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時雨
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しぐれ
ふりがな文庫
“
時雨
(
しぐれ
)” の例文
時雨
(
しぐれ
)
、肌寒い晩がた、それから小春日和。……この季節には庭や菜園や川岸などの散歩はいつもより少し長めにしなければなるまい。
富籤
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
靱負には答える言葉がなかった、多助はいちど帰って妻を伴れて来ると云い、折から降りだした
時雨
(
しぐれ
)
のなかへと小走りに出ていった。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
時雨
(
しぐれ
)
もよいの夕に春日の森で若い二人の巫女にあったことがある。二人とも十二、三でやはり緋の袴に白い衣をきて
白粉
(
おしろい
)
をつけていた。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こう思い直して、かれは更に爪先を南に向けると、この頃の空の癖で、
時雨
(
しぐれ
)
を運び出しそうな薄暗い雲が彼の頭の上にひろがって来た。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
星の光さえ見えない位に真っ暗な晩で、外にはときどき
時雨
(
しぐれ
)
らしいものが、さっと木の葉にふりかかる音さえ微かにし出していた。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
雨夜
(
あまよ
)
の月に
啼
(
な
)
く
時鳥
(
ほととぎす
)
、
時雨
(
しぐれ
)
に散る秋の
木
(
こ
)
の葉、落花の風にかすれ行く鐘の
音
(
ね
)
、行き暮るる
山路
(
やまじ
)
の雪、およそ
果敢
(
はか
)
なく頼りなく望みなく
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
時雨
(
しぐれ
)
の通りこせし後は林の
中
(
うち
)
しばし明るくなりしが間もなくまた元の
夕闇
(
ゆうやみ
)
ほの暗きありさまとなり、
遠方
(
おちかた
)
にて
銃
(
つつ
)
の音かすかに聞こえぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
今日
(
きょう
)
から冬の季にはいる日は、いかにもそれらしく、
時雨
(
しぐれ
)
がこぼれたりして、空の色も身に
沁
(
し
)
んだ。終日源氏は物思いをしていて
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
夏山 夏野
夏木立
(
なつこだち
)
青嵐
五月雨
(
さみだれ
)
雲の峰 秋風
野分
(
のわき
)
霧 稲妻
天
(
あま
)
の
河
(
がわ
)
星月夜 刈田
凩
(
こがらし
)
冬枯
(
ふゆがれ
)
冬木立 枯野 雪
時雨
(
しぐれ
)
鯨
(
くじら
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
女は、男が何か最後の相談に来るというので、男の大事にしている『
時雨
(
しぐれ
)
』というその笛の中へ、手紙を巻きこんでおいたに違いない。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大声嘈々
驟雨
(
ゆうだち
)
の井を
倒
(
さかさ
)
にするごとく、小声切々
時雨
(
しぐれ
)
の落葉を打つがごとく、とうとう一の小河を成して現存すとは、
天晴
(
あっぱれ
)
な吹きぶりじゃ。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「されば歌も亦、かくの如き」ものであって、花を白雲と見ちがえたり、木の葉の音を
時雨
(
しぐれ
)
とあやまつことはどの歌でも同じことなのだ。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
青銅
(
からかね
)
の鳥居をくぐる。敷石の上に鳩が五六羽、
時雨
(
しぐれ
)
の中を
遠近
(
おちこち
)
している。
唐人髷
(
とうじんまげ
)
に
結
(
い
)
った
半玉
(
はんぎょく
)
が
渋蛇
(
しぶじゃ
)
の
目
(
め
)
をさして鳩を見ている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
軒
(
のき
)
に
干
(
ほ
)
したる
日
(
ひ
)
は、
時雨
(
しぐれ
)
颯
(
さつ
)
と
暗
(
くら
)
くかゝりしが、
曳
(
ひ
)
く
頃
(
ころ
)
は
霙
(
みぞれ
)
、
霰
(
あられ
)
とこそなれ。
冷
(
つめ
)
たさ
然
(
さ
)
こそ、
東京
(
とうきやう
)
にて
恰
(
あたか
)
もお
葉洗
(
はあらひ
)
と
言
(
い
)
ふ
頃
(
ころ
)
なり。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
時雨
(
しぐれ
)
に
濡
(
ぬ
)
れて、ある駅から乗込んだ画家は、すぐまた次の駅で降りて行った。そうした情景を彼もまた画家のような気持で眺めるのだった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
金公が先に立ってその堤防の並木の中へ分けて行く時分に、さきほどから怪しかった
時雨
(
しぐれ
)
の空がザーッと雨を落してきました。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
時雨
(
しぐれ
)
とかいうようなふうに、何か各季節に属した一つの天象、地理、動植物もしくは人事などを詠みこむことになっている。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
夕立ともつかず、
時雨
