心臓しんぞう)” の例文
旧字:心臟
高まる心臓しんぞう鼓動こどうをおさえつけながら、ジェンナーはついに、搾乳婦さくにゅうふから取ってきたうみを、ジェームス少年にうえたのであります。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「ああ、そのこえにききおぼえがあります。わすれていたむかしのことがすっかりえるようです。ああ、わたしのこのちいさな心臓しんぞうがふるえる……。」
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だいいち、じまんではねえが、力はないし、そのうえ、心臓しんぞうもよわいんです。せいぜい、さっきぐらいのことしかやれねえですよ。
乃公わしの打診は何処をたゝいても患者の心臓しんぞうにピーンと響く、と云うのが翁の自慢である。やがて翁は箱の様なものをかかえて来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人の心臓しんぞうであったら出血のために動かなくなってしまうほどたくさんはりが布をさし通して、一縫いごとに糸をしめてゆきます——不思議な。
「正吉や。お母さんは一度心臓しんぞう病で死にかけたんだけれど、人工じんこう心臓をつけていただいてこのとおり丈夫になったんですよ」
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
道徳、趣味しゅみ、人生観、——何と名づけても差支さしつかえない。とにかく教科書や黒板よりも教師自身の心臓しんぞうに近い何ものかを教えたがるものである。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それを知っていたって、王さまにいやあ、その男は心臓しんぞうからひざこぞうまで、からだの半分はんぶんが石になっちまうんだからな。
そして空からひとみを高原にてんじました。まったすなはもうまっ白に見えていました。みずうみ緑青ろくしょうよりももっと古びその青さは私の心臓しんぞうまでつめたくしました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こういわれて、人魚のひいさまは、王子の手にくちびるをあてましたが、心臓しんぞうはいまにもやぶれるかとおもいました。
と、それからそれへとはなしつづけていきひまい、ドクトルはみみをガンとして、心臓しんぞう鼓動こどうさえはげしくなってる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いやしずかに。——ただいまみゃくちからたようじゃと申上もうしあげたが、じつ方々かたがた手前てまえをかねたまでのこと。心臓しんぞうも、かすかにぬくみをたもっているだけのことじゃ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
心臓しんぞう動悸どうきが息のつまるほどはげしく、自分で自分の身がささえていられないようになった。糟谷は
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたしの心臓しんぞうがまたはげしく打ち始めた。わたしはちっとも老人ろうじんから目をはなすことができなかった。
かれは、まったく死んだようになって、心臓しんぞう鼓動こどうまでも止めるようにしていた。もっとも、そんな時にはかえって心臓はドキドキとはげしくったことだろうが……。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
すると、心臓しんぞうがまだうっているのが分かったので、ちかくの泉から、清水しみずをくんで来て、その顔にふっかけました。すると、怪獣はかすかに目をあいて、虫の息でいいました。
ウエーバーと云ふ生理学者は自分の心臓しんぞうの鼓動を、増したり、へらしたり、随意に変化さしたと書いてあつたので、平生から鼓動を試験するくせのある代助は、ためしにつて見たくなつて
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
久助君は心臓しんぞうがどきつくのをおぼえた。中には、なにもはいっていなかった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
かれの心臓しんぞうは、ドキッとしめつけられたようなあえぎをうつ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心臓しんぞう鼓動こどう尋常じんじょうでなかったことをも思い出した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
うし心臓しんぞう 冬 第二百九十 見世物の種
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
このさまるとはなは、きゅうちいさな心臓しんぞうがとどろきました。しかし、ちょうは、ちっともそのことをりませんでした。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
銃猟は面白いものであろう。然しあのあわただしい羽音と、小さな心臓しんぞう破裂はれつせんばかり驚きおびえた悲鳴を聞いては……
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、イノシシはやみくもにそれにつっかかり、ぐさりとつきささって、心臓しんぞうがまっぷたつになってしまいました。
それがもしかちがって、王子がほかの女と結婚するようなことになると、もうそのあくる朝、お前さんの心臓しんぞうはやぶれて、おまえさんはあわになって海の上にうくのだよ。
