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ふりがな文庫
“
常陸
(
ひたち
)” の例文
丁度これと同じ時刻、男は遠い
常陸
(
ひたち
)
の国の屋形に、新しい妻と酒を
斟
(
く
)
んでゐた。妻は父の目がねにかなつた、この国の
守
(
かみ
)
の娘だつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
九百余人から成る一団のうち、水戸の精鋭をあつめたと言わるる筑波組は三百余名で、他の六百余名は
常陸
(
ひたち
)
下野
(
しもつけ
)
地方の百姓であった。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
八州廻りの目あかしの中でも古狸の名を取っている
常陸
(
ひたち
)
屋の長次郎が代官屋敷の門をくぐって、代官の
手附
(
てつき
)
の宮坂市五郎に逢った。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かけ初めと称して子供が七歳になる迄、毎年この日には年の数よりも一つ多い餅を
蔓
(
つる
)
にとおし、
襟
(
えり
)
に掛けさせる習いが
常陸
(
ひたち
)
にはあった。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
天民名ハ行、
常陸
(
ひたち
)
ノ人ナリ。
袁子才
(
えんしさい
)
ヲ景倣シテ詩仏ト号ス。天民ノ父
諱
(
いみな
)
ハ光近医ヲ業トシ宗春ト称ス。江戸ニ来ツテ銀街ニ
僑居
(
きょうきょ
)
ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
本所御船藏前、水戸樣御用の煙草問屋で
常陸
(
ひたち
)
屋久左衞門が、昨夜自分の部屋で殺されて居るのを、今朝になつて見付けましたよ。
銭形平次捕物控:179 お登世の恋人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼が
常陸
(
ひたち
)
の
小田城
(
おだじょう
)
・
関城
(
せきじょう
)
にいて軍を督率して戦ったことは人の知るところで、小田城中で書いた『
神皇正統記
(
じんのうしょうとうき
)
』『
職原抄
(
しょくげんしょう
)
』は有名であり
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
東国から
常陸
(
ひたち
)
、信濃あたりまでは、ともかく頼朝の武力になびいたが、奥州の藤原秀衡は、まだ源氏に
与
(
くみ
)
すとは宣言していない。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それからのち二人の貴公子が
常陸
(
ひたち
)
の宮の姫君へ手紙を送ったことは想像するにかたくない。しかしどちらへも返事は来ない。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「上方ばかりじゃございません、先生のお国の
常陸
(
ひたち
)
の筑波山あたりでも、昔はずいぶんああいったものが流行ったということでございますね」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あわれ願わくば
微衷
(
びちゅう
)
にめでて弟子の一人にお加えくだされ、幻妙不思議の忍術の一手お教え置かれくださいますよう、
常陸
(
ひたち
)
お願い申し上げます
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万葉巻十四に出た
東歌
(
あずまうた
)
である。
新嘗
(
にいなめ
)
の夜の忌みの模様は、おなじころのおなじ東の事を伝えた
常陸
(
ひたち
)
風土記にも見えている。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
東京を中心にして関東の地図を見ますと、その中には
相模
(
さがみ
)
、
武蔵
(
むさし
)
、
安房
(
あわ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
下総
(
しもうさ
)
、
常陸
(
ひたち
)
、
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
などが現れます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
同七年五月英人
常陸
(
ひたち
)
大津浜に上陸するもの十二人。七月同じく薩州宝島に上陸し、野牛を奪い去る。辺海
漸
(
ようや
)
く多事、幕府
将
(
まさ
)
に奔命に疲れんとす。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
渋江氏の一行では中条が他郷のものとして
目指
(
めざ
)
された。中条は
常陸
(
ひたち
)
生だといって申し
解
(
と
)
いたが、役人は
生国
(
しょうこく
)
不明と認めて、それに
立退
(
たちのき
)
を
諭
(
さと
)
した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
岩代から
下野
(
しもつけ
)
のくにへ入ったのが夏七月、それから
常陸
(
ひたち
)
へまわり、
上野
(
こうずけ
)
のくにから江戸へ着いたのが秋九月であった。
足軽奉公
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
惣兵衛が帰ってきたら、あの子とよく相談して、お前を真人間に叩き直し、
常陸
(
ひたち
)
の叔父さんの処へ預けるつもりだ。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
父が或秋の
除目
(
じもく
)
に
常陸
(
ひたち
)
の
守
(
かみ
)
に任ぜられた時には、
女
(
むすめ
)
はいつか二十になっていた。女はこん度は母と共に京に居残って、父だけが任国に下ることになった。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