(
しぐれ
)
ともつかないような、夏から秋に移り変る時の短い雨が来た。草木にそそぐ音は夕立ほど激しくない。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
時雨
(
しぐれ
)
が降って来たのである。だが見る間にあがってしまった。そうしてすぐに陽がさして来た。どこからか
謡曲
(
うたい
)
の声がした。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
寿鶴亭
(
じゅかくてい
)
という八人芸(
時雨
(
しぐれ
)
云、拙著『旧聞日本橋』の中には、この寿鶴の名が思いだせないで○○
斎
(
さい
)
と書いたのと同じ人)
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
岡田八千代様、長谷川
時雨
(
しぐれ
)
様のやうな立派な方が何と云つてもまだ未成品の私共と一緒に筆をとつて下さることを本当にうれしく感謝いたします。
編輯室より:(一九一六年一月号)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
そこのそうしたさまになったと一しょに、伝法院の横の、木影を帯び、
時雨
(
しぐれ
)
をふくんだその「
細工場
(
さいくば
)
」は「ハッピー堂」と称する絵葉書屋になった。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
時雨
(
しぐれ
)
は降る、日は暮れる、今夜の泊りと豫定した部落まではまだこの荒野の中を二里も行かねばならぬと聞き、無理に頼んで泊めて貰つたのであつた。
樹木とその葉:02 草鞋の話旅の話
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
モスクヷには秋の雨が降りはじめていて、並木道の上に落ち散った黄色い葉を、日に幾度も
時雨
(
しぐれ
)
がぬらしてすぎた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
慚愧
(
ざんき
)
不安の
境涯
(
きょうがい
)
にあってもなお
悠々
(
ゆうゆう
)
迫らぬ趣がある。省作は泣いても
春雨
(
はるさめ
)
の曇りであって
雪気
(
ゆきげ
)
の
時雨
(
しぐれ
)
ではない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
枇杷
(
びわ
)
が花をつけ、遠くの日溜りからは
橙
(
だいだい
)
の実が目を射った。そして初冬の
時雨
(
しぐれ
)
はもう
霰
(
あられ
)
となって軒をはしった。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
一首の意は、天から
時雨
(
しぐれ
)
の雨が降りつづくのを見ると、うら
寂
(
さび
)
しい心が絶えずおこって来る、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
暫
(
しばら
)
くして
短
(
みじか
)
い
日
(
ひ
)
が
傾
(
かたむ
)
いた。
社
(
やしろ
)
の
森
(
もり
)
を
包
(
つゝ
)
んで
時雨
(
しぐれ
)
の
雲
(
くも
)
が
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
一
杯
(
ぱい
)
に
擴
(
ひろ
)
がつた。
濃厚
(
のうこう
)
な
鼠色
(
ねずみいろ
)
の
雲
(
くも
)
は
凄
(
すご
)
く
人
(
ひと
)
に
迫
(
せま
)
つて
來
(
く
)
るやうで、
然
(
しか
)
もくつきりと
森
(
もり
)
を
浮
(
う
)
かした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
時雨
(
しぐれ
)
らしく照ったり降ったりしていた雨の
脚
(
あし
)
も、やがてじめじめと降り続いて、煮しめたようなきたない
部屋
(
へや
)
の中は、ことさら
湿
(
しと
)
りが強く来るように思えた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
試みに「
鳶
(
とび
)
の羽」の巻をひもといてみる。鳶はひとしきり
時雨
(
しぐれ
)
に悩むがやがて風収まって羽づくろいする。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
畑銀鶏の「
時雨
(
しぐれ
)
の袖」の中に、好徳と言う人の説を紹介しているが、これがまた驚嘆に値する卓説で、「ナヰ」は「なえしびれる」の意味で、大地震の時には
地震なまず
(新字新仮名)
/
武者金吉
(著)
それは、冷たい
時雨
(
しぐれ
)
が、彼女の頭の上の窓に降り注いでは止み、降り注いでは止みしてゐる午後であつた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
誰の字とも弥生はもとより知る由もないが、
金釘流
(
かなくぎりゅう
)
の文字が
野路
(
のじ
)
の
時雨
(
しぐれ
)
のように斜めに倒れて走っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
八年前余は
独歩
(
どっぽ
)
嵐山から高尾に来た時、
時雨
(
しぐれ
)
に降られて、梅が畑の
唯有
(
とあ
)
る百姓家に
跑
(
か
)
け込んで
簑
(
みの
)
を借りた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
空
(
そら
)
は、
時雨
(
しぐれ
)
のきそうな
模様
(
もよう
)
でした。
今朝
(
けさ
)
がたから、
街
(
まち
)
の
中
(
なか
)
をさまよっていたのです。たまたまこの
家
(
いえ
)
の
前
(
まえ
)
にきて、
思
(
おも
)
わず
足
(
あし
)
を
止
(
と
)
めてしばらく
聞
(
き
)
きとれたのでした。
海からきた使い
