惡戲いたづら)” の例文
新字:悪戯
「もし、んだにおひなさいましたね。いまやつなん惡戲いたづらをするんだらう、途法とはふもない。いや、しかし、はげしい日中につちう尊頭そんとう。」
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つい二三日前にさんちまへまで其所そこてゝいたのですが、れい子供こども面白おもしろ半分はんぶんにわざと屏風びやうぶかげあつまつて、色々いろ/\惡戲いたづらをするものですから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
與吉よきちなゝめくのがすこ窮屈きうくつであつたのと、叱言こごとがなければたゞ惡戲いたづらをしてたいのとでそばかまどくちべつ自分じぶん落葉おちばけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
翌日山本はその惡戲いたづらした友が誰であるかを打明けろと圭一郎に迫つたが彼がかたくなに押默つてゐると山本は圭一郎の頬を平手で毆りつけた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
乃至ないし眞夜中まよなかうまたてがみ紛糾こぐらからせ、また懶惰女ぶしゃうをんな頭髮かみのけ滅茶滅茶めちゃめちゃもつれさせて、けたら不幸ふかう前兆ぜんてうぢゃ、なぞとまするもマブが惡戲いたづら
何をするのだと訊くと、にや/\笑つてゐて答へなかつたが、やがてどうも狐や狸の惡戲いたづらがひどいので毎晩斯うして御飯を上げて置くのだといふ。
山寺 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
もう大丈夫で、床の上へ起き直つて居ります。元日早々こんな手の混んだ惡戲いたづらをされちや縁起が惡いから、とことんまで調べて頂いて、仕掛けた人を
東京から大阪へ來ると東京の商業はまるで子供の惡戲いたづらだと云ふやうな氣がするといふ事から説き起して、大阪の人の時をしみ、金を崇ぶ事を語り
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
お霜婆の家でも毎年蠶を飼ひましたが、ある時私は婆さんの大切にして居る蠶に煙草のやにめさせました。斯の惡戲いたづらは非常に婆さんを怒らせました。
わしが初めて東京から歸つて來た年に大病にかかつて座敷で寢てると、勝が蚊帳かやの側へつて來ちや惡戲いたづらをしたり小便を垂れたりして煩くつて困つたよ。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
ゴシツプの興味ならば、對手への中傷や、意地惡やもしくは單なる面白がりの惡戲いたづらにすぎないだらう。所が僕の意志は、丁度その正反對の所にあるのだ。
室生犀星に与ふ (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
いつも惡戲いたづらをしましたのよ! メアリーは、眠たがりでいつもその計畫に身を入れてはくれませんでしたの。
齡の若さうな痩せた鹿毛が鼻尖で積んだ雪に惡戲いたづらをして居る。相島は其の馬をさすりながら又足駄を雪の中に踏み込んで門を這入ると、玄關の前に井田が居た。
半日 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
無邪氣な惡戲いたづらの末、片意地に芝居見を強請せがんだ末、弟を泣かした末、私は終日土藏の中に押しめられて泣き叫んだ。そのまどの下には露草つゆくさの仄かな花が咲いてゐた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
うしろから、一人の男が、何か惡戲いたづらをして遁げて來たらしい容子で、息を切らしてあたふた走り過ぎたが、だれか追つかけて來るものを待ち設けるやうに後を振り返りながら
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
藤野さんは、何學科でも成績がかつた。何日いつであつたか、二年生の女生徒共が、何か授業中に惡戲いたづらをしたといつて、先生は藤野さんを例に引いていましめられた事もあつた樣だ。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分は一緒に惡戲いたづらつ子だつた中學時代の友達の、今川燒のやうにまあるく平べつたくて、しかもぶよぶよしてゐた顏中を想ひ出しながら、狼狽あわてて飛起きて洗面場に馳けて行つた。
自己の惡戲いたづら氣質を滿足せしむるもあれば(金の劉祁の『歸潛志』卷六參看)、更に唐の玄宗時代の宦官の楊思勖の如く、自分の殘忍性を滿足せしむる爲に、罪人の心肝を取り、手足を截り
惡戲いたづらと温順とを浮べたる名状し難き顏色にてこなたを見詰めたり。