久慈川の谷はさう大してすぐれてゐるといふのではないが、
磐城
(
いわき
)
と
常陸
(
ひたち
)
の境に、
矢釜山
(
やかまやま
)
などといふ奇勝がある。
行つて見たいところ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
大豆は
常陸
(
ひたち
)
の
赤莢
(
あかざや
)
といって土浦近傍から出るのを全国第一としてあります。麦は
相州
(
そうしゅう
)
藤沢近傍のが最上等です。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
続日本紀、元正天皇霊亀二年五月の条に、「駿河、甲斐、相模、
上総
(
かずさ
)
、下総、
常陸
(
ひたち
)
、
下野
(
しもつけ
)
の七国の高麗人一千七百九十九人を武蔵の国にうつし、高麗郡を置く」
安吾の新日本地理:10 高麗神社の祭の笛――武蔵野の巻――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
蝦夷
(
えびす
)
どもをたいらげながら、
常陸
(
ひたち
)
の
新治
(
にいばり
)
や
筑波
(
つくば
)
を通りすぎて、ここまで来るのに、いく夜寝たであろう」
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
武芸の道が何よりもお
好
(
すき
)
でなア、先年此の
常陸
(
ひたち
)
の
土浦
(
つちうら
)
の城内へお抱えに成りました者が有りまして、これは元
修行者
(
しゅぎょうじゃ
)
だとか申す事だが、
余程
(
よっぽど
)
力量の勝れた者で
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また
常陸
(
ひたち
)
の磯原へ避暑に行ってるKのこと、——Kからは今朝も、二ツ島という小松の茂ったそこの磯近くの巌に、白い波の砕けている風景の絵葉書が来たのだ。
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
頭は少々
馬鹿
(
ばか
)
でも、
腕
(
うで
)
っぷしさえ強ければ人の頭に立っていばっていられるような昔の時代であった。
常陸
(
ひたち
)
の
八溝山
(
やみぞさん
)
という高い山の
麓
(
ふもと
)
の村に
勘太郎
(
かんたろう
)
という男がいた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
今朝『
宇多川
(
うたがわ
)
』に着いたばかりの
常陸
(
ひたち
)
の地廻り新酒、
霜腹
(
しもばら
)
よけに一杯やって元気をつけてください。……こうしておいて、またいつか智慧を借りようという欲得づく
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この時から
常陸
(
ひたち
)
山中の
大子
(
だいご
)
駅に至るまでの間の事は、既に日曜画報にも簡単に書いたので、日曜画報を見た諸君には、多少重複する点のある事は御勘弁を願いたい。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
此事あつてより将門は
遺恨
(
ゐこん
)
已
(
や
)
み
難
(
がた
)
くなつたであらう、今までは
何時
(
いつ
)
も敵に寄せられてから戦つたのであるが、今度は我から軍を
率
(
ひき
)
ゐて、良兼が
常陸
(
ひたち
)
の真壁郡の
服織
(
はつとり
)
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
また
魚
(
さかな
)
を
釣
(
つ
)
る
時
(
とき
)
の
釣
(
つ
)
り
針
(
ばり
)
だとか、
魚
(
さかな
)
を
突
(
つ
)
き
刺
(
さ
)
す
時
(
とき
)
の
銛
(
もり
)
にも、
骨
(
ほね
)
や
角
(
つの
)
で
作
(
つく
)
つたものでなければ
役
(
やく
)
に
立
(
た
)
たないのでありまして、
常陸
(
ひたち
)
の
椎塚
(
すいつか
)
といふ
貝塚
(
かひづか
)
からは、
鯛
(
たひ
)
の
頭
(
あたま
)
の
骨
(
ほね
)
に
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
貴人、只今来りし武士にむかひて、
七九
常陸
(
ひたち
)
は何とておそく参りたるぞとあれば、かの武士いふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
別の説として
美濃
(
みの
)
では「ギバは
白虻
(
しろあぶ
)
のような、目にも見えない虫だという説がある、また
常陸
(
ひたち
)
ではその虫を大津虫と呼んでいる。虫は玉虫色をしていて
足長蜂
(
あしながばち
)
に似ている」
怪異考
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
常陸
(
ひたち
)
の国の天羽槌雄神が作った
倭文布
(
しずり
)
の帯だけが、ちらりと女神の腰に艶なる人界の色を
彩
(
あやど
)
る。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
校長から
常陸
(
ひたち
)
郷土史の材料蒐集を嘱託せられて、一箇月半の楽しい休暇を全く其為めに送つたので、今九月の下旬、特別を以て三週間の賜暇を許され、展墓と親戚の廻訪と
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
常陸
(
ひたち
)
の国、
河内郡
(
こうちごおり
)
、
阿波
(
あんば
)
村の
大杉
(
おおすぎ
)
明神の近くに、恐しい妖魔が住んでいるので有った。それに竜次郎は捕って、水鳥が霞網に
搦
(
からま
)
ったも同然、
如何
(
いかん
)
とも仕難くなったのであった。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
翌
(
あく
)
る一日を宿屋に休息してゆうゆう傷の手当、刀のていれに費やして夕ぐれとともに石神を発足、くらい山道を足にまかせて、眠っている中納言様の御城下
常陸
(
ひたち
)
