)” の例文
なかんずく役人の旅費ならびに藩士一般に無利足むりそく拝借金、またはだされ切りのごときは、現に常禄の外に直接の所得というべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
土踏むことを知りたるものの心ひくべきおもむきは有たざらむ款冬花ふきのたうにはほゝゑみたる事あり、この花には句を案じたること無し。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
郷愁はるものを思慕する情をいうのである。再び見るべからざるものを見ようとする心は、これを名づけてそも何と言うべき
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
余はこれに未来の望を繋ぐことには、神も知るらむ、絶えておもひ到らざりき。されど今こゝに心づきて、我心は猶ほ冷然たりし
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此御歌イカナル御懽有テヨマセ給フトハシラネド、垂水ノ上トシモヨマセ給ヘルハ、もし帝ヨリ此処ヲ封戸ふごニ加へ賜ハリテ悦バセ給ヘル
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
た文の妙なるにしかまことに其の文の巧妙なるには因るといえどの圓朝のおじの如きはもと文壇の人にあらねば操觚そうこ
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
すゝまれもせず、引返ひきかへせばふたゝ石臼いしうすだの、まつだの、屋根やねにもひさしにもにらまれる、あの、此上このうへもないいやおもひをしなければならぬのと、それもならず。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我がこの時の心を物に譬へて言はゞ、商人のおのが舟の沈みし後、身一つを三版はぶねに助け載せられて、知らぬ島根に漕ぎゆかるゝが如しといふべき
すべ是等これらこまかき事柄はほとんど一目にて余のまなこに映じつくせり、今思うに此時の余の眼はあたかも写真の目鏡めがねの如くなりし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
余も月樵の名誉が全くないとは思はないけれど、今日ある所の名誉は実際の技倆に比して果して相当な名誉であるであらう、それが疑はしいのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
我ニ自由ヲ与フルしからザレバ死ヲ与ヘヨト唱ヘシモ、英国ノ暴政ニ苦シムノ余、民ヲ塗炭とたんニ救ヒ、一国ヲ不覊独立ノ自由ニセント死ヲ以テ誓ヒシコトナリ。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
ゆゑに縐布しゞみぬのといひたるを、はぶきてちゞみとのみいひつらん。かくてとしるほどに猶たくみになりて、地をうつくしくせんとて今のごとくちゞみは名のみにのこりしならん。
独乙ドイツことわざに曰く「屋上のはとは手中のすゞめかず」と。著者の屋上の禽とは此諺の屋上の鳩を意味するもの。果して然らば少しく無理の熟語と謂はざるからず。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
老僕ろうぼくひたいしかめ、り有り、大変たいへんが有りたりという。先生手をげて、そはしばらくくをめよ、我まずこれを言わん、浮浪ふろう壮士そうし御老中ごろうじゅうにても暗殺あんさつせしにはあらざると。
がりいたし候處、すぐれたる散歩に相叶、洋醫も大に悦び、雨ふりには劒術をいたし候、又は角力を取候、何右等の力事ちからごとをいたし候樣申きけ候得共、是は相調かなひ申段相答候へば
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
又武士道徳の名残で気骨のある男子は婦人にしたしまんのを主義とする。斯ういふ国柄では婦人に近づくのはごく優柔な意気地無し、でなくば世間を憚らない突飛な無分別者である。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
師子のなかの虫なり。又うたごうらくは、天魔波旬てんまはじゅんのために、精気をうばわるるの輩。もろもろの往生の人をさまたげんとするもっともあやしむべし。ふかくおそるべきものなり。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此一句他日幕府よりの謝表中ニ万一遺漏いろう、或ハ此一句之前後を交錯し、政刑を帰還するの実行を阻障せしむるか、従来上件ハ鎌倉已来武門ニ帰せる大権を解かしむる之重事なれバ
今まで現実の我れとして筆りつゝありし我れが、はつと思ふ刹那に忽ち天地の奥なる実在とりたるの意識、我は没して神みづからが現に筆を執りつゝありと感じたる意識とも言ふべき
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
して地球に生息する一切の有機体をや、細は細菌より大は大象に至るまでの運命である、これ天文・地質・生物の諸科学が吾等に教ゆる所である、吾等人間ひとり此鈎束こうそくを免るることが出来よう
死生 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
第一にかれを本国へ返さるる事は上策也(此事難きに似て易き
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
つめひかへながら願書御取上の有無うむは如何や又とがめにてもかうむる事と心配し居しにやがて縫殿頭殿彌兵衞を呼れ兩人が體を見るに僞らざる樣子自然しぜん面にあらはるゝにより願書の趣き一通り糺明たゞしつかはせといはれ駕籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
去つてゆく冬の使節、いまはこゑをと。…
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
聖人の盛徳といえども、御年猶若かりし頃には、堪えかねて見放したもうて去られしもの、或は幵官氏に宜しからぬことのありし歟。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
与謝野晶子よさのあきこさんがまだおおとり晶子といわれた頃、「やははだの熱き血潮にふれもみで」の一首に世を驚したのは千駄ヶ谷の新居ではなかった
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
