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日向
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ひなた
ふりがな文庫
“
日向
(
ひなた
)” の例文
「成程、そいつは氣が付かなかつた。あつしは縁側の方へ退きませう。
日向
(
ひなた
)
ぼつこをしながらお雜煮を祝ふのも、飛んだ
榮耀
(
ええう
)
ですぜ」
銭形平次捕物控:248 屠蘇の杯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼
(
かれ
)
が
薦
(
こも
)
つくこを
擔
(
かつ
)
いで
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た
時
(
とき
)
は
日向
(
ひなた
)
の
霜
(
しも
)
が
少
(
すこ
)
し
解
(
と
)
けて
粘
(
ねば
)
ついて
居
(
ゐ
)
た。お
品
(
しな
)
は
勘次
(
かんじ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
の
間
(
ま
)
居
(
ゐ
)
なく
成
(
な
)
つたので
酷
(
ひど
)
く
寂
(
さび
)
しかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
十二月始めのある日、珍しくよく晴れて、そして風のちっともない午前に、私は病床から
這
(
は
)
い出して縁側で
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしていた。
浅草紙
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ふしぎにおもって、おとうさんがあおむいて見ると、
軒
(
のき
)
さきの高いたなの上にのせられて、たにしの子が
日向
(
ひなた
)
ぼっこしていました。
たにしの出世
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
取っていた
日向
(
ひなた
)
くせえ女だ。気に入らねえのは判り切っているが、眼をつぶって往生してくれ。あいつに逃げられるとまったく困るから
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
彼女の
頬
(
ほお
)
は、
入日時
(
いりひどき
)
の山脈の様に、くっきりと
蔭
(
かげ
)
と
日向
(
ひなた
)
に別れて、その分れ目を、
白髪
(
しらが
)
の様な長いむく毛が、銀色に
縁取
(
へりど
)
っていた。
火星の運河
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
俵というものになって、今まで守り育てて、蔭になり、
日向
(
ひなた
)
になって成長させた自分の子供も同様なお米を大切に包んで守ります。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
早春の
日向
(
ひなた
)
に床をひかせて起上り、食べ度いと思うものをあれやこれや食べながら、くめ子に向って生涯に珍らしく親身な調子で言った。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
縁側に腰をかけて
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしていると、黒い土の上から、モヤモヤとかげろうがのぼっている。もうじき五月だ。私の生れた五月だ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
ボウトの中で
日向
(
ひなた
)
ぼっこでもしながら、チャアリイのためにこの
玩具
(
おもちゃ
)
の舟を
拵
(
こしら
)
えて、「こら、チャア公!
毀
(
こわ
)
すんじゃあねえぞ」
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
日向
(
ひなた
)
の土の窪んだところに、雞が寝て砂を浴びている。あたりにある梅が
馥郁
(
ふくいく
)
たる香を放っている、というようなところらしい。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
瘤
(
こぶ
)
かのように起伏しており、森や林が飛び散っていたが、春陽を受けてそれらの物象は、紫ばんだ陰影と、黄ばんだ
日向
(
ひなた
)
とを織っていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは
胡床
(
こしょう
)
と
肱掛
(
ひじかけ
)
でした。胡床はつまり椅子です。お天気の日、女はこれを外へ出させて、
日向
(
ひなた
)
に、又、木陰に、腰かけて目をつぶります。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私は、
神近市子
(
かみちかいちこ
)
さんの横顔を眺め、舞踊家林きん子になった、
日向
(
ひなた
)
さんに、この人だけは
面影
(
おもかげ
)
のかわらない美しい
丸髷
(
まるまげ
)
を見た。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
中にも
五島
(
ごとう
)
清太郎博士、藤井健次郎博士は、陰になり
日向
(
ひなた
)
になって、私を庇護して下さったので、私は衷心から感謝している。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
忽ちすうツと枕の近くにあの
日向
(
ひなた
)
臭い匂がして来て、掛け布団をもく/\持ち上げながら、天鵞絨のやうな柔かい毛の物体が這入つて来た。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
かくて彼はなんとすればよかったか? 彼らと対抗して、そのわずかな
日向
(
ひなた
)