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それに間に合うよう是非とも取り急いで茶室
成就
(
しあげ
)
よ待合の
庇廂
(
ひさし
)
繕えよ、
夜半
(
よわ
)
のむら
時雨
(
しぐれ
)
も一服やりながらでのうては面白く窓
撲
(
う
)
つ音を聞きがたしとの
贅沢
(
ぜいたく
)
いうて
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
お光の心は如何様に涼しく感じたであろう。秋になる。
万頃
(
ばんけい
)
の蘆一斉にそよいで秋風の辞を歌う。蘆の花が咲く。
雁
(
かり
)
が鳴く。
時雨
(
しぐれ
)
が降る。蘆は次第に枯れそめる。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
妾はそれと知りましてどう致したらよいものかと、毎日
時雨
(
しぐれ
)
勝ちの空を眺めて思案に暮れておりました。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
大森林、大
谿谷
(
けいこく
)
、
奔湍
(
ほんたん
)
、風の音、雨、山をつんざく雷、
時雨
(
しぐれ
)
、無心の空の雲、数箇月に渡る雪の世界。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
十一月の初めの、
時雨
(
しぐれ
)
の降った後の寒い日であった。たきまぜの御飯の
香
(
かおり
)
は
殊
(
こと
)
になつかしく思われた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
長谷川
時雨
(
しぐれ
)
、岡田八千代、
茅野
(
ちの
)
雅子、森
真如
(
しんにょ
)
など、美しいミスたちが、金魚のように押し並んでいた。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あら、お姉さまも
時雨
(
しぐれ
)
ているのね。お母さまが、あの調子じゃ、私今日少しお小遣いをねだろうと思っているのに、絶望だわ。お姉さま、三円かしてくれない?」
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
長谷川
時雨
(
しぐれ
)
は、
生粋
(
きっすい
)
の江戸ッ子ということが出来なければ、
生
(
はえ
)
抜きの東京女だとは言えるであろう。
旧聞日本橋:01 序文/自序
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
、
長谷川時雨
(著)
同
(
おな
)
じ
女
(
をんな
)
に
取卷
(
とりま
)
かれてゐても、
三上
(
みかみ
)
は(
説明中止
(
せつめいちうし
)
)——
時雨
(
しぐれ
)
さんは、
社會的
(
しやくわいてき
)
に、
文學的
(
ぶんがくてき
)
に、とにかく
最早
(
もはや
)
、三
四人
(
よにん
)
の
女文子
(
をんなぶんし
)
を
送出
(
おくりだ
)
してゐる、この
賢明
(
けんめい
)
にして
美
(
うつく
)
しい
人
(
ひと
)
が
長谷川時雨が卅歳若かつたら
(旧字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
鉱山の方へ搬ばれてゆく、
味噌
(
みそ
)
や
醤油
(
しょうゆ
)
などを荷造した荷馬が、町に幾頭となく
立駢
(
たちなら
)
んで、
時雨
(
しぐれ
)
のふる中を、尾をたれて白い息を吹いているような朝が幾日となく続いた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
其の
中
(
うち
)
に空は
時雨
(
しぐれ
)
で曇って、少し暗くなりました所で、笠を取って
刎除
(
はねの
)
け、
小刀
(
しょうとう
)
を引抜きながら
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
雄吾は倒れている大木に猟銃を立て掛けて、
時雨
(
しぐれ
)
に濡れた落ち葉の間に、枯れ枝を探し歩いた。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
時雨
(
しぐれ
)
もやいの
朝寒
(
あささむ
)
におびえて鳥肌をたてている、眼ばかり美しい山川の細い白い顔を見ていると、この男は、もう生きて帰ってくることはあるまいという冷酷な感慨がわき
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
殊
(
こと
)
にはげしい
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
にも
打
(
う
)
ち
消
(
け
)
されずに、
靜
(
しづ
)
かな
時雨
(
しぐれ
)
の
音
(
おと
)
のしてゐるのを
自分
(
じぶん
)
が
聞
(
き
)
いてゐる。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
時雨
(
しぐれ
)
の寒そうに降る村々の屋根の厚みや、
山茶花
(
さざんか
)
の下で、
咽喉
(
のど
)
を心細げに鳴らしている鶏や、それから、人の顔のように、いつもぽつりと町角に立っていた黒いポストやが
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
“時雨”の意味
《名詞:じう》
ちょうどよい時に降る雨。
しぐれ。
(出典:Wiktionary)
“時雨”の解説
時雨(しぐれ、じう)は、主に秋から冬にかけて起こる、一時的に降ったり止んだりする雨である。
時雨が降る天候に変わることを時雨れる(しぐれる)ともいう。
(出典:Wikipedia)
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
雨
常用漢字
小1
部首:⾬
8画
“時雨”で始まる語句
時雨堂
時雨空
時雨雲
時雨榎
時雨月
時雨勝
時雨煮
時雨笛
時雨蛤
時雨女史