進まれもせず、引返ひきかえせば再び石臼いしうすだの、松の葉だの、屋根にもひさしにもにらまれる、あの、このうえもないいやおもいをしなければならぬのと、それもならず。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「御字なきは転写のとき脱せる。但天皇に献り給ふ故に、献御歌とはかゝざるなるべし」(僻案抄へきあんしょう
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
下等士族はすなわしからず。役前やくまえほか、馬に乗る者とては一人ひとりもなく、内職のかたわらに少しく武芸ぶげいつとめ、文学は四書五経ししょごきょう、なおすすみ蒙求もうぎゅう左伝さでんの一、二巻に終る者多し。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其習は本性の如く人にしみ附きて離れず。老子は自然と説く。これ。孔子いわく述而不作のべてつくらず信而好古しんじていにしえをこのむ窃比我於老彭ひそかにわれをろうほうにひす。かく宣給のたもふときは、孔子の意もまた自然に相近し
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ついに貧苦に堪え得ずして所天おっとに悪事を勧むるにも至りしあゝ目科の細君が言し所は余の思いしより能くあたれり藻西の無罪を証拠立んとする余の目的は全くはずれんとするなる歟
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その學校生涯は爆竹のにはかに耳をおどろかす如くなりき。その詩も亦然なり。彼草稿は猶我手に留まれり。何等の怪しき作ぞ。熟〻つら/\これを讀むときは、畢竟是れ何物ぞ。斯くても尚詩といはるべき
もつとも清浄しやう/″\なる所を貢献こうけんせしならん
請出し候が是又心懸よき女にて奉公人より小前こまへ百姓共迄も平常つね/″\ほめ候て家内和合わがふいたし居候と申立ければ大岡殿然れども文藏夫婦の者近頃何方へゆきし事は是なきやと尋ねられしに用右衞門去年十月中に夫婦身延山みのぶさんへ參詣仕つり候儀御座ござると申立れば大岡殿其儀二十七日に召捕候節吟味は致さずや又萬澤の御關所近邊きんぺんには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これいはゆる矮小わいしょうなる島国人とうこくじんの性質また如何いかんともすべからざるもの。進んで他を取らんとすればために自己伝来の宝を失ふ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
官吏はただ民に対する誅求ちゆうきうと上に対する阿諛あゆとを事としてゐる、かゝる世の中に腕節うでふしの強い者の腕が鳴らずに居られよう
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
毛糸けいと手袋てぶくろめ、白足袋しろたびに、日和下駄ひよりげたで、一見いつけん僧侶そうりよよりはなか宗匠そうしやうといふものに、それよりもむしぞく
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
剣術の巧拙こうせつを争わん、上士の内に剣客はなはだ多くしてごうも下士のあなどりを取らず。漢学の深浅しんせんを論ぜん、下士の勤学きんがくあさくして、もとより上士の文雅に及ぶべからず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
されど今こゝに心づきて、我心は猶ほ冷然たりし
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
もつとも清浄しやう/″\なる所を貢献こうけんせしならん
鳥居清信がいはゆる鳥居風なる放肆ほうしの画風をたてしは思ふに団十郎の荒事を描かんとする自然の結果にいでたるものならん
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
又ずっと後の寛永初年(五年)三月十二日、徳川二代将軍秀忠が政宗の藩邸に臨んだ時、政宗が自ら饗膳きょうぜんを呈した。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こうして人間同士がお静かに分れた頃には、一件はソレりゅうの如きもの凡慮ぼんりょの及ぶところでない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大都の康荘こうそうは年々面目を新にするに反して窮巷屋後きゅうこうおくご湫路しゅうろは幾星霜を経るも依然として旧観をあらためず。これを人の生涯に観るもまたかくの如き
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此は人類の生を遂ぐる所以の大法の然るよりして來るは姑らく論ぜずとして、世上に多く見るの事實である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
佐沼へは是より田舎町(六町程)百四十里ばかりにて候、其間に一揆のこもりたる高清水と申すが佐沼より三十里此方こなたに候、其の外には一つも候わず
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
江戸と呼べる鎖国の時代ほど超然として他に妨げらるるものなく能くその発達を遂げたるもの、恐らくは他国他人種の文明にその比を見ざる処ならん
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
処といひ相応して、我耳に入るは我声ながら、若くは随喜仏法の鬼神なんどの、声をあはせて共に誦すると疑はるゝまで、上無く殊勝に聞こえわたりぬ。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
恋愛を描ける小説、婦女の裸体を描ける絵画の類、ことごとくこれをしりぞくべき。悉くこれを排けて可なり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
明史みんし外国伝がいこくでん西南方のやゝつまびらかなるは、鄭和に随行したる鞏珍きょうちんの著わせる西洋番国志せいようばんこくしを採りたるにもとづくという。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世人の西洋模造品を購って毫も意に介せざるは本場の舶来品に似て価の廉なるに在る
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)