の場所を奪い合うようなことは、さすがになし得なかった……。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この辺も一面に真っ白に、野も丘も埋められた間を、
日向
(
ひなた
)
には埃さえ少し立って、乾ききった街道が、一すじ長く貫いている。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
小川町の角で、
斜
(
はす
)
に
須永
(
すなが
)
の
家
(
うち
)
へ
曲
(
まが
)
る横町を見た時、彼ははっと例の後姿の事を思い出して、急に
日蔭
(
ひかげ
)
から
日向
(
ひなた
)
へ想像を移した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日はすでに高く上って、島のここかしこから白い
靄
(
もや
)
がほやほやと立っていた。百匹もの猿は、青空の下でのどかに
日向
(
ひなた
)
ぼっこして遊んでいた。
猿ヶ島
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「じゃが、ご心配ないようにな、暗い冷い処ではありません——ほんの
掘立
(
ほったて
)
の草の屋根、秋の虫の
庵
(
いおり
)
ではありますが、
日向
(
ひなた
)
に小菊も
盛
(
さかり
)
です。」
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
若い
白瓜
(
しろうり
)
の心を抜き、
青紫蘇
(
あおじそ
)
を塩で
揉
(
も
)
んで詰めて押したのは、
印籠漬
(
いんろうづけ
)
といって喜ばれましたが、
雷干
(
かみなりぼし
)
は
日向
(
ひなた
)
臭いといって好まれませんかった。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
私はむくむくと床をぬけ出して、そのぢぢむさい姿を
日向
(
ひなた
)
に
曝
(
さら
)
し、人並に、否病めるが故に更により多くの日光を浴びようと端近くにじり出る。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
彦兵衛は元、漆の産地からそこへ雇われて来た
越中者
(
えっちゅうもの
)
で、毎日
店頭
(
みせさき
)
で、他の者と並んで
日向
(
ひなた
)
で
漆掻
(
うるしかき
)
をしていたものである。
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下りてみると、
日向
(
ひなた
)
の自動車のなかで運転手がぐっすり居眠りしていた。とうとうこっそり
呑
(
や
)
ったとみえて、車内にぷうんと
香
(
にお
)
いが漂っている。
踊る地平線:04 虹を渡る日
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
日向
(
ひなた
)
の方は、幸い風もないので、日向ぼっこの猫みたいに背を丸めてうずくまって眼を細めたくなるような快さであった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
日向
(
ひなた
)
の学校の
硝子
(
がらす
)
にこの間まで
蠅
(
はい
)
がぶんぶん飛んでいたが、それももう見えなくなった。田の刈ったあとの氷が午後まで残っていることもある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
小父
(
おぢ
)
さんの帰りはとつかはと馬車に乗りて
喰
(
く
)
はねばならぬ
我宿
(
わがやど
)
の三
膳
(
ぜん
)
の
冷飯
(
ひやめし
)
に急ぎ
申候
(
まうしそろ
)
。
今
(
いま
)
や
則
(
すなは
)
ち
如何
(
いかん
)
前便
(
ぜんびん
)
申上
(
まうしあ
)
げ
候
(
そろ
)
通り、
椽端
(
えんばた
)
の
日向
(
ひなた
)
ぼつこに
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
下では梵妻と娘が
茣蓙
(
ござ
)
の四隅を持ち、上からちぎって落す柿を受けていた。老僧も監督するような形で、
懐手
(
ふところで
)
をしながら
日向
(
ひなた
)
に立って眺めていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
安倍郡大川村大字
日向
(
ひなた
)
の奥の藤代山などでも、かつて
西河内
(
にしこうち
)
の某という猟師が、大きな人の形で毛を
被
(
かぶ
)
った物を、鉄砲で打ち留めたことがあった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いま引いた文章にも書いてある通り、おれとお前の関係はこの船場新聞にはじまって以後いわば蔭になり
日向
(
ひなた
)
になり、おれはお前を助けて来たのだ。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
秋晴れの
日向
(
ひなた
)
に干されたりしているのを見る時、何となく目あたらしく、いかにも郊外の生活らしい心持をさせたことを、わたくしは記憶している。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
妾
(
わたし
)
が
乳首
(
ちゝくび
)
へ
苦艾
(
にがよもぎ
)
を
塗
(
まぶ
)
って
鳩小舍
(
はとごや
)
の
壁際
(
かべぎは
)
で
日向
(
ひなた
)
ぼっこりをして……
殿樣
(
とのさま
)
と
貴下
(
こなた
)
はマンチュアにござらしゃりました……いや、まだ/\
耄
(
ぼ
)
きゃしませぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
山県
(
やまがた
)
公は相変らず小田原の古稀庵で、
日向
(
ひなた
)
ぼつこをして暮してゐるが、この
老人
(
としより
)
にも日が経つと不思議に髯が伸びる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
時どき彼らは
日向
(
ひなた
