トップ
>
引緊
>
ひきし
ふりがな文庫
“
引緊
(
ひきし
)” の例文
娘は自衞的に表情を
引緊
(
ひきし
)
めました。かう答へる聲は、顏にも姿にも似ぬ、少し
錆
(
さび
)
のある
女聲最低音
(
アルト
)
、平次は妙な幻滅をさへ感じました。
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其處
(
そこ
)
へ
風呂敷
(
ふろしき
)
を
肱
(
ひぢ
)
なりに
引挾
(
ひつぱさ
)
んだ、
色
(
いろ
)
の
淺黒
(
あさぐろ
)
い、
目
(
め
)
に
張
(
はり
)
のある、きりゝとした
顏
(
かほ
)
の、
鬢
(
びん
)
を
引緊
(
ひきし
)
めて、おたばこ
盆
(
ぼん
)
はまた
珍
(
めづら
)
しい。……
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
女義太夫の衰退とばかりは見られないのではなかろうかと思われた。とはいえ、綾之助の
技芸
(
げい
)
はそれらの聴衆をすこしの間に
引緊
(
ひきし
)
めてしまった。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
併
(
しか
)
し
其
(
その
)
核心となるものが決して在来の絵で云ふ中心でも、主題でもなく、其れが全体の調和を
引緊
(
ひきし
)
めて居るのでもない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その声をきくと、急に身体の筋肉が
引緊
(
ひきし
)
められた。そして何かが、重い鈍なるものが、彼の眼の前にぴたりと据えられた。其処で凡てがゆきづまっていた。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
太平洋の
鮫
(
さめ
)
と異名を取った
樫原
(
かしはら
)
太市船長の顔が、急にぴんと
引緊
(
ひきし
)
まった。——伊藤青年は報告紙を見ながら
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
種々
(
いろ/\
)
な
状態
(
じやうたい
)
が
明瞭
(
はつきり
)
と
目先
(
めさき
)
にちらついてしみ/″\と
悲
(
かな
)
しい
樣
(
やう
)
に
成
(
な
)
つて
見
(
み
)
たりして
猶更
(
なほさら
)
に
僂麻質斯
(
レウマチス
)
の
疼痛
(
いたみ
)
がぢり/\と
自分
(
じぶん
)
の
身體
(
からだ
)
を
引緊
(
ひきし
)
めて
畢
(
しま
)
ふ
樣
(
やう
)
にも
感
(
かん
)
ぜられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼は形よく
刻
(
きざ
)
まれた唇をきつと
引緊
(
ひきし
)
めて私を見据ゑた。彼が激昂したのか、驚いたのか、どうしたのかを説明することは容易ではなかつた。彼はよく顏色を制御し得たから。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「イヤイヤ滅多な事を言出して取着かれぬ返答をされては」ト思い直してジット
意馬
(
いば
)
の
絆
(
たづな
)
を
引緊
(
ひきし
)
め、
藻
(
も
)
に住む虫の我から苦んでいた……これからが肝腎
要
(
かなめ
)
、回を改めて伺いましょう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それから顔を
引緊
(
ひきし
)
めて
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
此
(
こ
)
の
急信
(
きふしん
)
は××
年
(
ねん
)
××
月
(
ぐわつ
)
××
日
(
にち
)
、
午後
(
ごご
)
三
時
(
じ
)
に
屆
(
とゞ
)
いたので、
民子
(
たみこ
)
は
蒼
(
あを
)
くなつて
衝
(
つ
)
と
立
(
た
)
つと、
不斷着
(
ふだんぎ
)
に
繻子
(
しゆす
)
の
帶
(
おび
)
引緊
(
ひきし
)
めて、つか/\と
玄關
(
げんくわん
)
へ。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
平次は『娘の新しい角度』を見せられたような氣がして、フト身内の
引緊
(
ひきし
)
まるのを感じました。娘をこれだけひきつける男には、何にか知ら容易ならぬものがあるのでせう。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
呂昇の芸には、柔らかい腕をゆるゆると巻きつけていって、やがてキュッと
引緊
(
ひきし
)
めるようなところがある。春の夜に降る雨のように、人の心を溶かしてしまうようなところがある。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「僕だって活きて二度と、先生の顔が見られないように……」と思わず
拳
(
こぶし
)
を握ったのを、我を
引緊
(
ひきし
)
められたごとくに、夫人は思い取って、しみじみ
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多津吉は、手足を力なく垂れた振袖を、横抱きに胸に
引緊
(
ひきし
)
めて、
御手洗
(
みたらし
)
の前に、ぐたりとして、蒼くなって言った。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
軽い雨で、もう
面
(
おもて
)
を打つほどではないが、
引緊
(
ひきし
)
めた
袂
(
たもと
)
重たく、しょんぼりとして、
九十九折
(
つづらおり
)
なる抜裏、横町。谷のドン底の
溝
(
どぶ
)
づたい、次第に暗き
奥山路
(
おくやまみち
)
。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もとへ
突込
(
つっこ
)
んで、革鞄の口をかしりと
啣
(
くわ
)
えさせました時、フト柔かな、滑かな、ふっくりと美しいものを、きしりと
縊
(
くび
)
って、
引緊
(
ひきし
)
めたと思う
手応
(
てごたえ
)
がありました。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さらぬだに、
地震
(
ぢしん
)
で
引傾
(
ひつかし
)
いでゐる
借屋
(
しやくや
)
である。
颶風
(
ぐふう
)
の
中心
(
ちうしん
)
は
魔
(
ま
)
の
通
(
とほ
)
るより
氣味