胡弓 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
おかん おまへさんが惡戲いたづらをするから惡いんだよ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
いゝえ、まだしてげません。……おはなしかなくツちや……でないとそでくはへたり、つたり、惡戲いたづらをして邪魔じやまなんですもの。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちひさいうちから惡戲いたづらものでね。あいつが餓鬼大將がきだいしやうになつて喧譁けんくわをしにつたことがありますよ」と坂井さかゐ御互おたがひ子供こどもときことまで一口ひとくちらした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不思議ふしぎにもそのとしとつたへび動物園どうぶつゑんにでもるやうに温順おとなしくしててついぞ惡戲いたづらをしたといふことをきません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
男の間拔けなのが面白く、ついやつた惡戲いたづらです。それや暮しに困れば少しはお金も貰ひましたが——
ういふ同志どうしへのこんな惡戲いたづら何處どこでも反覆くりかへされるのであつた。さうして成功せいこうした惡戲者いたづらもの
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その山本と咲子は二年の間も醜關係を結んでゐたのだといふことを菩提寺ぼだいじの若い和尚から聞かされた。憤りも、恨みも、口惜しさも通り越して圭一郎は運命の惡戲いたづらに呆れ返つた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
木登りの惡戲いたづらから脚に大きなとげなどが差さつても親達に見つかる迄はそれを隱して居るといふ方でしたが、私はひとの身體の疼痛いたみを想像するにも堪へませんでした。
船藏ふなぐらがついちかくつて、安宅丸あたかまる古跡こせきですからな。いや、ういへば、遠目鏡とほめがねつたで……あれ、ごろうじろ——と、河童かつぱ囘向院ゑかうゐん墓原はかばら惡戲いたづらをしてゐます。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とらしたしてたにみづんでゐる鼻柱はなばしらすこけがされたのを、ちゝひどにして、宗助そうすけたびに、御前おまへ此所こゝすみつたことおぼえてゐるか、これ御前おまへちひさい時分じぶん惡戲いたづらだぞとつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
股から上の火傷やけどだ、——惡戲いたづら者は家の中に居るに違げえねえ、引つ捉へて八つ裂きにしてやる——といふ腹の立てやうだが、見渡したところ、娘も伜も居候も、多勢の奉公人も皆んな良い子ばかり。
われでも惡戲いたづらしたんぢやねえか」勘次かんじ遲緩もどかしげにはげしく追求つゐきうした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あのあかはだかにかれたとりがヒヨイ/\あるくのをるほど、むごいものはいとおもひました。とうさんは子供心こどもごゝろにも、そんな惡戲いたづらをするむら人達ひとたち何程なにほどにくんだかれません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あくるあさいのちみづまうとすると、釣瓶つるべ一杯いつぱいきたなけものいてあがる……三毛猫みけねこ死骸しがい投込なげこんであつた。そのことわられたものの口惜くやしまぎれの惡戲いたづらだらうとふのである。——あさことで。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お聞きの通りで、——曲者は最初から、家内の眼を潰すつもりで入つたわけではなく、佛像の額の大夜光の珠が取れなかつた口惜しまぎれに、母屋へ忍び込んでこんな惡戲いたづらをしたのではあるまいか」
これはおきやくさまの御馳走ごちそうですから仕方しかたいとおもひましたが、近所きんじよのおいへでは、鬪鷄しやもにはとり締殺しめころしてふといふことをよくやりました。むらには隨分ずゐぶん惡戲いたづらきな人達ひとたちがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「それは惡戲いたづらですよ、親分」
惡戲いたづら好きな學校の朋輩は、その娘の名と私の名とを並べて書いて見たり、課業を終つて思ひ/\に歸つて行く頃には、杉の樹のあるお寺の坂の上あたりから、大きな聲で呼ばつたりしたものです。