かれはそばへってわたしのうでにさわった。それから頭を心臓しんぞうにすりつけた。今度は背中せなかむねにさわって、大きく息をしろと言った。かれはまたせきをしろとも言った。
「あの若者がとびこんだところから、あなたもとびこみなさい。」むすめ躊躇ちゅうちょしなかった。彼女かのじょは小さな心臓しんぞうを、両掌りょうてににぎられた小鳥のように、ときめかせながら岩のところに下りていった。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ついにこの城塞じょうさい心臓しんぞうきとめてきたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この電燈でんとうひかりは、生物せいぶつ体内たいないにある心臓しんぞうのようなものです。ともりはじめたときがあって、またわりがあるのです。
先程から引つゞいて、大きな心臓しんぞうの鼓動の如く、ただしい時をへだてゝ弔砲がひびいて居る。——あゝ鐘が鳴って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
仕立屋さんの心臓しんぞうは、うれしすぎて、まるで小ヒツジのしっぽみたいに、ぴくぴくうごいていました。
ヴィタリスはもう死んでいた。わたしも死ぬところであったのを、カピがむねの所へはいって来て、わたしの心臓しんぞうあたたかかにしていてくれたために、かすかな気息きそくのこっていた。
もうおそろしくて、心臓しんぞうがどきどき波をうって、なんべんもそこから引きかえそうとおもいました。でもまた王子のことと、人間のたましいのことをおもうと、勇気がでました。
はっと心臓しんぞうされたようにびっくりしたときは、非常ひじょう爆音ばくおんとともに、もうかれつつんでいました。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、このできごとを見ると、子どもののどから小刀を抜き取るが早いか、腹たちまぎれに、それを、豚のつぶしてであったもうひとりの子の心臓しんぞうへ突きたてたものです。
大きなの明かりにらされたまどを見ることもできた。だんだんとそばに近づくにしたがって、赤みを持った光が、わたしたちの通り道に投げられた。わたしの心臓しんぞうはとっとっと打った。
そして、やさしいおじいさんの詩人の心臓しんぞうをねらって、ピューッと、射ました。
そうでしたらわたしは、どんなに幸福こうふくでありましょう。わたしは、いつまでもあなたのむねなかきています。わたしちいさなあか心臓しんぞうは、あなたのこころ宿やどって呼吸こきゅうしています。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしの心臓しんぞうは、まるでそこになにか危険きけんがせまったようにどきついた。
マリアが女の子のむねに手をあててみますと、心臓しんぞうがどきどきうっています。それで、マリアには、女の子がいいつけをやぶって、とびらをあけたことが、わかりました。そこでもういちど、マリアは
先生せんせいは、おくれてきた二人ふたりを、じっとごらんになりましたが、だまっていらっしゃいました。としちゃんは、おについたけれど、しばらく心臓しんぞうがどきどきとしていました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしの心臓しんぞう後悔こうかいいたんだ。どれほどひどくばっせられたことだろう。
エー心臓しんぞうは、こおりで、ぐっとにぎられたように、ぞっとして、ものがいえなく、ふるえていました。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、心臓しんぞうただしくっており、はいつよ呼吸こきゅうをし、どこひとつとしてくるっているところはないばかりか、すこしも精神病者せいしんびょうしゃらしいところもうけなかったのです。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、このひと心臓しんぞうまるようなはな香気こうきは、またなんともいえぬかなしみをふくんでいるのです。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つめたいかぜは、おびやかすように、電燈でんとうおもてをなでていきました。心臓しんぞう規則正きそくただしく、生物せいぶつむねっているあいだに、いろいろなおそろしい脅迫きょうはく肉体にくたいおそうようなものです。
けれど畢竟ひっきょう自分じぶんなぐさめ、苦痛くつうわすれさせるものには酒以外さけいがいないことをったが、まれたから、今日きょうまで、瞬時しゅんじやすまず鼓動こどうをつづける心臓しんぞうれて、愕然がくぜんとして、かれ
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
どきどきする心臓しんぞうを、こらえるようにして、をじっとしたけていると、れつわりに、こんどはロイド眼鏡めがねをかけてかみながくした、わか先生せんせいが、おくれながらついていかれます。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままで、くもにさえぎられて、自分じぶんはどこをんでいるのか見当けんとうすらもつかなかったのですけれど、このさまて、ちいさなとり心臓しんぞうおそろしさのためにつめたくなってしまいました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
佐吉さきちちいさな心臓しんぞうはふるえました。みみたぶがほてってゆめではないかとおもいました。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)