小判こばん)” の例文
いくさがあっても貧相でなく、新鋳しんちゅう小判こばんがザラザラ町にあらわれ、はでで、厳粛げんしゅくで、陽気で、活動する人気にんきは秀吉の気質きしつどおりだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも一もあるほどの小判こばんを馬につけまして、宰領の衆も御一緒で、中津川へお帰りの時も手前どもから江戸をお立ちになりましたよ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
両替りょうがえ両替りょうがえ小判こばん両替りょうがえ。」というこえは、かぜのまにまにとおくになったり、ちかくになったりしてこえてきたのであります。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小判こばんのはいった箱を五十個発見しましたので、その山の持主は、少年探偵団に五百万円というお金を寄付してくれました。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
刈谷音吉かりやおときちは、最近さいきんのことだが、だいぶたくさんに金塊きんかいいこんでいたそうですよ。ふる小判こばんなどもあるそうで、これは地金屋ぢがねやからの聞込ききこみですが」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
その夏雄が晩年とこくと、しばしば枕もとへ一面に小判こばん大判おほばんを並べさせては、しけじけと見入つてゐたさうである。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なかには金が欲しく天から小判こばんの降りきたるを理想とすればそれは実現されぬ。それは理想でなく、欲想よくそうである。実現せられぬのは理想でなく空想である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
冗談じょうだんじゃねえ。二十五りょうといやァ、小判こばんが二十五まいだぜ。こいつが二りょうとか、二りょうとかいうンなら、まだしもはなしすじとおるが、二十五りょうんでもねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
小判こばんどころか、一分いちぶひとしてくれる相談さうだんがないところから、むツとふくれた頬邊ほゝべたが、くしや/\とつぶれると、納戸なんどはひつてドタリとる。所謂いはゆるフテふのである。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梨子地には、焼金やききん小判こばん、銀、すず、鉛(この類は梨子地の材料で金と銀とはちょっと見て分り兼ねる)。
配分はいぶんして大に歡びしが是ぞ天罰てんばつの歸する處にして右の町觸まちぶれの出し日は留守にて心得ず越後屋に反物たんものかり百三十兩あるを跡のためなれば先是をはらはんと思ひ越後屋へ右の小判こばん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だいを払って表へ出ると、門口かどぐちの左側に、小判こばんなりのおけが五つばかり並べてあって、その中に赤い金魚や、斑入ふいりの金魚や、せた金魚や、ふとった金魚がたくさん入れてあった。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
変心の暁はこれが口をききて必ず取立とりたてらるべしと汚き小判こばんかせに約束をかためけると、或書あるしょに見えしが、これ烏賊いかの墨で文字書き、かめ尿いばりを印肉に仕懸しかくるなどたくいだすよりすたれて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
むかしたけなかから、きんひかりがさしたというはなしがあるが、どうだ、小判こばんでもちていたか。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「黄金というのは、あの小判こばんにするお金のことなの」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おそろしい怖ろしい、低能児ていのうじでも復讐心ふくしゅうしんはあるもの。蛾次郎が、小石をつめこんだのは、れいの石投げのわざで、小判こばんかたきをとるつもりらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、からすは、それをくわえて、いずこへとなく、みんなってしまって、村人むらびとにはいった小判こばんは、やっと二まいしかありませんでした。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
生糸売り上げの利得のうち、小判こばんで二千四百両の金を遠く中津川まで送り届けることが寛斎の手にゆだねられた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このじりッけのねえおせんのつめが、たった小判こばんまいだとなりゃ、若旦那わかだんなねこのようにびつくなァ、ぎたてのかがみでおのがつらるより、はっきりしてるぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さゝに、大判おほばん小判こばん打出うちで小槌こづち寶珠はうしゆなど、就中なかんづく染色そめいろ大鯛おほだひ小鯛こだひゆひくるによつてあり。お酉樣とりさま熊手くまで初卯はつう繭玉まゆだま意氣いきなり。北國ほくこくゆゑ正月しやうぐわつはいつもゆきなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「うん、そのじいさんが、小判こばんのはいったつぼでもえんしたかくしていそうな様子ようすだったか。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ばくだいな小判こばんを発見して、そのお礼として、少年探偵団へ五百万円の寄付がありましたので、そのお金で、探偵事務所に無電の設備をして、十個の携帯けいたい無線電話をそなえつけました。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どうもへんだとは思ったが、なにしろたいせつな小判こばんをと、ふたたびかき集めていると、こんどはバラバラ小石の雨が、つづけざまにってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両替りょうがえ両替りょうがえ小判こばん両替りょうがえ。」といいながら、こっちにあるいてきました。やがて、幸作こうさくうち戸口とぐちで、げたについたゆきをはらうちいさな足音あしおとがしました。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのつき正面しやうめんにかざつて、もとのかゝらぬお團子だんごだけはうづたかく、さあ、成金なりきん小判こばんんでくらべてろと、かざるのだけれど、ふすまははづれる。障子しやうじ小間こまはびり/\とみなやぶれる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この戦争に、シナで人命を失うもの百万人、シナの港々は言うに及ばず、南京ナンキンの都まで英国に乗っ取られ、和睦わぼくを求めるためにシナより英国へ渡した償金は小判こばんにして五百万枚にも及んだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
きちは、ふところの小判こばんにしながら、ほっとしてあたまげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして子供こどもつけたら、みなその小判こばんろうとかんがえました。ちょうど、まち二日ふつかりぞめになっていまして、くらいうちからきていました。
金銀小判 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのはずみに、手に乗せていた小判こばんがチャランと寒い響きを散らして足元にこぼれました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らオランダ人は長崎蘭医らんいの大家として尊敬されたシイボルトのような人ばかりではなかったのだ。彼らがこの国に来て交易からおさめた利得は、年額の小判こばん十五万両ではきくまいという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
したっているひとたちは、まさかきん小判こばんをからすがくわえてくるはずがないといってしんじませんでした。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
歴史を織り、地図をも変える。そこには勢い一切のものの交換ということが起こる。あの横浜開港の当時、彼は馬籠本陣の方にいて、幾多の小判こばん買いが木曾街道にまで入り込んだことを記憶する。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よく世間せけんには、小判こばんはいった大瓶おおびんしたといううわさがあるが、おれも、なにかそんなようなものでもさなければ、大金持おおがねもちとはならないだろう。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
半蔵は馬籠の本陣にいて、すでに幾たびか銭相場引き上げの声を聞き、さらにまた小判こばん買いの声を聞くようになった。古二朱金、保字金なぞの当時に残存した古い金貨の買い占めは地方でも始まった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのうちに、からりてきたものが、それをみんなにせると、ほんとうに、きん小判こばんでありました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なんだろう?」と、あしめて、それをひろげました。なかなかおもいのであります。つつみをいてみて、おどろきました。おもいのも道理どうりで、ふくろ小判こばんがたくさんはいっていました。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)