の水戸を過ぎ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
拾
(
ひろ
)
ひ上げ是が路用か情なやと
塵
(
ちり
)
打拂
(
うちはら
)
ひ
常陸
(
ひたち
)
の方へと急ぎしが未だ夜も深ければ左仲は原中を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
わずか一割に足らぬ残留組の中心は
常陸
(
ひたち
)
芹沢村の郷士芹沢鴨を首班とする水戸浪人の一派で、京都の政情に望みをかけ、中央——京都における合体尊攘方策の即時実現をまだ夢みていた。
新撰組
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
町はづれの
隧道
(
とんねる
)
を、
常陸
(
ひたち
)
から入つて
磐城
(
いはき
)
に出た。大波小波
鞺々
(
だう/\
)
と打寄する淋しい濱街道を少し往つて、
唯
(
と
)
有る
茶店
(
さてん
)
で車を下りた。
奈古曾
(
なこそ
)
の石碑の刷物、松や貝の化石、畫はがきなど賣つて居る。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ちょうど
春
(
はる
)
のことで、
奥州
(
おうしゅう
)
を出て
海
(
うみ
)
伝
(
づた
)
いに
常陸
(
ひたち
)
の
国
(
くに
)
へ
入
(
はい
)
ろうとして、
国境
(
くにざかい
)
の
勿来
(
なこそ
)
の
関
(
せき
)
にかかりますと、みごとな
山桜
(
やまざくら
)
がいっぱい
咲
(
さ
)
いて、
風
(
かぜ
)
も
吹
(
ふ
)
かないのにはらはらと
鎧
(
よろい
)
の
袖
(
そで
)
にちりかかりました。
八幡太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
又信濃越中出羽陸奥也、
常陸
(
ひたち
)
にもありときゝつ。これらの国の鮏はその所の食にあつるに
足
(
た
)
るのみ、
通商
(
つうしやう
)
するにたらず。江戸は
利根
(
とね
)
川にありといへども
稀
(
まれ
)
なるゆゑ、
初鮏
(
はつさけ
)
は
初鰹
(
はつかつを
)
の
価
(
あたひ
)
に
比
(
ひ
)
すとぞ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
町はずれの
隧道
(
とんねる
)
を、
常陸
(
ひたち
)
から入って
磐城
(
いわき
)
に出た。大波小波
鞺々
(
どうどう
)
と打寄する淋しい
浜街道
(
はまかいどう
)
を少し往って、
唯有
(
とあ
)
る
茶店
(
さてん
)
で車を下りた。
奈古曾
(
なこそ
)
の
石碑
(
せきひ
)
の
刷物
(
すりもの
)
、松や貝の化石、画はがきなど売って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
常陸
(
ひたち
)
筑波郡今鹿島は、昔領主戦場に向うに先だちこの所に山茶一枝を
挿
(
さ
)
し、鹿島神宮と見立て祈願すると勝利を得たからその地を明神として祀り今鹿島と号すと(『郷土研究』四巻一号五五頁)。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そう云えばいつぞや
常陸
(
ひたち
)
の国の
平潟
(
ひらかた
)
の港に遊んだ時、入り江を包む両方の山の出鼻に燈籠があって岸にはずっと遊女の家が並んでいたのを、いかにも昔の
船着場
(
ふなつきば
)
らしい感じだと思ったことがあるのは
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
(間。唯円をさし)この人は
常陸
(
ひたち
)
から来ているのです。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
常陸
(
ひたち
)
鹿島
(
かしま
)
神社行。
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
去年
常陸
(
ひたち
)
の
別後
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
常陸
(
ひたち
)
の宮の姫君はそれより品の悪いはずもない身分の人ではないか、そんなことを思うと上品であるということは身柄によらぬことがわかる。
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
最も有望といわれる産地、九州地方はさておき、江戸を中心としては静岡地方——それから
常陸
(
ひたち
)
から
磐城
(
いわき
)
岩代
(
いわしろ
)
へかけて、採炭の見込みがある。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この道に志す
輩
(
やから
)
は雲のごとく起り、京はおろか、江戸、
常陸
(
ひたち
)
、越前、近畿、中国、九州の果てにまで、名人上手の少なくない時勢となっている。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例えば
常陸
(
ひたち
)
の
石那阪
(
いしなざか
)
の峠の石は、毎日々々伸びて天まで届こうとしていたのを、
静
(
しず
)
の明神がお憎みになって、鉄の
沓
(
くつ
)
をはいてお
蹴
(
け
)
飛ばしなされた。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
“常陸”の意味
《固有名詞》
常陸(ひたち)
旧国名。東海道に位置する。常陸国。現在の茨城県の大部分。
(出典:Wiktionary)
“常陸(
常陸国
)”の解説
常陸国(ひたちのくに)は、かつて日本の地方行政区分だった令制国の一つ。東海道に属する。現在の茨城県の南西部を除いた地域にあたる。
(出典:Wikipedia)
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
陸
常用漢字
小4
部首:⾩
11画
“常陸”で始まる語句
常陸介
常陸国
常陸守
常陸山
常陸帯
常陸屋
常陸風土記
常陸坊海尊
常陸岸
常陸坊