)
や土の匂いのするようなそこの子を連れて来て家で遊ばせた。彼も家の出入には、苗床が囲ってあったりする大家の前庭を近道した。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
低い戸の
側
(
そば
)
に、
沢
(
つや
)
の
好
(
い
)
い、黒い大きい、猫が
蹲
(
うづくま
)
って、
日向
(
ひなた
)
を見詰めていて、己が側へ寄っても知らぬ顔をしている。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
と、門から突当りの玄関が
開
(
あ
)
いて、女教師の
日向
(
ひなた
)
智恵子はパツと明るい中へ出て来た。其拍子に、玄関に
隣
(
とな
)
つた職員室の窓から賑やかな笑声が洩れた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
これは、まず、怪異なかっこうをした亀の子が、上げ潮にうちあげられてきれいな砂浜で
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしている形。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
行燈
(
あんどん
)
はほのかにともっていたものの、
日向
(
ひなた
)
から
這入
(
はい
)
って
来
(
き
)
たばかりの
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
の
眼
(
め
)
には、
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
は
真
(
ま
)
ッ
暗闇
(
くらやみ
)
であった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ゴーリキイはあんなに人間で、まるで人生そのものみたいに見事で、それで
日向
(
ひなた
)
の年とった糸杉の匂いのようなまじりけない男が感じられたでしょう。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
さぞ
困苦艱難
(
こんくかんなん
)
したであろう、この文治もの、そちに劣らぬ難儀はしたが、
天日
(
てんぴ
)
に消ゆる
日向
(
ひなた
)
の雪同前、胸も
晴々
(
はれ/″\
)
したわい、おゝ
斯様
(
こん
)
な悦ばしい事は……
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
楡
(
にれ
)
や
樫
(
かし
)
や栗や白樺などの芽生したばかりの
爽
(
さわ
)
やかな葉の透間から、煙のように、また
匀
(
におい
)
のように流れ込んで、その幹や地面やの日かげと
日向
(
ひなた
)
との加減が
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
毎日ぶらぶら家にいて、
日向
(
ひなた
)
ぼっこしているか、鶏の世話などをしていた。白木が飼っているのは、
軍鶏
(
しゃも
)
である。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
時間は
遅々
(
ちち
)
として、なかなか
捗
(
はかど
)
らなかった。私は縁側に出て
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしながら、郵便配達員の近づく足音を一秒でも早く聞き当てようと骨を折った。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
柔かい五月の
日向
(
ひなた
)
も、心地よく二人の洋傘に浸みた。二人ともそれ/″\に一寸したよそ行きの着物を着てゐた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
秣山
(
まぐさやま
)
へゆく道は灌木の岡にそうて蔭になり
日向
(
ひなた
)
になりうねうねとうねってゆく。人どおりのないのと岡がせまってるのとで斑尾の道よりいっそう淋しい。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
が、自分が獲ったのであると思うと、一匹だって、捨てる気はしない。小屋へ帰ってから、彼は小太刀で腹を
割
(
さ
)
き、
腸
(
わた
)
を去ってから、それを
日向
(
ひなた
)
へ乾す。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
色さまざまな桜の落ち葉が、
日向
(
ひなた
)
では黄に
紅
(
くれない
)
に、日影では
樺
(
かば
)
に紫に庭をいろどっていた。いろどっているといえば菊の花もあちこちにしつけられていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
久八は
疾
(
とく
)
に
察
(
さつ
)
し何事も
心切
(
しんせつ
)
を盡し内々にて
小遣錢
(
こづかひぜに
)
迄も與へ
陰
(
かげ
)
になり
日向
(
ひなた
)
になり心配して
呉
(
くれ
)
けるゆゑ久八が
忠々
(
まめ/\
)
敷心に
愛
(
めで
)
て千太郎は奉公に來し心にて
辛抱
(
しんばう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
世間の尊敬の中で暮らすのは、
假令
(
たとへ
)
、勞働者の尊敬に過ぎないとしても、「
日向
(
ひなた
)
で、靜かに氣持よく坐つてゐる」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
“日向”の意味
《固有名詞》
日向 (ひゅうが)
旧国名の一つ。日向国。
宮崎県にある地名。日向市。
(出典:Wiktionary)
日
常用漢字
小1
部首:⽇
4画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“日向”で始まる語句
日向守
日向葵
日向国
日向臭
日向水
日向雨
日向縁
日向見
日向大谷
日向見川