あひ)” の例文
女はくたぶれたと見えて、わたしとむかあひに、けれども、すこし離れた処に腰を下し、スカートを引延すやうにして膝をかくした。
畦道 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぢやが、お前様めえさまやま先生せんせいみづ師匠ししやうふわけあひで、私等わしらにや天上界てんじやうかいのやうな東京とうきやうから、遥々はる/″\と……飛騨ひだ山家やまがまでござつたかね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自然の情あひからながれる相互の言葉が、無意識のうちに彼等を駆つて、じゆん縄のらつみ超えさせるのは、いま二三ぷんうちにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
出立して此程は此堤このどてにて危ふかりしなどと道すがらかたあひつゝ江戸表馬喰町へ來り武藏屋むさしや長兵衞方に落着おちつき寶珠花屋よりの添書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ドヽドンと、先頭の太皷があひを入れた。續いた太皷が皆それを遣る。調子を代へる合※だ。踊の輪は淀んで唄が止む、下駄の音がゾロ/\と縺れる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分じぶんをつとは、そのころどんな樣子やうすをしてゐたらう。もしもそのときから二人ふたりあひになつてゐたならば、どうなつたらう。やはり夫婦ふうふになつたであらうか。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
蜆玉子のつなぎの早幕、五ツに川岸から引返す、魚荷の徒党も四ツには揃ひ、御飯時の九ツには、座舗も御客の山と川、一寸おあひの合詞、打合ふ拳に八ツ七ツ、弁天山の時酒なぞ
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
蕉風のあひに関する議論は樋口いさを氏の「芭蕉研究」にすこぶる明快に述べられてゐる。尤も僕は樋口氏のやうに、発句は蕉門の竜象りゆうざうを始め蕪村も甚だ芭蕉には劣つてゐなかつたとは信ぜられない。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そしてあれならば大名などが静謐せいひつな部屋に置いて落著おちついて鑑賞することも出来るし、光琳くわうりん抱一はういつの二家が臨摸りんぼして後の世まで伝はつてゐるのもさういふわけあひで、肉体的に恐ろしくないからである。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
女はくたぶれたと見えて、わたしと向ひあひに、けれども、すこし離れた處に腰を下し、スカートを引延すやうにして膝をかくした。
畦道 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
すくいだし是も同じく脊におひながら此處へいそぎしに男の足故程なく來りければ皆々大によろこあひ先是にて一安堵あんどと一同にふといき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ドヾドンと、先頭の太鼓があひを入れた。続いた太鼓が皆それを遣る。調子を代へる合図だ。踊の輪は淀んで唄が止む、下駄の音がゾロ/\ともつれる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかも大抵あひの間だから、形式は全く不必要である。目的はたゞ大勢寄つて晩餐を食ふ。それから文芸上有益な談話を交換する。そんなものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一年あるとし先生せんせい名古屋なごやあそんで、夫人ふじんとは、この杉野氏すぎのしつうじて、あひんなすつたので。……おまへたち。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『もしも、そのころ二人ふたり教會けうくわいあひになつてゐたらどうなつたでせうね。』
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
牢内らうないより出入の節とが人のそば親戚みよりよする事は法度はつとなれど江戸とちがひ村方の人足のみにて知りあひの百姓ども故知らぬ顏にて煙草たばこくゆらし居たりしとぞ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あゝ、だまだまり。——あの高橋たかばし汽船きせん大變たいへん混雜こんざつですとさ。——この四五年しごねん浦安うらやすつりがさかつて、沙魚はぜがわいた、まこはひつたと、乘出のりだすのが、押合おしあひ、へしあひ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又他の一人が門前の溝にかけた石橋の欄干に腰をおろし煙管で烟草をのんでゐた様子やうすあひを見て、この馬車に乗つて来た人は同じやうな生垣つゞきの隣家ではなくして
冬の夜がたり (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しか自分じぶんいまかつ參禪さんぜんといふことをした經驗けいけんがないと自白じはくした。もしくはしいはなしきたければ、さいは自分じぶんあひによく鎌倉かまくらをとこがあるから紹介せうかいしてやらうとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にはたゞかき一重ひとへ二階にかい屋根續やねつゞきとつてもい、差配さはいひと差配さはいながら、前通まへどほりと横町よこちやうで、引越蕎麥ひつこしそばのおつきあひなかにははひつてらぬから、うち樣子やうす一寸ちよつとわからぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
所が親爺おやぢの腹のなかでは、それが全く反対あべこべに解釈されて仕舞つた。なにをしやうと血肉けつにく親子おやこである。子がおやに対する天賦の情あひが、子を取扱ふ方法の如何に因つて変るはづがない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……學者がくしや術語じゆつごばなれがして、商賣しやうばいによつてかしこしである、とおもつたばかりは二人組ふたりぐみかけあひ呼聲よびごゑも、じつ玄米げんまいパンと、ちんどん、また一所いつしよになつた……どぢやう、どぢやう
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれども、其因数フアクターうしても発見はつけんする事が出来できなかつた。すると、自分が三千代に対する情あひも、此論理ろんりによつて、たゞ現在的げんざいてきのものにぎなくなつた。かれあたままさにこれを承認した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かたはらに、おの/\のがしるしてあつた。……神樂坂かぐらざかうらへ、わたし引越ひつことき、そのまゝのこすのはをしかつたが、かべだからうにもらない。——いゝ鹽梅あんばいに、一人ひとりあひがあとへはひつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……そのうち場所ばしよことだから、べつあひでもないが、柳橋やなぎばしのらしい藝妓げいしやが、青山あをやま知邊しるべげるのだけれど、途中とちう不案内ふあんないだし、一人ひとりぢや可恐こはいから、にいさんおくつてくださいな、といつたので、おい
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こりや、とあひはやす。わつしよい/\とところなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)