラ式の弁天様だ、海老茶袴えびちやばかま穿いてねい所が有難い」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
白い襟巻えりまきのようなものをぐるぐると首に巻き、空色の長い上衣を著て、半袴はんばかま穿いた、眼の非常に大きい男は
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
斉藤平太は茶いろの乗馬ズボンを穿き赤ネクタイを首に結んであっちへ行ったりこっちへ来たり忙しく両方を監督しました。
革トランク (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「どうれ!」とどすがかった声がして、すぐ隣の玄関脇の部屋から、小倉こくらはかま穿いた爺さんが出てきた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
女は彼を見ると、それでも沓下だけは大急ぎで穿いた。そして彼の体を全く馴染みの男の様に抱えてテーブルの前の椅子に坐らせた。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もっともこの積雪の上を徒渉としょうするのにどうしても滑りますから鉄製の爪あるカンジキを穿いて登るのであります。
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
大きな長い舌の女、細面ほそおもてのその女の顔は、はかま穿いて風呂敷包みを持った女学生か事務員のように見えていた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
武蔵も、草履を穿いて、往来へ出た。――そして伊織の小さい姿が、博労宿と鍛冶屋の四つ角を左へ曲がったのを見届けて、
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『師匠っ、はやく、この合羽をかぶって、草鞋を穿いて――。あ、あたしの田舎へ、逃げましょう。お次さんも連れて』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一部軍隊の行為には違いないが、何か命令を穿きちがえたものか、敵側の流説に乗ぜられて、はやまったものらしく想像された。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だ暑いから股引ももひき穿かず、跣足はだし木屑きくずの中についたひざもも、胸のあたりは色が白い。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
踊を見にっても好いかと、お母様に聞くと、早く戻るなら、往っても好いということであった。そこで草履を穿いて駈け出した。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
御者ぎょしゃが立派なリヴェリーを着て、光った長靴を穿いて、哈爾賓ハルピン産の肥えた馬の手綱たづなを取って控えていた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
靴を穿いて格子を出るのを、お妙は洋燈をせなにして、かまちの障子につかまって、じっと覗くように見送りながら、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仙台平せんだいひらを窮屈そうに穿いて七子ななこの紋付を人の着物のようにいじろじろながめているのもある。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつもは、もんぺを穿いて、木綿もめんのちゃんちゃんこで居る嫁御が、その姿で、しかもそのありさまでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつ穿きふるしの茶の運動靴うんどうぐつをやったら、早速穿いて往ったが、十日たゝぬ内に最早もう跣足はだしで来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
足袋たび穿かぬあしかふさめかはのやうにばり/\とひゞだらけにつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しばらくすると、宣告文をいたかみと、宣告文を持つた、白い手――手套てぶくろ穿めない――を角燈がらした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と玄関の敷台をり草鞋を穿こうとする、其の側へお徳はすり寄りたもとを控え、涙に目もとをうるましながら、
大口のようなズボンを穿いている――がやって来て、これも何か早口で指図をすると、子供らは心得て、蜘蛛くもの子のように四散し
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その風来人というのは、五十がらみ、小肥りに太った、笠をかぶって、もんぺを穿いた旅の者らしい一人の男であります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無器用ぶきよう小供こどものように卒直に歩く――実は長い洋行後駒下駄こまげたをまだ穿れて居ないのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かしこにくさりも冠もなく、飾れるくつ穿く女も、締むる人よりなほ目立つべき帶もなかりき 一〇〇―一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あの時は家へ來て泊つた鈴木のお客に餘所行の下駄を二足とも穿いて行かれてしまつて、あんな困つた事はなかつたつて言つてるのよ。
梅龍の話 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
草鞋わらぢ穿いてまたつちをついて、次男坊じなんばう生命いのちたすかりまするやうに、ねえ/\
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
といいながらきにかゝりますと、馬が多助の穿いている草鞋の切れ目をみ、多助の袖をくわえて遣るまいとするから、
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
閣下……いや、男爵は、そいつの皺を伸ばしながら右足に穿き、もう一方を穿こうとすると、どうしたことか、それも右足の方である。
沼畔小話集 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
ありでも付きましたか」と門野が玄関の方から出て来た。はかま穿いている。代助は曲んだまま顔を上げた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この言葉を穿きちがえて、もし彼がもう半月も、京都に安閑としていたら、すでに帰る郷土も家もなかったかも知れない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手に足駄あしだ穿ける乞食 い時につたものだ。もう二三日早かつたら、胴中どうなかに矢の穴が明いたかも知れぬ。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
渠は質素なる黒の紋着きの羽織に、節仙台ふしせんだいはかま穿きて、その髭は弁者より麗しきものなりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庭下駄にわげた穿いて、日影のしもくだいて、近づいて見ると、公札の表には、この土手登るべからずとあった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奥様から頂いて穿いた古足袋たびの爪先も冷くなって、鼻の息も白く見えるようになれば、北向の日蔭は雪も溶けずに凍る程のお寒さ。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
紺がすりの単衣ひとえもの小倉こくらはかまを着けて、白足袋たびに麻裏の草履ぞうり穿いていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と丹治と母を突きのけ、既に庭下駄を穿いてりにかゝるを、母は是れをさえぎり止めようと致すを、千代が、
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女はそう言ってくつ穿いて小婢といっしょにあがって往った。許宣もその後からあがったが、それは赤脚はだしのままであった。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
吉良は、穿き古した草鞋わらじのような感じの、細長い顔をまっすぐ立てたまま、平茂のことばは、聞こえていて聞こえていなかった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
生々しい青大将色の琉球飛白がすりを素肌に着て、洗い髪の櫛巻くしまきに、女たちと同じ麻裏の上草履うわぞうり穿いている。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白ッポイ着物に青い博多織の帯を前下りに締めて紋付の羽織を着て、素足に駒下駄こまげた穿いた父の姿が何よりも先に眼に浮かぶ。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
奢侈しゃしの余り多くの騾に金くつ穿かせ、また化粧に腐心して新たに駒産める牝驢ひんろ五百をい、毎日その乳に浴し
殊に曲馬団では、ほとんど肉シャツ一枚で、乳がその形において現れ、彼女らは皆黒か赤のビロウドの猿股さるまた穿いていた。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
がんりきは片一方の手で脚絆きゃはんをひねくる、それを七兵衛ははたから穿かせてやって、身軽な扮装いでたちが出来上りました。
何を言うにも襦袢じゅばん一枚、帯は縄を締め、草鞋わらじをいつにも穿いたこともねえから、ざまの悪い乞食さ。
……はゝぢやびとのをわざ穿いてたらしい、可愛かはい素足すあし三倍さんばいほどな
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若者は、宵の口から、藁製の雪沓ゆきぐつ穿き、その下にかつちき(かんじきの義)を著けて湖上へ出かける。
諏訪湖畔冬の生活 (新字旧仮名) / 島木赤彦(著)
その人は、チョンまげを結って、太い鼻緒はなお下駄げた穿き、見るからに素樸そぼくな風体、変な人だと思っていると、
――あなたの手を握っていると、ほんとにこころにぴったり来るのよ。あなたの手は皮膚の手袋さえ穿めてないからね。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
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