(
きみ
)
が
惡
(
わる
)
い。——
胸
(
むね
)
を
引緊
(
ひきし
)
め、
袖
(
そで
)
を
合
(
あは
)
せて、ゐすくむと、や、や、
次第
(
しだい
)
に
大風
(
おほかぜ
)
は
暴
(
あ
)
れせまる。
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
促
(
うな
)
がすように言いかけられて、ハタと
行詰
(
ゆきつま
)
ったらしく、
杖
(
ステッキ
)
をコツコツと
瞬
(
またたき
)
一
(
ひと
)
ツ、唇を
引緊
(
ひきし
)
めた。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黒小袖の肩を円く、但し
引緊
(
ひきし
)
めるばかり両袖で胸を抱いた、
真白
(
まっしろ
)
な襟を長く、のめるように
俯向
(
うつむ
)
いて、今時は珍らしい、
朱鷺色
(
ときいろ
)
の
角隠
(
つのかくし
)
に
花笄
(
はなこうがい
)
、
櫛
(
くし
)
ばかりでも
頭
(
つむり
)
は重そう。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
そ
)
の
惱
(
なや
)
ましさを、
崖
(
がけ
)
の
瀧
(
たき
)
のやうな
紫陽花
(
あぢさゐ
)
の
青
(
あを
)
い
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
に
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
むで
身
(
み
)
を
冷
(
ひや
)
しつゝ、
且
(
か
)
つもの
狂
(
くる
)
はしく
其
(
そ
)
の
大輪
(
おほりん
)
の
藍
(
あゐ
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
恰
(
あたか
)
も
我
(
われ
)
を
離脱
(
りだつ
)
せむとする
魂
(
たましひ
)
を
引緊
(
ひきし
)
むる
思
(
おも
)
ひをした。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「水道橋まで歩行くが可い。ああ、
酔醒
(
えいざ
)
めだ。」と、
衣紋
(
えもん
)
を
揺
(
ゆす
)
って、ぐっと袖口へ突込んだ、
引緊
(
ひきし
)
めた腕組になったと思うと、
林檎
(
りんご
)
の綺麗な、
芭蕉実
(
バナナ
)
の
芬
(
ふん
)
と薫る、
燈
(
あかり
)
の
真蒼
(
まっさお
)
な
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三声ばかり呼ぶと、細く目を開いて小宮山の顔を見るが否や、さもさも物に恐れた様子で、飛着くように、小宮山の帯に
縋
(
すが
)
り、身を
引緊
(
ひきし
)
めるようにして、坐った膝に
突伏
(
つッぷ
)
しまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
嬉しい! と手を通して
出
(
で
)
の
三枚襲
(
さんまいがさね
)
の上へ羽織ると
斉
(
ひと
)
しく
引緊
(
ひきし
)
めて、
裾
(
すそ
)
を引いたまますッと出て座敷を消えると、色男梓君のために、健康を祝してビールの満を引くもの
数
(
すう
)
をしらず。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、手を引入れて
引緊
(
ひきし
)
めて、わっとばかりに声を立てると、思わず
熟
(
じっ
)
と抱き合って
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
氣
(
き
)
に
成
(
な
)
ると
心配
(
しんぱい
)
は
胸
(
むね
)
へ
瀧
(
たき
)
の
落
(
お
)
ちるやうで、——
帶
(
おび
)
引緊
(
ひきし
)
めて
夫
(
をつと
)
の……といふ
急
(
せ
)
き
心
(
ごころ
)
で、
昨夜
(
ゆうべ
)
待
(
ま
)
ち
明
(
あか
)
した
寢
(
ね
)
みだれ
髮
(
がみ
)
を、
黄楊
(
つげ
)
の
鬢櫛
(
びんぐし
)
で
掻
(
か
)
き
上
(
あ
)
げながら、その
大勝
(
だいかつ
)
のうちはもとより、
慌
(
あわた
)
だしく
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
遊女
(
つとめ
)
あがりの女をと気がさして、なぜか不思議に、女もともに、
侮
(
あなど
)
り、
軽
(
かろ
)
んじ、
冷評
(
ひやか
)
されたような気がして、
悚然
(
ぞっ
)
として五体を取って
引緊
(
ひきし
)
められたまで、
極
(
きま
)
りの悪い思いをしたのであった。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
杖
(
つゑ
)
を
引緊
(
ひきし
)
めるやうに、
胸
(
むね
)
へ
取
(
と
)
つて
兩手
(
りやうて
)
をかけた。
痩按摩
(
やせあんま
)
は
熟
(
じつ
)
と
案
(
あん
)
じて
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と思うと、
引緊
(
ひきし
)
めるような、柔かな母の両の手が強く民也の背に
掛
(
かか
)
った。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
思
(
おも
)
ふと、
引緊
(
ひきし
)
めるやうな、
柔
(
やはら
)
かな
母
(
はゝ
)
の
兩
(
りやう
)
の
手
(
て
)
が
強
(
つよ
)
く
民也
(
たみや
)
の
背
(
せ
)
に
掛
(
かゝ
)
つた。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
八郎は
紅
(
くれない
)
の八口を
引緊
(
ひきし
)
めた。梅が薫って柳が
靡
(
なび
)
く。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
面
(
かお
)
を
引緊
(
ひきし
)
めた。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
緊
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“引”で始まる語句
引
引込
引摺
引返
引張
引掛
引籠
引立
引出
引越